独立行政法人化を前にして、激動する国立大学にさらに、厳しい改革の条件が突きつけられることとなった。文部科学省が発表した「遠山プラン」と呼ばれる国立大学構造改革の指針である。
国立大学法人化特集・第二回目となる今回は「遠山プラン」の解説を行う。
二〇〇一年六月、文部科学省は「国立大学の構造改革の方針」、いわゆる「遠山プラン」を国立大学協会に対して発表した。この「遠山プラン」は、日本経済の国際競争力強化に貢献できる、世界最高水準の大学の育成を目的とした国家戦略を示したものである。
「遠山プラン」が提示している改革案の柱は三つある。国立大学の独立行政法人化。再編・統合を進めることによる、国立大学数の大幅な削減。各分野で研究業績の高い大学に予算を重点的に配分するという「トップ三十」構想である。
国立大学の独立行政法人化に関しては、一九九九年度より検討されており、国立大学協会も大筋で改革方針を容認していた。しかし、国立大学数削減と「トップ三十」より官邸主導の大学改革はさらに加速することになり、大学関係者に衝撃を与えた。
▼国立大学削減
現在、少子化により大学進学者の数が減少している。そのため、国立大学の数を「遠山プラン」では大幅に削る方針を打ち出した。従来の「一県一大学」の原則を文部科学省自身が打ち崩した形である。
この国立大学削減の格好の的となっているのが、全国四十八の教員養成系大学・学部である。二〇〇一年十一月、文部科学省は最終報告で、少子化による教員採用枠減少から教員養成系大学・学部の数を二〇〇三年度までに半数以下に減らす方針を打ち出した。
これを受けて、本年五月に、福島大学教育学部、山形大学教育学部、宮城教育大学の間でも、教員養成課程を宮城教育大学に統合させることが合意された。山形大学では二〇〇四年までに教育学部の改組を行う。
▼トップ三十構想
また、「遠山プラン」で提案された「トップ三十」についても、文部科学省では本年一月、「二十一世紀COEプログラム」を打ち出し、構想の詳細を発表した。
これによると、まず、大学の全学問を人文科学、生命科学など十分野に分けることになる。この各分野ごとに国公私立の限定をせず、全国の大学から「トップ三十」の公募を行う。各分野につき、十〜三十専攻を文部科学省の外組織である審議委員会が審査・選考する。
選考された一専攻につき、一〜五億円、平均二・八億円の研究予算が五年間継続して国から各大学へ支給される。早ければ、本年下半期からトップ三十の予算配分が行われる予定である。
▼突き進む改革と東北大学
「遠山プラン」により大学間の生存競争が激化する中で、本学には果たしてどのような評価が下されるのか。
旧帝大である本学の研究機関は現在でも国から優遇された予算配分を行われている。二〇〇一年度には五十九億円もの科学研究費がつぎ込まれている。これは一位の東京大学(百四十六億円)、二位の京都大学(八十億円)、三位の大阪大学(六十億円)に続き、全国でも四位の額である。
特に、世界的トップクラスの研究を手がける本学金属材料研究所をはじめ、本学研究分野の評価は高い。今後、本学は「トップ三十」の有力候補の一つになるであろうという見方がなされている。
その一方で、文部科学省の改革が孕む危険性に対して警告を示す声も学内に存在する。たとえ、本学がトップ三十に選考されても、政府や財界の方針に沿った大学運営が強制され、研究も目先の利益が先行したものになるだろうという懸念からである。
さらに、トップ三十に選ばれない大学は事実上、文部科学省から見放されることになる。今後、「遠山プラン」による改革で国立大学のない県も出てくる可能性があり、教育拠点の消滅が地方の衰退につながるという危険性を指摘する大学関係者も多い。
また、独立行政法人化によって、国からの経済的支援を受けながら自由な運営ができる国立大学は、私立大学との競争において断然有利である。中央官庁等改革推進本部顧問を務める藤田宙靖本学法学部教授はこう語る。
「文部科学省が遠山プランを打ち出したのは、小泉内閣の誕生により、経済財政諮問会議などで(大学の競争力強化のために)検討され始めた国立大学民営化を何とか抑えるためである。しかし、国立大学有利で私立大学の不満が相次ぐなら、国立大学民営化の話が再熱する可能性がある」
現在まで「遠山プラン」改革は、十分な議論もなく官邸主導で急スピードで進んできた。現状に基づいた大学主導の改革が望まれる。