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雅子さま、35歳に

太 子 妃

1998.12.9更新

●雅子さま記者会見全文

 皇太子妃雅子さまは9日、35歳の誕生日を迎えた。これに先立ち、東京・赤坂の東宮御所で記者会見し、「公務なども楽しく感じるゆとりも生まれてまいりました」と振り返り「若い世代の皇族としてどのようなことができるのか、(皇太子)殿下とご相談しながら常に考えていきたい」と語った。

 この1年については、国連監視団に参加した秋野豊さんが襲撃を受けて亡くなったことに触れ、「大変、お気の毒で残念なことであったと思います。平和を築くことの大変さ、重みについて、思いを深くいたしました」と述べた。

 また、夏に御所の窓の外で弱っていたノコギリクワガタを保護し、生まれた幼虫を飼育していることを紹介。「小さな命一つひとつが大変いとおしく思えてくるもので、現代の子供たちにもそういう体験をすることは大切なことではないかしら」と続けた。

 夫婦での日々の生活については、何事も話し合う雰囲気ができていること、素直に謝る姿勢でいることなどをあげた。

 続けて、2匹の愛犬がいることに触れ、「『夫婦げんかは犬も食わぬ』と申しますけれど、けんかのタネは割とよく拾って食べてくれる気がします」とユーモアを交えて話した。

<1998.12.9日付朝日新聞朝刊から>

うれしかった障害者スポーツへの理解

皇太子妃の記者会見全文

皇太子ご夫妻=宮内庁提供

 【質問1】この1年を振り返って、国内外の出来事やご自身のことで印象深かったことをお聞かせください。

 ●妃殿下:今年も様々なことがあった1年だったと思います。今年の前半には長野でのオリンピック冬季大会、続いてのパラリンピック大会、それから6月にはフランスでのサッカーのワールドカップへの日本チームの出場など、色々なスポーツのイベントで日本中がわいて、そしてまた、選手たちの健闘に日本の多くの人が感動し、また勇気づけられたような気がいたします。

 オリンピック、パラリンピックの折には、私も幸い、皇太子殿下とご一緒に長野を訪れ、競技を見ることができました。このような大会を実際に目の当たりにするということは、私にとって初めてのことでございましたが、選手一人ひとりが自己の限界に挑戦している姿が印象に残りますとともに、特にパラリンピックでは世界から集まられた選手の皆さんも含め、選手の皆さんがそこに参加していること自体をお喜びに感じているという、そういう気持ちがこちらにまで伝わってくるようで、見ております私に、多くのことを乗り越えられた選手一人ひとりに心からの拍手を送りたい気持ちで一杯になりました。オリンピックでの日本選手団の活躍に引き続き、パラリンピックでも日本の選手が大変、活躍したしましたこともありまして、障害者スポーツに対しての関心や理解が広がったということを大変、うれしく感じました。

 この二つの大会が関係者や、そしてまた、多くのボランティアの人々の協力によって成功のうちに幕を閉じることができたことを大変よかったと思っております。しかし、今年も残念ながら明るい出来事ばかりではございませんでした。昨年からの異常気象ということだと思いますが、8月には大変な集中豪雨がございまして、6月の台風によっても亡くなられた方々があり、そしてまた、各地でかなりの被害がございましたことは、心の痛むことでございました。世界的に見ても、この異常気象のために、中国での大規模な洪水ですとか、それから、中米諸国を襲ったハリケーン、日本では考えられないほどの数多くの人々が犠牲になり、また、被災したとゆうこと、それからまた、アフガニスタンやパプアニューギニアでは地震や津波による被害も大きかったということだと、大変、痛ましいことだったと思います。

 それから、国内でも色んな事件がございましたが、国連のタジキスタンへの監視団に参加をしておられた秋野さんが同僚の方々とともに武装集団に襲われて亡くなられたということは大変にお気の毒で、残念なことであったと思います。世界ではまだいくつもの紛争地域がありますけれども、平和を築いていくということの大変さ、また、同時に大切さ、何とあの申したらよろしゅうございましょうか、平和の重みといったようなものについて、あらためて思いを深くいたしました。

 また、そのときに、秋野さんの残されたご夫人が秋野さんの死を無駄にしないためにも、多くの若者に後に続いて、多くの若者が後に続いていっていくよう祈っていますということを、悲しみの中で話されていた言葉が心に残りました。今年は両陛下がイギリス、デンマークなどのヨーロッパの国々をご訪問なさいましたが、特に、イギリスでは過去の難しい問題について両陛下が大変にお心をおくだきになられたことによりまして、イギリスの多くの人の心を打つご訪問になられたことが印象に残っております。イギリスでは陛下がロイヤル・ソサイアティーでご自身のご体験について英語でスピーチをなさったことに、多くの人が感銘を受けたというふうにうかがっております。

 そして、9月には世界、あ、失礼いたしました、国際児童図書評議会の世界大会のために皇后さまがビデオによる基調講演をなさいまして、このご講演が世界の多くの人々に深い感銘をお与えになったということ、長く心に残ることと思います。そのほか、そうでございますねえ、北海道の奥尻島の復興宣言、それから、北アイルランドや中東の和平の進展、それからまた最近では、スペースシャトル・ディスカバリーの打ち上げにより、向井さんが二度目の宇宙にいかれて、そして手話や和歌などを織り交ぜながら交信をしてこられたこと、アメリカのグレン上院議員が77歳というお歳で元気に宇宙にいってこられたこと。それから最近、来日されました中国の江沢民国家主席より、陛下に2羽のトキが贈られるということになったというようなことが、明るい話題として印象に残っております。以上です(はにかむ)。

 【質問2】皇后さまのビデオ講演など皇室の方々の思いが直接、国民に伝えられ、大きな反響を呼びました。雅子さまは、このような現象をどのように分析し、どのようなご意見をお持ちですか。今後、雅子さまから何かメッセージを伝えるお考えはありますか。

 ●妃殿下:皇后さまがご講演をなさったのは初めてのこととうかがいましたが、ご幼少のころから少女時代にかけてお読みになられたご本を中心に色々とご経験をなさいましたこと、またあのその時々にお感じになられたことなどを織り交ぜられながら、大変あの、奥深い内容の素晴らしい講演をなさったと思います。

 また、ご講演からは何事におかれても一つひとつのことを大切になさり、そして、深くお心にお留めになる皇后さまのご誠実なお人柄というものもうかがわれました。折しも、心の豊かさということについて、その大切さが言われておりますこんにち、この度の皇后さまの講演は私も含めて多くの人の心に深く響くものであったのではないかと思います。私自身、この度のご講演からとてもたくさんのことをお教えいただきました。そして、私自身から何かメッセージを伝えるかどうかということにつきましては、もし、そのような希望が寄せられることがございましたら、またその時に私なりに考えてみたいと思っております。それまでは、研さんを積んでおかなくては、というふうに思います。

 【質問3】結婚されて5年を過ぎましたが、夫婦円満の秘訣は何ですか。夫婦げんかになったりした時は、どのように仲直りされますか。できればエピソードを交えお聞かせください。

 ●妃殿下:はい、まず何よりも、皇太子殿下がいつも大変に寛大なお心で私のことを暖かく見守ってくださるということに感謝申し上げたいと思います。幸い、公務なども含め、一日のうちで二人でともに過ごす時間というものが長いものですから、色々なことをご一緒に体験することができますことを大変、幸せなことと思っております。

 そして、そうですねえ、あのお、それぞれが関心を持っておりますことにお互いに関心を寄せて、何事についても色々と話し合うという雰囲気ができているように思います。(笑い出しながら)夫婦げんかにつきましては、あの、ご期待に添えないかもしれませんが、仲直りが必要なようなけんかには、あまりなりません。ただ、相手の、相手に不快な思いをさせてしまったかしらと思う時には、素直に謝るということが大切なのかもしれないと思っております。

 それから、今、犬がおりますけれども、この、犬がいるというのも、夫婦の仲にとって、とてもよいように思います。よく、「夫婦げんかは犬もくわん」と、あの申しますけれども、けんかの種はわりとよく拾って、食べてくれるような気がいたします(途中から笑いながら)。

 【質問4】皇室に入られた当初と現在とで、皇室にタイするお考えやイメージはどのように深められたでしょうか。両殿下の皇室での役割、若い世代の皇族としてご自分たちらしさをどんな面で生かしていきたいとお考えですか。

 ●妃殿下:あの、皇室に入りましてから、色々なことを経験する機会にめぐまれ、大変、ありがたいことと思っております。おかげさまで、初めのうちは右も左もわからず、一つひとつのことを一から教えていただいておりました宮中のお行事や、それから公務なども、次第に慣れてまいりまして、だんだんと楽しく感じるゆとりも生まれてまいりました。その中で、皇室の中では両陛下おはじめが、国民の喜び、そして悲しみととものう、深くお心にお留めになり、そしてご自身のお喜び、ご自身の悲しみとして、日々をお過ごしになり、また、国民の幸せというものを常に願っていらっしゃるということを幾度となく実感いたします。

 それからまた、私は以前、普通の生活をしておりましたので、考えてみますと、皇族の公務というものは一般の方の目に映るよりもかなりたくさんあって、そして、また多岐にわたるのではないかという気がいたします。特に陛下は皇居でのご公務も大変、多くおありになり、そして、毎日、大変、お忙しい日々を送っていらっしゃいます。そのあたりのことが、国民の皆さんにも広く理解されていると、あのお、よろしいのですけれども。そのあたり、いかがでございましょうか。

 それから私たちの皇室での役割ということでございますが、やはり、皇室での役割としては、両陛下を私の立場でできる限り、おいてお助けしていくということが大切なことだと思っております。そして、若い世代の皇族としてと、いうことでは、皇太子殿下、いつも私たちと同じ、比較的若い世代の人々が、どのようなことを考え、どのようなことに関心があり、そしてまた、皇室にどのようなことを期待しているのかということを常に視野に入れていきたい、というふうにおっしゃっていらっしゃいまして、私もこのことをとっても大切なことだと思っております。

 それから、殿下にはイギリスへのご留学のご経験がおありでらっしゃいますが、その時に大変、多くのことを吸収なさっていらっしゃったようにうかがえますので、そのような視点も大切にしていきながら、世の中の様々なことに関心を持っていくことができたらというふうに思います。そうですねえ、あの、昨年もお話ししたかもしれませんが、色々な新しい考え方ですとか、新しい技術、そういったものに触れていくということも大切なのではないかと思っています。

 また、あの自分たちらしさということに、自分たちらしさを生かしていくということについては、皇室で長い間、培われてまいりました伝統というものを大切にすることも大切なことでございますし、また、新しいものを取り入れていくということ、それから、また自分たちらしさを大切にするということ、それぞれが大切なことだと思います。そして、そのような違った色々な要素を、その時々でどのようにバランス良く取り入れていくのかということについて、常に考えながら、若い世代の皇族としてどのようなことができるのか、殿下とご一緒にご相談しながら常に考えていきたいと思っております。

 【質問5】最近、公務を離れて興味をもって取り組んでおられること、楽しみにしておられることはどんなことですか。

 ●妃殿下:楽しみにしていることは色々とございますが、そして、以前にお話ししたこととも重複するかもしれませんが、一年に、何回か自然の豊かなところを訪れる機会にめぐまれましたおりには、そこでいい景色を、きれい、美しい景色を眺め、そしてきれいな空気を吸って、そしてまた、山歩きなどをしながら植物ですとか、そういったものについて色々と教えていただくこと。それからまた、そういう空気のきれいなところでは、夜には天体観測をしたりすることも大きな楽しみになっております。

 それから、日々の生活では、先ほどもお話しいたしましたが、犬たちとの散歩ですとか色んなふれあいを通じて、たくさんの楽しみや喜びを見いだしております。それと、あの、今年の夏、クワガタムシの、昆虫の(ノコギリ)クワガタですけれども、クワガタがここの御所の窓の外のところで弱っているのを見つけまして、私自身、ここにクワガタがいるということ自体、驚きだったんでござますけれども、皇太子殿下がお小さいころには、クワガタやカブトムシもここにたくさんいたとかっていうことで、殿下も大変、久しぶりにご覧になられたということでしたけれども、あのを、その、クワガタが弱っておりましたので、保護いたしまして、飼育いたしました。

 そして、その後、メスを加えて一緒に飼育してみましたところ、繁殖いたしまして、卵を産んで、それで今は幼虫を飼育しております。幼虫の飼育というのは取りかかってみてわかったんですけれども、クワガタの場合、成虫になるまで3年位かかるということで、あのお、割と長い3年がかりの仕事になるかしらと思っておりますけれども、子供の頃に親しんだ昆虫にまた触れることができて、そのことによって、色々な、例えば虫ですとか、そういった小さな命ひとつひとつが大変、いとおしく思えてくるものでございまして、そのようなことから、現代の子供たちにもそういう体験をすることっていうのはとても大切なことなんではないかしらというふうに感じております。

 それから、あの、一つ新しいことといたしましては、皇太子殿下やそれから家族の他の皆さまとも音楽、何かアンサンブルですとかそういったもの、こういう演奏をご一緒できたら、楽しいかしらと思いまして、フルートを始めたっていうことがございます。これは、あの、上達するまでには長い道のりだと思いますけれども、少しずつ楽しく練習いかれたらというふうに思っております。あとほかには、皇室の伝統でございます和歌、書道は引き続き楽しく学ばせていただいておりますけれども。たまに殿下とご一緒に絵を描くこともございます。

 絵と申しましても、だいたい草花の写生なんでございますけれども、そうやって、写生をしてみますと、写真とはまた違いまして植物の細かいところを色々、見ることになって、たいへん新しい発見がたくさんございまして、世界が広がるような気がいたします。このようにして、色々と新しいことを試してみますと、楽しい発見がございますので、大変、幸せなことと思っております。

 【関連質問】先ほど、若い皇族としての殿下方らしさということについてのお話をおうかがいしたんですが、それに関連してお尋ねいたしますが、我が国と諸外国との交際というか、友好親善ということにおいて、皇太子殿下、皇太子妃殿下が果たすべき役割がどのようなものかというものについてのお考えがもしございましたら、先ほど、皇太子さまとご相談しながらというふうにおっしゃいましたけれども、(妃殿下:はい)、皇太子妃殿下のお立場でお考えがございましたらお教えください。

 ●妃殿下:国際親善、まあ皇室の担っている役割の中でも一つ、大切なことだと思っております。外国への訪問ということにつきましては、皆さまもご存じの通り、政府の決定によって参ることでございますので、もし、そのような機会が与えられることがございましたら、私のできる限りで務めを果たしたいと思っております。

 また、日本におりましても大変たくさんの外国のお客様がこちらにお見えになりますので、そういう時には心を込めて、おひとりおひとりの方と色々とお話しをしたり、心を込めてご接待をするように心がけたいと思っております。##



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