Site hosted by Angelfire.com: Build your free website today!

テロ事件に思う1

(09/12/01)

米国でテロ事件が起きた。昨日のことになるが、まだNYエリアには余波があると言えるだろう。 それにしても驚いた。僕は自宅に居て全く気付かなかったほどだが、マンハッタンは自宅から数キ ロしか離れていない。NJ州とは言え、ニューヨーク・ケネディー空港よりもマンハッタンに近い のだから、恐らく昨日は煙も見えただろう。身近に起こっていると思うと冷汗が出た。自宅の前を 走る幹線はNJ州北部のバーゲン郡からマンハッタンへ渡るワシントン橋に繋がる道だが、マンハ ッタンへの交通が斜断されていたので大渋滞になっていた。橋はいつも混みあっているが、数キロ 離れた我が家辺りまで渋滞とはもの凄い。どの道を通っても交通はパンク状態だっただろう。僕は 大学へ行ったが、やはり公共の施設ということでキャンパスには誰も居なかった。ショッピングモ ールも警察によって立ち入り禁止になっていた。それにしても渋滞だらけで自宅まで全く辿り着け なかった。帰ってからもテレビをつけっぱなしにしてニュースを見ていた。見れば見るほど被害の 大きさを実感する。結局テレビに付き合って明け方まで起きてしまった。

ブッシュ大統領の演舌を聞いた。実にアメリカらしい、はっきりした物言いで羨ましいとさえ思っ た。もし日本で同等のテロ事件が起きたらどうなるだろうと思った。小泉は今回のブッシュのよう な発言はできまい。それは小泉が悪いのではなく、日本は国家としてそのような態度には出れない と思うのだ。ブッシュははっきりと報復という言葉を使い、犯人をイビル(悪魔とでも訳そうか) と断言。その前には「顔を見せない卑怯な弱虫」と言いきった。米国人なら普通に使う言葉である 政治家なら尚使う言葉である。日本ではそこまではっきりとは言えないだろう。弱腰になると思う。 ブッシュはすぐにテレビを通して犯人獲捕と軍事的報復を国民に訴えた。議会も私に協力してくれ る。政府一体となって強いアメリカを見せつける、と言った。はっきりと政府が今後何をするか国 民に示したのである。議院も党を越えて大統領に協力すると断言。国民がこれを支持しないはずが ない。恐らく昨日の大統領の支持率は限りなく100%に近かったはずだ。テロリストをはっきり と敵と言い、自分達を正義とはっきり言う。勿論僕もテロリストを正義ということはないと思うが、 そのような善悪はっきり決めて国民をまとめるのが如何にもアメリカらしいと思った。

言うならば、ブッシュ政権発足以来、対外政策は厳しいものになっており、今回の事件もイスラエ ルとアラブの問題に繋がると考えていいと思う。つまりブッシュの政策がイスラム勢力及びそれに 関連するテロリスト達を刺激し今回の事件が起こったと考えられなくもない。しかしブッシュはそ れについては何も触れず、逆手に取って自分の票を上げた。これが政治というものである。汚いと か卑怯ということなど関係なく、惨事もアメリカニズムの正義に変えてしまう。悔しいがアメリカ はやはり政治をよくわかっている。

悔しいかな、これが日本だと恐らく犠牲者の話題中心になってしまい、政治家からは後ろ向きの発 言しか出て来ないであろう。「日本は民主主義と自由の国であり、日本政府はこのような卑劣な敵 共に必ずや軍事的報復を与え、首相も国会も一体となり日本国の正義を守る。テロなどは日本とい う強国を何も変えられない。正義は我々にあり、同盟国と共に必ず敵に裁きを与える」ブッシュが 言ったことを日本に変えてみただけなのだが、日本の首相はこのように国民に言えるだろうか。と てもそうは思えない。何人が犠牲になっただの、安否はどうだの、救助はどうなっているかなど恐 らくそのような言い分に留まるだろう。実際今回、外相にしても内閣官房長官にしてもそのような 発言をしている。小泉も日本人の安否を第一に確認し、米国を支持すると言っただけだ。日本人の 安否を無視することはやはり日本国としても出来ないが、それは外務省の仕事だけでいいのではな いか。小泉首相や福田官房長官はやはり日本国としてはどういう立場に立つかを具体的に発表しな くてはならなかったのではないか。米国を支持するだけではあまりに形式的すぎてはっきりと解ら ない。日本は勿論米国支持に決まっている。それより日本は実際に「どう米国を支持する」のかを 言ってほしい。しかし首相は自衛隊を派遣するとは言えないだろう。9条があるからだ。国連のP KO活動すら国内で世論が分かれる国だ。つまり旧社会党や護憲派など反対派がいるということ。 例えば今回もし米国から同盟を求められ軍隊を派遣しなければ、ということにも反対するというこ とだ。ここまで大規模になったことを見せられたテロに対して、それを防ぐのに反対することにも なる。僕は改憲派がいつも主張しているのはこの点だと思う。つまり平和のための軍備。臭いもの には蓋をするという考え方では日本の国のためにもならないし、世界から孤立してしまう。臭いも のなら、悪臭を防ぐためにより研究しなければならない。軍備がすぐに戦争に結びつくと考えてい る頭の堅い(いや論理的に既におかしい)学者や政治家、それを支持する市民団体などは日本をダ メにしている。ブッシュのようなことを小泉首相は言えないだろうな、と悔しいが思ってしまうの は彼等空論的護憲派の影響がまだ日本では強い為ではなかろうか。

日本人はアメリカみたいに善悪はっきりつける国民性ではないし、何でもすぐに報復という米国の ような荒々しさもない。それはそれでいいことと思う。日本は「ジャスティス」と「イビル」の概 念を持つキリスト教国ではなく、「和」の国である。敵に理解を示してしまう弱点もあるが、敵の 言い分を全く聞かず敵とレッテルを貼るよりは柔軟性がある。我らの神、というキリスト教的な性 格もなく、報復に正当性をあまり持たない日本でもある。しかし「国」というユニバーサルな概念 つまり国民を守り、危機管理をしっかりし、有事に備えて法を充分にまとめておく、ということに 日本が対応できているかと言えば、物足りないのははっきりしているだろう。テロリストは何にお いても必ず報復する米国にすらテロ行為をしたのである。平和憲法では守れないことなどはっきり と解る。人事ではない。今回のテロ事件と政府の対応を見ていて思ったことは、改めて日本を憂い でしまうことだった。

---------------------------------------------

K.Wakabayashi
kohei-kdd@cybercap.com