私立学校の特別支援教育サービスと公立学区との関わり合い


私立学校は教育法にとらわれずに独自の教育を施せるため、どんな教育内容やサービスかは一概にこうだとは言えないということは別のセクションで触れましたが、ここでは私立学校における特別支援教育サービスの例を参考のためにあげておきましょう。

学校によって公立学校のような特別支援教育サービスを設置しているかどうかはかなり差があるのですが、特に生徒数の多い学校ではなるべく特別なニーズのある子供達にも教育が施せるようにと公立学校に近いサービスシステムを取り入れる方向にあるようです。多くの私立学校では特別支援学級はなくてもリソースの先生がいて、特別なニーズのある子供達のクラスを回ったり、特定の時間だけニーズのある子供達を集めて小人数、もしくは、個人的に教えたりしています。特に幼い子供達を対象に一般的にニーズの高い言語病理士、作業療法士や理学療法士、心理士などを雇っているところもあり、学校内で必要なサービスが受けられるようにシステムが整っている学校もあるようです。…が、公立学校との大きな違いは、特別支援教育のサービスが必ずしも無料ではないようで、特にサービスの内容を決めるために必要な各種検査では、家庭側から直接学校に雇われている(スクールサイコロジストとは限らない)心理士などに高い検査申請料を支払うことになるのが珍しくないとのこと。ですから、特別支援教育の手続きを既によく知っている家庭では、検査代を払わなくてもよいように、学校で雇われている心理士などを通さず、子供の通う私立学校に公立学区へ問い合わせを依頼し、私立学校のある地域の公立学区のスクールサイコロジストや各種療法士に検査をしてもらうように手配をしています。公立学区は子供達が普段私立学校に通っていようとホームスクールをしていようと、必要な教育サービスを無料で供給することが法的に義務として定められていますので、普段公立学校とはなんの関係もないけれども、検査だけを公立学区に頼み、その検査結果を参考にその後の私立学校でのサービスをどうするか決定するということができるわけです。

公立学区がケーススタディ評価を担当する場合、検査のために公立学校のスタッフが私立学校へ向かえる場合は私立学校と連携で検査日をスケジュールするのですが、多くの公立学区のスタッフはまず公立学校に通う子供達の方を優先しますので、公立学校のスタッフのスケジュールに合わせて、指定された時間に親が子供を公立学校に連れていって検査をしてもらうこともあります。検査にかかる時間は必要な検査の種類や子供の集中力ややる気、態度、思考スピードなどによって差があるのと、1日にかける時間を長くする代わりにできるだけ検査日数を減らそうとするスタッフもいれば、何度も短時間の検査を行う形をとるスタッフもいます。子供が小さいうちは後者のパターンが多いかもしれません。公立学校のスタッフのオフィスで検査の場合、子供がテスト中に嫌がって非協力的になった時にはテストは無理に続行されませんから、突然予定より早く迎えに来るようにスタッフ側から親に連絡が行くこともありますので、スタッフや学校の受け付けなどに親の緊急連絡先を忘れずに伝えておきましょう。

普通、検査の大まかな内容は、子供の行動の観察、親や先生への聞き取り調査やアンケート調査、今までの成長経過や学習発達などの調査、学力や心理テストといったものになるのですが、検査開始前に公立学区のスクールサイコロジストや他のスタッフが子供の通う私立学校に来て、授業中の子供の様子を観察に来る場合があります。検査結果は親も含めたミーティングで報告されるのですが、これも子供の通う私立学校でされる場合と検査をしたスタッフの働く公立学校でされる場合とあります。全ての検査終了後にのケーススタディ評価時の公立学区のスタッフの役目としては主に検査結果の報告とアドバイスになり、IEPの代わりにISP(Individualized Services Plan)という形でまとめられます。実際に特別支援を施すのは私立学校のスタッフになるわけですから、サービス内容は私立学校側のスタッフが自分達のリソース内で提供できる範囲で決定し、公立学区からは基本的には私立学校でのサービスに必要な教材や機材、スタッフへのトレーニングの提供などが中心になります。公立学校だったらば受けられるサービスが私立学校では無理だということも珍しくなく、例えば、本当はバイリンガルの特別支援教育サービスが必要なところ、学校にバイリンガルのスタッフがいないために、親が希望しても、子供は英語だけによるサービスしか受けられないというケースも珍しくありません。公立学校の場合は、親の希望する教育サービスの妥当性が認められれば学校側で手配をしなければならないので、親は主にサービスの内容における判断力が求められるのですが、私立学校の場合は、学校側に提示されたサービスによって、子供のニーズに合った学校なのかどうか、ニーズが満たされない場合は、その分家庭側で補うことができるのかなどを判断する力が必要になってくるでしょう。

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05/21 updated