五月二日、本学は臨時評議会を開き、片平キャンパスについて青葉山キャンパスへの移転計画を一部方針転換することを決定した。今回の決定により、片平キャンパスを全面移転する計画が部分移転へと変更された。
今回の方針転換によって、二十四ヘクタールある片平キャンパスのうち、八ヘクタールが残される。金属材料研究所、多元物質科学研究所が残り、他の研究所や、事務局などの本部としての機能は全て青葉山へ移転することになる。
また、同じく青葉山への移転を計画している農学部雨宮キャンパスについては全面移転の方針を変更しない。
全面移転の方針を転換した理由は大きく分けて三つある。
まず挙げられるのは、片平キャンパスと市民との関係を大学側が重視したことである。以前より片平地区については、市民の中からキャンパスの移転による空洞化を懸念する声が挙がっていた。また片平キャンパスを残そうという市民の運動もあった。今回の部分移転決定はそういった市民の声に応えるという意味も含んでいる。
第二の理由としては、大学が教育面で市の中心部に位置する片平という立地条件を評価した点が挙げられる。片平にキャンパスを置くことで、社会人、職業人への教育も視野に入れたキャンパスを目指すことができる。将来開設されるロースクールも、裁判所に近いという利点から片平キャンパスを中心に据えられる予定である。
第三は研究面からの理由である。金属材料研究所と多元物質科学研究所については、将来的にも現在の建物を使用することが決定されたことで、設備の維持や現在の研究に予算が配分されることとなった。
今までは両研究所とも移転する予定であったため、施設の修理や、新たな機器の購入に予算が下りなかった。そのため、研究所からは「今の状態は研究に支障をきたしており、このままでは研究面において取り残されてしまうのではないか」という危惧の声が挙がっていた。
また、片平に両研究所が残ることで、キャンパス移転にかかる費用は節減されることとなった。これは両研究所は高価な機器を備え、施設の再建設には多額の費用がかかるためである。
片平キャンパス跡地は売却され、その収入はキャンパス移転に当てられる予定である。部分移転決定によって跡地からの収入は減ることになるが、両研究所の存続による費用の節減の方が大きい。
なお、今回の方針転換について大学側は「片平キャンパスの部分移転は以前より考慮していたものである。先日、片平キャンパスの近代建築群が産業遺産に認定されたこととの関連はない」と語った。