現地校裏話〔4〕:
バイリンガルの問題

私の勤務している学区では入学・転入時に子供の優勢言語を提出しなければならないことになっている。実際親の母国語が40ヵ国語にも及ぶ多文化地域なので、バイリンガル生活をしている子供の割合が非常に高いのだが、言語調査で多少混乱を起こしている状況が見えてきた。親が移民、子供はアメリカ生まれで実際子供は友達と英語で話すことが多いと、言語調査の記入用紙に子供の家庭での言語の欄に親の母国語と英語と両方が記入されている場合が多いわけだが、そうするとどうも学校側は英語に問題なしと安心してしまい、ESLの機会さえ与えず、2年生ぐらいになってからどうも学習問題があると注意信号がぼこぼこ出てきたりするのだ。家庭でどれだけ英語が話されているのかというのは各家庭割合がバラバラであるから、記入されている言語に英語が含まれていてもそれがモノリンガルで育つ子供と同じだと家庭側も学校側も安易に考えてはならないのに、手後れになりかけてやっと気付くというパターン。2年生になるまで放っておき、問題にやっと気付いて学習能力に問題があると決め付ける先生やスタッフが結構いるので、ミーティングでバイリンガルのケースが取り上げられた場合は、必ず子供が本などで新しい単語を見た時にどういう風に読もうとしているか確認し、フォニックスのようなテクニックが身についていないようだったら、そこからやり直さないと語彙を増やすのが難しいことを説明し、ESLのサービスをまず受けさせるように促している。実際、それでESLのサービスを2年生になった最近から受け始めた子供は、ESLのクラスが大好きになり、自信が出てきたのかクラスでも明るくなったという報告があった。キンダーガーテンぐらいからフォニックスを学校で習ったとしても、就学以前の家庭でのバラエティに富んだ英単語へのexposureに限りがある場合、どうしても英語の語彙の貯えが少なくなるわけだから、語彙の貯えが少ないうちにルールを先に教えようと思っても特に子供の場合応用するのが難しいと思う。幼稚園児ぐらいだと子供同士の日常会話に使われる語彙自体に限度があるので、会話がそこそこできているとすっかり英語のみで育つ子供と同じと思ってしまうところが落とし穴になってしまうのだが、大人でも自分ではそれほど使わないけれど、本に出てきたり話に出てきたりすれば認知できる言葉が多いように、子供も言葉のルールを理解し始めるのには認知できる言葉の貯えが必要であり、貯えの少ない子供が英語のみで育つ子供達と同じペースでフォニックスやら他のルールを与えられたところで、きちんと頭に入らなかったとしても、本当は不思議でもなんでもないのだ。要するに、言葉のルールを教え始めるタイミングが合っていないというわけ。なのに、タイミングを逃したからとルールを教え直す機会を与えず、どんどん先に進んでしまったら、取り残されてしまって当然ではないか。学校でESLのサービスを受けるべき子供がアメリカ生まれだって理由だけで放っておかれているというパターンが意外と多いんじゃないかって心配…。

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10/03