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艮櫓建設断念
仙台城跡の今とこれから

318号3面・大学

五月二十日、仙台市長が会見で仙台城跡の艮櫓(うしとらやぐら)建設断念を発表した。これは、文化庁が仙台城跡を国史跡に部分指定する方針の内定を受けたものである。

市側は史実に即した復元・整備を進めることで、国史跡の指定を受ける体制を整える考えである。そのため史跡を改変することが避けられないとされる艮櫓の建設を断念することになった。

今回の指定は、仙台市保有地部分(仙台城跡東側)のみの見通しであるが市は今後、仙台城跡全面の指定を目指していく。仙台城は仙台市・護国神社・本学と複数の所有者を持つ。将来的な全面指定の範囲によっては本学の文系キャンパスの一部が対象地域となる。そのため、仙台城の国史跡指定に関して、本学も無関心ではいられない。

――艮櫓建設の問題点

二〇〇〇年十一月、仙台市は艮櫓を現存する三期石垣(※)の北東角に建設する計画を発表。これに対して、歴史学団体・民間団体から、反対の声が上がっていた。

建設のために、地中にコンクリート支柱を貫通させることが、未発掘の一期石垣に被害を及ぼすことが懸念されたためである。さらに艮櫓は本来、第二期石垣上に建てられたものであり、第三期石垣上では史実に即さない、というのが建設反対の焦点であった。

さらに、石垣の修復・櫓の建設に関する問題を審議する「仙台城跡石垣修復等調査検討委員会」を任期満了として、石積み作業前に解散させた。専門的な助言・指導を行う委員会がなくなったことで復元・整備事業の情報のパイプ役がいなくなり、意思決定が不透明になってしまったことにも批判があった。

――歴史学団体・市民の動きと建設断念へ

二〇〇一年九月在仙歴史学七団体が「城と石垣全国シンポジウム」を、仙台市の後援の元で開催した。ここでは各地の石垣の調査と修復の現状が報告され、行政・学者・市民が共通の話し合いの場を持つことができた。

このようなシンポジウムも通して近年では、市民の間にも全国的に歴史のねつ造を許さない風潮が広まっている。仙台でも「仙台城の石垣を守る会」「美しい仙台をつくる会」など史実どおりの文化財の保護を求める民間団体が活発に活動を行っている。

加えて二〇〇一年六月新たに三委員会(※)を設置、市が公開の場で問題点が検討されるよう体制を整えた。このように仙台市側に市民・歴史研究者からの意見を聞く姿勢が見られることからも、今回の結論に至る下地は既にあり、建設断念は自然な流れであったことがうかがえる。

――艮櫓なき今後の仙台城修復・復元

仙台市長が会見を行った同月二十八日、仙台商工会議所や専門家などでつくる「仙台城復元委員会」が開かれた。艮櫓建設推進派の一部委員は「突発的な計画断念」として市の決定に強い不信を示した。これまで仙台商工会議所など観光・経済界は、仙台の新しいシンボルとして艮櫓の建設を望んできた。

それに対応して、艮櫓建設の代案として大手門の建設が考えられていることが、今回の仙台市長の会見で明らかになった。この建設は史跡の中心を通る道路整備の問題と、艮櫓建設を優先させることで一度断念された計画である。このことについて宮城歴史科学研究会の代表委員である、本学の入間田宣夫教授(東北アジア研究センター所属)は「行政の独断にならないように、今回の教訓をもとに委員会を設置すべき」と慎重に検討する必要性を訴えた。

仙台市には、文化財の保護と都市計画をどのように両立するか、全国の規範となるような整備・修復が求められる。また、入間田教授は「これを機に学生にも文化財に対する認識を深めてほしい。政宗からの宿題だ」と語った。

※ 仙台城の石垣は奥から一期石垣(一六〇二年頃築造)・二期石垣(一六一六〜一六二〇年以前築造)・三期石垣(一六七三年以降築造、現存)

※ 仙台城石垣修復工事専門委員会、仙台城艮櫓復元専門委員会、仙台城跡調査指導委員会の三委員会


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