五月二日に文部科学省は国家プロジェクト「e‐Japan戦略」(※)の、「ITプログラム」分野において、本学電気通信研究所(以下、電通研)が、九件の開発のうちの三件を行うことを発表した。
電通研が担当する研究開発は、「超小型大容量ハードディスクの開発」「高機能・超低消費電力メモリの開発」「次世代モバイルインターネット端末の開発」の三件。
また、「超小型ハードディスク開発」の分野は、中村慶久教授が担当する。超小型大容量ハードディスクは小型であっても多くの情報を記録することができる。これは単位面積あたりの情報量、すなわち記録密度を高めることで可能となる。したがって、医療用のデータ管理、学習教材の保存、または、インターネットを使った動画像の送受信に役立つなど多岐に渡って活用することができる。
「高機能・超低消費電力メモリ」については、開発を担当する大野英男教授が新たに発見した電荷の性質と電子スピンによる磁気の性質を融合させた新技術を使う。従来の半導体メモリは、多くの電力を消費する。だが、今回開発するメモリはこの新技術によって消費電力を抑え、限られた電力量での動作を可能にする。また、この性質は発見されて間もないため、今後の長期的な研究によっては量子コンピュータなどへのさらなる発展の見込みを残している。
「次世代モバイルインターネット端末」については、坪内和夫教授が担当する。これは携帯電話などを使った通信の高速化を主な目的とする。従来の無線システムでは、設置されているアンテナの間隔が広く、さらに電波の周波数に制限があるため、高速で遠隔地まで電波をとばすことが困難である。そのためイヤホン大の超小型の無線端末を開発し、無線のブロードバンド(高速)化を行う。
これらの研究開発は、「e‐Japan戦略」の中でプロジェクトの基礎部分である。さらに、ネットワークやソフトウェアを使う上での根幹の技術であるため、電通研の担う役割は非常に大きくなる。
e‐Japan戦略におけるITプログラム分野の開発は五年の計画である。また、大野教授の研究を除き、これらは三年後の文部科学省による研究開発の評価によって、真価が問われることとなる。中村慶久教授は、「今回の開発を任されたのは、東北大の電気通信研究所が長い間積み上げてきた研究の実績からだろう。国家プロジェクトということで、大きなプレッシャーもあり、責任もあるが、これまでの集大成として挑戦していきたい」と自信をもっている。
現在は開発のための準備を進めている段階である。そして、秋に行われる片平まつりの中で、オープニングセレモニーを行い、本格的な開発に入る予定となっている。
(※)二〇〇〇年、IT国家への発展をめざすために政府が打ち出した国家プロジェクト。主な目的として、通信インフラの拡大・IT教育の普及・電子商取引の促進・電子政府、電子自治体の整備・ネットワークの安全性や信頼性の確保が挙げられる。