アメリカの教育事情〔4〕:
文法教育問題

アメリカの大学生として最も必要だと考えられるスキルなのに何故か高校で重視されていない学習内容というのは『文法』だという結果が入試で有名なACTの調査で明らかになった。6種類のwritingのスキルの中でも、文法(grammar)と慣用法(usage)は最低限にしか教えない学習内容と調査に参加した700人以上の高校の英語(=国語)教師が答えており、むしろ重要なスキルだと考えている大学以上の高等教育レベルの教育者(*英語だけではなく、数学、科学、社会科学の分野も含む)とギャップができてしまっている状態なのだ。具体的には、83%の高校英語教師が句読法(punctuation)、90%以上が文の構造(sentence structure)や作文テクニック(writing strategy)、構成(organization)や様式(style)を教えているのに対し、文法と慣用法は69%にとどまった。実際、昨年のACT受験者の成績を見ても、文法と慣用法はどの科目を見ても試験内サブセクション中最低平均点を記録しており、イリノイ州平均では最高18点中9.5点という大学で勉強を始めるのにぎりぎりの線“以下”だったそうである。Northern Illinois Universityの1年生履修の作文クラスのディレクターは、95%以上の1年生の作文に文法的間違いがあると見ており、高校の教師が時間的に作文の宿題を多く課せず、文法の間違いも直さないこと、教師自身が文法や慣用法に不確かな場合があることなどの反映なのではないかと考えている。また、文法のなっていない作文によって職を失ったり、裁判に負けたり、他人に見下されたりすることもあるほど、正確な文法というのは権威や信用を得るのに大切であることも指摘した。今後ACTやSATといった入試では作文を試験内容に加える方針なので、生徒の試験成績にも影響を与えるだろう。

頻繁に見られる文法の間違い

  • 主語−動詞の1〜3人称が揃っていない(主語が“I”なのに動詞に3人称の−sがついているなど)

  • 再帰代名詞(myself、herselfなど)をいつ使うかがわからない

  • 動詞フレーズ(“take out”“take on”“take to”など)の区別ができない

  • 似たような単語(“its”と“it's”、“who”と“whom”など)の区別ができない


  • 2003年4月9日付、Chicago Sun-Times
    “Grammar valued more in college than high school”
    (Education Section)より要約


    【考察】

    ACTの調査は、実際にアメリカの大学で、日本でしっかり英語を勉強してきた留学生の方が、アメリカ人の平均的な学生や小・中学校レベルからアメリカに移住して英語を話すのには問題がない移民の学生より作文がしっかり書けていることが多々あるという現象を裏付ける内容だと思います。高等教育(大学以上)は、1にペーパー、2にペーパー…と言ってもよいほど、作文重視になりますから、従来の日本での文法重視の英語教育の効果がこういう面で発揮されるんですね。反対に、義務教育時代から現地校に通い、そのまま大学進学という予定で、丁寧な作文指導や文法学習に力を入れていない学校(現地校)にあたってしまった場合、後に苦労することになるわけです。実際、現地校に通う子供の文法面の学習に疑問を感じるという意見も頻繁に聞かれるのですが、疑問が感じられる時点で子供さんより皆さんの英語文法力の方があるわけですから、学校の先生に「もっと文法を指導して下さい。」と要求している間に、どんどん気が付いた点を家庭で指導していった方が、子供の文法の“センス”が早く磨かれると思います。基本的な文法のセンスが身につけば、例えば、仮定法や完了形といったようなややこしい文法や慣用法なども質のよい文章を読みこなすことで習得しやすくなると思います。たまたま今回浮き彫りになった現地校の英語教育の弱点が日本の従来の英語教育で重視されてきた面なのですから、英語のネイティブスピーカーではないからと子供の英語学習を全て学校の先生に任せるのではなく、日本で学んできた英語学習での長所を子供の英語学習のジャンプスタートのために活用しましょう!

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    04/03