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あらゆる国の戦争屋ども

『戦争プロパガンダ10の法則』 アンヌ・モレリ・著・草思社・1500円
 
『戦争プロパガンダ10の法則』 の中で、すべては「戦争プロパガンダ10の法則」にみごとに当てはまると、モレリは言う。
「10の法則」だが、実は、アンヌ・モレリのものではない。それよりはるか以前、イギリス貴族の出身でありながら労働党議員であり、運輸大臣なども務めたアーサー・ポンソンビーという平和主義者が、第一次大戦下のイギリス政府の作りあげた多くの「嘘」を暴こうとするなかで、戦争プロパガンダの基本的なメカニズムを分析し、10項目に集約できることを発見したのだ。 『戦時の虚言/第一次世界大戦のプロパガンダの嘘』.ポンソンビー,アーサー・Ponsonby, Arthur:Falsehood Wartime / Propaganda Lies of the First World War.
「10の法則」の中からいくつか。

(1)「われわれは戦争をしたくはない」
どんな戦争でも、戦争を開始する前に、あらゆる国の国家元首が言う言葉である。自民党政府は国債格付けが先進国中最低なのに年間5兆円も自衛隊に注ぎ込んでいる。
(2)「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」
両陣営ともに、「やむをえず」「相手が卑劣で」参戦するという構図を作る。日本で言うと太平洋戦争はアメリカ(ルーズベルト大統領)に騙されて引き込まれたというのだ。満州事変や日清戦争で日本がどういう狡賢い陰謀を廻らして侵略を拡大したのかは一切言わないで、アメリカに騙されたバカな子供だった、ルーズベルトは悪魔だと言うのである。
(3)「敵の指導者は悪魔のような人間だ」
鬼畜米英の日本皇軍指導部、ヒトラーからサダム・フセイン、ブッシュそして、今度のウサマ・ビン・ラディンまで共通する言質だが、しかし、その言い回しは時代を経て一八〇度変わる例もある。
(4)「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」
戦況報告のデタラメぶりは、第二次大戦下の日本軍にも顕著だが、あらゆる国あらゆる戦争で実践されている。
(5)「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」
戦時には、政府に対する批判をさし控えるのが暗黙の了解事項であり、例外は許されない。 治安維持法のターゲットは、1922(大正11)年に創設された天皇制と侵略戦争に反対した日本共産党にあったが、特高は、内務省警保局保安課の統括下におかれ、共産党のみならず、いっさいの民主的な思想や運動の破壊に狂奔した。そのやり方は、拷問やスパイによる弾圧など野蛮極まりないものであった。
 たとえば日本共産党員やその支持者を逮捕すると残虐な拷問をおこない、党を裏切ってスパイになること(転向)を強要したり、それでも転向しない者は、小林多喜二のように裁判にかけられることなく警察の留置場における拷問で謀殺してしまうのもしばしばであった。また、日本共産党にスパイをもぐり込ませ、そのスパイに銀行強盗をやらせて日本共産党のしわざと宣伝し、弾圧の格好の餌にするなど、卑劣な謀略を常とう手段としていた。(参考)言論統制文献資料集成 (第10巻) <警察法令判例集 高等篇・最近警察実務判例集 特高及高等警察篇>日本図書センター (1991.10) 昭和特高弾圧史 明石博隆,松浦総三/編太平出版社 (1975.6)
(6)「われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う」
「大東亜共栄圈」「八紘一宇」、どちらも日中戦争、太平洋戦争でアジアへの侵略をすすめるために日本の天皇制政府が使ったスローガン。日本は、四一年からは東南アジア諸国への侵略強盗殺人を繰り広げアジア太平洋諸国で四五年に敗北するまで二千万人以上を殺しまわった(太平洋戦争)。ブッシュ親子の言う「自由と民主主義」という強盗犯の言い訳でもある。

現在そのテレビをもまきこんでやはり戦争プロパガンダはかなり有効に機能し、ここにあげられた「10の法則」は、ほとんど現実に敷衍(ふえん)されている。百パーセント通用しているとは思わないが、9月11日テロのあとのアメリカのニュースなどを見ていると、そしてブッシュ大統領の支持率や愛国心の高揚の様子を見ていると、この本は、まさに今日の戦争のために書かれたといえる。




2002・11
戦争利権の道具となるのは
いつの時代も若者たちである。
愛国・危機という信者教育。