アメリカの教育事情〔3〕:
補習プログラムと転校の権利問題

No Child Left Behind Act(“いかなる子供も取り残されてはならない”という法律)によって、子供達の平均学力が思わしくない学区は補習教師(tutor)と契約し、成績に問題のある子供の補習を学校側の責任として施さなければならないとされている。法律上では、州に認められた私営の補習会社、宗教機関、学校・学区が補習を行う資格があるとされ、特に貧困レベルの高い学区には、子供が親の選ぶ補習プログラムが受けられるように、何百万ドルもの資金が援助されている。このほど、シカゴ市では、学校外派遣の教師が学校内で補習をすることを全面的に禁止し、補習教師に普通支払われる倍の報酬で学校内の教師に補習の担当をさせるという案がイリノイ州教育委員会に認められ、法律の意図を取り違えているのではないかと話題になっている。(州で認められている12の私営の補習会社の教師報酬平均が1時間24ドルであるのに対し、補習プログラム案の場合45〜60ドルで、補習運営に多額な費用が必要となる。)実際、法律では不適切な学校教育を施している学区自身での補習提供を禁じているのだが、州職員が不適切な学区の申告を怠っているため、本当なら不適切学区リストに載るであろうシカゴ市が補習提供資格を得てしまった。法律履行の監視を担当している連邦教育局職員は、「学校教育を適切に施していない学区に、最初の教育に失敗したという理由で、今度は補習教育の開発を目的に、援助された資金が費やされる形になるのはどうかと思う。」と話している。法律では、適切な教育を施していない学校は、子供の希望があれば、学校側でバスを提供し、別の学校に転校させることも命じているが、イリノイ州でその対象となる170,000人の生徒達の中で実際に転校する例は1%にも満たず、ほとんどは転校の機会さえも与えられていない。今回のシカゴ市の補習プログラム案は、教育レベルの低い学校に通う生徒達が、近くのレベルのもっと高い学校の補習を受けることができるようになっているものだが、補習システム実行にともない、不適切な教育を施されている生徒達の転校の権利がますます軽視されることになりそうでもあり、連邦教育局が補習プログラム案許可の取り消しをイリノイ州教育委員会に求める方向になるようである。

2003年1月14日付、Chicago Tribune
“City tutor plan called wrong”
(Section 2, p.1、6)より要約

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