特別支援教育法:親子の権利〔3〕
The Americans with Disabilities ActADAは、私営機関の雇用機会、私営の公的収容設備(私営クラブと宗教機関を除く、たとえば、劇場、ホテル、レストラン、ショッピングセンター、スーパーマーケット、私立学校、図書館、公園など)、そして、公共サービス(公・私営の交通機関や電気通信サービスも含む)による障害を持つ人達に対する差別をなくすために、全国レベルで規定する目的で確立されました。ADAによる‘障害を持つ人’は、身体的・精神的な損傷により日常生活の主要な活動を実質的に制限されており、その身体的・精神的な損傷によって差別を受けている人と定義されています。IDEAと同様、ADAでは、障害を持つ人達がコミュニティでの生活に十分参加できるように平等な機会が与えられること、独立した生活を営み、経済的に時給できる平等な機会を与えられることにおいて、効果が見られることが念頭に置かれています。IDEAにおけるTransition Serviceでは、独立した生活とコミュニティへの参加が提唱されているのですが、コミュニティ側の障害を持つことによる差別行為がなくならない限り、実現することができません。ADAではそのような差別行為を禁じているため、生徒達(=市民達)が自分の持つ障害やコミュニティの障壁によってコミュニティへの参加が妨げられる状況が改善されてきました。IDEAでは排除(exclusion)ではなく包括(inclusion)が基本という拒否ゼロ(zero-reject)ルールがあるのですが、ADAも同様で、物理的・態度的な障壁から、大衆社会から隔離したり、コミュニティへの参加を拒否することを禁じ、‘包括しなければならないのだから、排除してはならない’という理由から、障害を持つ人達のコミュニティ参加を可能にしているのです。
ADA違反が見られた場合の苦情申し立て手順は、各分野によって異なります。雇用問題はthe Equal Employment Opportunity Commitionに苦情を入れ、そこから裁判所に訴えることができます。訴えが認められれば、負担した費用の払い戻しと、差別行為の制止ができます。公的収容設備の問題は裁判は起こせますが、負担費用の払い戻しはできるとは限りません。司法長官を通して苦情の申し立てをする場合は、法的な差別行為の禁止、負担費用の払い戻し、そして、罰金を課すことができるかもしれません。州や地方自治体運営の公共サービスの問題は連邦機関に苦情を申し立てることができます。そこで司法長官が個人の訴えに対応し、損害賠償と差別行為の禁止が命じられます。交通機関の問題は交通部署に苦情の申し立てをするか、個人で裁判を起こすことができます。電話通信の問題は、the Federal Communications Commissionに苦情の申し立てができます。義務ではありませんが、ADAは、解決交渉、調停、便利化促進、仲裁、事実確認、小型裁判、仲裁裁判などの論争解決方法の利用も勧めています。
【具体的なADAの要求例】私営機関の雇用機会: ADAでは雇用者に対し次のような行為を禁じています。
- 障害を持つ労働者や志望者に対し、雇用や解雇を差別行為に利用すること
- 障害の有無を尋ねたり、過去の治療経験の有無を聞くこと(雇用者は特定の仕事をする能力に関してのみ聞くことができる)
- 志望者や労働者の障害が割り出されて不採用対象になるようなテストや条件を使うこと
- 障害を持つ人と同居、又は、関係のある人の雇用や昇進を拒否すること
- 仕事の格付けや昇進の機会を制限すること
公的設備の条件: 物理上の条件として、次のような点が挙げられています。
- (交差点などの)歩道の縁石の段差をなくすこと
- 棚、机、電話などの位置の考慮をすること
- ドアのサイズを大きくすること
- 回転式の入り口を取り除くか代わりの入り口を設置すること
公共サービスの条件: 次のような内容は差別行為とされています。
- プログラムや活動参加を拒否すること
- 平等な利益を拒否し、別の利益を提供すること
- プログラムや活動の場を隔離すること
差別をなくすために次のような方針・内容・手順の変更が必要とされています。
- 補助設備や補助サービスを整えること
- 物理的障壁を取り除くこと
- 障壁が取り除けない場合は、別の方法でサービス提供ができるようにすること
- 電話通信会社は聴覚やスピーチ障害を持つ人のためにリレー式サービスを提供すること
05/21 updated
学校生活の中でADAが大きく関わってくる例は、車椅子が必要なお子さんが校舎内への出入りと校舎内での移動が校舎の設備の不備で不自由であるとか、学校外での活動に物理的な理由で学習活動への参加が認められないとか、生徒の保護者が同様の理由で校舎内でのイベントへの参加が出来ないといった場合があげられます。校舎が2階建て以上の場合は、エレベーターが付いていたり、階段の代わりに使えるリフトやランプ(ramp=坂)が設置されて、ニーズのある生徒、保護者、学校のスタッフが校舎内の(少なくともアクセスが必要な)教室へアクセスできるようになっているのはADA法規によるものです。ADA法規を満たさない古い校舎は部分的に工事をするなどして設備が整えられているはずですが、そうでない場合は学校側のADAについての見解を求めましょう。