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ニュージャージーに住む

(11/23)

よく考えてみると僕は都会に住んだことがない。実家は名古屋郊外と云えど、周りには田圃が 広がるのどかな地域である。昨今の世にあって徒歩圏にコンビニがない。高校はアメリカの田 舎という一言で語れる何もない街で暮らし、高校を卒業してからは各地を転々としている。浪 人時代に厄介になった母方の実家は名古屋市内にあるが、下町という風情が残っていた。サン フランシスコの大学にもいたが都心からは離れたキャンパスの中の寮にいた。大学はこれまた セントルイスという中西部の中都市を選んだ。旅行にはちょくちょく出掛けているので自分で も勘違いしていたが、ずっと田舎に住んでいる。そんな僕がいよいよ都会っぽい場所に住むこ ととなった。

厳密に言うとニュージャージーも田舎だ。マンハッタンに住むならともかく、やはり都心には 住まないということが続いている。それでもセントルイスで悠々と暮らしていた頃と比べると どうも雰囲気が違う。高速道路は混んでいるし、運転の荒さが目立つ。それにセントルイスで は安い家賃で広々としたアパートに住めたが、こちらでは同じ環境の部屋は倍の家賃がかかる。 都会のほうが生活が便利と錯覚していたが、住み始めるとそうでもないことに気付く。地理的 な見方から郊外に住む便利さと不便さを考えてみたい。

小さな町だと、いかに小さいとは言え、中心地があり、物は一箇所に固まっていて、買い物も 便利である。郊外では町が広がっているので、店も固まっていない。小さな町だと食料品は大 きなスーパーで全て足りる。逆に大きな町ほど細かく分かれていて、大型スーパーが少ない。 考えてみると日本でも同じである。町に近づくほど便利な大型スーパーが少ない。大きな町で は探せばいろいろな種類の品物が手に入るのでその意味では便利だが、普段の生活に必要なも のだけで見ると意外に不便と言える。例えば、小さな町であるセントルイスではシノックスと いう大型スーパーのチェーンが至るところにあり、24時間開いていて品物も豊富であった。 郊外であるニュージャージーだとそこら中に大型スーパーがあることはない。日本食は自由に 手に入るが、普段必要な野菜などは町のスーパーに行くことになり、二度手間になる。同じチ ェーンでも、セントルイスには多くあり、ガラガラなところがニュージャージーでは数が少な く、人ごみになっている。これはニュージャージーが郊外ゆえに人が一極に集まる中心地がな く、大型の店がどうしても転々としているためにそこに集中するということだろう。郊外と言 え集中すると人の数は小さな町の規模ではない。

ニュージャージーはニューヨークに隣接しているが、交通の便が悪い。マンハッタンとニュー ジャージーを結ぶ橋やトンネルは合計3つしかない。必然的にそれらに集中するわけで、気軽 に川越えは出来ない。これは各地区のコミュニティーを守り流動を防ぐという理想の基になっ ているのだが、実際流動が多い現実とはかけ離れていると感じる。郊外はその機能から、中心 地との交通は便利にしないといけないのだが、州が違うという現実があり、不便なことになっ ている。ニュージャージーは人口が多いのだが、ニューヨークの郊外なので中心的な町がない。 中心は常にニューヨークになっていて、ニュージャージー全てが郊外になっている。中心的な 町がないから店などもバラバラに点在している。それにニューヨークがあるから、ニュージャ ージーでは発達しない。ニュージャージーは独立している雰囲気があるのに、機能は全く郊外 であり、中心地が抜けているという本音と建前の間で苦しい立場にある。例えばニュージャー ジーにはおいしい日本食レストランがないといわれる。日本人の人口は多いのだが、おいしな 店はマンハッタンに出向けばいいとなり、地元にはないのである。そこで本来はニューヨーク と同じコミュニティーにあるならそれでいいのだが、ニュージャージーとして確立されたとこ ろがあるので、ニュージャージーにおいしい店はないとなってしまうのである。

僕は郊外が好きだ。都心に出掛けられる位置にあり、郊外で物が足りるならそれでいい。郊外 に住み、郊外に勤めて、週末には都心に出られる。そんな生活が理想と思う。日本に戻ること を考えると、理想の場所は東京より関西のほうがいいと感じる。東京は一極集中すぎる気配が ある。関西は大阪、京都、神戸とそれぞれに中心地があり文化も多彩という感じを受けるから だ。狙い目は僕は奈良と考える。近鉄線で難波まで出られ、同じく京都にも行ける。奈良その ものも文化物が豊富である。地理的にはいい条件といえる。今はアメリカにいるから、ニュー ジャージーはそう言った意味で理想である。もう少しニューヨークとの精神的距離が縮まれば 越したことはない。但し、セントルイスでと田舎といえど中心地である便利さに慣れてしまっ たから、生活パターンを変えるのに一苦労する。

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K.Wakabayashi
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