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大学生トレード制度
「島流し」に反対の声あがる

入学お祝い号8面・大学

四月一日、仙台市郊外のビルの地下で「大学生トレード制度に反対する会」(以下、反対する会)の決起集会が行われた。百人を超える参加者はすべて本学を含む宮城県内の大学で実施されている「大学生トレード制度」によって本学を追放された学生である。

「大学生トレード制度」が開始されたのは一九九九年のことである。この大学生トレード制度は大学同士が希望の条件を出し合って、自由に学生を交換できるという全国的にも画期的な制度である。

大学では「宮城県大学生トレード協定」に基づき、特定の時期に協定大学すべてに欲しい学生の条件を通知する。通知を受けた各大学は、条件を満たす学生の調査をする。

対象学生が見つかった時点で、トレードを申し込んだ大学へ交換したい学生の条件を伝える。この条件を相手方の大学が受け入れた時点でトレードは成立となる。

トレードの対象となった学生は現在の所属大学の学籍を失ってしまうが、その代わり受け入れ先の大学の学籍を新たに取得することになる。

この大学生トレード制度を行っているのは東北大学、仙台教育大学、宮城工業大学など宮城県内十一の大学。制度の開始から現在までにトレードされた学生の総数は、三百六十三名にも及ぶ。そのうちの半数に及ぶ百七十一名が本学の学生である。

この「大学生トレード制度」は本来、優秀な学生を交換することで各研究分野を活性化し、大学間交流を深める目的で創設された。しかし、実際に蓋を開けてみると、一九九九年度からトレードされた学生のうち、七割が留年経験者であった。

ある大学関係者によると各大学の研究の相互刺激というのは単なる建前で実際には、大学生トレード制度は大学にとって厄介な成績不振者や学内風紀を乱す不穏分子を排除するために考え出された制度だという。

現在の大学生トレード制度ではプロ野球と同様、トレード対象となった学生側に拒否権はない。トレードによって他大学に「島流し」されることに不満を示す学生は以前から多かった。そして、その不満が一気に爆発したのが今回の「反対する会」の決起集会である。

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「反対する会」代表の木林さんは二年前まで、本学の法学部に所属していた。木林さんは小さい頃からの弁護士になりたいという夢をかなえるために本学に入学し、特定のサークルに入ることもなく学部で専門の授業に励んだ。

しかし、その結果、親しい友人ができず、周りで人の輪ができる中、彼はいつしか大学で浮いた存在になっていた。それから彼が引きこもりを始めるのは、ほんの些細なことがきっかけだったという。講義棟の女子トイレの前を通りかかったとき、中から話し声が聞こえた。「同じゼミの木林って超キモくない?」彼は大学が怖くなり、授業を休み続けた。

入学から六年。彼は卒業に必要な単位が足りず、二年間の留年が決まった。そんなある日、彼はゼミの教授に電話で呼び出され、本学からの追放を通達された。自分が仙台女子大学の学生とトレードされたと知ったのはそれから一年後のことだったという。

木林さんは「反対する会」結成の理由をこう述べた。「両親はまだ私が東北大をクビになったことは知りません。お金がないのに、私を大学にやってくれた両親を悲しませたくない。そのためにはもう一度、東北大に戻らなければいけない」

◆    ◆

木林さんら「反対する会」は今後、大学などに対して大学生トレード制度の廃止と大学から島流しになった学生の母校への復帰を求めて活動していく。五月には仙台でトレード制度の意義を問うシンポジウムを開く予定だ。

こうした「反対する会」の動きに対して、本学は「現在、対応を協議している」と沈黙を守っている。しかし、一部の関係者によれば、「公然と大学組織を批判する、反対する会との衝突は必至」だという。

「反対する会」のなかには損害賠償を求めた民事訴訟を主張する声もあり、今後の両者の出方が注目される。


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