現地校裏話〔9〕:
私立学校参観
私立学校に行っている子供達の中にももちろん特別な学習ニーズのある子供達がいるわけで、そういう場合、親が自分の選んだ病院やエージェンシー等で独自に子供の心理・学習検査を進める場合と子供の住んでいる地域の公立学区に子供のニーズをはかるのに必要な心理・学習検査のリクエストをする場合と選択が2つある。そして、前者は家庭が全て自分の責任で負担し、後者は無料で行える。私は、公立教育機関で働いているが、私立学校に通う子供達の検査リクエストが来た場合に、子供の通っている私立学校に足を運び、子供のクラスの授業参観をしながら子供の様子を観察し、子供の学校で検査をするため、いろんな私立学校の様子を垣間見る機会があり、公立学校との違いを見ることが出来て、それがまた面白かったりする。まだ学校年度が始まって2ヶ月も経っていないので、検査のリクエスト自体来始めたところで、大して廻ってはいないのだが、今のところ、公立小学校の先生の方がいくらか威圧的で厳しいという印象がある。まぁ、もっと別の学校を廻ったら、その印象も覆される可能性は十分にあるのだが、公立学校の方が子供達の家庭背景がバラエティに富んでいる分、先生の対応が難しいのかもしれない。私が巡回する私立学校は宗教がベースになっているところがほとんどなので、各家庭の価値観が似ているし、経済的にも恵まれている家庭から来る子供達がほとんどである。そして、人種的にもかなり偏りがある。最初に行ったカトリックの学校は、校長先生を始めスタッフもそうで学校全体が非常にフレンドリーな雰囲気があり、5年生の文学のクラスも非常にリラックスしたアプローチを取っていた。テキストの読書をする時、そして、読んだ内容に関するワークブック、文法などのワークブックをする時も、生徒は皆自分の好きな場所で取り組むことが許されており、女の子達の何人かは後ろの大きなテーブルに集まってやっていたり、ある生徒は先生の机で、別の生徒は教壇で、幾人かの生徒は床に寝転んで、自分の机で取り組んでいたのはほんの3〜4人ぐらいだった。以前私が見たことのある公立学校の学級であったら、大騒ぎになり収集がつかなくなるところだが、好きな場所で好きなクラスメートと並んでいても、皆静かに取り組んでおり、先生からおしゃべりで注意される生徒がいなかったのが印象的だった。生徒がこの授業で自分の席に戻ったのは、授業の終わりに自分の荷物を取りに行く時ぐらいだったと思う。(私は自分自身が寝転がって勉強し続けてシリアスな腰痛を起こしたことがあるため、床に寝転んで勉強するのを認めるのは、よい姿勢の維持と発達という面から反対ではあるのだが。)生徒達のマナーもしっかりしており、私がゲストで授業参観に来たと知って、私のために自ら椅子を運んでくれた男の子がいたりして感心した。ただ、リクエストのあった子供の検査をして感じたのは、子供が静かで行動的に問題が少ない分、先生が子供のニーズを見逃しやすいようだ。ユダヤ教の学校は、カリキュラムの組み方に驚いた。1日の半分はヘブライ語を含むユダヤ教学にあてられており、つまりgeneral studiesと呼ばれる一般的教科は半日だけ、そして、1年を通してユダヤ教の祭日が多い。だから、私が授業参観に行く時間はよく確認が必要で、ユダヤ教学の時間にあたってしまうと授業で何をやっているんだかちんぷんかんぷんだから注意しろと言われている。ユダヤ教学とは別に教会の時間も午前中に毎日27分間ずつあり、ユダヤ教教育がかなり徹底しているのに驚いた。
今後も面白いと思ったことがあったら付け加えて行こうと思うのだが、現地校でも私立学校に子供を通わせるつもりの家庭では、学校の様子、教授法、カリキュラムなどを自分達の教育方針に近いものか、事前にきちんと確認する必要があると思う。
戻る
10/04