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まなみの中のまなみU

目次へ春の桜と

まなみは、春になると必ず行く場所がある。それは、東京都の西部に位置する「国立駅から続く桜並木」だ。たぶん全長1KMくらいだと思われる直線の幅の広い道路に、ずっと桜並木が続いている。その桜並木は、それは見事で、大ぶりの桜の樹木に、毎年のごとくきれいな花を咲かせて、我々毎年の楽しみとしている人たちを、色や艶やかさで魅了してくれる。しかし、この桜の木を、そんなおおらかで素敵な気持ちで見られるようになったのは、いつのころからだろう。

まなみは、小学校の低学年の頃から、その桜の木の存在は知っていた。母が毎週そのあたりに用事があり、よく連れて行かれたりしたので。毎年春になると、桃色の花が、頭上に降ってくるさまを、子供ながらに楽しんだ。しかし、小学校6年の頃に、その桜の並木の近くに、ピアノの専門教育を受けにいくことになり、いつからか、毎年春の桜は、「今年もピアノが一年を待っていますよ」という、とてもいやな信号になってしまった。

レッスン場に向かうバスの車窓に目を注ぐと、そこには、こぼれんばかりの満開の桜…しかし、それも目に入らない…いや、目に入れたいとは思わなかった小学生は、今考えても変だし不健康。しかし、確実にまなみはそう思っていた。 そんな気持ちで続けたレッスンは、どう考えても続くわけはなく、あっと言う間に3年がたち、レッスンは、まなみの「もう…ちょっと休憩したいんですが」の一言で、あっけなく終わった。

あのときと同じ桜の木を見て、「きれい」といえる気持ちになったまなみ。普通に花を見て、きれいと思わないなんて、いくらピアノがうまくなってもだめよ・・・。


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