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Feature music: FF VIII - Balamb

「オミテンの伝説:序章」
(Original Title:The Legend of Ometin-Prelude)

出典:The Sakura and Syaoran Fan Station
(http://www.protinium.com/~piggy/index1.html)

作者:
Piggy Ho Ho
訳者:
alpha7

木之本桃矢は、自宅のキッチンで、夕食のハンバーガー[訳者注1]
を料理していた。桃矢は自分の学校の制服の上に、不釣り合いでは
あったが、兎がデザインされたエプロンを着ていたのだった。
皿の上にハンバーガーを盛り付けると、廊下の電話が鳴った。
桃矢は調理器具を置くと、廊下に出て、受話器を持ち上げたのであ
った。
「もしもし、木之本です。」
彼は低い声で言った。
暫くの間、電話の相手は黙ったままであった。
桃矢は再度、言った。
「もしもし?」
躊躇いが有る様であったが、電話の相手は桃矢に対して口を開いた。
「あの....木之本桜さん、おいででしょうか?」
桃矢はその声が誰であるか、すぐに分かった。
同時に、彼の頭に血が上った。
「小僧、何でウチの妹を呼び出すんだよ?」
疑いも無く、電話の相手は小狼であった。
桃矢には、小狼の声が急いでいる様に聞こえた。
そして、電話を切ってしまいたい衝動に駆られたのである。
桃矢が電話を切るのを我慢していると、小狼の方が口を開いたので
あった。
「いいかい、俺は議論している時間は無いんだ。さくらと話をさせ
てくれ。」

「てめーが『どうかお願いします。背の高くって、強い桃矢さん』
と言う迄は駄目だ。」
桃矢は退屈そうな顔で言った。
小狼はそれを聞いて、桃矢に賞賛の言葉をかける....と言う事はし
なかったが、口を開いた。
「おっと、不潔な桃矢、どうか死んじゃってください。」
暫くの間、桃矢と小狼は『沈黙のゲーム』に興じている様であった
が、桃矢の方から沈黙を破った。
「俺は、『どうか』と『有り難う』って言葉を待っているんだがな。」

「分かったよ。」
小狼が答えた。
「どうか....有り難う。」
小狼の方が、桃矢に根負けしたのだ。
誰も、小狼の様に、こんな単純な事に熱中する事など、出来ない話
であろうが。

桃矢は深く溜息をついた。
桃矢の方は、こんな事を楽しんでいる訳ではなかったのだ。
「ヨォ、怪獣!お前に電話だぞ。」

さくらは自室から一階に降りて来ていた。
「有り難う、お兄ちゃん。」
さくらは桃矢から受話器を受け取った。
「もしもし?」

「ハイ、さくら。」

「小狼君?そうよね?」
さくらは信じる事が出来なかった。
と言うのも、小狼がさくらを呼び出す事など、今まで無かったから
である。

「どうしたの?」

「いや....本当は何でも無いんだ....確かめておきたくってな。」

「うん?何を確かめるの?」

「いや....何でも無い。」

さくらはクスクスと笑った。
「本当?何も無い、なんて、小狼君、変じゃない。」

「ウン....その、もし、お前が本当に知りたいのなら....」

「えっ....?」
さくらは笑い、指を受話器のコードに絡めた。

「いや....何でも無いんだ....」

「ねえ、小狼君!用も無いのに電話したの?今まで、こんな事した
事、無かったよね。電話したり、お喋りするのもいやがっていたじ
ゃない。」

「あ、ああ....その通りだよ....」

「ウン、俺....。」

「....?」

「気にしないでくれよ....明日、学校で言うよ....明日、会おう。」

さくらは少々ガッカリした。
「オッケー....でも....明日、日曜日だよ。」

「ハ?ウン....それなら....月曜日に会おう。」

さくらは再びクスクスと笑っていた。
「オッケー、じゃあ。」

「じゃあな。」

さくらは電話を切らず、受話器を置くことは無かった。
この小狼の電話には何か訳がある、と感じ取っていたからである。
さくらは、間を楽しんでやろう、と考えていた。
それに、小狼の方から何か言って欲しい、電話を切らないで欲しい、
と考えていたのである。

その願いが通じたのか、小狼は電話を切っていなかった。
「もしもし?」
彼は物静かに言った。

一方のさくらの方は油断していた。
「ほえ?ハイ!」
そう言って、もう少しで飛び上がる所であった。
「ウ....ウン。」
小狼に分かる訳は無い、とは知ってはいたが、彼女は頷いたのであ
った。

小狼の方はゲラゲラと大笑いしたのであった。
さくらには、その声が音楽の様に聞こえ、再び赤面したのであった。

「今なら....言える、と思ったんだ。」
小狼は言った。

「オッケー」
さくらは答えた。
「私に言いたい事って、何なの?」

暫く間、沈黙が続いていたが、小狼の方から口を開いた。
「お前....つまり、その....俺とデートに行かないか?」

さくらの顔が更に赤くなった。
「デ....デート?」

「あ、ああ....。」
さくらは小狼の顔を見る事は出来なかったが、小狼の顔も又、真っ
赤になっていたのである。
「つまり、その....お前は....その....俺は聞いてるだけだからな!
イヤなら、それで良いし、良ければ、完璧だ!つまり、素晴らしい
って事だよな!とは言うけど、俺、お前にデートを強要してるな..
..でも....」
今度は独り言を言い始めたのあった。

さくらは深呼吸して、小狼の独り言を遮った。
「いいよ!」

小狼はさくらの言葉を信じる事が出来なかった。
「お前....いいのか?デートしてくれるのか?」

さくらは少しばかり赤面し、再び頷いた。
「ウ....ウン。」

小狼はニッコリと笑い、言った。
「素晴らしいぞ!いや、その....有り難う....お、俺....」

「分かってる。」
さくらは再びクスクスと笑って言った。
「小狼君の言いたかった事、分かったもん....」

小狼は落ち着きを取り戻し、満面の笑いを浮かべた。
僅かに赤面していたが、さくらの言葉に答えたのであった。
「オッケー、それで....」

「何処で何時に会おうか?」
と、さくら。

「あ、ああ....公園でどうだ?10時で良いかな?明日の....」
小狼が答える。

「明日の10時ね。いいわ。」
と、さくら。

「いいぞ....完璧だ....」
と、小狼。

「ねえ、今度は小狼君の方から『又、明日。』って言ってよ。」
と、さくら。

「ウン....ああ、じゃあ、又、明日。」
と、小狼。

「オッケー、じゃあ。」
さくらは会話を切り上げた。
今度は間を置かずに電話を切ったのだった。
さくらは深く溜息をついた。電話を切ってもなお、心臓はドキドキ
していたのであった。
『小狼君から誘ってくれるなんて....信じられないよ....』
さくらの心は興奮で満ち溢れ、明日まで待つ、と言う事など出来る
話では無かった。

一方、小狼の方も同時に電話を切っていた。
彼は電話を見つめ、自信に満ちた笑いを浮かべていた。
そして、電話を放り投げ、「よし!」、彼は、喝采を上げたのであ
った。

<続く>

(作者後書き)
さて、序章です。
私は、この出来に自信を持っています。
私が思うに、この章は問題(特に、私のタイピングのスキルに)が
あった様です。
次章からは出来るだけ直しておきます。良いですよね?
S+Sファンの方、ヘヘ、これから彼ら2人に何が起こるのでしょう
か?オホホホホホ....

所で、私は名前の最後に「君」等の敬称を付ける事について深く考
えませんでした。第一の理由は、私は日本人では無いし(日本語は
学ぼうとしているんですよ!)、第二に、その使い方を知らないか
らです。[訳者注2]

それでは!
次章で、お会いしましょう!

Piggy Ho Ho '(oo)'
1999年7月24日

[訳者注1]
夕食にハンバーガーとは?と思われる方が多いと思いますが、原文
の通りに訳を付けました。

[訳者注2]
訳者のalpha7は「日本人」なので、原文中において、さくらが小狼
を呼ぶ時には、全て「君」を付けました。


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