コラム１１（大リーグ）

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大リーグについて

(12/14)

僕は自分ではスポーツ観戦は普通の人よりも興味があると自負している。特別に野球だけが好きというわけではないが、春になったらプロ野球を見るし、シーズン後半には出身地である名古屋の中日ドラゴンズの優勝争いも気になってしまう。シーズン後には選手の移籍にも注目してしまう。最近はアメリカにいるので大リーグの試合のほうが身近である。日本のプロ野球とアメリカの大リーグは同じベースボールだが、やはりなにか違う。いつも巨人を中心に展開するプロ野球に比べ、大リーグは地域密着型である、だけに留まらない。やはりそこには文化が出ているのである。外国製品を取り入れて、オリジナルより良く改良してしまうのは日本のお家芸だ。やはりプロ野球と大リーグは同じスポーツといっても雰囲気は将棋とチェスのようなものだ。それを取り巻く環境もやはり違う。近年大リーグは選手の年俸が爆発的に上がっている。これが気にいらない。このことも後で話すとする。

まず、僕はアメリカの高校生時代に大リーグを知ることとなった。中西部のセントルイスにいた僕にとって、やはり話題の中心はカージナルスだった。僕が大リーグに興味を持った頃はちょうど野茂がドジャーズに入り、日本で大リーグ人気が出てきた頃。しかし僕にとってはロサンゼルスのチームにいる野茂はあまり身近な存在ではなかった。セントルイスの人間は弱かろうが、スターがいないだろうがやはりカージナルスを応援する。日本の高校野球と似ているだろう。当時のカージナルスにはまだマグワイアはいないし、スターもこれと言っていなかった。成績もぼちぼちである。そういう和やかな雰囲気から段々と変わってきた。まず選手会がストを行い、結局半年シーズンがなくなった。そしてどんどん金にものを言わせて選手が移動する。２年も見ないとチームがまるで別のチームになってしまう。生え抜きの選手を育てるという日本の球団はよっぽどマシだ。もはやビジネスと化してる。これもアメリカの資本主義が原因だろう。本来スポーツはサービスだと思う。プレーをしてそれを見たい人がお金を払っている。ストはそれに反しているのではないか。巨人の渡辺オーナーではないが、選手はブルジョワ化してしまっているのではないか。このことは別のコラムで書きたいと思う。とにかく、そのうちにどんどん日本の選手が大リーグにやってきた。僕はコロコロ選手が変わるチームを応援するよりも、選手を応援したくなった。僕も今ではすっかり日本の選手に注目している。どこが勝とうがあまり関心がなくなった。日本の選手が活躍してくれればそれでよくなったのである。今ではほとんど大リーグは見ない。専らアメフトに興味が行っている。そのアメフトもそろそろ大リーグ化し出している。一方で、大ファンだった、アイスホッケーのセントルイスブルースもスターをどんどん出して、選手がまったく知らない顔ぶれになったので注目しなくなった。日本人の流出に危機感を持つプロ野球側の反応はどこ吹く風、僕は次に誰が大リーグでプレーするか常に期待している。

さて今回はイチローが大注目の中シアトルに来て、新庄が意外をさらってメッツに来た。そして川崎の日本残留にも注目したい。この３選手から僕はいろいろ考えてしまった。プロ野球界トップを代表してきたイチロー。中堅として活躍が疑問視され、どこまでやれるかだけが注目されている新庄。そして、高額の給料を断って日本に残った川崎。

日本のトップ打者であるイチローが大リーグに来るのは僕にとってはあまり期待していない。打てないだろうと思うのではなく、打てなかったらまずいと思ってしまうのだ。Ｊリーグから欧州に移籍するサッカー選手の場合は明らかに高いレベルに挑戦すると言える。そんな中、中田がＡＳローマというトップチームで頑張っていることに注目している。しかし遡って三浦カズの場合は明らかに失敗である。これも後進国の日本から挑戦していることで、納得はしているが、城や西沢の場合も同じ気持ちだ。話がサッカーに逸れたが、プロ野球の場合はサッカーとは違う。最近出来たＪリーグとは比べものにならないほど歴史がある。既に長嶋という国民的ヒーローを生み、沢村や景浦という伝説の選手も語り継がれている。王貞治は今も大リーガーに尊敬される本塁打王となっている。イチローはその日本プロ野球の代表である。と、いうことはイチローにこけてもらうと困る。三浦がこけたのとは背負っているものが違うのである。サッカー界のヒーローである釜本や奥寺は世界的ではない。サッカーはこれからのスポーツである。日本の野球は地盤がある。つまりイチローは伝統あるプロ野球のトップとして大リーグトップと張り合うくらいでなければいけないと思う。それが入団時期がアレックスロドリゲスの移籍と重なってしまった。つまり話題を全てさらわれてしまったわけだ。ここで大リーグのトップと言えるロドリゲスにイチローは負けた。通用するかというレベルにあって欲しくない。野球の本場がアメリカだから仕方ないと思われるか？サッカーにとってははじめたばかりのようなものだからそう思ってもいいが、プロ野球は戦前からあったのである。戦時中は敵性語禁止でストライクを「よし」と言い換えてもやっていた。根付いていなければ、敵国のスポーツであるベースボールは消えていただろう。続けたいと思うほど根付いていたから言葉を変えてもやっていた。歴史はある。つまり本場などは関係ないほど時を過ごしてきた。大衆車を初めて作った「本場」フォードを今、トヨタより絶対上と言えるか？柔道発祥の日本が重量級でフランスなどに負けてる今である。プロ野球の歴史と国内の人気を考えると、大リーグにひけを取ることはない。さて、柔道のことを出したついでに言いたいのは、やはり国際大会で日本をアピールしてもらいたいことだ。野球にはサッカーでいうワールドカップや柔道でいうオリンピックがない。オリンピックの野球競技は本気の戦いではない。つまりはアメリカに行ってやらなければいけない。その点サッカーは国際大会があるので、選手はＪリーグにいてもよいと思う。イチローは日本代表として活躍するのは国際大会にしてもらいたい。アメリカに飛びこんで挑戦するのは、わがままだが、見たくない。

どんどん選手が大リーグに来るのを楽しみにしていると言ったことと矛盾していると思われるが、来てほしいのは若手や中堅などの選手である。その意味で新庄は期待している。そういう選手が来て活躍してくれたら、日本の「全体のレベル」は高いと思うからである。相撲でいうと前頭かせいぜい関脇で、横綱にはやはりどっしり座って威厳を保ってほしい。つまり露出しない。新庄らの「前頭」が活躍してくれて、そのトップにいるイチローはすごいと思われてほしいのである。トップが来たらプロ野球の威厳が薄らぐ気がする。話は変わるが、日米野球にはもっと力をそそいでほしい。国際大会がない現在、それに期待するしかない。今回のイチロー移籍で日本人のアメリカ志向が見えたようでちょっと嫌だった。アメリカが日本より上なんて思えない。それはある一部の話で、歴史や文化といったところなどアメリカなどに馬鹿にされたくないと思う僕にとっては日本人のアメリカ志向は嫌なのである。ちなみにイチローが活躍できなかったら米人はどう思うか。日本のレベルは低いと「再認識」するだろう。ところが、もしロドリゲスが例えば中日に来て活躍できなかったら米人は、日本の野球などやってられない、ベースボールではない、などと思うだろう。虫のいい考えかただ。しかしアメリカは政治でも何でもえてしてこういう考え方をしている。せめて国際大会が開かれ日本がアメリカを認めさせる活躍をするまでイチローには来てほしくなかった。そう思ってしまう。

新庄の場合はこれでいいと思う。元々メッツからも何も期待されてない。メディアも何も注目していない。これでいい。試合で目立てばよい。新庄はプロ野球から来たが、その代表ではないからだ。新庄には活躍してほしいが、活躍はしなくてもある程度はやるだろう。３０近いチームがある大リーグには１２チームしかない日本より遥かに大勢の選手がいる。上はすごいが、下も大勢いる。一応、阪神の目玉だった新庄が平均的な選手より劣るとは思えない。守備が上手い、肩が強い、当たれば飛ぶ。その程度でいいから日本のプロもそこそこやるなと思わせてくれればいいと思う。

高額のボストン移籍を蹴って日本残留を決めた川崎に注目したい。川崎は家族のために単身赴任は出来ないと言っていた。これが実に日本人らしくてよい。僕から見れば、金と個人主義というアメリカに対し、絶対なものは金ではなく環境、つまり家族を大切にしたいと日本的な考えが勝ったということ。日本社会、そして日本人はこうあるべきだと思っている。失礼かもしれないが、アメリカ人は金が第一になってしまっている。一神教であるキリスト教の国、アメリカは絶対的なものを崇拝するのであり、それが社会主義と対立する過程で資本主義を意識しすぎるあまり、今では金がそれに代わったと思う。アメリカ人が絶対的に信じるもの、それが金だ。日本は八百万の神と言うように唯一絶対なものがない。例えば日蓮宗徒にとっては日蓮の教えが絶対と言えるかもしれないが、日本人である以上神道を意識していないはずがない。日本はそういう国と思う。それはいいこと、とも思う。絶対資本主義は行き詰まっていると思うからだ。日本人は金で全てが解決できない、というのは裁判で決まっても全てが治まるといえないことからも明らかだ。金をあげるから大丈夫だろうという社会を断った川崎、そこまでオーバーではないと思うが、僕にはそういう気持ちにとれた。最近はそれでも金中心になってきた日本だが、こういうのを見るとホッとする。大リーグに行くという流行りを、家族という和をもって断った。川崎には是非中日に来てもらいたいものだ。

最近はどうも偏見があるかもしれない。川崎はただ単に無理だなと思って断ったかもしれないし、イチローもただ挑戦したいだけと思っているかもしれない。それも日本とアメリカの社会に置き換えて見るのはやはり考えすぎだろう。しかし、日本はこうあってほしいと思うとやはりいろいろ考えてしまう。ここはただ一人の日本人として思ったことを言わせてもらった。

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K.Wakabayashi
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