昨年度(2004年4月-2005年3月)、香川大学の3名の教職員と1名の学生が逮捕された。
そのうちの1名が岩月氏である。
最初は医学部の職員が収賄罪で逮捕され、翌年の1月22日に解雇処分となった。
医療機具の購入を巡り、現金20万円を受けとったとして、香川大学医学部の職員が収賄
の疑いで逮捕されました。逮捕されたのは、香川大学医学部の医用機器室長、那須教生容
疑者(53)です。那須容疑者は、02年4月頃、香川大学附属病院が人工肺製品などを
購入する際に便宜をはかった見返りとして、東京都文京区に本社がある医療機器メーカー
「トノクラ医科工業」から現金20万円を受け取った疑いがもたれています。「トノクラ
医科工業」の元営業部長・杉江美津夫容疑者(56)と、岡山営業所長の藤原光司容疑者
(34)の2人も贈賄容疑で逮捕されました。調べに対し、那須容疑者と藤原容疑者は容
疑を認めていますが、杉江容疑者は「研究費として渡したものでわいろではない」と容疑
を否認しています。香川県警はけさから香川大学医学部附属病院などを家宅捜索し、証拠
品などを探すと同時に余罪がないかどうか調べることにしています。
逮捕された那須容疑者は、21年間手術現場で医療機器の操作などを担当していて、人工
心肺の機器の購入に大きな発言権を持っていたということです。香川大学では02年と
03年で総額およそ4200万円の人工肺製品などを購入しています。香川大学医学部の
長尾省吾病院長は、「今後、様々な医療機器の購入や運用についてチェック機能を強化し
たい」と話しています。
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次が岩月氏である。わずか11日後に複数の教職員が逮捕される大学というのも珍しいであろう。
心の病の相談に訪れた女性に対し、心理療法と称してわいせつな行為をしたとして、
高松地検は七日、準強制わいせつの疑いで、香川大教育学部教授の岩月謙司容疑者
(49)=香川県高松市昭和町一丁目=を逮捕した。香川大によると、同大の現職
教授が逮捕されるのは初めてという。
同地検は昨年十二月、岩月容疑者を嫌疑不十分で不起訴処分にしたが、高松検察
審査会が今年七月に不起訴不当と議決したことを受け、再捜査していた。
調べでは、岩月容疑者は二〇〇二年四月二十七日から二十八日にかけて自宅で、
神経症的な症状に悩む二十代女性に対し、自分に従うことが心理療法を行う上で必
要だと思い込ませ、治療として胸や下腹部を触ったり、寝室で抱き合うなどした疑
い。
調べに対し、同容疑者は「一緒に浴室や布団に入ったことはあるが、わいせつな
行為はしていない」と容疑を否認している。
二〇〇二年五月、女性が香川県警に告訴。高松地検の不起訴処分に対し、同検察審
査会は議決理由で「治療として下着姿で抱き合った行為に正当性はない」と指摘した。
野島光博同地検次席検事は「再捜査で、女性の供述の信用性が高いと判断した」と話
している。
岩月容疑者は一九九三年に香川大助教授、二〇〇〇年から同大教授。専攻は人間行
動学、動物行動学。「女は男のどこを見ているか」など多くの著書があり、親子、男
女関係に関する独自の説はテレビ番組などでも紹介された。
香川大は告訴後の昨年十一月に調査会を設置。同地検の不起訴処分を受け、今年四
月、岩月容疑者を厳重注意処分としていた。
極めて遺憾
木村好次学長のコメント 学外の私的な行動であったとしても、社会的使命を
担う大学の名誉・信用を失いかねない事態を生じさせたことは極めて遺憾であり、
深くおわびしたい。事態の推移を見守りながら大学として適切に対応する。今後、
他の教員に対しても、本学教員としての社会的責任と自覚を再認識するよう注意を促したい。
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香川大教授、準強制わいせつ容疑で逮捕 相次ぐ不祥事に対応苦慮・「私的なこと」強調/毎日新聞より
高松地検が香川大教育学部教授、岩月謙司容疑者(49)を準強制わいせつの
疑いで逮捕した7日、高松市幸町の同大では、記者会見が開かれた。同大では先月、
医学部付属病院の室長が収賄容疑で逮捕されたばかり。相次ぐ不祥事に、
関係者らは対応に追われた。
会見では、高木健一郎理事が、出張中の木村好次学長の「誠に申し訳なく、
学生や受験生に及ぶ影響を考えると心の凍る思い。学外の私的な行動であっても、
教員として大学の名誉・信用を失いかねない事態」などとするコメントを代読。
加野芳正・教育学部長が「断腸の思い。学生の無念さと動揺を思うと大変申し訳ない」
などと述べた。
一方、岩月教授の処分については「事態の推移を見守る」として、当面行わないことを言明。
逮捕容疑についても「大学を離れた私的なこと」と繰り返した。
被害者への謝罪も報道陣から促されて、加野学部長がようやく
「申し訳なく思っている」と述べた。
今回の件について、同大は、03年11月に学内に6人のメンバーによる調査会を設置、
弁護士ら2人も参加。双方の言い分に食い違いがあるため、真相の解明に至らず、今年3月に解散。
4月に加野学部長が岩月容疑者に「誤解を受けるような行動は慎むように」などと厳重注意し、
岩月容疑者は「分かりました」と話したという。【内田達也、高橋恵子、南文枝】
12月8日朝刊 (毎日新聞) - 12月8日17時32分更新
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当事件で、岩月氏に強制わいせつ罪の主観的要件は成立すると解する。
強制わいせつ罪の主観的要件として、
行為者自身の性欲を刺激し、あるいは満足させるという性的意図の下に
されることが必要とされている(判例、但し批判強し)
行為者の主観的傾向も考慮せざるをえない。
この意味で、行為が被害者の性的侵害となることの認識は必要と解される。
岩月氏の育て直しの目的のひとつに「クライアントの治療」があっただろう、
但し、「自己の性欲を満たす事」も目的であれば、 強制わいせつ罪の主観的要件を構成する。
岩月氏の言葉、「究極の利己が、究極の利他になる」は、強制ワイセツ罪の主観要件の動かぬ構成要素である。
行為者の主観的傾向を見ると、岩月氏は相談を寄せた女性20名と性交渉に及んだそうだ(検察の冒頭陳述より)
これも強制わいせつ罪の主観的要件を構成する。
育て直しが「法令または正当な業務による行為」であれば、岩月氏の行為の違法性は阻却される。(刑法35条)
例えば、刑務官が死刑を執行しても殺人罪に問われることはなく、
産婦人科医が診療行為として女性の下腹部を触っても強制わいせつ罪に問われることはない。
しかし、岩月氏は医療に関する免許を何ら取得しておらず、
かつ育て直しの実態である風呂や布団の中での愛撫や性交渉などを著作に何ら記載していない。
よって、育て直しは社会的に認容された正当な業務とは認めがたい。
更に言うならば、岩月氏の育て直しは、治療の要件を全く満たしていない。
病名ですら、医学の素養の全くない岩月氏が一人で勝手に作り上げたモノである。
病態も治療効果も全く不明である。
当然ながら、このようなモノは療法とも治療とも呼ぶことはできない。
もし治療や療法という言葉さえかぶせれば、何でも正当化されるのであれば、
たとえ暴行であろうと強姦であろうと「一種のショック療法であり治療の一環で
ある」という主張が可能となるであろう。
このように治療とは決して呼び得ない行為にもかかわらず、岩月氏が相談者を
呼び出して、治療と称して裸にし性器や乳房などを触ったとなれば、単なる
ワイセツ行為というほかない。
仮に治療と称さなければ、「男女間の合意に基づく性行為であった」という
主張が可能となるが、岩月被告は裁判で治療だと言い張っている限りにおいて、
これはあてはまらない。
育て直しが「緊急避難としてやむを得ずにした行為」であれば、岩月氏の行為の違法性は阻却される。(刑法37条)
しかし、本事件の被害者の病状は神経症的症状であり、緊急に避けるべき危機が迫っていたのではなく、
「育て直し」によって生じた害は、避けようとした害の程度を明らかに超えている。
よって、育て直しは被害者の生命・身体・財産に対する危機を避けるためにやむを得ない行為とは見做されず、
違法性は阻却されない。
また、岩月氏が心神喪失(刑法39条)や
責任年齢に達しない(刑法41条)等により刑事責任能力が無い場合には刑事罰を免れる場合がある。
しかし、岩月氏は国立大学の教授で心神喪失の節は見られず、
かつ責任年齢に達している為、刑事責任能力の欠如は有り得ない。
よって岩月氏は有罪であると解される。
木村学長は岩月の育て直しを「学外の私的な行動」と称しているが、これは認められない。
岩月氏は、自らの35冊の著作のうち33冊で、香川大学助教授または香川大学教授と称しており、
その中の少なくとも8冊で、大学の研究室を使ってクライアントのカウンセリングを行っていたことを記載している。
つまり、岩月氏は「学内」で育て直しを行っていたことを意味する。
香川大学が岩月氏の著作を全く査読していなかったならば、善意無過失を主張できるかもしれない。
しかし、岩月氏の香川大学講義「マンウオッチング」の紹介を見て欲しい。
参考書に「娘の結婚運は父親で決まる」が選定されており、その本には育て直しに関する記載がある。
これらは、香川大学は岩月氏の著作を使って講義を行うことを公認していたという証拠であり、
それは直接的に執筆活動と育て直しを業として公認してきたという事を意味する。
つまり、岩月氏の育て直しは「学外」と「私的」いづれの要件も備えておらず、
かつ、香川大学は岩月氏の育て直しが学内で公的に行われていたことを知っていた「悪意者」である。
そして、香川大学の研究者総覧を見て欲しい。
香川大学は、自らのホームページで、岩月氏の「育て直し」に関する著作群を紹介している。
これも、岩月氏の「育て直し」と関連著作に承認を与えていると見なされるだろう。
特に「思い残し症候群」は、本事件の被害者女性が岩月氏にコンタクトをとるきっかけとなった本だ。
彼女が、香川大学の名前を信頼して岩月氏とコンタクトをとったであろうことは容易に想像できる。
よって、岩月氏の育て直しが学内で公的に行われていたことを知りながら放置し、
かつ承認さえも与えていた香川大学の監督責任は極めて重いと言える。
岩月氏の逮捕のわずか4週間後に、助教授が痴漢の現行犯で逮捕されている。
ここまで行くともう絶句するしかあるまい。
この助教授は、2月4日に諭旨免職処分となった。
迅速な処分の裏には、2月3日「香川大学を考える対話集会(第1回)」に措ける学生諸君の尽力があったそうである。
また香川大学で逮捕者です。香川大学の助教授が14日、
福岡県の電車の中で、女子高校生のスカートの中に手を入れてお尻を触ったとして現行犯逮捕されました。
福岡県迷惑条例違反の疑いで逮捕されたのは、香川大学留学センター助教授の永瀬雅浩容疑者(37)です。
福岡県警の調べによりますと、永瀬容疑者は 14日午前8時頃、福岡市の西鉄天神大牟田線の電車内で、
高校2年の女子生徒の背後からスカートの中に手を入れ、10分間にわたってお尻を触った疑いです。
女子生徒が運転士に通報し、駅員らが永瀬容疑者を取り押さえました。
永瀬容疑者は、大筋で容疑を認めているということです。
永瀬容疑者は、香川大学の留学生センターで留学生に日本文化や生活事情を教えていて、
福岡には論文を書きに行ったと話しています。永瀬容疑者の逮捕を受けて、
香川大学は14日夕方、緊急の謝罪会見を開きました。この中で木村好次学長は、
「社会の信用を裏切る事態であり、まことに申し訳なく、皆様にお詫びを申し上げる次第です」と謝罪しました。
香川大学は、今月21日の人事審査委員会で処分を決める方針です。香川大学では、去年11月に医学部の技師、
12月には教育学部の教授と現職職員の逮捕が相次いでいて、木村学長の監督責任も問われそうです。
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その6日後には、学生がストーカー行為で逮捕されている。
警察から警告を受けた上で更に同じ行動を繰り返す事が何をもたらすかも判らなかったのだろうか。
また香川大学で不祥事、学生がストーカー行為で逮捕
2005年1月20日 RSKニュースより
教授が逮捕されるなど不祥事が相次ぐ香川大学で、また不祥事です。
今度は工学部の男子学生が、以前交際していた女性にストーカー行為を繰り返したとして逮捕されました。
逮捕されたのは、高松市宮脇町に住む香川大学部工学部3年生の伊勢拓真容疑者です。
伊勢容疑者は、去年11月下旬頃、以前交際していた21才の会社員の女性が住むマンションに2回にわたって押しかけ、
ベランダからガラス戸を叩くなどストーカー行為を繰り返した疑いです。
相談を受けた高松南警察署では、伊勢容疑者に対し3回ほど口頭で警告を行いましたが、
その後も交際を求める携帯メールをしつこく送りつけるなど、
今後もストーカー行為を繰り返す恐れがある為、今日逮捕したものです。
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香川大学はいまだに岩月氏に何ら処分をおこなっていない。今年1月24日の毎日新聞の記事は、社会全体が香川大学をどう見ているかを端的に表している。
支局長からの手紙:「世間水準」の達成/香川
香川大学で不祥事が続いています。
発端は昨年11月、医学部付属病院の医用機器室長(53)が人工心肺装置の部品納入に関して賄賂をもらった疑いで逮捕された事件です。
その記憶も新しい翌月7日、何冊ものベストセラーを著している教育学部の有名教授(49)が準強制わいせつ容疑で逮捕されました。
それだけでも「大学存亡の危機」と言ってよいと思いますが、年が改まった今月14日には留学生センターの助教授(37)が、女子高生にちかん行為を働いた疑いで福岡県内で捕まってしまったのです。トホホ……。
それにしても、どれも古典的といえば古典的、単純といえば単純な事件ですね。
新聞記者として、“筋金入り”の犯罪者を何人も見てきた身には笑っちゃうようなものばかり。「どうせなら、こちらをウーンとうならせるような知能的犯罪を考えてみろよ」と思ってしまいます。(もちろん、冗談ですが)
ところで、一連の不祥事で二十数年前に取材したできごとを思い出しました。
ある地方の国立大学で女子学生数人が、宴席や研究室で教授に服を脱がされたり、体を触られたりしていた問題です。被害者から人を介して訴えがあり、取材を開始しました。
まだ、「セクハラ」などという言葉がない時代。警察も「女子学生が名乗り出てくれなければ立件できない」と及び腰でした。要するに「そんなに大騒ぎすることか」というのが当時の一般的風潮だったのです。
それでも私たちは「女性に対する人権侵害」という視点で記事化に踏み切りました。見出しは「ハレンチ教授」。今思うとこちらが恥ずかしくなるような表現ですが、当時はこれ以外に適切な言葉がなかったのです。
警察も動かない問題ということもあり、大学当局は処分を巡り小田原評定を繰り返すばかり。「学問の府」の当事者能力の無さにあきれましたが、それ以上に驚いたのが、批判を続ける私たちにある教授があびせた言葉でした。
「君は大学の自治をなんと心得る」
おいおい、軍国主義に抵抗した教授が大学を追われた滝川事件じゃないんだぜ。たんなる、ちかん男じゃないか−−と、世間常識と隔絶したその感覚に腰を抜かしそうになりました。
全国の国立大学は昨年4月から法人化され、生き残りをかけた大競争時代に入りました。
サバイバルレースをにらみ、最近、大学人から「世界水準」や「世界標準」という気負いにあふれた言葉をよく聞きます。私はそれより先に「世間水準」を達成してほしいと願います。【高松支局長・榊原雅晴】
毎日新聞 2005年1月24日
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法による制裁は人の自由を束縛(懲役、禁固など)したり、
人の財産に干渉(罰金、損害賠償など)する性格のものである。
したがって、人の権利を不当に侵害することがないよう、適用の条件が厳格に規定される。
その結果、社会から非難されるようなことでも、法的追求を免れ、
法の網から漏れるという空白部分が生じる。
その空白部分を埋めるのは、それぞれの社会組織の「規範」でなければならない。
すなわち、各社会組織において、法の網から漏れた部分においても、
個別の自主規範を設けなければならない。
さもなくば、その社会組織そのものが、社会全体から抹殺される運命にある。
杉本泰治・高城重厚著、技術者の倫理入門、丸善、2001.4
事件が起きてから法律によって責任を問い制裁するのは、後追いの手法である。
いかに多額の損害賠償を得ても、失われた生命は戻らず、失われた健康はしばしば回復不能である。
人の生命や健康にかかわることは、起きないように抑止する歯止めとなる行動が必要だが、
それには法による強制はほとんど無力である。
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岩月氏の「育て直し」は、社会から非難されるだけのことをはるかに超え、
法的追求の網に掛かり、99.9%の有罪判決が予測される事態に至っている。(*1)
事ここに至ってまで何ら処分を行わないならば、
香川大学は、何ら規範を持たず犯罪行為を容認してきた、と社会から判断されるであろう。
香川大学の諸君の迅速なる決断が望まれる。
(*1:日本における起訴された刑法犯の有罪判決率)