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青葉山キャンパス移転
構想だけの新キャンパス

入学お祝い号3面・大学

 現在本学には、仙台市の都市計画と連動し、市内に散在する本学のキャンパスを川内・青葉山へ移転・統合する計画がある。しかし、一九九七年移転先予定の県有地を巡ってゴルフ場「仙台カントリー倶楽部」と県側との間で土地の返却をめぐって民事訴訟が起きる。長引く裁判の中で、土地利用のメドは立たず、キャンパス移転の計画は暗礁に乗り上げている。

▼移転問題の歴史

一九六〇年代、市内各地に散在した本学の研究所を片平キャンパスにまとめ、代わりに当時片平キャンパスに集中していた学部を川内・青葉山へ移転する計画が持ち上がった。これにより、一九七九年には農学部・医学部・歯学部を除く全ての学部学科が移転を終えている。

こうして、現在のように、文系を中心とする川内キャンパス、工学部など理系三学部の青葉山キャンパス、農学部の雨宮キャンパス、医学部・歯学部の星陵キャンパス、理科系研究所及び大学の事務組織の集中する片平キャンパスが仙台市内に分散することとなった。

しかし、一九九〇年代になると、現在の理系学部と研究所が市内に離散していることによる移動の不便さを解消し、研究の連携を推し進めるため、片平・雨宮キャンパスを青葉山へと移転しようという計画が持ち上がった。

折しも、仙台市では急激に進む都市化に伴い、都市計画の在り方を模索している時期であった。県では一九九二年から現在「株式会社仙台カントリー倶楽部」(以下、カントリー倶楽部)にゴルフ場として貸している青葉山の県有地の具体的な利用方法について検討を始めた。その結果、一九九四年には東北大学のキャンパスとして利用することが望ましいとの主旨が県の委員会から浅野県知事に対して報告された。

こうした流れの中で本学は一九九六年、「東北大学新キャンパス構想」を打ち出した。これによって、片平・雨宮両キャンパスと川内の一部の研究施設を青葉山に移転し、青葉山丘陵地帯全体に総合大学としての一体的なキャンパスを目指すことが正式に決定された。一方、医学部・歯学部のある星陵キャンパスの移転は付属病院の利用者に多大な影響を与えるという配慮から、現在の場所を維持することを決定している。

また、この新キャンパスの整備構想によると、地下鉄東西線(注)の将来的な敷設が前提となっている。本学では今後東西線の「青葉山」駅を中心に、東西南北にキャンパスが展開される予定である。

しかし、こうした動きに対して、青葉山県有地の現在の借り主であるゴルフ場「カントリー倶楽部」は県側への土地返却を拒否。一九九七年、県はカントリー倶楽部に対し県有地の明け渡しを求める訴えを仙台地方裁判所に起こした。

▼ 県有地返還問題

この裁判は提訴から五年経った今も決着がついておらず、キャンパス移転計画は停滞を余儀なくされている。裁判がこれほどまでに長引く理由の一つとして、ゴルフ場開設までの複雑な経緯が絡んでいる。

一九六〇年、青葉山ゴルフ場の建設に向け、仙台の財界人によって仙台カントリー倶楽部が設立された。しかし、当時は法律の関係上、国有地の民間への払い下げができなかったため、カントリー倶楽部が県の名義を借りることで青葉山の国有地を買い取った。こうして一九六二年に、県に土地を借りる形で、カントリー倶楽部はゴルフ場の経営をスタートすることとなった。

以上の経緯からカントリー倶楽部は土地の実質的所有権を主張し、県の土地返還要求に強く反発している。それに対し、県側は払い下げの行為自体を行ったのは県であることから法的所有権を主張している。

▼移転の問題点

しかし、県有地返却問題以外にもキャンパス移転統合には様々な問題が山積している。移転には莫大な費用がかかるため、当初、本学では片平・雨宮キャンパス跡地を地方自治体に売却することで移転費用をまかなう予定であった。しかし現在、市も県も財政難であり、いまだに移転後のキャンパス跡地の買い手は決まっていない。また、移転の工事によって青葉山の自然が破壊されることが懸念され、移転自体に反対する声も多い。

本学が青葉山へのキャンパス移転を表明して、今年で八年目となる。裁判が長引く中で、施設の改修工事を全面的に中止した片平・雨宮キャンパスでは施設の老朽化の問題が深刻となっている。

さらに、移転構想発表当時から比べ、世間の関心も薄れつつある。こうした状況に対し二〇〇一年、本学は「キャンパス移転推進本部」を設立し、改めて学内外へのキャンパス移転の方針をアピールしようと試みている。しかし、本学のうたう「理想のキャンパス」が実現するのにはまだまだ、紆余曲折がありそうだ。

(注)地下鉄東西線

地下鉄東西線は南北線と並ぶ仙台市の交通基軸として二〇〇四年度、着工予定である。これによって、若林区荒井から仙台駅、川内、青葉山を経由して八木山動物公園までの全長十四キロメートルを地下鉄で結ばれることとなる。


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