Site hosted by Angelfire.com: Build your free website today!

環境について思う

(4/15/01)


僕は今の大学で中国語のクラスを取っている関係で中国に興味を持つ数人の米国人と知り 合うようになりました。普段からの付き合いはないのですが、クラスの休憩中はよく話し をします。僕が通う大学では最近アジア研究を始めたらしく、文学部の中国人教授がまず 中国へのフィールドトリップに米国人生徒を何人か連れて行きたいと言い、僕の友人であ る彼等はこの春休みに北京・西安・上海を周る修学旅行に行きました。僕はヒマも金も無 かったので行きませんでしたが、普通の米国人が中国へ出かけ、何を感じてくるのかを聞 くのが楽しみでした。帰ってきた彼等からは「面白かった」という浅い返答しか返ってき ませんでした。10日そこそこで3都市を移動して見て周ったわけですから、日本のツア ー旅行と変わりません。考えてみたら興味ある体験はそうそう出来るものではありません。 しかし、彼等が口を揃えて言ったことが面白いと思いました。「空気が悪い」と。

北京に降りたった彼等は中国大陸の埃っぽさがどうにもガマン出来なかったと言いました。 更に街中の空気の汚さ、工場から出される煙に体調を壊し、病院に行ったという友人もい ます。上海ではそんなことはなかった、と言いましたが、それは彼等が慣れたのかもしれ ません。

アメリカは空気が良い。僕もまず日本に降りたって思うことは空気が悪いということです が、それもすぐに慣れてしまいます。アメリカしか知らない彼等はこの空気の良さが普通 なので、中国の空気にはまいったのでしょう。おそらく日本に来ても同じだったと思いま す。アメリカの強さはこの広大な土地にあると言ってもいいでしょう。日本と都市とアメ リカの都市との違いは「郊外」です。日本では例えば東京や大阪を離れてもずっと街が続 きます。新幹線に乗っていても住宅が見られない風景はあまりありません。アメリカは街 を出ると、がらっと奮囲気が変わります。街と田舎の境がはっきりわかります。アメリカ 有数の大都会であるニューヨークですら、あるときガラっと田舎になる境まではそう遠く ありません。

このような背景から環境をどれだけ意識するでしょうか疑問です。アメリカは頭の中だけ 理想で動くことがよくありますが、日本人が環境に対する危機感より遥かに薄いでしょう。 日本は水はタダといわれるほど天然水には恵まれています。恵まれているとそれが普通な ので、そうではない外国では困ります。アメリカ人にとっては空気を含む環境はタダなの でしょう。北京に行ってすぐに体調不良になるというのは、日本人が外国で水にあたるよ うなものと思います。もちろんそれは誰の責任でもないわけですが、普通ということはお いおい世界レベルでは困ることになります。アメリカが京都宣言を脱退したのもそういう 背景があるのではないかと思います。環境問題も理想として見ているアメリカと現実的に 危機感を持っているヨーロッパと日本の違いではないでしょうか。

ヨーロッパはアメリカに抜かれたと思いがちですが、僕はやはりヨーロッパは今でも世界 の先端にいると思います。ヨーロッパは世界から見れば狭いヨーロッパ大陸の中で昔から 各国が競って、そして発展してきました。宗教戦争から経済戦争へと経験し、それを教訓 として発展してきたのだと思います。日本も対外的には経験が浅く戦争には敗れましたが、 国内の歴史的な経験はヨーロッパにひけを取らないほど歴史を持っている。ただ日本は歴 史に学ぶということを疎かにしがちなのでヨーロッパに一歩遅れてる感がありますが、科 学革命から始まる構造の中でヨーロッパは多彩な苦い経験も体験してきました。アメリカ は要はヨーロッパの経験をおいしい形で引きついだと思います。アメリカは広大な土地を 持ち、資源に恵まれています。戦争で敵から本土を怯やかされたこともなく、何をしても それを保証する資源という強力な武器をもっています。ヨーロッパは戦争で苦い経験をし、 産業の発達による環境破壊という現実を目のあたりにしてきました。日本も高度成長の裏 で公害などの苦い経験をしています。アメリカにはそれほど苦い経験があるのでしょうか。 産業で一番得をしているのはアメリカです。そしてそれによる苦い経験もあまりないよう ならヨーロッパや日本が口を酸っぱく言っても現実味がありません。このままでは米国と 欧州・日本の溝が深まっていくのではないかと思います。

仮にブッシュ政権のお偉いさんが5年ほど東京都に住み、都民と同じ生活を経験したとし ます。ゴミは決まった袋に入れ、区分けし、近所のことも考え、騒音にも気をくばり、環 境にやさしい生活を送らなければならないなら、考え方も変わってくるでしょう。アメリ カにいる限り、そして他を現実的に見ない限り、環境の問題でズレが起きてくるのは当然 です。仮にブッシュが東京都で生活中に、「アメリカではこんなことは必要ない、不愉快 だ」とキレたとします。アメリカ人にありがちですからこうなることは大いに可能性があ りますが、その言葉こそが今のアメリカを象徴しているでしょう。アメリカではそんなこ とはない、をそのまま世界レベルにあてはめるているのが問題です。世界の多数はアメリ カとは違います。むしろどの問題にしろ、アメリカこそが世界の基準からずれている。

今回中国で経験した米国人の話から思ったことですが、もう一つ、中国は今、産業の成長 時期であり、環境よりも発展を考えていることでしょう。公害をなくすよりも生産のほう が大事というのは日本も経験してきた道で、産業の発展期においてはどこの国も同じ道を 通っています。空気が悪いからやはり中国は遅れている、と言いたい気持ちもわかります が、では先進国としてどう考えていかねばならないのか。アメリカ人はどうも問題を違っ た方向へ持って行きがちと思ってしまいます。

僕自身もアメリカ生活が長く、日本で普通の気の使い方に適応できるか心配です。僕自身 もアメリカのように、他人事と考えてしまうことが多いです。

-------------------------------------------------

Main Page

K.Wakabayashi
kohei-kdd@cybercap.com