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どうなるイラクと北朝鮮?

(02/01/03)

政治というものは建前を聴いて如何に本音を察すれるかということである。日本の政治家はお粗末な程に本音が見え隠れするときもあるが、米国の 政治家は世界一狡猾である。生真面目な日本人にとってはあまり道徳的に良しと思われないが、頭の良い西洋人というのは必ず自分の中に二重 基準(ダブルスタンダード)を持っている。本音と建前という考え方よりむしろ公的と私的のうまい使い分けと考えたほうが正しいだろう。場合によって は本音より建前を重んじる精神のある日本人と違う点は、西洋人はあくまでも公的な振るまいは私的欲求のための方法論として考えがちなところで ある。日本人は大義の為に殉じることがあるが、西洋人は大義のために私を犠牲にはしないということだ。なので、大義のための殉死に対する捉え 方も違う。西洋人は大義のために死んだ者を英雄と思う。それは珍しいからである。アーリントン墓地に向けられる目はそれである。宗教の為に殉じ ることもそれは神の祝福という私の願望である。あくまで個人主義だと考えたほうが理解しやすい。

さてそこで現在の米国を見てみる。イラク問題が活発化している。ブッシュが就任して以来強気の姿勢を貫いている米国だが、実際のところはどう 見ればよいのだろう。ブッシュの基本立ち位置は一貫して強気という点で、場合に応じて日和ることも多々あったクリントン政権より幾分明確である。 その点で、米国の本音は見え難いと言ったがブッシュの場合は若干見えやすいと考えられる。そこからなんとか考えてみたいと思う。

石油。これがブッシュ政権の最大のキーワードである。ブッシュを囲んでいる主要人物はほとんどエネルギー関係の重要人物である。なぜ核保有が 明確に立証されていないイラクが、核保有を宣言した北朝鮮より重要視されているのか。やはり石油なのである。ロシアにしてもイギリスにしてもフラ ンスにしても石油が大きく絡んでいる。ロシアとはカスピ海の石油埋蔵と中央アジアのパイプライン、イギリスは中東の石油所有権、フランスも同様。 石油問題なくして現在の米国は語れない。では日本はどうか。日本にとっても石油は最重要課題である。太平洋戦争で石油の輸入ストップがどれ だけ大きな問題となったか。なぜ日本は満州が必要だったのか。大東亜共栄圏にはなぜインドネシアが含まれたか。この分析がどれだけ深刻に考 えられているのか甚だ疑問である。ちなみに今北朝鮮は瀬戸際外交と言われているが、なぜ追いこまれているのかは太平洋戦争末期の日本と同じ だと考えればよいだろう。世界ではそれは常識である。シーレーンとしての台湾海峡の重要さもイマイチ認識していない日本人にとってイラク問題 は他人事のように考えているが、思いきり自分事なのである。

本音は絶対に露出しない。実際戦争になるかどうかは米国の都合次第である。その都合は石油の確保に直結する。米国にとって対テロや大量 破壊兵器という事柄は当たりのよいメッセージ(建前)である。気付かれただろうか、当初ブッシュは9・11に対しての対テロ戦争を正当化に使って いた。今では対テロ戦争は影を潜め、大量破壊兵器の武装解除(ディスアーム)を正当化に使っている。相手によって正当化の建前を変えながら 実は変わっていないように見せかける。こんなテクニックも優れたものだ。

正当化。これが米国の弱点ともなることも考えなければならない。西洋特に米国は優れたダブルスタンダードの国である。その際必要となるのが 正当化という手段で、この良し悪しで本音を実行できるかどうか決まると言っても過言ではない。正当化を言い換えると理由付け。学問における 最大の要素である。人より優れた理由付けを持てばそれだけ人を説得できる。政治も学問もこの点では同じである。日本人は「言い訳」を比較的 悪と見る性格がある。日本で「騙された」と言えば騙したほうが悪いと思われる。が、西洋では逆に騙されたほうが悪いと認識される。彼らにとって 正当化(言い訳)は悪いことではない。良し悪しは言い訳の中身で判断される。だから米国を批判するときに一番有効な手段は相手の正当化の 中に一貫性の欠如を見つけることである。法則は一貫していなければ説得力がないから、そのスキをつつくのである。だが事はそう単純ではない。 西洋人は正当化と同様に理論武装も上手い。いやむしろ、理論武装できる材料を揃えていると確信しているから正当化ができるのである。どんな 暴論も理論武装して相手に一貫性の欠如を指摘されなければそれは正論となる。不備や矛盾が多かった新約聖書を徹底して異教徒から衛って きた西洋人が培い、それが後期になって巧みに世界を牛耳れるようになった西洋文化の原点である。ここを叩けば米国の根本が崩れることを世界 は知っている。それと同時に正当化によって生み出した建前を崩さないために行う行動もある。例えばベトナム戦争などがこれに当たる。そう考えた とき、仮に米国は本音では北朝鮮などどうでもいいと思っても、イラク打破のための建前の一貫性を守るために標的とする可能性は大である。ただし、 やはり無理やりの辻褄合わせになるのでモチベーションは低くなる。本音では無駄に労力を使いたくない。できれば他国に始末を願いたい。 傲慢か。その通り。しかしその傲慢を傲慢だからと無碍に断ることができる国や組織は世界にないのである。本当にないのか、それを考える。

米国は傲慢とよく言われる。その通りである。ただし何を指して傲慢と言うのかということを知らねばなるまい。日本の左翼系マスコミがよく口にするの は国連を軽視した独断的な振るまいということである。私も米国は傲慢と思うが、悪いとは思わない。むしろ国連を軽視するなと発言する知識人の ほうが無理解と思う。国連はそもそも世界の行政府ではないのだ。国連を過信してはいけない。つまり米国を国連の傘の下にあると見るのは誤解 である。国連はどう見ても第二次大戦中の連合軍の名残である。安保理は当時の連合軍そのまま、公式語もそれらの言語が使われている。日本と ドイツがいつまでも爪弾きにされていることもそうだ。そんな連合軍は上下関係がない対等な同盟国だったのか。そんなことはない。結局イギリスや フランスを助けてドイツを打ち破り日本も蹴散らした米国が当初から優位な位置にあったはず。連合軍と言いながら、大戦が終了した時点で既に 米国とソ連だけがトップの位置にあった。米国の傘下に組み込まれた英仏と、大戦当初から地力に劣る中国は既に格下扱いである。ソ連が消滅 して米国は単独トップに踊り出た。すなわち国連は米国の傘の下にあるのだ。平和主義の妄想を追う連中に左寄りの誤った教育を受けさせられた 日本人は勘違いしているが、米国が国連の傘下にあるのではない。なぜ日本人が勘違いするのかと言えば、左寄りの連中は横並び(平等)が好き だからである。例えば官庁も横並びに記載されるが、厳密には各省庁に予算を割り当てる大蔵省(財務省)が頭一つ上にいると考えなければ 正確に物事考えることができない。そもそも完全な平等などない。どこかで差は生まれるものだ。世界の国はこれだけ国力が異なるのだから国連が 平等などというのは誤りである。そして国連は国際的な問題を解決する機関ではないということも知られていない。理想は確かにそうである。しかし 実際に紛争などを解決できるのかと言えばできない。国連が解決した紛争はほとんどゼロに近い。ではどこが紛争に介入しているのか。結局米国 など単独の国である。米国は紛争などに介入する際に同盟国も介入させるから国際的に見えるが、それは国連とはあまり関係がない。要は国連は 米国にとっての「本音」を実行するための「建前」の一つである。ただ、一国では米国に到底太刀打ちできない小国が国連を利用し少しでも影響力 を示そうとしているのも事実である。そういう国も国連をあくまで建前として利用している。国連を世界の声としてこんなに有り難がる国は日本くらい である。米国やその他主要国の建前のために莫大な予算を払い、実際は国益のための国連という建前を使いこなせていない悲しい現実がある。 ちなみに京都会議など環境という国益重視ではない会合は世界の妥協を行うもので実際の政治とは異なる。京都議定書で米国だけが孤立して いるのは世界と足並みを揃えない傲慢とはっきり言えるが、国連決議などとは全く別物である。

日本にとっては最も必要なのは国連ではなく日米同盟である。それは米国の方がよっぽど理解している。結論を言えば、米国の傲慢さは事実だが それを咎められるのは国連では不可能である。方法は米国との二国間同盟において自国の主張をするためにパワーゲームで駆け引きをし、少し でも優位に立つことだけである。日本はかつて経済という大きな切り札を持っていた。それはヨーロッパ諸国が持つカードより、はるかに米国に 対して大きな効き目を持っていた。欧州がユーロの道を行くのはその切り札を持たんが為である。そんな欧州と比べて、日本は未だに国連に目が 向いたまま、大切な経済というカードも米国にじわじわと奪われたのである。当時の日本の経済カードはソ連亡き後、米国にとっては恐るべき脅威 であったからだ。日本が不況から立ち直れないのは米国がそうさせないからである。つまり絶好のカードを無能な政治家達によって無くしてしまった 日本にとって、今は完全に米国に主導権を握られてしまっている。湾岸戦争の時のように戦費だけ出すわけにもいかない。今の日本にはそんな金 はない。つまりイラク問題はそのまま日本にとっても他人事ではないのだ。米国との関係を抜きにしても、世界のどの主要国より中東の石油に依存 しているのは日本だからだ。

さて日本がとらなければいけない姿勢は何か。まず、イラク問題で米国に譲歩しながらしっかりと国益を稼ぐ。言ったようにイラク問題は米国との同盟 問題と日本の石油問題という二つの最重要課題があるからだ。それから北朝鮮。これは米国に譲歩というより、日本のイニシアティブが重要である。 米国はさほど北朝鮮に関心があるとは思えないことから、日本がうまく解決すれば米国にとっては都合が良い。日本も米国に恩を売ることができる。 もっと言えば、日本は武装化を正当化できるチャンスである。外的な問題を正当化するために日頃はできないことを機会に応じて行うというのは 政治の基本である。普通に日本が憲法9条を改正して軍隊を持とうとしても、駐日米軍の正当化を継続したい米国が反対するであろう。そんな米国 に押し付けれた時代錯誤憲法を後生の宝と妄想している多数の平和主義者(パシフィスト)も反対するだろう。米国におけるイラクの存在よりも、 日本における北朝鮮の存在のほうがはるかに「今そこにある危機」である。これを逆に、世界や国内に向けて日本の武装の正当性をアピールする 機会に転じようと試みる意見がなくてはおかしい。核保有さえほのめかすくらいで良い。現在の日本は戦前と違って完全な文民統制(シビリアン コントロール)の社会である。軍を持ったら軍部が暴走するということはない。むしろ憲法上には存在しないことになっている今の自衛隊のほうが よっぽど不安定である。何も一から軍隊を作るわけではない。自衛隊を正規軍として憲法で認めるだけである。それだけで対外的にはかなりの圧力 になる。

ただ日本はおかしいのである。国連や近隣諸国(中国・韓国)に目が向いているのは視野が広いようで狭い。見なければならないのは米国とユーロ、 それにロシアと中東である。それらの国と駆け引きしながら中国や北朝鮮という日本を取り巻く厄介者に圧力をかけていくのが現在の置かれた立場 である。私は正直、中国や韓国それに国連に良い顔をしてへつらったり金を出しても日本の利益になるとは到底思えない。現実を見ていると、相手 をつけあがらせてどんどんみすぼらしくなっていくだけに思う。平等主義という共産主義的な妄想、絶対平和主義というPTSD、贖罪意識という エセヒューマニズム。この3つは今の日本を堕落された根源に思われる。平等主義など存在しない。はっきりと誰(どの国)が国益をかけた交渉相手 として相応しいかを見る目が必要だ。平和主義など現実からの逃避だ。戦争や軍隊は悪という間違った考えを克服しないと、パワーバランスの中で ようやく得ることができる真の平和を自らミスリードすることになりかねない。贖罪意識など中国や韓国の外交カードだ。帝国主義世界という時代の トレンドを謝罪するのは不必要だし、日本だけが生涯謝り続けるのもおかしい。きゃつらの日本批判は彼らの根強い日本への差別感情があるから だけで、日本人がどれだけ何をしても彼らは妥協などしない。従って何もしなくて良い。日本はとりあえずこの3つの障害を克服しないとこれからます ます世界から取り残される。経済も国際政治や内政と深くリンクしている。日本の経済人は優秀なのだ。問題なのは舵が取れず世界に見捨てられる ような政策を繰り返す政治家と選挙民の過保護である。そして友好と外交を区別できないところにも問題がある。外国人、例えば韓国人と友好する のは良いことだ。それと政治的な外交とは全く異なる。個人的には親しくても日本人は日本人としての国益を考えなければ世界で生きていけない。 日本人とはどうも個人的な友好と政治外交とを切り離して考えられない国民そして政治家のようである。

K.Wakabayashi