岩月謙司著 「思い残し症候群」 181-182頁 (2001年2月1日初版発行)
思い残しをはらす時は、本当に心が幼児に戻っているのだろうか。
その答えも「YES」である。
本当に幼児に戻っている。演技ではない。自己暗示でもない、いわゆる「赤ちゃん返り」
という現象である。(これは退行現象とは本質的に異なる現象である)
幼児に戻っているという決定的な証拠は、願望を冷凍した当時の言葉が飛び出してくることだ。
筆者が立ち会った例ではこんなのがある。当時、33歳の独身女性が、、
絵本を読んでもらっている時に発する言葉と、
おんぶをしてもらっている時に話す言葉が違うのだ、それぞれ方言が違うのである。
聞いてみると、彼女うは0歳〜3歳は埼玉県、そして7歳以降は茨城県に住んでいたという。
ほ乳びんでミルクを飲んでいる時は赤ちゃん言葉が頭に浮かび、
絵本を読んでもらっている時に頭に浮かんでくるのは東京弁、おんぶされている時に頭に浮かんでくるのは
埼玉県の越谷の言葉であった。ハイキングした時に浮かんできたのは、茨城弁であった。
思い残したことを明らかに覚えている項目、たとえば、彼女の場合で言えば、
7歳の時、海岸で父親と一緒に砂遊びをしたかったのに、父親が不機嫌でできなかったという思い残しを
はらした時は、茨城弁が飛び出してきたという、その場所は、茨城県の大洗海岸だったそうだ。
その後も、彼女はさまざまな思い残しをはらしたが、思い残した時に居住していた地域の方言が
飛び出してくることがわかった。思い残しをはらす時は、思い残した当時の自分になりきっていると彼女は
証言する。意識しなくても、ひとりで幼児に戻ってしまうのだそうだ。
言葉も動作も当時の自分を再現してしまうという。
他の人の場合でも、思い残しをはらす時は同様の現象が見られる。
当時住んでいた土地の言葉が浮かんでくるのである。
そして、思い残しを晴らす時は、みな申し合わせたように幼児特有のしぐさをする。
ベタベタしたり、ネコのようにゴロニャーンと寄ってきたりする。
いい年こいて恥ずかしくないのだろうか、と思うほど、見事に赤ちゃんに戻る。
幼児に戻ることが気持ちいいので、どんどん戻っていくのである。
哺乳瓶でミルクを飲む姿は、まるで幼児そのものである、
誰におそわったわけでもなく、また、自分で意識するわけでもないのに
手首をネコのように曲げたり、体を幼児のように曲げるのだ。幼児になりきっているのである。
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