地方自治法の大改正が52年ぶりに行われた。
これまでの国と地方自治体の関係が大きく変わり、今までの『上下・主従』の縦軸の関係から、『対等・協力』という横軸の関係への移行である。地方自治体にとって最も重要なことは、日本の中央集権型行政システムの中核部分を形成してきた機関委任事務制度が廃止され、国が本来果たすべき役割にかかる法定受託事務と、それ以外の自治事務に再構成されたということである。
各自治体は、このことを十分に認識し、自立した自治体として自主的に行政を行い、住民参加による政策形成を通じて自らの地域のあり方を考え、最終的に地域デモクラシーを実現してゆかなければならないが、自治体の自由裁量の領域が拡大されたことにより、さらに独自の政策展開が可能になることから、やる気のある自治体にとっては、チャンス到来ということにもなった。主権者は住民なのである。
秋田県・鷹巣町の岩川町長はそう言っている。
|
鷹巣町の「福祉のまちづくり」の取り組みは、これを公約に掲げて当選した岩川徹町長が就任した平成3年5月に始まる。この公約は、出馬前、岩川氏が町内の一軒一軒に話を聞いて歩いた際、老後の不安を訴え、福祉の充実を求める声が多かったことを集約したものだった。
|
日本ドキュメンタリー映画の最高傑作
『住民が選択した町』
羽田澄子監督
自由工房制作/1997年作品
16mm/カラー/129分
|
秋田県・鷹巣町の戦い
"民主主義の土台がなければ本当の福祉は育たない"という羽田監督の考えのもと、カメラは秋田県秋田郡、人口2万3千人の「福祉のまちづくり」を掲げて当選した若い町長が率いる鷹巣町。この町をモデルに、地方自治体の福祉は一体どのように行われているか、が描き出されてゆく。
カメラが記録した1年の間に、2期目の町長選があり、それにともなう町議選があった。新しい政策をかざす町長に、猛烈な反対派がおそいかかる。ようやく当選しても、次には古い利権体質の町議会が待っている。町民の関心は非常に高く、町長選にも町議選にも、90パーセント近い人々が投票にいった。町民と町長は議会選挙でも勝利する。映画は、これから福祉による町づくりが始まりますよ、というところで終わる。
主権者は町民であるということを自覚している町、鷹巣町。
美人と美食に囲まれた生活を捨てて田中康夫が長野の町に降り立ったあの日を県民は忘れていない。長野県の主権者は県民なのである。
|