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そして私の夜は明ける
ムーンライトジョブ体験記・完結編

311号6面・大学

 パブーそれは多くの男女が出会い、騙し、騙される不思議空間。いい客もいれば、嫌な客もいる。いろんな客に出会いながら、少しずつ嫌な女になっていく。それがパブ。

 初めて系列店にヘルプに行かされた。向こうで女の子が足りないらしい。黒服さんに連れられて向こうのお店に行く。あのお店は露出度が高い。嫌だ、嫌だ。人買いに連れられて行くみたいな気分。夜の街をお店の短いチャイナドレスで歩くのは凄く恥ずかしかった。お店に着いたときには相当へこんでいた。すぐにそのお店の服に着替える。幸いヘルプの女の子用の服はそんなに露出度の高いものではなかった。お店の中は一ランク上の系列店だけにずいぶんと立派だった。この格好でおさわりなしかよって感じの女の子に囲まれて、私は一貫してブルーだった。唯一よかったことはそこの三人目の客がフルーツ盛りをたのんでいたこと。自分を慰めるためにがつがつ食べていたら、黒服さんに呼ばれた。「指名が入ったからあっちの店に戻って」こうして私は救われた。

 指名をくれたのは、パブ好きのオジサンだった。彼の話によると指名をしたところ「三十分待ちになりますが」と言われたのに待ってくれたらしい。私はこのバイトをしていて初めて客に感謝した。私の相変わらずぎこちない水割りをつくる手つきを見て「かわってないねえ」といってオジサンが笑った。「もう辞めちゃったかと思ったんだけど、まだ頑張ってたんだね。よかった」オッサンの言葉一つ一つが心にしみた。やっぱり辞められないなと思った。 その後指名が入った。誰かと思ったらおさわり客だった。もう二度と会いたくなかったのに。口説く、口説く、触る、口説く、口説く、触る。最低だ。お前の頭の中はそれだけか。これからもこいつの相手をすると思うとうんざりした。ここにきて遂に、あのオッサンには悪いが辞めることを決意した。

 私の打算で辞める前日にお店の人に言うことにした。前もって言うと待遇がひどくなりそうなので。言ったらやはり止められた。怒ってなだめて執拗に。これはバックレるしかない。そういうわけでこの日が最終日となった。

 最後の夜も波乱含みだった。私がついていた客が倒れた。呑みすぎらしく痙攣気味で目がいってた。社会人なのに酒の呑み方も分からんのかと驚いた。しかしここは心配する場面なのでフリだけしておいた。こんな店で倒れるなんて、なんて情けないことだろう。介抱は連れの人に任せてあたしはその場を去った。

 そして高校教師がまた来店して指名をくれた。この日のファッションはずいぶんとはずしてた。黒のゆったりとした皮パンに白のトレーナー、極めつけのサスペンダー。何がしたいんだ。前にあたしが渡した名刺はなくしてしまったらしい。よいことだ。今回はしつこくデートに誘ってくる。お前なんかお断わりだ。 帰りにお店の女の子としゃべっていたらあの高校教師の話になった。「あの人ねー。気持ち悪いよね。知ってる?あの人花嫁さがしにパブに通ってるらしいよ」と教えてくれた。信じがたいことだった。あいつが私が知る中で一番の馬鹿キングだ。

 こうして学んだことは二点。この仕事はプライベートと女であることを売る仕事であるということ。そしてプライベートを売るのはマジでしんどいこと。これからこの仕事をしようという人は心しておくべきである。そして男たちに言いたいこと。水商売の女はがっちりと仮面を被っている。例外はない。陰で何を言われているか分かったもんじゃないのである。


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