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治療


急性骨髄性白血病に対する治療は、化学療法、放射線療法、造血幹細胞移植療法に分かれます。化学療法は最も一般的な治療法ですが、放射線療法も必要な場合があります。造血幹細胞移植療法は、より治療成績をよくしようとして開発された治療法ですが、現在のところは限られた場合に対して行われています。

1)化学療法

急性骨髄性白血病と診断された場合、まず抗がん剤による化学療法が適応になります。ただし、全身状態の不良な場合や、肺炎などの合併症のある場合は、後述する抗生物質などの支持療法で改善してから化学療法が開始されることもあります。急性白血病は診断された時点で、体内に白血病細胞が1兆個以上存在するといわれます。白血病を治すためには、この白血病細胞を完全に殺してしまう必要があります。抗がん剤は内服薬または静脈注射薬があり、一般的に2種類以上の抗がん剤を一緒に使います(多剤併用療法)。静脈注射薬は栄養剤を入れる中心静脈カテーテル(通常鎖骨の下、あるいは頸部に留置します)から入れることもあります。抗がん剤は全身治療とも呼ばれ、薬が血液の中に入り、血流に乗って身体の全身にめぐり、全身の白血病細胞を殺すことができます。血液に入った抗がん剤も脳や脊髄には行き渡りにくいため、場合によっては脳脊髄液に抗がん剤を入れることもあります。一般的には腰椎穿刺といって、腰の中心部より細い針を入れ抗がん剤を髄液の中に入れます(髄腔内注入:髄注と呼ばれています)。急性骨髄性白血病に対する化学療法は、目的によって寛解導入療法と寛解後療法とに分けられます。(ただし、全身状態が不良の場合、高齢の場合、あるいは白血病細胞が治療抵抗性の場合は完全寛解をねらうよりも軽い治療を行いながら、白血病細胞と共存していくことをねらう方法も考えられます。)

(1)寛解導入療法

完全寛解を目的とした治療で、通常1週間〜10日前後の連日の抗がん剤療法からなります。この治療の 結果が予後を決定する可能性が高いため、強力な治療により副作用もかなりの頻度で認められます。

例外として急性前骨髄性白血病というタイプの白血病では、活性型ビタミンAであるレチノイン酸という内服薬が効果があります。レチノイン酸は白血病細胞を殺すのではなく、正常白血球に分化させる働きがあります。このような治療法を分化誘導療法と呼びます。

いずれにせよ早ければ、治療をはじめて約3週間後には完全寛解になります。1回の治療で完全寛解にならない場合には2回以上繰り返されます。完全寛解になると白血病による症状は完全になくなります。


(2)寛解後療法

完全寛解になると骨髄や血液の中に白血病細胞はほとんど認められなくなりますが、目には見えなくても身体の中には1億個以上の白血病細胞があるとされています。残存白血病細胞の根絶を目的とした抗がん剤による治療法を寛解後療法といい、地固め療法、維持療法、強化療法などと呼ばれる治療法もこれに入ります。治療法、スケジュールはいろいろあり、投与期間も1〜5年と幅があります。

2)放射線療法

放射線には白血病細胞を死滅させる効果があります。すでに白血病が、脳や、脊髄などの中枢神経に浸潤している場合は(中枢性白血病)、先に述べた髄注に加え、脳や脊髄に対して放射線療法も行うことがあります。放射線はX線や他の高エネルギーの放射線を使い、一般的に1日1回、週5回照射し、約2〜3週間治療します。

3)骨髄移植療法(造血幹細胞移植療法)

造血幹細胞とは、前述したようにいろいろな血液細胞(白血球・赤血球・血小板)に分化(未熟な細胞が成熟した細胞になること)する大もとの細胞です。造血幹細胞は通常は骨髄の中にあるのですが、抗がん剤治療後の回復期やG-CSFと呼ばれる白血球を増やす薬を注射した後には、末梢血中にも流れ出てくることが知られています。近年、臍帯血(へその緒)にも造血幹細胞が含まれていることがわかりました。造血幹細胞移植とは、これらの細胞を利用した治療法で、大きく分けて骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植に分類されます。治療の概念としては、「通常の量の化学療法ではうまくいかない。しかし大量の化学療法を行うと副作用で正常な造血幹細胞も根絶してしまうため、正常な造血が回復しなくなる。そこに造血幹細胞を注入することによって新しい造血を構築する」という方法です。急性骨髄性白血病で行われる造血幹細胞移植は、ここに述べた健康な方からの移植(同種移植)が一般的ですが、自分自身からとっておいた造血幹細胞を移植する自家移植療法も行われています。これらの治療は非常に専門的な技術を要しますので、骨髄移植を専門に行っている病院を紹介してもらうことになります。

まず、大量の化学療法、または放射線療法との組み合わせ(前処置)によって、体内にあるすべての白血病細胞と残存する正常の血液細胞を壊します。次に、白血球の型(HLA)が全部、またはほぼ一致した造血幹細胞提供者(ドナー)から正常な造血幹細胞を採取します。ドナーは兄弟、親子、非血縁者などいろいろな場合があります。採取した正常の造血幹細胞を、静脈から輸血のように体内に入れ、破壊された骨髄と入れ換えます。このように他人の骨髄と入れ換える移植を同種骨髄移植と呼びます。現在、同種骨髄移植は全身状態が良好で臓器機能が正常であれば、50〜55歳までは施行可能と考えられています。同種造血幹細胞移植が必要と思われても白血球の型(HLA)が一致する同胞が見つからない場合は、担当医が公的骨髄バンクを紹介することになります。公的骨髄バンクに登録した場合、全国のドナーとの白血球の型の照合が行われ、一致するドナーが見つかった場合でも、実際移植するまでには少なくても数ヶ月以上要します。ドナーは通常白血球の型(HLA)の一致した同胞(兄弟・姉妹)や血縁の方が選ばれます。ただし白血球の型の一致する確率は、同胞間でも約25%と低いため、最近公的骨髄バンクに登録している非血縁者からの骨髄移植が増えてきています。


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