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僕が思う名古屋

(10・30)


名古屋は日本の大都市なのだが、どうも大都市というイメージがあまりない。だから、 さほど国際的という印象がない。偉大なる田舎といわれてるが、それもかなり適切な 表現だと思う。名古屋とはどんなところなのか、思うままに書いてみた。

名古屋は統計的に見たら、結構国際感覚溢れる大都市と思われてもいいかもしれない。 名古屋圏の人口は約500万人。名古屋市の他に七夕で有名な尾張一宮、自動車の町 豊田市、焼き物の町瀬戸市なども含まれる。首都圏の2600万人、関西圏の160 0万人と比べると少ないように思われるが、日本のこれらの大都市は世界に類を見な い超過密都市。世界的に見ると500万人を有する名古屋は大層立派な大都市といえ る。アジアの国々はえてして首都に一極集中型の都市形態で、地方都市との差が激し い。例えばタイのバンコクやマレーシアのクアラルンプールなどは有名だが、では第 二の都市はといったら全く無名だ。地理学的にはこのような都市をプライマリーシテ ィーと呼ばれている。人口の比較的少ない東ヨーロッパなどによく見られる現象だが、 世界第五の人口を抱えるインドネシアでさえジャカルタ以外に国際的と呼べる都市は ない。欧州などではどうかというと、イギリスの第三都市は中部のバーミンガムで、 他の国でいうと、フランスはマルセイユ、イタリアはナポリ、ドイツはハンブルグ、 オランダはユトレヒト、スペインはバレンシアといったところ。どの都市も知名度は 高いが、マルセイユでせいぜい人口は100万人程。同じ先進国であるヨーロッパの 都市で名古屋程の人口を抱える都市となると首都級以外は考えられないと言える。名 古屋は日本の地方都市だが、世界の枠から考えれば国際都市なのかもしれない。

人口は約500万人と述べたが、名古屋圏がある濃尾平野は日本でもかなり大きな平 野である。狭い大阪平野と比べるとかなり大きいことがわかる。そのため人口密度は 比較的低いと考えられる。僕の出身地は名古屋からさらに西へ下った木曽川のほとり なのだが、名古屋駅から10キロ離れただけで辺り一面は田んぼばかり。山がなく、 広々としているので余計にのどかに感じられる。新幹線で京都方面へ下っても、名古 屋駅から5分ほどでそのようなのどかな土地が広がるのが伺える。商業の町大阪と比 べるとやはり農民の精神が強いのではないかと思う。土地が広く、人の流動があまり ないから住居費なども安い。家も比較的広い。道も広いが、これは別のところで話す ことにしたい。

次に交通の面で見てみることにする。名古屋空港は成田や関西と違って「国際空港」 と呼ばれない。名前だけ見れば地方空港である。しかし実態は中部国際空港が予定 されてるほどキャパシティーは満杯で、ヨーロッパやアメリカからの直行便も発着 する立派な国際空港。日本の玄関は成田と関空だけではないということになる。そ の上、名古屋空港は規模こそ小さいが、名古屋駅や中心部から20分程で行き来で きる街中に位置する便利さも備えている。名古屋は地理的条件も良い。東京へは新 幹線で2時間弱、大阪へは1時間で行ける。太平洋、日本海ともにアクセスしやす く、日本アルプスへも近い。伊勢志摩や飛騨なども圏内だ。都会で有りながら、自 然に触れ合う機会を多く持つ名古屋は魅力的とも言える。しかしそれでも、国際空 港とは言え、成田や関空が満員状態だから緩和で名古屋に乗り入れていると思って いい。成田が東日本、関空が西日本をカバーしてるが、名古屋空港の利用者はせい ぜい東海圏の人だけで、あったら便利程度の需要だ。鉄道にしても東京−大阪を結 ぶ線上に位置するだけで、名古屋の人しか乗り降りしていない。「のぞみ」も名古 屋の客に遠慮していると思うが、実益を考えると通過したいのが本音ではないだろ うか。余談だが、東京−大阪を線を結ぶとき、静岡から渥美半島を通り、伊勢湾を くぐり、伊賀から大阪で出る計画もあったらしい。これには勿論名古屋が激怒した。 「のぞみ」が開通し、初めての便が名古屋駅を通過したとき、名古屋では屈辱と言 われ大いに話題になったものだ。もっともこの案は京都も通らないから消えたとい われる。そう考えると、名古屋は東海道の中心にあるとは言っても、起点になる要 素はないと言える。

名古屋の特色は何と言っても工業だと思う。世界に名だたるトヨタの本拠地は勿論 名古屋。ホンダの本拠地も名古屋圏の浜松と鈴鹿だ。名古屋港は世界有数の積み降 ろし数を誇り、特に自動車貿易がメイン。波止場などと優雅なものはなく、無機質 な工業港である。港湾は鉄鋼などの重工業が盛んで、沿岸の四日市港の石油コンビ ナートと合わせ、中京工業地帯を担っている。この中京という言葉はよく耳にする が、京の都と東京の間にあるからというなんともお寒い感じがとれる。ちなみに中 京は「ちゅうきょう」と呼び、京都の「なかぎょう」に比べるとやはり田舎くさい。 世界で有名な自動車の街は米国のデトロイトやドイツのシュトゥットガルトなどだ が、自動車王国の日本の中心名古屋が知られていないのはある意味残念とも思う。 港にしても日本で有名な貿易港としてイメージされるのは横浜港と神戸港。勿論こ の二港は世界有数の貿易港だが、名古屋が港町と呼ばれないのは工業のイメージば かりが先行して情緒がないからだと思ってしまう。最近「名港トリトン」という名 古屋港を渡る立派な橋が作られたが、レインボーブリッジ、横浜ベイブリッジ、な みはや大橋と比べると全く知名度がない。しかし名古屋の人は大層自慢気に思うだ ろう。そういうメンタリティーが随所に見られる。

商業面では名古屋人は財布の紐が固いと言われ、商売が難しい地区だと言われてい る。それは一般に名古屋人はケチというイメージに定着されてしまっている。これ は、しかし、名古屋人に言わせてみると、何でも飛び付かず冷静に良いものを見分 ける目利きな性格だと自負している。目利きがどうかは誰もわからないが、流行に 乗らない、多分乗れない性格なのだろう。それでいて東京の影響も強いから矛盾し ている。他の都市から来た人が思うのは名古屋のファッションは独特ということだ。 良し悪しに関わらず、異様に映るというイメージが強い。特におばさん達の格好に は驚かされるといわれるが、これもあっていると思う。何年も前に少しだけ流行し た一見豪華主義という言葉、これが名古屋には流行としてではなく文化として残っ ていると言える。まあしかし、何にでも飛びつかないのはたまには良いことになる。 顕著な例がバブルで、名古屋は乗り遅れた分、被害が少なかった。これは決して名 古屋の人が先を読む力があったわけではなくて、単に乗り切れなかっただけである が意外と名古屋人は誇りに思っているかもしれない。名古屋の商業の中心地は栄町。 3Mと呼ばれるデパート、つまり松坂屋、三越、丸栄が連なる大津通りがいわゆる 目抜き通り。名古屋は松坂屋の発祥地として有名だが、名古屋人は品物の良し悪し に関わらず、松坂屋にこだわるところがある。おらが村のデパートへのいれこみは 凄く、松坂屋は名古屋でかなり儲けている。このほど、名古屋駅の開発で、高島屋 が参入してきたときに一番危機感を示したのは松坂屋である。名古屋はコネが強い 社会で、後発は参入しにくい土壌がある。それがよそ者となればいよいよだ。これ が他の地域の人が「田舎」と定義する大きな理由だろう。しかしある意味で、この 名古屋的な考えかたを世界と日本に置くと、当てはまるところが多い。日本が外資 系をどんどん受け入れざる状況にあるなか、本場名古屋も変わっていくと思う。

歴史はまあまあ深い。神話の時代まで遡ると、伊吹山で力尽きたヤマトタケルノミ コトは市内南部に存る、熱田神宮に奉られている。この熱田神宮、地元では熱田さ んと呼ばれ、昔は宮の街として東海道の要所にもなっていた。日本三大神社の一つで、源頼 朝にも縁が深いと言われているが、まあ知名度はそれほどではないだろう。戦国時代、名古 屋は織田信長で有名な尾張藩の中心だった。郊外には当時の史跡が多い。今川家を 奇跡的に敗った桶狭間、武田の騎馬隊を画期的な鉄砲で敗った長篠、最大の敵であ った斉藤道三の居城、岐阜城など。豊臣秀吉と徳川家康が戦った小牧長久手もある。 尾張や美濃という土地は地政学的に見ると西と東の勢力がぶつかる土地であったの だろう。天下分け目の決戦として有名な関ヶ原は、実は青野ヶ原として古代の天下 分け目の決戦であった壬申の乱の舞台にもなっている。今でも標準語と関西弁の境 は関ヶ原といわれている。江戸期には京と江戸を結ぶ東海道や中山道の宿場町とし て栄え、有松などで染料が発達した。御三家尾張藩の城下町として栄えた町である。 戦時中、工業都市として誇っていた名古屋の街は空襲などによる歴史的な大被害を 被った。この事実は東京大空襲や広島・長崎の原爆などの影に隠れて割と知られて いない。街の大半を失った名古屋は戦後画期的な復興を遂げる。主な道路は碁盤の 目に統一され、道幅も余裕を持った大型に整えられた。その為、現在でも名古屋の 道は運転しやすく、迷うことが少ない。この事はよく戦後の道路区分に失敗した東 京と比較される。もう一つ画期的だったのは街の緑化政策である。公園が多数作ら れ市民の憩いの場となった。街の中心にも常に公園は見つけられ、人込みに疲れた 中ほっとされられる。公園の土地を確保するため墓地を一箇所に集めたのも特徴だ。 郊外の平和公園がそれだが、この巨大な敷地に墓地が移された。緑化は今でも名古 屋の快適さの象徴であり、地元に誇りを持てる要素にもなっている。

名古屋は運転が荒い。名古屋の道は運転しやすいと既に述べた。4車線も道も多く、 碁盤の目になってるのは確かに運転しやすい。そのことが逆に名古屋の運転を粗く している。走りやすいということはスピードを出すという単純なことだ。名古屋走 りという言葉があるが、これは信号が黄色になったら急げ、赤になっても行けると きは行けというとんでもないものである。黄色で止まろうものなら追突されるかも しれない。追突されないにしてもクラクションは鳴らされるだろう。ナンバーが名 古屋でなかったら余計にそうだ。「全く田舎者が」と思われてるだろう。しかし、 交通マナーが良いほうがより都会と思うのだが、ここでも逆に田舎者と呼ばれる要 因になってしまっている。僕自身、東京はマナーが比較的良いと思ったものだが、 狭い道路や曲がりくねった道などを見ると納得した。名古屋人が名古屋の道が走り やすいということをもっと認識すれば、そのような文句は減ると思うがそれはあま り望めない。地下鉄は線は少ないが分かりやすい路線になっていて、初めてでも使 いやすい。しかし、やはり路線が少ない。私鉄も名鉄の独壇場で、多くの路線をカ バーしていない。名古屋ではまだまだ車での通勤が多く、そのために違法駐車が多 い。車で帰るため、飲み屋もはやらないらしい。名古屋は夜が早いと言われるが、 そのような理由も大きいだろう。

車といえば、名古屋の車は白色か黒色のトヨタ車しか走っていないといわれる。ト ヨタ車が多いのはわかるにしても、なぜ白と黒が目立つのかはわからない。トヨタ の生産の特徴もあるだろうが、目立つ色を好まないという文化があるかもしれない。 派手好きな名古屋で、なぜ車だけと思ってしまうがこれはよくわからない。

名古屋が持つ特徴の一つが食である。味噌カツ、きしめん、ういろう、味噌煮込み うどん、ひまつぶし、天むすなど名物が多い。これが美味しいかどうかとなると疑 問。味噌カツは甘い味噌をとんかつにかけただけ。天むすもおにぎりに天ぷらを入 れただけ。「だけ」というものが多い。ういろうは全国にあるが、なぜか名古屋で は大人気だ。ういろうに関しては名古屋名物ではないだろう。たまたま名古屋で人 気というものであって、それが万人にうけるなら最初から名古屋名物と言われては いない。味噌煮込みうどんも名古屋では人気だが、それが国境を越えることはない だろうと思う。うどんというよりうどんの原型である「ほうとう」に近い。堅く太 い麺をこれまた甘い味噌で煮こんでいる。これに「かしわ」をいれる。非常に原始 的なうどんである。それから、名古屋人は一般的に味噌を好むと言われ、味噌を使 った料理が多い。この味噌は八丁味噌と言い、発祥は名古屋ではなく三河(愛知県 東部)だ。家康の部隊と名高い三河軍団はこの味噌を愛用していたために栄養補給 が取れ、地力があったと言われている。家康ももちろん味噌を好み、それが全国に 広がったといわれている。しかしやはり、珍しい料理は多いが、客を呼ぶような美 味しい料理はない。同じ名物でも、信州の蕎麦、讃岐のうどんは全国に広がった中 の本場である。名古屋の食べ物で本場と呼べるものはなく、名古屋にしかない食べ 物である。おいしいものかは別として、名古屋の味を試すにはいいかもしれない。

名古屋の文化は独立している。名古屋の人は中日新聞を読み、中日ドラゴンズを応 援して、名鉄電車に乗り、トヨタの車に乗り、喫茶店でご飯を食べ、買い物は松坂 屋。考え方は保守的で、できるだけ貯蓄しようとする。関西にも関東にも属さない オリジナルな文化圏として、名古屋の中では名古屋人は誇りをもっている。反面、 名古屋から出て行ったらできるだけ名古屋人ということを隠したがるのも特徴だ。 東京に出て行って堂々と「私は中日ファンです」といえる人は少ない。大阪人がど こでも大阪弁で喋るのに比べて、名古屋人は名古屋以外では名古屋弁はあまり使わ ない。そう考えると、名古屋の人は名古屋が住みやすいと考えながらも自信がない のかもしれない。などと田舎の要素を沢山持っているのだが、経済的には名古屋だ けでやっていけるので困らない。名古屋からの流動は他都市に比べるととても少な い。大学にしても東京の一流大学より名古屋大学のほうが人気がある。コネが強い ので、名古屋で十分よい就職ができる。名古屋から出て行く機会が非常に少ない。 これがまた田舎を象徴しているのだが、問題点はないので別に気にしてはいない。 東京のサラリーマンが転勤したくない都市の一位が名古屋らしいが、それもこの狭 いコミュニティーが息苦しいのであろう。逆に馴染んでしまえば暮らしやすいとも いえるが、それは東京の人から見ると田舎に染まるイメージがあって嫌なのだろう。 名古屋の「田舎」イメージは名古屋の特徴も大いにあるが、他都市から見た偏見も 多少は含まれているかもしれない。

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K.Wakabayashi
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