アメリカの教育事情〔7〕:
メディアの発達に伴う子供の生活への影響Kaiser Family FoundationとChildren's Digital Media Centersによると、6ヵ月から6歳の幼い時期からテレビやビデオゲーム、コンピュータで2時間以上遊んで育つ子供の方が文字の学習に遅れが見られる傾向があると報告されている。2時間というのは、普通子供が外で遊ぶのと同じ時間とされ、読み聞かせの3倍の長さである。調査した1065ケースのうち、約3分の1の家庭ではテレビが子供部屋に置かれており、同じく約3分の1の家庭ではテレビがほぼつけっぱなしの状態にされており、テレビ使用時間の長いこのような家庭の4〜6歳の子供のうち、文字が読めるのは34%で、テレビ使用時間の短い家庭の子供の56%に比べて割合がかなり落ちる。同じ年齢グループの80%の子供達は毎日読んだり読んでもらったりしているが、本に費やす平均時間が49分であるのに対し、テレビやコンピュータの前で過ごす平均時間は2時間22分と差がある。米国小児発達学会のシャピロ博士は、メディアの利用は情報のアクセスがしやすくなり学習に繋がる反面、親がついていないテレビ観賞は子供にとってあまり意味がなく、不規則な食生活、睡眠不足、親とのコミュニケーション不足、肥満の原因になりやすいと警告している。その他のデータは次の通りである。7/04
- 6歳以下の子供のうち、48%がコンピュータを使用したことがあり、30%がビデオゲームで遊んだことがある。
- 90%の親が子供の見るテレビ番組を選んでおり、69%の親が子供がテレビを見る時間の長さを決めている。
- 時間が決められている子供は、そうでない子供に比べて1日に約30分間テレビに費やす時間が短い。
- 4〜6歳の子供の7%が毎日コンピュータを使っており、平均使用時間は約1時間である。
- テレビをつけっぱなしの家庭の65%は、誰も見ていなくてもテレビがついていることが多い。
- 72%の親はコンピュータが子供の学習に役に立つと思っており、43%の親はテレビが学習に役に立つと思っている。
2003年10月28日付、azcenteral.com
“Study Links TV Watching to Kids' Reading Trouble”
より要約【コメント】
幼児期に身体を使って外で遊ぶというのは、体力作りの面だけではなく、人間の五感から同時に得る情報、つまり、目で見て、耳から聞き、触って感じるなどして得られる情報を統合して理解するという学習活動に大事な役割を果たします。子供同士の喧嘩などを例にすると、相手の顔の表情を見ながら、相手の嫌がっている、もしくは怒っている声を聞き、自分が相手にぶった強さという情報を同時に学ぶことによって、子供は他の子供に対するぶち方の加減、acceptableな喧嘩の仕方を学んでいくわけですね。テレビやコンピュータだと視覚的な情報に限られてしまうだけでなく、自分の行動に対する直接のフィードバック(反応)も得られず、自分の経験を基とした社会性の学習が出来ません。特に社会生活に必要であるものごとの加減というのは、実体験がなければ理解できないものであり、幼児期の五感の統合の発達は後の社会性の発達に非常に重要な役割を果たします。ですから、シャピロ博士の指摘する生活上の問題点はもちろんですが、子供の社会的学習を促すためにも、メディアの使用によって外で他の子供達と遊ぶ時間が犠牲になるということがないように心掛けたいものです。