危機管理:社会的暴力や恐怖事件への対応 National Association of School Psychologistsが学校と家庭を対象に用意した危機管理用プリントを日本語に訳したものを紹介いたします。事件現場からの距離によって子供の心理的影響に差があると思いますが、部分的参考になることもあると思いますので、どうぞご覧ください。事件解決後にも子供が脅えている場合の対処法としても参考になると思います。
最近の無差別狙撃事件は、昨年のテロ攻撃事件に続き、暴力と恐怖を身近なものにし、狙撃犯が逮捕されず学校閉鎖の状態が続くと、子供達の不安や脅えがさらに大きくなっていきます。家庭では学校関係者と協力して、子供の安心感を強め、子供ができる限り効果的に事態に対応できるように努めましょう。狙撃事件は、対象が無差別であるために安全の確保が困難なようでありますが、実際、ほとんどの子供達は事件に巻き込まれることはないのです。子供は大人を見てどう状況に反応すべきかを学び、大人の様子から安心感を得ます。大人の言うこと・なすことによって、子供を必要以上の恐怖感や激しい感情から解放することができ、日常生活を維持したり、日常の感覚を取り戻すことができます。
大人として心掛けるべきこと
- 落ち着いて冷静さを保つこと
子供は身近な大人からの感情的な合図を敏感に察知します。不安感や恐怖感は子供に移るので、なるべく子供の前では不安感・恐怖感を見せないようにしましょう。
- 子供や子供にとって大切な人達が安全であることを確信させること
たとえば、休憩時間やお昼休みには室内で過ごすことや、警察官や警備員の存在などを指摘し、子供自身の安全、コミュニティの安全を確認させましょう。
- 信頼のできる人達が事態の対応をしていることを教えること
警察官、緊急チーム、連邦捜査官、学校関係者などが、安全維持のために働き、犯人を捜していることを話しましょう。
- 事態に動揺するのは悪いことではないと説明すること
非常事態が起こっている時は、どんな感情を持ってもよいということを説明しましょう。子供に自分の感じることを話させ、どんな気持ちなのか子供自身が把握できるように仕向けてあげましょう。怒りの感情でもよいですが、適切な表現ができるように大人の忍耐と助けが必要になります。
- 子供の感情を観察すること
年齢にもよりますが、子供が自分の気持ちを言葉で表現できない場合は、様々な方法で感情を表現するでしょう。悲しみや恐れの表現方法に正しいも誤りもありません。強い不安感の表われには、『要注意!ストレスの症状』に挙げられているものの他、次のような症状があります。
- 常に狙撃関連の恐怖感を持っている
- 大切な人が狙われるのではないかと心配する
- (驚き・恐怖・ショックで)飛び上がりやすい
- 事件、その他に必要以上に無関心でいる
- 死や暴力について気をとられている
影響を受けやすい子供に特に注意を払うこと 以前、トラウマの残るような経験(e.g., 家族の死など)をした子供、抑欝状態や精神的な問題を抱えている子供、特殊ニーズを持つ子供などは、普通の子供より重度の反応を示す傾向があります。特に自殺の可能性がある子供には気を付けるようにし、必要ならば、専門家に相談しましょう。
子供に本当のことを伝えること 事件がさもなかったようにふるまったり、大した事件ではないことのようにふるまわないようにしましょう。子供は大人が考えるより頭がいいものです。何が起こっているのかを子供に言えないほど恐ろしいことなのだと、反対に不安感を募らせてしまいます。
真実だけを伝えること 何が起こっているのか、何が起こりうるのか、大げさに言ったり、推測しないようにしましょう。特に幼い子供の場合は悲劇の大きさや範囲ばかりにこだわらないようにしましょう。
年齢に合うようにする説明をすること どの年齢の子供に対しても、気持ちを言葉に出させ、自分は聞き手にまわるということを踏まえて、子供の年齢を考慮しながら事態の説明をしましょう:
小学校低学年の子供には、短く簡単な事件の情報と日常生活への影響がないことを説明するのが好ましいでしょう。
小学校高学年・ミドルスクール低学年の子供は、自分達の安全と学校での対応に関する質問が出ると思われます。大人は、子供の描いている現実と想像を切り離す作業が必要になります。
ミドルスクール高学年の子供から高校生は、犯罪の原因や学校や社会での危険性に関する様々な強い意見が出て来ると思われます。いかに学校を安全にするか、いかに社会での悲劇を防ぐかなど、具体的な案を共有しましょう。事件の犠牲者や影響を受けているコミュニティのために何かできるのではとより活発に関与するのもこの時期です。
自分のストレスに注意すること 自分自身の不安感、悲嘆、怒りなどを無視してはいけません。友人、家族、教会などの指導者、カウンセラーなど、誰かと話すことで、気持ちが落ち着くはずです。事態がよくなることを信じていて、それが子供に伝わっている限り、あなたが悲しんでいるのを子供に見られても大丈夫なのです。建設的にあなたが自分の感情を表現すれば、子供へのサポートになります。あなた自身が、よく睡眠をとり、栄養をとり、運動しましょう。
家庭でできること
10/02
- 子供を中心に考えること
特にまだ事件の解決していない時期は、いつも子供のことを考えていること、そして、事態はよくなることを子供に伝えましょう。何が起こっているのか、発達段階を考慮しながら、子供が理解できるように説明しましょう。
- 子供と話す時間を作ること
もし親が事件について何も話さなくても、他の人が話してしまうことを覚えておきましょう。時間を掛けて、自分が子供に何を伝えたいのか考えましょう。
- 子供のそばにいること
親が目の前にいるだけでも子供は安心感が得られるものであり、親も子供の様子を観察することができます。実際にスキンシップを求める子供も多いかもしれません。その場合はいっぱい抱きしめてあげましょう。子供がそばに寄ってきたら、そばに座らせたり、就寝時間には、いつもより時間をかけて寝かせるなどして、親が子供のことを気にかけていることと心配しなくてよいことを子供が感じられるようにしましょう。
- 事件に関するニュースを見る時間を制限すること
ニュースを見なければならないのだったら、親と一緒に短時間だけ見てテレビを消しましょう。同じニュースを何度も繰り返して見ないように気を付けましょう。
- 日常生活を維持すること
食事時間、勉強時間、お手伝い、就寝時間など、できるだけいつもと同じようにするようにしましょう。ただし、勉強に身が入らなかったり、寝つきが悪くなるかもしれないので、ある程度の柔軟性は必要です。
- 就寝時はいつもより子供との時間を長目にとり、本を読んだり、静かなゲームをしたりすること
本を読んだり、静かなゲームをするのは、日常感覚を失わずに、落ち着いた雰囲気で、親近感や安心感を増やします。もし電気を点けたまま眠りたいと子供が言う場合は、そうさせましょう。
- 健康管理を怠らないこと
ストレスは大人でも子供でも健康に影響が出やすくなります。子供がきちんと睡眠と栄養をとっているか確認し、運動もさせましょう。
- 犠牲者やその家族にお祈りや慰めの気持ちを表わすこと
子供を教会に連れて行ったり、詩を書かせたり、絵を描かせたりするなど、子供の気持ちを表現させたり、犠牲者やその家族を自分なりの形でサポートしていることをわからせるのに、よい機会かもしれません。
- 学校が子供に対応するのにどんな用意をしているか知ること
多くの学校は閉鎖せず、学校が子供達が知っていて信頼できる人達とのつながりを維持する役割を果たします。脅えたり、不安で、家に閉じこもりたがる子供もいるかもしれませんが、学校内で事件が起こる可能性が低いこと、大人が普段より注意を払っていること、非常手順が各自の安全を高めることを話しましょう。それでも、子供の脅えがひどいようなら、無理をして学校に行かせる必要はありません。多くの学校では、親子対象のカウンセリングサービスも整えていると思います。