バイリンガル環境での勉強法アイディア集 外国語である英語で学習課題をこなすには、母国語が英語のクラスメートに比べて同じことをやるのに倍以上時間が掛かります。しかし、ESLの子供達の1日の長さが48時間であるわけでもなく、宿題の締め切り日も2倍伸ばしてもらえるわけでもありません。授業もESLの子供が理解していようがいまいが関係なくどんどん進んでいきます。ですから、できるだけ無駄な時間を省き、少しでも要領よく学習に取り組むことが必要になります。特に英語があまりできないのに既に授業や宿題の内容が高度になっている高学年の子供にお勧めの勉強法をいくつかあげてみようと思います。授業関連
宿題関連
- 調べ方の確認
辞書の使い方、教科書の巻末にあるインデックスの使い方、各課末の概要やキーワードリスト、目次など、意味がわからない場合にどこにどんな情報があり、どう調べるのかをあらかじめ確認しておきましょう。辞書だけを使っているとどの言葉が学習内容に重要でどの言葉が重要ではないのかがわからないので、必ず教科書に目を通し、重要ではない言葉を調べるのに必要以上の時間をかけないように注意しましょう。
- 予習:キーワードリスト
英語のボキャブラリがないうちに教科書を読んで理解するのはとても時間が掛かります。知らない単語をいちいち調べて、1つ1つの文章の意味がわかったとしても、内容全体を把握し理解するのはまた別のレベルの話です。そして、せっかく調べた単語の意味を忘れてしまい、同じ単語を何度も誰かに聞いたり、辞書で調べ直すのは時間の無駄になります。教科書の各課ごとにキーワードのリスト(Glossary)のセクションがあったり、先生によっては前もってリストを配ってくれるかもしれません。1枚の紙に英語のキーワードとその意味を日本語で書き、授業中でも宿題をやる時でもノートと並べてすぐ意味が確認できるようにしておきましょう。(カタカナ等で発音もメモしておくと授業中先生が今何の説明をしているのかを察することができます。)リストにない単語でも、数学や理科の文章問題に頻繁に出てくるフレーズ(例えば、不等式を習っている時は“more than”“less than”等)なども書き出しておきましょう。
- 予習:概要・まとめ
各課、もしくは、各セクションの終わりにまとめが載っていることが多いと思いますので、まとめの部分を先に読むようにしましょう。英語がある程度できる親や家庭教師がまとめを読んで日本語で説明したり内容について話し合う方が、子供が各課の初めから自分で単語を調べて理解しようとするより、子供の学習知識という意味で意義があります。
- 予習/復習:日本語の関連書
アクセスがあればの話になりますが、学校の学習内容と並行した内容の日本語の本や記事などを読みましょう。教科によっては日本の学校の教科書などがあると便利かもしれません。言語に関係なく知識さえしっかりしていれば、英語が上達してくるとすぐ応用でき、クラスメートに追いつくのが楽になります。英語習得を優先させて、知識習得を後回しにすると英語が上達しても授業内容に追いつくことが難しくなります。
- 授業ノート:余白
ノートはなるべく大き目で、後で行間に日本語で意味を書いたり、メモを加えたりできるように、ノートを書く時は行間に十分余白をあけるようにしましょう。
- 授業ノート:音の記憶
授業中、黒板をうつす以外に余裕があれば、耳に入ってくる単語をできるだけノートに書いてみましょう。スペルがわからなければカタカナでもよいと思います。もし、フォニックス(発音とスペルの関係)が習得できていれば、休み時間や家に戻った時など、音を頼りに単語を調べることができますし、そうすることによって新しい単語を覚えることもできます。とにかくなんでもメモしてみる癖をつけることです。
- 授業ノート:暗号・省略
長い単語を省略したり、よく出てくる単語の暗号を自分で考え、授業中、ノートに自分の暗号を使うようにすると、スペルを考えている間に話を聞き逃したりすることが少なくなります。
- 授業ノート:録音
英語がある程度できて、耳がよく、聞いて覚えるのが得意な子供に限っておすすめできる方法です。ノートが取れないからと録音しても、家に戻って授業と同じ時間のテープを聞き、聞きながらノートを取り直すのは非常に時間がかかるので、聞いて学ぶのが得意でないとテープが増えてただストレスになるだけです。書くのが苦手で聞いて覚えるタイプの子供でしたら、家のお手伝いをしたりしながらテープを聞くようにするとよいと思います。
- ノートの復習:“家庭教師”
子供が学校で学んでいることを親に教えるという形を取ると、何が理解できていて、何がまだ理解できていないのかわかります。親が英語が苦手で勉強を見てやることができないという場合は、発想を転換して、子供に教えてもらうという形にして学習のサポートをしてあげましょう。誰かに教えることによって、内容を復習することになり、反対に理解も記憶も高まります。
- ノートの復習:書き直し
英語がある程度できる場合、ノートの書き直し、または、コンピュータでタイプのし直しをするとよい復習になり、学習内容が頭に入ります。書き直しをしている時に意味がわからなかった部分を教科書で調べ、書き加えればよいのです。
- ノートの復習:蛍光ペンとメモ
書き直しをしている余裕がない場合は、蛍光ペンや貼り付けのできるメモ帳などを使って、ノートの大事な部分に印をつけたり、足りない部分を付け加えておきましょう。試験前などに優先的に復習する目印になります。
05/02
- 宿題管理:宿題確認表
簡単な宿題の内容と宿題の締め切り日を毎日書き出す表をつくって、家族の見えるところに貼っておくことをおすすめします。ストレスが溜まっている時はもの忘れもひどくなるので、子供自身以外でも、少なくとも簡単な宿題内容を把握し、提出日前日に宿題が終わっているか確認する人を必ず決めておきましょう。
- 宿題管理:時間割
宿題が複数ある場合、1つ1つ完璧にしようとすると1つ終わらせるのにどれぐらい時間がかかるか分からず、初めに取り組んだ宿題に時間を掛け過ぎると次の宿題が実はもっと簡単であっても全く手をつけることができなくなることもあります。1つの宿題にかける時間や量を決め、区切りがついたところで、次の宿題に移るという方法をとりましょう。例えば、70〜80%まで終わらせたら、次の宿題に移り、最後の宿題が終わったところで時間の余裕があったり疲れていなかった場合は、残りの20〜30%を終わらせるという形です。英語ができないというのはハンディキャップであると共に、宿題が終わらせられなくても言い訳のできる立場であることを利用し、残りの20〜30%は他の宿題があって終わらせることができなかった、もう少し時間が欲しいと先生に伝えましょう。全く手をつけていない状態よりは努力をしている姿勢が先生に伝わります。
- 作文の宿題:日本語の下書き
エッセイや作文の宿題の場合、日本語ができるという長所をおおいに利用して、下書きを日本語で書き、自分の考えのまとめ方の練習をしましょう。(完璧な日本語ではなくメモ程度でよいのです。)英語に苦労している段階なのに‘英語でものを考える練習をしなければ’と考え、初めから英語で書き出そうとすると、ものを考えるよりも英単語や英文を考えるだけでどんどん時間が経ってしまいます。そして、せっかく数文書いたところで、考えが変わったりすると、また初めからやり直し。英文の練習にはなりますが、学習の目的である肝心の思考作業がストップしてしまいます。英文に時間をかけるのは内容がある程度形になってからにして、必要以上に辞書とにらめっこをしながら英文を考えることに時間をかけないようにしましょう。英語の文章を読みこなし、英語のボキャブラリが増えてくれば、初めから自然に英語で書き出せるようになります。自己表現の基礎は自分の考えを与えられた時間以内にいかに上手くまとめられるかどうかなので、英語向上を理由に、テーマに沿って考える練習をサボタージュしないように心掛けましょう。
- 作文の宿題:日本語の利用
高学年になればなるほど、自分が調べたり読んだりしたものを、“自分の言葉で”レポートにまとめさせる課題が多くなります。本の文章をそのまま書き出すことは著作権やオリジナリティ等の問題で眉をしかめる行為とされる社会なので、自分の考えをまとめる時にいかに自分の言葉や表現が思い付けるかというのが鍵になります。英語のボキャブラリが少ないので、他人の文章をコピーしても仕方がないと考えがちですが、実は日本語ができるということが自分なりの英語の表現を思い付くのに非常に簡単で効果的な手段になります。例えば、“We had heavy snow today.”という1つの英文を「今日はひどい雪だった。」と日本語に直し、その日本語から再び英文に訳そうとすると“It snowed a lot today.”“We had a lot of snow today.”“Today's snow was terrible.”“We had snowstorm today.”“This snowstorm was incredible.”など意味を大きく変えずにいろんな表現ができます。元の英文にこだわってしまうと、英文の意味している内容を消化するどころか、目に見えている英文や英単語だけのパッチワーク作業になってしまい、思考作業がそのレベルでストップしてしまいます。日本語に直すことで、自然に自分の読んだ英文の内容を消化する作業が促され、そこから自分なりの英語表現を思い付くことも比較的易しくなります。子供がまとめ方に戸惑っている場合は、先に自分が理解したことを日本語で書かせたり説明させたりしてみましょう。
- プロジェクト:ステップ分け
1日では終わらせることのできない大きなプロジェクトの場合、やらなければならない量の多さに圧倒され、どこから始めたらよいのか戸惑い、全く手がつけられなくなることもあります。内容を幾つかのステップに分け、リストにした紙をフォルダーや紙袋に貼り付け、終わった部分からどんどんその中に入れていくという方法をとってみましょう。要領はエッセイなどを書く時と同じです。全く先のことを考えず、一文単位で考え進める、つまり、一文を書いて、その文に呼応して次の文を考え始めるようなやり方だと、途中で考えが脱線し初めからやり直しということも起こりうるので、ステップ分けはプロジェクトの全体像を先に考えてから、各ステップに必要な情報を集めるという形にしましょう。