よくある質問:現地校での学校生活編
日本人保護者の集いの際に出た子供の学校生活に関する質問を中心に集めてみました。質問に対する答えはスクールサイコロジスト、ESLの先生などの意見をまとめたものです。引き続き、参考となりそうな質問を追加していく予定です。
学校のシステム
授業活動
- 誕生日(4月〜8月生まれ)がアメリカの新学期の前なので、日本の学校よりも学年が半年以上も先に進んでしまうのですが、1学年下に入れた方がよいのでしょうか?
アメリカ滞在が数年と決まっている場合は帰国後の日本の学校での学年の方が基本になるので、各家庭の判断次第でしょう。授業の進み具合も学区や学校(公立 vs.私立)によって差があるので、各学年のカリキュラム内容を確認し、学校の先生と話してみるとよいと思います。(カリキュラムを確認する際には、各目標が学年末までにマスターすることを前提としているのか、知識やスキルの習得の開始を意味しているのか注意して下さい。)子供の性格を考慮することも忘れずに。大抵、学年を遅らせても効果的に学校生活を送れる子供は、自分に対してポジティブで健康的なイメージを持ち、友達と上手につきあっていけるタイプであり、アメリカに来る前に既に自分に自信がない子供だと学年をずらすことが裏目に出てしまうことが多く、後でさらに遅れてしまったりします。永住の見込みがある場合は、親の負担が大きくなる可能性はありますが、子供を学校のカリキュラムに合わせて1学年下げるより、学校に子供に合うように学習内容を調整してもらう形にした方が無難かもしれませんが、実際、全般的に女の子より成長が遅いとされる男の子で、7月や8月生まれなど学年でも若いグループに入る子供や、明らかに重度の言語発達遅滞がある子供などは、幼稚園就学を1年遅らせることも珍しくありません。もし、子供をプリスクールに入れるか幼稚園に入れるかで迷っている場合、念頭に置いておくとよいのは、現時点で何かしらの発達が遅れているように見えたとしても、この先どのように子供が成長していくのかは予測できないということです。言葉の発達が少し遅れ気味なので、幼稚園に進ませないでプリスクールに留まらせたら、1年間の成長が著しく、学校での活動内容が反対に物足りなくなってしまったというケースが少なからずあるようです。反対に2年生ぐらいまで、読み書きや算数がクラスでトップで授業内容を物足りなく感じていたのに、3年生になってから周りの子供達の知的成長が追いつき始めたり、授業内容が変わってきたため、平均レベルに落ちてくるケースも結構見られます。つまり、どうするのが子供にとってよいのかは、まだこれから驚くほど成長していく4〜5歳では判断が難しいのです。ただ、イリノイ州では幼稚園は義務教育に入っていないので、幼稚園に進ませる代わりにプリスクールに留めたのに、その間に著しく成長してしまったという場合は、子供のスキルが幼稚園を抜かして1年生に上がるのに十分かどうかを学区のサイコロジストなどに判断してもらい、1年生になることもできます。その他の学年ではめったに飛び級にならないので、学年を1年遅らせたために後に授業が易し過ぎるようになってしまった場合は、学校側で学習内容の量や質を変えたりして、レベルを個人に合うように調整していきます。学区によっては飛び級を認めているところもあるのですが、その場合はだいたい、学習面だけではなく、社会的・情緒的な発達も上の学年に入れるのにふさわしいか評価されます。ほとんどの場合は、子供が全てに秀でていることはないので、学年はそのままで、秀でている科目だけ別の授業を受けさせるという形になっています。
特別支援の個人教育プログラムが受けられることになっている子供は14歳(から15歳になる年)から9年生のハイスクールに入って、実践教育を受けなければならないという動かせない決まりがあるので、幼稚園に上げるのを1年遅らせたり、1年学年を下げて転入させることはお勧めできません。後になって8年生になるはずであった1年間をすっぽり抜かして、7年生からいきなり9年生に上げられてしまうということが実際に起こっています。
- 授業の様子を知りたいのですが、授業参観日というのはないのでしょうか?
保護者を対象にしたオープンハウス(学校案内や教師の紹介)などはあるのですが、子供達の気が散るという理由で基本的には保護者の授業参観は認めてないところが多いでしょう。特別な理由で参観が認められたアメリカ人の保護者が自分の子供の隣りに座り、授業中に話しかけたり頭を撫でたりする場面が頻繁に見られることから、教室に親子の関係を持ち込まれるのはクラスの子供達によくないと考えられているからだと思われます。この点は親子関係や家庭と学校の関係などの日米の文化の違いがあるので仕方がないと思います。しかし、先生によっては理由を伝えれば認めてくれる可能性もあるので、聞いてみてもよいのではないでしょうか。アメリカに移ったばかりで子供が学校に通い始める前であれば、授業がどんな様子であるのか知りたいと伝えれば5〜20分ぐらい見学させてもらえるかもしれません。それから、幼稚園など子供がまだ小さい場合は、クラスの子供達に折り紙を教えるなど、授業のお手伝いとしてクラスに参加し、先生と子供達の関係を垣間見ることもできると思います。- 学校の行事が日本と違っていて誰に聞いたらよいのかわからないのですが・・・?
Crazy Hair Dayと言われても何だかわからない、Sack Lunchを持って来るようにと言われてもどんなランチだかわからない、というのはよくあることですよね。このような質問は Room Momか先生に聞いてみましょう。Room Momというのは子供のクラスの保護者代表役で、学校行事や特別なプログラムなどがある時に、先生のアシスタントとして各家庭に連絡を取ったり、遠足などの付き添いをしたりします。電話連絡よりもEメールやメモのやりとりの方が理解しやすい方は、早目に Room Momや先生にそのことを伝え、なるべく書いて連絡してもらうように頼んでおき、アメリカの文化自体もまだよくわからないため、学校行事やプログラム以外のことでもいろいろ質問するかもしれないと言っておくとよいと思います。- カンファレンスってどんなものですか?
要するに保護者面談のことです。夫婦で働いている保護者の方達のために放課後から夜にかけて時間が設定されることが多いです。ESLの授業を受けている子供の場合は、担任の先生だけではなくESLの先生も面談に参加すると思います。先生側からは、子供が学校でどんな様子であるのか、例えば、子供が授業中に取り組んだ作品を見せてもらったり、心配な面があればそれについて話したり、成績を知らされたりします。カンファレンスは年に数回あるのですが、初めの学期の成績は子供のやる気を持続させるために少し辛目に付けられることを念頭に置いておきましょう。保護者側からは、家での子供の様子や子供の長所など、それから、先生に考慮してもらいたいことを伝えましょう。特にESLの子供は学校と家庭での様子に差があることが多いので、学校での子供の様子はその子供のほんの一面であるということを先生によく知ってもらおうとする保護者側の努力も必要になります。もし、英語でのやりとりに不安な方は、通訳を付けることもできます。他の日本人の保護者の方でもよいし、バイリンガルの知り合いでもよいし、もし、誰も知り合いがいない場合は、先生にあらかじめ伝えておけば、学校側で通訳ができる人を探してくれると思います。どちらにせよ、通訳を付ける場合は、あらかじめ先生にその旨を伝えておきましょう。カンファレンスで、子供の学習状況を改善するための具体策などを話し合った場合は、後日、カンファレンスのお礼、話し合った内容の確認と子供の学習改善のためにサポートをできる限りしていくことを簡単に書いたメモなどを先生に渡すことをお勧めします。そして、2週間後ぐらいに、カンファレンスで提案された家庭での必要なサポートを続けていること、他にアドバイスがあれば知らせてほしいことを簡単に書いたメモで再度フォローしましょう。
カンファレンスで話されたことは正直に、でも、ポジティブに子供に話しましょう。親と先生がグルになっているような印象を与えることを避け、特に、カンファレンス中に出たポジティブな子供の面を強調し、いかにその素晴らしい面を利用してまだ努力の必要な面を克服していくか子供と話し合いましょう。その際には具体的にどうするべきか、親も子供も納得できる目標を考えるのが効果的だと思います。片方だけが納得している目標だとなかなか状況の改善にはつながりません。
学校の成績
- 子供がプロジェクトの発表(プレゼンテーション)を皆の前でやらなければならないようなのですが、プレゼンテーションのよい例などはないでしょうか?日本の学校では親子ともそのような経験がなく、どう準備していったらよいのかわかりません。
授業参観ができるとプレゼンテーションがどんな感じかわかりやすいのではありますが、さきに触れましたように授業参観が認められないため、残念ながら親があらかじめ学ぶ機会が今のところないのが現状です。プレゼンテーションの順番は、ESLの子供達は大抵最後の方に回され、準備期間を長目にとれるように設定されます。普通、先生の方からプレゼンテーションの時に注意する項目(例えば、顔をあげて、聞いている人達と目線を合わせて、大きな声で、ゆっくりと…など)の書かれたリストなどが事前に渡され、ESLの授業でもプレゼンテーションに関する指導があります。人前では緊張してしまいどうしても話せそうにないという場合は、ESLの時間に話す内容をテープに録音し、当日は前に立って図などを指すという方法を取った例もあるそうなので、ESLの先生に相談してみるとよいと思います。先生の話だと、特に気を付けるべきことは声の大きさで、とりあえず話の内容が皆にわかればよいぐらいに構えていればよいとのこと。発表時に皆に見せる絵などを用意しておけば、皆の視線が自分ではなく絵の方に集中し、多少緊張感が和らぐことも覚えておくとよいでしょう。
*よくありそうな一般的な小学生レベルのグループプレゼンテーションの例:ハワイに関するプレゼンテーション
- 英語を習得しながらも他の外国語を並行して取らせ始めようか迷っているのですが・・・?
小さな子供の場合、英語を習っている最中から特に同じアルファベットを使う他の外国語も始めると、スペルミスが必要以上に多くなったり文法を混乱してしまうなど、特に書く方に悪い影響が出てくる場合が多いようです。現地校での学習活動を中心に考えた場合、英語の土台や言語構造の理解がしっかりするまではお勧めできません。ただ、あいさつなど1フレーズでひとつの意味として話し言葉を覚える場合はそれほど心配することはないと思いますし、発音の違いを聞き分ける幅は大きくなるかもしれません。英語を習得してからでも、英語と共通点の多い外国語であれば、日本語からその言語を学ぶより何十倍も楽であることも覚えておきましょう。念頭に置いていただきたいことは、少なくとも1つの言語の習得をまず充実させ、概念形成の発達を促すことが必要であることです。家庭と学校での言語が異なるバイリンガル環境で育つ子供達で、学校の学習活動に問題のある場合の多くは、学校に上がった途端、社会的に必要であるからと子供の英語の学習を唯一の言語教育として学校に任せ、家庭での言語教育を怠るようになり、子供が生まれてから今まで発達しかけていた母国語による概念形成を止めてしまうパターンだと言われています。子供にとっては、言語はコミュニケーションの手段だけではなく、人として生活環境を理解するのに必要な概念形成の発達を促す過程でもあることを忘れないようにしましょう。
- 子供のESLサービスが終わってしまうのですが、クラスメート達が外国語の授業を取っている時間、引き続きESLの授業を取り続けることはできないでしょうか?
できます。ESLのサポートがこれ以上必要でないと英語のテスト結果で判断されても、それは学習評価のほんの一面であるだけなので、先生や親(もしくは、本人)がまだサポートが必要であると感じれば、サポートの延長をリクエストすることができます。実際、最近は、ESLのサポートの打ち切りが早過ぎるパターンが多いのではないかと教育者からの批判も出ているので、学校側の判断だけに頼らず、各家庭でこのように子供の学習具合を子供と確認し合いながら学習サポートを決定していくことは奨励されるべきことだと思います。
05/21 updated
- 子供がとてもいい成績をもらってきたのですが、どう解釈したらよいのでしょうか?他のアメリカ人の子供達と比べての成績なのか、英語のできないうちの子供にしては頑張ったと見るべきなのでしょうか?
ESLの子供達は、特に言葉が必要とされる科目の場合、他の子供達と全く同じ評価基準にするには無理があります。普通、そのような科目の場合は、内容を簡単にしたり、方法を変えたり、量を少なくしたりするなど、ESLの子供達が無理なくこなせるように考慮され、他の子供達とは内容の異なる授業用プロジェクトや宿題が出されているはずです。例えば、図書館を利用するプロジェクトで、各自百科事典で調べた情報を自分の言葉でまとめて提出という場合、ESLの子供達は、百科事典で探した記事を抜書きしてよいとなったりします。ですから、学習活動内容の変更されている範囲での学習評価となるわけです。学習活動内容の変更されている科目は成績表でそれを示すマークが付いているはずです。ESLのサポートを受けていても現在は他の子供達と区別なくIARなどの州の共通テストを受けさせられるので、同じ学年の子供達と比べた学習具合を知るには、共通テストの結果が参考になるでしょう。共通テストについては、『イリノイ州の学力テスト』のセクションをご覧下さい。- 先生から学習進度が遅いと指摘されたのですが、学区のレベルが高くて先生の子供に対する期待が普通以上に大きいということはありませんか?
あると思います。公立であっても、学校によっては小学校4年生までに他の平均的な公立学校に比べて1年近く授業内容が先に進んでいることもあります。私立の幼稚園で既に二桁の足し算を教えているようなところもあります。日本と違って全国共通の教科書や指導要綱もありませんから、アメリカ国内でもレベルに差のある学校に転校して苦労する子供達が多いのです。イリノイ州の各公立学校のレベルはIARなど州の学力テストの結果で比較されます。子供の通う学校の何%の子供達が州の標準を上回り、何%の子供達が要注意レベルに入るのか、学校内、学区内、州内の結果を知りたい方は Illinois Report Cardで確認できます。別の解釈として、学校側のESLカリキュラム問題と学校の子供に対する過剰な期待の矛盾が起こっている可能性もあります。ESLプログラムの落とし穴〔3〕を参照下さい。