「世界選手権疾走記録 6」 |
3月21日(水)
散歩(女子予選B組、ペアフリー前半) 私が泊まっているユースの周りは不思議な所だ。 ガイドブックにはバンクーバー一番の繁華街として必ず載っているロブソン通りから5分も歩くと一個建ての家や集合住宅、公園もあったりする。しかしこれらの家に住んでいる人達が日用品を買いに行くような店が見当たらない。 この家に住んでいる人はどこで生鮮野菜を買っているのだろう? もちろん店でも売っているのだが、通りのあちらこちらに写真のような新聞の自動販売機があり、一面トップの紙面が見られる。Globe and Mailではキス&クライでのエルビスの写真。点数が出る前に下を向いて顔の汗をぬぐっている時の写真だと思うが、顔を覆ってうつむいているようにも見えてなかなかインパクトのある写真になっている。 キス&クライにいる間下を向いていたのはこの時だけだったと思うのだが…さすがプロのカメラマン、こういう一瞬は逃さない(笑)。その写真の中に”I'm sorry”の文字。 エルビスのファンをやっていて一番辛いのはこういう時なのだ………。 何のために競技をするのかを考えれば謝るなんて本末転倒もいい所である。何がどうなってこうなってしまうのか。 ごめんなさい。謝らなければいけないのは私達。 だからといって演技に期待することもスポーツ選手としての成功を願うこともやめることはできない。 どの道後戻りはできない。こんな事を考えるあたり私は大概弱っている。 というわけで、今日はやっと試合前の恒例イベントにとりかかることができる。題して 「花屋さんを探せ!」 たかが花屋とあなどるなかれ。行ったことのない土地であるのに加えてもちろん地図に載っていない。しかも試合は逃したくないので制限時間つき、非常にスリリング、いや見つからないとかなり切羽詰まってくる宝捜しなのだ。(いつもすまん^^;>K) とりあえず「押さえ」に立ち寄るのがデパート。ガイドブックに唯一載っている百貨店、イートンズに歩いて行ったのだが日本ならたいてい1階にある花屋さんがない。インフォメーションで訊いてみると花屋はなく、3階か4階に翌日配達でカタログオーダーする所ならあるという。 いくら花フェチの私でもそこまではしたくない。しかしこのお姉さんは非常に親切で、イートンズの店員であるにもかかわらず「地下へ降りてこっちの方向へまっすぐ行って右にいい花屋さんがありますよ」と教えてくれた。 お姉さんにお礼を言い、地下に降りたのはいいが… 右って、どの門を右なのよ? あとで地図を確認してわかったことなのだが、どうもバンクーバー有数のショッピングモール、パシフィック・センター・モールの南側に入り込んだらしい。ずらっと店が並んでいるのはいいが、店が二つおきぐらいに門があり、さらにその先にも一つ以上店がある所もある。片っ端から店をのぞくが見つからず、さらに進んでいくと……地上に出てしまった。どうもバンクーバーは高低差があるようだ。 歩いているうちにカメラ屋と両替屋を見つけたので用事をすませ、ついでに花屋さんの位置を確認する。さらに小さめのデパートを見つけたのでしらみつぶしにエスカレーターを昇っていくうちに3階に花屋さんがあった。よかったいざとなったらここに行こう。 しかしここで妥協しなかったのはどっちだったっけ?再び地下に降りて方向感覚がどうかなりながらも片っ端から探すこと10数分、あった! イートンズの店員が薦めるだけあって今まで見た中で一番素敵な花屋さん。品は多いわ見た事のない花はあるわ、店内に飾っている花のアレンジも凝っている。 これだけ凝っているということは店員は絶対フラワーアレンジメントのスペシャリスト、「こういう人に合うようにこういう感じで作りたい」と少しヒントを言えば素人が考えつかない素敵な組み合わせを作ってくれるだろう。(こういう遊び心が通じる人と通じない人がいる) しかし雪ちゃんへの投げ物は用意済み、今日は花を買う日ではない。 ふふふふふ。明日が楽しみ〜〜♪ この花屋さん探しは毎回時間のロスになるのだが、花屋さんをダシに街の中を歩き回れるというメリットがある。普通の旅行とは違い、スケート観戦だけでスケジュールが埋まりがちになるので貴重な息抜き…というか私にとってはこれも観光。 道を訊いたカメラ屋さんでISO200があってISO800のフィルムがないとか(ISO200のフィルムは初めて見た)同じフジフィルムでもパッケージが日本のと結構違って一目ではわからなかったとか、わざわざ観光地へ行かなくてもこういうことで楽しめてしまうお得な性格だったりする。 女子予選開始ぎりぎりかと思っていたら、ペアの公開練習が終わったばかりの様子だった。もう少し早く来ていたら最終グループの練習が見られたかもしれない。ふらついたことをちょっと後悔。 予選B組のスターティングオーダーから「この人は通るだろう」と思う選手をピックアップして人数を数えると11人。予選を通過できるのは各組15人。 思音ちゃん通るかなあ……。 スルツカヤがジャッジの目の前で3サルコー+3ループ(多分)+2トウの3連続ジャンプ。おお、世界選手権オンリーの必殺技やりましたね。 ジェニファーはすっかりこの路線に定まったようだ。自分が一番よく見えるスタイルを自覚した選手は強い。 しかし演技は去年と同じようにはいかなかった。具体的な内容は覚えていないが、全体的にピリッとしない出来。 う―――ん……。 Annie Bellemare(カナダ) カナダ女子二人目の代表の彼女は名古屋NHK杯で粗さもあるがイキのいい印象を残し、大阪四大陸で銅メダルを獲っている。しかし初めての世界選手権で空気に呑まれたのだろうか、今日は明らかに表情がガチガチになっている。腕が完全に棒になっているのだ。 ただでさえ彼女にとっては挑戦になると思うしっとりした曲と柔らかい振り付けなのに、こうなるともう歯止めがきかない。トリプルをほとんど落としたりすぐには立ち上がれない派手なジャンプの転倒があったりと、何がなんだかわからないうちに終わってしまったのでは。 予選は大丈夫よね? Bit-Na Park(韓国) 大阪四大陸には出ていなかったが、ソルトレイクシティー四大陸のショートでいきなりいい順位につけたので名前だけはチェックしていた。偶然電光掲示板が目に入ってびっくり、「Coach Doug Leigh」「Choreographer Michelle Leigh」!! こうなるとが然こちらの注目度も上がる。ミシェルさんのイメージそのままの明るい曲にシンプルな振付。トップクラスに比べるとコンビネーションの難度が少し低いのだが、すいすい滑っていていい流れが感じられる。確かに大阪四大陸の韓国女子3人とは持っているものが違う、カナダに行って正解。 ノーミスだったんじゃないだろうか?これはフリーへ確実に進めるだろう。 第四グループのウォームアップ。思音ちゃんの衣装がソルトレーク四大陸から新しくなっている。かなり濃いメークだが色が自然なので顔は浮いていない。やっぱり可愛いわ〜。(←怪しい) 彼女は小柄でいかにもパワーがなさそうなのだが、こうやって見ているとスピードは他の選手に比べて見劣りしていない。一歩蹴り出した後するするする〜っと滑っていって結構距離を進んでいるのだ。ループとサルコウを失敗しているが、感情はマイナス方向になっていないようで、コーチと話す笑顔に無理がない。 Stephanie Zhang(オーストラリア) 中国出身でブリスベンに移住し、オーストラリアの市民権を獲得してオーストラリア代表になったというアンソニー・リウと同じ経歴の彼女(年齢はだいぶ違う)。 ジャンプが得意という評判を読んでいたのだが、今日の彼女はさえない。ダブルになったり転倒したりでスピードもない。トリプルは一つぐらいしかきまらなかったのではないだろうか?背が高くて(164cm)がっちりしているので調子がよければがんがん飛ばす演技が見られたのだろうと思うが、ジャンプをミスすると見ていて苦しいタイプ。まだ15才なのでそのあたりはこれから。 結局後の滑走者を待たずに予選落ちが決定した。四大陸選手権10位の彼女には苦い世界選手権デビューになっただろう。 Wojtala(ポーランド)、どうしたんだろう!?確かにウォームアップでもジャンプがきまっていなかったのだが、本番でもことごとくトリプルがきまらない。 ジャンプを踏み切ってからトリプルでいけそうな高さはあるのに、回転のスピードが異様に遅いのだ。大人っぽくなってそれ以外の部分では去年からよくなっていたのに…。 この二人は予選を通る人のリストに入れていたのに、まさかこうなるとは。本当に勝負はふたを開けるまでわからない。 残念ながら思音ちゃんのジャンプのミスは予測済み。しかしそれで調子を落とすということはなく、むしろこわごわルッツを跳んでいる選手より流れはいいような気がする。表現力がないと退屈してしまういかにもというクラシック。振付は地味だが音はとらえている流れなので、舞踏会の一曲という雰囲気は感じられる。去年より踊れるようになったんじゃないだろうか。 しかし実は見せ場はラストにあった。ジャッジと反対側のリンクの端から両腕を広げてのスパイラル。あ、このスパイラルめずらしい…と思っているうちにジャッジへ向かってするするする〜〜〜っ…ちょっと思音ちゃん、きれい、きれいよ!! ジャッジの前でポジションと向きを変えて別のスパイラル(いわゆるスパイラルシークエンスというものらしい)、シットスピンの後フィニッシュ。 何の感情も示さなかった彼女だが、すっかりはしゃぎモードの私。ちょっとこれはいいもの見たわ、ミシェルのショートではないが最後の最後のジャッジに見せつけるアピール技を持っていたなんて! もともとトリプルが3種類の彼女、トウしかきまらなかったのだから予選を通らないのは仕方がないだろう。本人は悔しいだろうが、スケーターとして成長したのはちゃんとわかる。彼女の演技が見られてよかった。 と思いきや。 15.Siyin Sun 通った―――――!!! ぶうたろうさんとよりきさんは適当な所で男子フリーの練習を見にPNEへ。私も行きたいが行けない性分が悲しい。あとでエルビスの様子聞かせて下さいね〜〜〜(泣) ところで昨日のコンパルソリーの結果が知りたいのだが、リザルトはどこにあるのだろう?売店にも入り口にもスターティングオーダーしか置いていないし…と思っていたらスターティングオーダーの裏に載っていた。 毎日リザルトをもらっていくと最終的に結構な量になるのでこのコンパクトさはありがたい。資源の節約という点でもよろしい。 しかし。 都築さん達が組12位!?フリーぎりぎりじゃん! 中国ペアがオリジナルダンスぎりぎりの組15位で韓国ペアがコンパルソリー落ち!? 中国ペアは四大陸で渡辺&木戸組に、韓国ペアはユニバーシアードで有川&宮本組に勝っている。日本の二組は去年からのものすごくうまくなって驚いたというのに、どうなってるの今年のアイスダンス!? ぬかった。逃がした魚は大きかったかもしれない………(注:誤用)。 ペアはショートからフリーへ進めるのは上位20組なのだが、ショートで気になったエストニアのお兄ちゃんと妹の組はフリーに進めた。(注:兄妹ペアではない) 始めのツイストリフトで降りる時に変な状態になったのか、妹がお兄ちゃんの肩に思いきりしがみついて持ち直す形になる。ああ危なっかしい!だが軽快なロックであるのと妹がわりに踊れるタイプなので観客の反応は前の組よりいい。しかしお兄ちゃん、妹が気になるのはわかるがジャッジの目の前で二人並んで踊る時にまで妹を見ながらというのはどうかと思う。 来シーズンはこういう所で相手を見ながらしなくてすむようになるのだろうか。今の所「エストニアのお兄ちゃんと妹」としか覚えていないので、来シーズンはきちんと名前覚えよう(^^;) ショートで崩れたワーツ組はなんと第二グループの第一滑走。他の組がスロージャンプやリフト確認をする中、全くと言っていいほどコミュニケーションを取っていない。 27才と31才と合計年齢はペアで最高であり、途中で力尽きたような様子を見せたショートの二人。 嫌なことは考えさせないでね。 結果としては杞憂だったということだがそれだけではすまない演技。クリスティさんがジャンプを全部踏んばったということもあるが、何よりクリスさんの気合がすごかった。このペア特有の穏やかな一体感というよりはある種の迫力があった演技、終わった後もその余韻がくすぶっていた様子。 よかった、この崖っぷちでふんばった!クリスさんが170cmとペアの男性にはかなり小柄で身長差の少ない二人は並んで滑っているだけで「ユニゾン」というものを感じさせてくれる数少ないペア。しかしシーズンを重ねるにつれ、クリスティさんのジャンプのミスもさりながらクリスさんのリフトが危なっかしくなっているのを寂しく感じていたのだ(私の場合基準が基準ということもある)。ノーミスで滑れたら…と思っていただけに、本当によかった! 点数も5点台が並ぶ。第二グループの第一滑走によくこの点を出してくれた! 悠子ちゃん達もフリーをきっちり滑ってきた。ショートほど「おお!」と盛り上がる場面はなかったが、初のシニア世界選手権で「先が楽しみなペア」という要素は充分示せたのではないだろうか。というより本当に先が楽しみなペアなので、この組み合わせでアマチュア生活の最後まで続けてほしい。 でも言わせていただくと二人ともメークが濃すぎる。いかにもジュニアという容姿の彼女達がシニアの大会でやっていくために見た目の年齢を上げようとしたのかとも思うが、ここまで顔が浮いていてはかえって問題だと思う。 モスクビナコーチ、メークの指導もお願いします(^^;)。 第二グループが終わった後の製氷時間は休憩タイム。きりがいいのでここで区切らせていただく。 追記: |