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一刀両断
ハードボイルド相談室

学祭号3面・大学

 この錆びれちまった社会の中に確実に存在する、悲しきメリーたち。そんなにメーメー泣くんじゃねえよ。俺でよかったら、悩みを聞いてやるよ。

Q こんにちは。私はアルコールに悩む大学生です。大学に入ったばかりの頃は、はじめてのお酒が楽しく、先輩に誘われるままに飲み歩いていました。しかしそのうちそれが癖になってしまい、大学にも行かなくなってしまいました。このままではいけないと、何度も更正を試みましたが、その度に、アルコールに引き戻されてしまいます。どうすればいいでしょうか。ああ、今も手が震えています。

A 酒に勝つ奴、負ける奴。男の値打ちは酒との付き合い方で決まる。猛々しく生きろ。過去を振り返るな。そこで立ち上がってこそ男だ。男の誇りを失ってはならない。生き恥を曝すなら、死んだほうがましだ。いや、死んでしまえ。

Q 僕は今年大学に入ったばかりの迷える子羊です。近頃よく考えている事があります。愛ってなんですか。

A 秋の外套みたいなものだ。纏うと暑いが、脱ぐと寒い。そのどちらかしかなく、留まることはない。

Q 僕は昔から、友達付き合いが苦手でした。結構、うわべだけでは明るく振舞えるので、高校までは友人も多く、周囲からも楽しい奴という評価を受けていました。でも実際はそんな自分が嫌いで、自信もなく、いつも人に嫌われることにビクビクしていました。大学に入ってみると、クラスのつながりも薄く、正直、もう無理しなくてもいいんだってほっとしました。

 でも、そのうち周りは気の合う奴で仲良くなってきて、僕はだんだん孤立感を抱くようになってきました。淋しくて友達を作ろうとしたのですが、何故か素直に笑うことや、前みたいに気のきいた事を言うことが出来なくなってしまいました。それでも無理に笑うと、自分がひどく引きつった醜い表情をしているんじゃないかって怖くなって、外に出せない言葉がつかえて、苦しくて苦しくて、いつしか人間と付き合うことに、恐怖を覚えるようになってしまいました。

 でも、部屋の中にいても考えることは、「どうして自分はうまく生きられないんだろう。どうして素直に笑うことが出来ないんだろう」ということばかりで、自分が情けなくて、嫌で仕方がありません。最近は死ぬことばかり考えています。

A まあ、がんばれよ。

Q 私は、とても犬が苦手な女です。犬を見ていると恐ろしくて漏らしそうです。最近バイトを始めたのですが、バイト先に犬がいるので、怖くてバイトに行けません。どうしたらいいのでしょうか。

A それは偽善だ。お前、犬が怖いって思っている自分が、かわいいと思ってんのかよ。いくら嫌いでも、犬を傷つけてはならない。傷は自分の中に、背負いこむものだ。それが動物に対するやさしさだ。犬と向かい合うには、犬をズタズタにするのではなく、自分がズタズタになるべきだ。そうすると人間の自尊心が見えてくる。それをなくした人間はクズだ。俺はそれを認めない

◆  ◆

 俺は、引き続きメリーたちの相談を募集している。こんな答え方をして、「馬鹿な奴もいるもんだ」と、呆れてくれてもいい。世間ではハードボイルドと呼ばれている男の生き方、考え方を楽しんでもらいたい。ただ、それだけだ。


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