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『女神喰いケースB 第1章:張りつけ』

 

アドルがサルモン神殿へと辿り着いた頃、
二人の女神は彼の戦いを援護する為にこっそりと神殿内部へと潜伏したのだが、
効率を上げる為に二人がバラバラになって行動した事が災いする。

女神の一人フィーナが、不覚にもダレスの罠にはまってしまったのだ。


意識を失い、魔物達の手に陥ちたフィーナ。
あれから数時間が経とうとしているが、そんな彼女の連れてこられた先は、
本殿の深部に位置すると或る一室だった。




「……んッ」
不快な魔の波動に刺激され、無意識にうめき声をあげるフィーナ。
それがきっかけとなり、失われていた意識が少しずつ回復してきたようだ。

「そろそろ…お目覚めかな?」
(この声は…)

聞き覚えのある声によって、更にはっきりと意識を取り戻すフィーナ。
「その声は…ダレス!」
フィーナは声の主を探そうと、首を左右に振る。

「ダレス! どこに居るの!?」

そこまで言いかけて、フィーナの口は止まった。
ダレス云々よりも、もっと異様な事態に気が付いたからだ。

「これは……一体!?」
フィーナの目に映った異様な状況。
それは、両腕両足を拘束具に押さえつけられ、大の字に床へと張り付けられている自分の姿だった。

「ぐッ……!」

フィーナは直ぐに身動きがとれないものかと両腕両足に力を入れる。
だが、何れの拘束具も外れる気配は全く無く、それどころか、
腕や足に力を入れようとしても、普段の半分も力が入らない。

「なんッ…で…」

「フフフ…」

宙から聞こえてくるダレスの声。

「拘束具を外そうとしても無駄だ。 
この部屋にかけられたダーム様の呪法によって、女神の力はかき消されているのだ。
今のお前の力など、そこら辺の娘と同じようなもの」

「そんな…まさか……」
信じられないといった面持ちのフィーナ。
だが、実際に彼女の身体からは「力」と呼べる程のエネルギーは消えており、
否応なしにダレスの言葉を認めざる得なかった。

「あのまま女神の宮殿に潜んでいればよかったものを、
わざわざ私に捕まりに罠へとはまりに来るとはな…」

「黙りなさい!
既にアドルは6人の神官の加護を得て本殿へと向かっている。
あなたも彼によって…」

「フフフ…。
随分と威勢が良いが、そんな事よりも自分の心配をしたらどうかな?」

確かに状況はフィーナにとって圧倒的不利であり、ダレスの嫌味な忠告は
啖呵をきって突き返す事などできない。
漠然とであるが、囚われの身となってしまった事に対する後悔と恐怖の感情を
フィーナは心の中に抱き始めていた。


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