Site hosted by Angelfire.com: Build your free website today!
性同一性障害   318号の目次   美忘展開催

映評
少林サッカー
周 星馳・監督

318号4面・大学

サッカーが好きだ。ディフェンダーの強烈なタックルに目を見張り、華麗なフェイントを駆使したドリブルに息を呑む。繊細に、時に大胆に展開するパスワークは美しく、シュートがゴールネットを揺らす瞬間、感動に全身が震える。

最近行われた日韓ワールドカップ期間中は、毎日がスペシャルだった。日本の十六強進出に感激し、韓国の躍進に衝撃を受けた。

このワールドカップと時を同じくして上映されたのが、香港映画『少林サッカー』である。香港では歴代映画興業記録を塗り替えるほど好評を博し、アカデミー賞七部門を制覇した。監督、脚本、主演ともに、香港でエンターテイメント界の帝王と称されるチャウ・シンチ―(周星馳)が務めている。

ストーリーは、人気サッカー選手・ファンが、チームメイトであるハンの策略によって、足を折られることから始まる。それからファンは落ちぶれる一方で、二十年後には、サッカー界のドンとして君臨するハンの下で、こき使われるようになっていた。

ある日ファンは、少林寺拳法を世の中に広めようとしている主人公・シンに出会う。シンは少林寺拳法によって「鋼鉄の脚」を体得し、恐るべき脚力を備えていた。シンの脚力に惚れ込み、サッカーへの情熱を取り戻したファンは、サッカーチームを作ろうとシンに持ちかける。そしてシンは…

やめた。

ストーリーは薄っぺらいので、詳細を記述するのは避けたい。この後は定石通り、サッカーのトーナメントに参加したシンのチームが、決勝でハンがオーナーを務めるチームと対決する。話の展開は、今時マンガでも使わないような、古い手法の蒸し返しにすぎない。

でも、面白い。この映画は、ストーリーの稚拙さなど問題にならないくらい魅力が溢れている。特に、シン率いるサッカーチーム「少林」の面々は本当に個性的で、魅力的で、とにかく凄いのだ。

少林チームはシンと、シンと共に少林寺拳法を学んだ六人の兄弟子たちを中心としたチームだ。この兄弟子たちはもちろん、シン同様少林寺拳法の達人なのだが、全然格好良くない上、一癖も二癖も持っている。

例えば、「鉄の頭」を会得した一番上の兄は冴えない中年で、たばこを吸いながらサッカーの練習をする(余談だが、彼は初めての公式戦でたばこをくわえながら出場し、いきなりイエローカードを出されている)。また六番目の兄は飛ぶように身軽に動く技、「軽功」を身に付けた。そんな彼は体重百キロを越える巨漢で、四六時中食べ物を食べている。他の兄たちもこのような感じで、超人でありながらも人間味溢れる彼らに、自然と感情移入してしまう。

少林チームのサッカーシーンは、この映画最大の売りだろう。華麗なドリブルシーンこそないが、彼らのパスワークは圧巻である。ヘディング一発で逆サイドへ展開する、空を飛んだ選手にパスを送るなど、攻撃のバリエーションには事欠かない。

また、ゴールシーンは劇的だ。ハーフウェーラインから、シンの弾丸のようなシュートが正確に飛んでいき、ゴールネットを揺らす。中にはボールを腹筋に挟んでゴールに突っ走る仲間もいる。もうやりたい放題だ。相手チームは呆気にとられるしかない。

「少林サッカー」は最高のエンターテイメント作品だ。本物のサッカーに勝るとも劣らないほど面白い。上映終了後、頭の中で少林チームと、自分が贔屓にしているチームを対戦させてみた。勝負にならなかった。


[back] [index] [next]


Copyright (C) 1999-2000 by 東北大学学友会新聞部
E-mail:tonpress@collegemail.com