学校で働く専門家達


校長先生や各教科の先生達の他にどんな専門家達がアメリカの小・中学校で子供達の教育に携わっているのでしょう?ここでは一般的に多くの公立学校で見られる専門家達をご紹介します。学区によっては各学校にこのような専門家達を設置していたり、学区内に設置して、いくつかの学校を掛け持ちさせたり、そして、比較的小さな学区でしたら、地域の特別支援教育機関から特定の学区に派遣されている場合も多いです。呼び名も学区や州によって多少違いがあります。

 スクールサイコロジスト(School Psychologist)
スクールサイコロジストは思うように学習効果が得られない生徒の知的発達や心理的状態を、テストや聞き取り調査、生徒の観察などを通して評価し、その生徒が今どんな状態に置かれているのかを診断します。そして、学習効果を高めるためには教室内外の環境でどんな調節がされるべきなのか、生徒の長所・短所を考慮しながら、個人に合わせたプログラムを考え、プログラムの効果を確認し改善していく中心的役割を果たしています。先生方のコンサルタント的な役割、特別支援教育に関する窓口的役割も担っています。学区や学校によっても役割に多様性があり、学校全体の学習面や社会感情面の介入プログラムのサポートや監督に携わっていたり、特定の介入スキルやスタッフ育成に携わっていたり、複数の学校を掛け持ちしていない場合はカウンセリングを担当している場合もあります。
 スクールソーシャルワーカー(School Social Worker)
スクールソーシャルワーカーは生徒達の社会的成長を促したり、心理面の健康を高めるために、個人カウンセリングを行なったり、社会発達に心配のある生徒を集めて小さなグループで必要なスキルを集中的に教えたり、教室を回って精神衛生や社会道徳(?)の授業を行ったりしています。生徒の心理面の健康状態は家庭での生活状況に密接に関係しているので、場合によっては家庭がどんな状態であるのかを知るために家族と連絡を取ったりもします。スクールカウンセラーと呼ばれていたり、ソーシャルワーカーとは別のカウンセラーが同じ仕事を担当している州もあります。
 スクールナース・養護教諭(School Nurse)
日本の保健室の先生と同様、学校での生徒達の身体面の健康を管理しています。視力や聴力のスクリーニングを担当したり、決まった時間に薬を飲まなければならない生徒の薬を管理して投薬実施を監視したり、生徒の急な病気や怪我の応急処置を担当しているのですが、免許に何種類かあるためその免許によって点滴や注射が出来なかったり、特別支援を必要とする生徒の健康記録のレビューや便宜の考案が出来ない場合もあります。最近は学校でのナースの活動に制約のないCertified School Nurse(District Nurse)の数が増えてきたのではないかと思います。
 言語病理士(Speech and Language Pathologist)
言語病理士は言語発達でサポートの必要な生徒のためにプログラムを考え、教室内外での個人や少人数のグループ単位で言語訓練をしていきます。最近は、プリスクールやキンダーガーテンの教室に入ってクラス全体の言語スキルの発達を促したり、幼児期に言語発達が遅れていた生徒の口頭のスキルから読み書きのスキルへの移行のサポートをすることも増えてきました。
 リソースの先生(Resource Teacher/Student Support Teacher/Special Education Teacher)
既に学習面での問題が確認された生徒の学習プログラムを通常の学級のカリキュラムに沿うように実行していく特別支援教育専門の先生です。特別支援学級というのではなく、生徒がニーズのあるスキルを伸ばすためにリソース教室に来て、個人や小人数で必要学習内容を補強的に教えてもらうpullout(プルアウト)の形と先生が生徒の学級に行って生徒の教室内で指導するpush in(プッシュイン)の形の2種類の指導方法があります。通常の学級の先生とチームティーチングをしていることも多く、その場合は日本の学校でいう副担任の役割も兼任します。
 特別支援学級の先生(Instructional Program Teacher/Special Education Teacher)
上記にあるリソースの先生がニーズのある生徒達の通常の学級活動をサポートするのに対し、特別支援学級の先生には通常の学級のカリキュラムとは関係なく生徒個人に合った学習スタイルで生徒個人のペースやレベルで学習が進められるように独自の教育プログラム、もしくは、カリキュラムがあります。小学校低学年レベルまでの基本学習スキルの内容のに集中するので、リソースの先生と違って体育や音楽や美術といった特別科目以外全ての授業を担当します。
 作業療法士(Occupational Therapist/OT)
作業療法士は学習に必要な細かい手先の動作面での発達にサポートが必要な生徒のためにプログラムを考え、訓練していきます。(例えば、ハサミの使い方や鉛筆の握り方、字を書く時に必要な手の動きや力のコントロール、タイピングなどが訓練の対象になります。)言語病理士と同様、プリスクールやキンダーガーテンの教室に入ってクラス全体の作業スキルの発達を促すことも増えてきました。それから、医師に自閉症スペクトラム障害や注意欠陥多動症などの発達障害の診断を受ける生徒数が増えてきたことに伴い、感覚統合の問題も扱うようになりました。感覚的な刺激に過敏過ぎる生徒や反対に鈍感過ぎる生徒の感覚関連のセラピーや教室内の環境の調節や授業中の対策などを作業療法士が提案、先生にコーチすることが多くなりました。
 ESL/ELL/ELの先生(English as a Second Language/ESL・English Language Learner/ELL・English Learner/EL Teacher)
第一言語を英語としない生徒達の英語習得と学校生活への適応を進めるための中心的役割を果たしています。皆様にはお馴染みの先生ですよね?従来はESLと呼ばれていましたが、ここ10〜15年ぐらいでしょうか、呼び名が多様化しており、現在はイリノイ州ではELと呼ばれ、州によってはELLや他の名前で呼ばれることが多くなりました。
 スクールカウンセラー(School Counselor/Guidance Counselor)
スクールカウンセラーは、イリノイ州の場合、小学校には設置されていない場合が多いです。日本でスクールカウンセラーと言われる専門家の仕事内容は、こちらではサイコロジストやソーシャルワーカーが受け持っており、こちらのスクールカウンセラーは、才能を伸ばしたり進路に結びつく学習活動のガイダンスを行うアカデミックアドバイザーで、504プランに関連するサポートはスクールカウンセラーの管轄範囲になりますが、特別支援に関連するサービスは担当しません。
 理学療法士(Physical Therapist/PT)
理学療法士は作業療法士と違って身体全体の運動面での発達にサポートが必要な生徒のためにプログラムを考え、訓練していきます。理学療法を必要とする生徒の人数は言語療法や作業療法に比べて少ないため、ほとんどの場合、複数の学区を管理下に置いている特別支援教育機関から学校に派遣されています。
 行動訓練スペシャリスト(Behavior Intervention Specialist/Behavior Interventionist)
自閉症スペクトラム障害や注意欠陥多動症などを持つ生徒の中でも、学校生活を送る上での行動面で重度の支援ニーズがある生徒の行動分析をしたり、対処方法を考えてスタッフの訓練をしたりします。スクールサイコロジストのサポート的機能を果たしている場合が多く、サイコロジストに時間の余裕がない時に担当を依頼され、理学療法士と同様、特別支援教育機関から派遣される場合が多いです。
 リーディングスペシャリスト(Reading Specialist/Reading Support Teacher)
生徒のリーディングスキルを集中的に伸ばす介入プログラムの運営を担当している専門家。通常の学級でリーディングの力の伸び具合が遅い生徒達を集めて教室内外で少人数のグループに集中的に読字・読解スキルを中心に学ばせたり、先生にリーディングに関する教授法や補習的プログラムや資料などを提供してコーチもします。サポート専門家ですが特別支援教育レベルのサポートではありません。リーディングの介入プログラムでの生徒の学習成果などを頻繁な小テストなどで確認しながら、特別支援が必要かもしれない生徒のケーススタディ評価のリクエストをするなど重要な役割を果たします。
 数学スペシャリスト(Math Specialist/Math Support Teacher)
生徒の数学スキルを集中的に伸ばす介入プログラムの運営を担当している専門家。仕事の内容はリーディングスペシャリストの数学版になります。こちらもサポート専門家ですが特別支援教育レベルのサポートではなく、リーディングスペシャリストと同様、特別支援が必要かもしれない生徒のケーススタディ評価のリクエストをするなど重要な役割を果たします。

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05/21 updated