Site hosted by Angelfire.com: Build your free website today!


目覚めるとそこは

303名前:名無しさん@お腹いっぱい。Mail: 投稿日:2000/08/16(水) 15:13
・・・眩しい・・・
瞼の奥に暖かな光を感じ、ラニは眼を開けた。
そこは小さな部屋だった。ちょっと贅沢な宿屋の二人部屋、という感じだろうか。
水差しを置いたスツール、ソファー、綺麗な花を生けた花瓶、そして、ラニの寝ているベッド。
変わっているといえば、何に使うのかわからない機械やらコードが散乱しているのと、
窓がないこと、そこからか聞こえる水の流れる音。そして、天井辺りにふわふわと浮いている光球。
「・・・魔法?」
ランプの光でも松明でもない。明るく、だが暖かい光が部屋を照らしている。
その光をぼんやりと眺めながら、ラニは右手で顔にかかる前髪をかき上げた。・・・右手?
「・・・・はッ!あたし・・!」
ラニは自分の体の異変に気づき、思わず声をあげた。なくなった筈の右腕が
・・・ある。「!!??」それどころではない、あちこち崩れ落ち、腐敗し、
見るも無惨になってしまった自分の身体が、身体が・・・直っている!?
「おお、気付いたようじゃな!」部屋の扉が開き、老人が入ってきた。
「シド・・・大公!・・・」呆然としているラニに声をかけたのはシドであった。
「うむ、経過は良好のようじゃな」満面の笑顔で言うシドの耳に後ろから手が伸び、
思い切り引っ張る。「あいたた!な、なんじゃ!?」
「あなた!レディのお部屋に入るときはノックくらいするものですわよ」
「そ、そうか、すまんすまん」夫の耳を引っ張っていた手を離し、
大公妃ヒルダはラニににっこりと微笑んだ。「はじめまして、ラニさん」
ヒルダのあとから数人の白衣を着た男たちが入ってきて、
ラニの脈を取ったり体温を測ったりしはじめた。「・・・・・???」
「ああ、心配せんでもいいぞ、ワシの仲間の魔技師たちじゃ」
「魔技師?」
「そう、魔法の力とリンドブルムの工業力を融合させた新しい技術。
・・そうじゃな、『魔導』とでも名付けようか。それを研究している技師じゃよ」
「その・・・魔導の力であたし・・・あ、えっと・・私は助かったのですか?」
「そう畏まらんでもよいぞ。普段通りにするとよい!その方がワシも気兼ねせずに
済むというもんじゃ」シドはカッカと笑う。
「じゃ・・・じゃあお言葉に甘えて・・・あたしって一体どうなったの?」
「うむ、お前さんの身体はガーネットの魔法によりアンデッド化しておった。
しかも、普通のアンデッドではなかったのでワシたちはどうやっておぬしを蘇生させるべきか
困ったのじゃが・・・そこは魔導の力!ある秘石の魔力とおぬしの魂を融合させることに
よって失われた元の身体を再構成することに成功したのじゃ。結果、おぬしは見事
復活したという訳じゃ」
「・・・わかったよーなわかんないよーな・・・その秘石って?」
「まあ、それはいずれわかるじゃろう。・・・秘石の魔力、といっても秘石そのものじゃが、
それはおぬしの身体に融合しておるが、それ以外は全く元通りじゃ」
「ふーん・・・ま、いっか!こうしてあたしの玉の肌が戻ってきたんだからね!」
細かいことは気にしないラニであった。





















ビビの言葉

304名前:名無しさん@お腹いっぱい。Mail:sage 投稿日:2000/08/16(水) 15:20
新たな装置の解析に目処がたった事もあり、
ジタンとミコトはしばしの休息を楽しんでいた。
「見てろよ…ほらっ」
オムレツが宙を舞い、5、6度回転してからフライパンの中に戻った。
「フフ…流石ね、ジタン」
「やれやれ、調子のいいこったなあ。前に同じ事をやった時、
なんて言ったか覚えてないだろ?」
「前…」


『見てろよ、俺の妙技を!』
オムレツが宙を舞い、5、6度回転してからフライパンの中に戻る。
『うわぁ、スゴイや、ジタン!』
素直に感心するビビとは対照的に、訝しげな表情を崩さないミコト。
最終決戦の後、世間的には行方不明という事になっていたジタンは
黒魔道士の村で、ジェノムたちが新たな人生を生きていけるように
尽力していた。その為に東奔西走していたジタンは満足に食事を
する時間もとれず、村にいた間にジタンとビビ、それにミコトが
3人で食事をしたのはそれが最初で最後だった。
『私には理解しかねる』
『え?』
『そのような無駄な動きをしなくても、卵には十分加熱が可能だし、
栄養価にもさしたる変化はない筈だ。何故そんな無駄な事をする?』
苦笑するジタンに変わって、ミコトの疑問に答えたのはビビだった。
『多分ね…本当は何も変わらないんだ。栄養とかだけじゃなく、味もね』
一生懸命言葉を探しながら話すビビ。
『でも、ジタンが僕たちに美味しいものを作ってあげたいって気持ちは
伝わってくる。その気持ちが分かったら、錯覚かも知れないけど、
本当に美味しくなるよ。だからジタンのやった事は無駄じゃないと思う。
論理とか筋道から考えるとおかしな事でも、そうだと感じられるのが
気持ちっていうもので、それは大切な事だと思うんだ』
『おいおい、あんまり持ち上げるなよビビ。単にちょっとばかり
器用なところを見せびらかしただけだって』
照れ笑いを浮かべたジタンは大げさに肩をすくめてみせた。
『…気持ち?』
結局その時はミコトはビビの言う事が理解できなかった。

















ミコトの気持ち

305名前:名無しさん@お腹いっぱい。Mail: 投稿日:2000/08/16(水) 15:23
それから時は矢のように流れ、ジェノムたちもガイアでの生活に順応し、
ビビは空に帰っていった。黒魔道士の村での仕事にとりあえずの
決着がついたと判断したジタンは、村を去るとミコトに告げた。
『俺はやっぱりダガーに会いに行くよ。村の事はまかせたぜ、ミコト』
『分からない』
『え?』
『私もこの世界の文化風習について色々学んだわ。その知識に
照らし合わせれば、あなたとガーネット女王が満足できるような結果を
得る事は不可能だと思う。それはあなたにも分かってるはずだわ。
何故無駄と分かっていて行くの?』
『…そうだな…前にビビにも言った事があるけど、結局選べる
選択肢ってのはやるかやらないかの二つだけなんだ。で、俺はやるって
決めた。それが俺の生き方だからな。それに無駄だと分かっていても
やらなくちゃいけないって思えるのが、好きって気持ちなんだよ』
『…気持ち』
それからすぐ、ジタンが村を去って、これまで感じたことのない
寂寥感を味わった時、ミコトはかつてビビの言っていた
「気持ち」というものが少しだけ理解できた気がした。


ミコトがふと気がつくと、ジタンも又、神妙な顔をして考え込んでいた。
「あなたもビビの事を思い出したの?」
そう声をかけられてはっと我に返ったジタンは、静かに溜息をついた。
「あいつの事はもう忘れようと思っているんだけどな…あいつの意思を
裏切り続けている今の俺には、あいつの事を思い出す資格は無い。
だけど感傷ってやつは簡単に捨て去れるシロモノじゃないらしい…」
「…ジタン」
周囲に立ち込める重苦しい空気を破ったのは意外にも人間ではなかった。
「ジ、ジタン、焦げてるわ!」
「え? ああっ!?」
ジタンが悠長に考え事をしている間に、フライパンの中のオムレツが
黒煙を発していたのだ。慌ててオムレツを皿に移すジタン。
「あ〜あ、こりゃひどいな。少し待っててくれよ、すぐに代わりを…」
「いいのよ、ジタン」
ジタンの言葉を遮って、ミコトはオムレツにナイフを入れた。
「ジタンが久しぶりの私のために作ってくれたものだもの。
その気持ちが感じられるから、きっと美味しいはず…」
焦げたオムレツを口に運んだ瞬間、感情の乏しいミコトの表情が
苦虫を噛み潰したようなものになり、続いてひきつった笑みに変化した。
「ほ、ほら、こんなに、お、美味し…」
「…新しいのを食べような?」
「…はい」
ジタンは笑った。
この狂った時代に突入して以来初めての屈託のない笑いだった。
それにつられてミコトも微笑を浮かべる。
だが、そんな和やかな雰囲気も長くは続かなかった。
「ジタンの旦那、モグネットから緊急連絡が入ってますぜ」
エンキドゥの館内放送が響く。ジタンはすぐに部屋の隅に備え付けられた
通信装置でエンキドゥを呼び出した。
「ジタンだ。何があったんだ、エンキドゥ?」
「ブルメシアの事です。今、あそこにクイナとその手下が戻ってる。
パック王子たちの方にも動きがあるらしいですぜ」
「くっ、タイミングが悪い…エリンとエヌオーにも
連絡は行ってるんだろうな?」
「もちろんでさぁ」
「そうか。あいつらなら、何とか乱戦は避けてくれるだろう。
だが、これでブルメシア制圧計画が遅れるのは避けられないな。
少しばかり計画を変更せざるを得ないか…」
しばらく思案していたジタンは
「もう一方の作戦の予定を繰り上げるか…。
ミコト、悪いがオムレツはまた今度だ。作戦室に向かうぞ」
そう言った時ジタンの顔は既に、陰謀うずまく世界に身を置き、
巨大な敵との駆け引きにしのぎを削る指導者のそれになっていた。




















シドの考え

306名前:名無しさん@お腹いっぱい。Mail: 投稿日:2000/08/16(水) 15:34
「ところで、大公サマ、とっくにエーコに殺されたってもっぱらの噂だけど、何で生きてんのさ?」
ラニが聞いた。「良い質問じゃ」シドは自慢の髭を指で撫でつけながら、話し始めた。
「エーコが成長するごとに、その魂が邪悪に犯されていくのは気付いておった。何故かはわからん。
去年あたりからはさらにその負の魔力が高まり、ワシは身に危険を覚えるようになった。
そこで、有事あるを想定し、影武者を立てたのじゃ」
「ふーん、でもさあ、そのおかげで今じゃリンドブルムは一大軍事国家だよ?
少しはセキニンってものを・・・」
「皆まで言うな。わかっておる。だが、ワシの力ではもうどうにもできない所までエーコの魔力は
成長してしまった。そして、ガーネットの魔力もな」「存分に味わったよ」
「このままでは、いや、もうすでそうじゃが、再度の世界大戦は避けられぬじゃろう。
なんとかせねばいかん。その術を見つける為、ここトレノの地下の秘密研究所で魔導を研究して
おったというわけじゃ」
「んで、なんであたしを助けたのさ?」「おまえさんはサラマンダーのコレじゃろ?」
「あ〜・・・うん、まあね・・・」「なら、ワシの仲間も当然じゃ。おまえさんが死ぬと
奴が悲しむじゃろう?」「そうだ!サラマンダーは生きてるのかい!?」
ラニは跳ね起きるとシドの胸ぐらを掴んで揺さぶった。「く、苦しい!まてまて!」
「あ・・・ゴメン」「ふう・・・落ち着け、奴は生きておる。トレノからギルガメッシュが
連れ去ったようじゃ」「オヤジが!?・・・・そっか、まあオヤジといっしょにいりゃとりあえずは
安心か。平穏とは無縁だろーけどさ」
どちらかというと自分を安心させるように呟くラニを見ながら、シドは思いを巡らせた。
「この娘にはこの先苛酷な運命が待っているじゃろう・・・ワシは正しかったのか・・・?
・・・だが、世界を終わらせる訳にはいかん・・・!」
その時。「大公様!!敵襲です!」一人の若い技師が部屋に飛び込んで来た。
「何!?」シドは急いで部屋を飛び出した。

部屋を出ると、そこは地下水道だった。ちょっとしたダンスホールほどもある広場になっている。
だが、そこにいたのは紳士淑女ではなく、闇の住人であった。20人ほどいる。
その先頭に立った黒ずくめの男が口を開く。「おやおや、どこのジジイかと思えば
シド大公様ではございませんか?こんな地の底でお会いできるとは光栄ですな」
「ジジイは余計じゃ!貴様ら、リンドブルムの掃除人じゃな?」
「ご明察痛み入ります」リンドブルムで住民を震え上がらせているという掃除人の話はラニも
聞いたことがある。エーコに楯突く不逞の者を処刑する掃除人とは名ばかりの闇の集団であった。
「妙なゾンビが地下に逃げ込んだという話を聞き、追ってきたらこんな大物が釣れるとは。
たまには精勤するものですなあ」クックと笑う。
「・・・・貴ッ様らあ〜〜!!」
怒りも露わに前に出ようとするラニをシドはやんわりとさえぎった。
「大公サマ!?」
「まあまあ、ここはワシにまかせておくがよかろう。まだおぬしの体は本調子ではないぞ?」
「でも・・・!」
「どちらからでもよいわ!どうせ全員死ぬのだからな!!!」
闇の掃除人の一人がダガーでの斬撃を放った。それをシドはひらりとかわす。
「やれやれ、独創性のない台詞じゃのう」「ほざけ!」
シドの眼がぎらりと光った。
「ふん、ワシを舐めるなよ。老いたとはいえこのシド、貴様らのような雑魚に遅れは取らんぞ!」





















フライヤの話

309名前:名無しさん@お腹いっぱい。Mail: 投稿日:2000/08/16(水) 18:46
決着は――――着いた。クイナを完全にKOしたフライヤは槍で空を振り払う様に一閃する。
ベアトリクス「す・・ご・・い。」もはやそれしか言葉は出なかった。そのあまりにも自らの常識を遥かに超越した
フライヤの強さ。その力は一体何かを疑念する事をも完全に忘れさせる程、ベアトリクスは驚愕していた。
フライヤ「・・・・傷の具合はどうだ?ベアトリクス。」
ベアトリクス「・・ああ。もう大丈夫の様だ。それより・・貴方の・・その力は・・。凄い・・一体あれから何が?」
ようやく一段落つき、再会したフライヤに対し先ず最も聞きたい疑問を問いかける。
フライヤ「・・・ふっ。忌まわしき力よ。この・・この力が・・今の世界の混乱を招いたと言っても過言ではなかろう・・。」
自嘲気味に微笑んだ後、フライヤは静かにベアトリクスに今までの経緯を話し出す。
―――――――――――――――――――――――――――――――
ベアトリクス「・・・・それでは・・貴方だけでなくその力はこのクイナにも・・ジタン達や・・ガーネット様にも!!?」
フライヤ「・・そうじゃ。一歩間違えば・・私もこのような・・悪鬼の如くと化していたのかも知れぬ・・。」
倒れているクイナをちらと見やり、そして己の胸に手を当てるフライヤ。
フライヤ「・・一度は永遠の氷細工と化した私を、命がけでパック殿下、そしてフラットレイ様が救い出してくださった・・。
・・そして黄泉の世界をさまよっていた私の・・身体に・・フラットレイ様は・・御身の・・命をッ・・・!!!!!」
思い出したのか・・フライヤはグッと眼を閉じ、強く胸を抑える。自然とこみ上げて出づるものが彼女の両頬を伝う。
ベアトリクス「・・・フライヤッ。」それしか声は出せなかった。形こそ違えど2人はこの戦乱で自らの最も大切なものを
無慈悲にも失ってしまったのだ。その心中は彼女等にしかわかり得ないものであった。暫く2人は、言葉が無かった――――
フライヤ「フラットレイ様の御身の御蔭で蘇った私の精神にはもう変化は生じなかった。
しかし、以前の自分の身体には無かった圧倒的な身体能力のみを得ることが出来た。パック殿下が言うには
Gトランスの覚醒寸前にて死線をさまよい、尚も他者の血肉にて蘇生したゆえの「例外作用」であると申されておった。
・・・フラットレイ様がこの私を忌まわしい魔性の力を結果的に取り払ってくれ、さらにGトランスに対抗し得る能力を
授けてくださった事となる。」(フライヤに・・そしてガーネット様達にその様な力が・・)その能力の恐ろしさを
ベアトリクスは理解する事が出来た。
フライヤ「・・私はクエール様にそなたに会えといわれた。そなたにも、何やら解からざる力秘めておられしと聞いたのであるが?」
ベアトリクス「・・・何も私は・・わかってない。只私の身体を・・ガーネット様が欲しておられている・・。それだけだ・・。
私には一体・・何が・・。」今の自分の未だ謎な境遇に再び不安の色を隠す事が出来ない。
フライヤ「・・・そうか。ベアトリクス。今、この世界の影には何かとてつもなく巨大な影が動いている。
我等にGトランス能力を埋め込み、そしてそれによって思念を操作しこの戦乱を起こした者・・。必ずそれがいるはずだ!
私はフラットレイ様に与えられたこの力を用い、そ奴の行方をつきとめるために戦う事にした。
・・・ベアトリクス・・そなたも・・そなたも共に力を貸してはくれぬか!?」
ベアトリクス「・・フライヤ。・・ええ。私も力になれるのであれば。・・(そして・・私の身体の・・謎もッ・・!!)」

フライヤ「・・ベアトリクス・・。恩に着る。――――――――さて、と。
先ずは・・・こやつに・・話を聞かねばならぬな・・・・。」
2人は倒れこんだまま気を失っているクイナを振りかえる。























ルビィの憂鬱

310名前:名無しさん@お腹いっぱい。Mail: 投稿日:2000/08/16(水) 20:06
リンドブルムはかつての戦火による被害も街の人々の超人的な努力によって殆ど復興を果たし、
それぞれがまともな日常生活に復帰しようとしていた。
そして・・・劇場区にある小さなボロ屋に彼女はいた・・・・
ルヴィはいまやリンドブルムで最も大きな劇団の看板女優。
人気のピークはすぎたとはいえ、その活力あふれる演技はいまだ街の人々に大きな希望を与えていた。
彼女は化粧台に向かって今日の稽古のための準備をしていた。
稽古とはいえ、化粧など本番のつもりでいなければならないというのが彼女の信念だった。
だが、なぜリンドブルム一の人気女優である彼女がこのような貧乏暮らしをしなければならないのか?
その原因が扉を開け、真っ赤な顔をして帰ってきた。
ブランク「う〜い、帰ったぞお、ご主人様のお帰りだ」
ルヴィ「なんやの?また飲んで帰ってきたの?
    ええ加減してえや。そんな余裕うちにはないんやから」
ブランク「うるせえ、俺はエーコ大公指揮下のバクー盗賊団の一員として
     今日も重要な任務にはげんできてるんだ!少しは感謝しねえか!」
ルヴィ「なにが任務やねんな!毎日飲んだくれてるだけやないの!この甲斐性なし!」
その言葉を聞いてブランクは形相を変えてルヴィに近づくと力任せにひっぱたく。
ブランク「なんだと?もう一度言って見ろ?誰がなんだって???」
ルヴィ「なんどでもゆうたるわ、この甲斐性なし!!!」
完全に頭にきたブランクはルヴィに蹴りを入れはじめる。
ブランク「この!!この!!あばずれがぁ!!
     てめえの亭主になんて口を利きやがるんだ!!」
ルヴィ「ああっ、いたっ、いたいっ、やめてっ!
    ブランクッ!!あんた、ウチの顔に傷でもつけてみい、
    あんたも明日からなんも食べられへんようになるんやで!!」
それを聞いて蹴りを止めるブランク。一つ大きな舌打ちをすると、
ブランク「けっ、酔いがさめっちまった。もういっぺん飲み直してくらあ」
そう言って再び出ていってしまう。
残されたルヴィは悔し涙を流しながらつくづく自分の男の見る目のなさを悔やむのだった。
ルヴィ「ううっ・・なんで・・なんであんな男と一緒になってしまったんやろ・・・」

続く



















16歳の新人

313名前:名無しさん@お腹いっぱい。Mail: 投稿日:2000/08/16(水) 20:32
ブランクとの喧嘩は毎度のことである。
ルヴィは傷つきながらもそれに耐え、今日も元気良く稽古のため劇団の練習に出た。
ルヴィ「おはようさん、公演も近いし、今日もキバッて練習するでぇ」
練習場に足を踏み入れるといつも通り快活にそう挨拶したルヴィだったが、
まわりの様子がなんとなくおかしい。不審に思ったルヴィは、
ルヴィ「どうしたん?なんかあったん?」
すると座長が彼女に近づき、言いにくそうに話し出した。
座長「ああ・・実はな、ルヴィ。お前には言ってなかったが今度新人が入ってな」
ルヴィ「ふーん、全然聞いてへんかったけど・・・どの子?」
座長「いや酒場で働いていた娘なんだが、支配人がスカウトしてきてな。
   紹介するよ、おい、ローザ、ルヴィに挨拶しなさい」
座長に呼ばれて横から出てきたのは、可愛い16歳の少女だった。
ローザ「はじめまして、ルヴィさん。よろしくお願いします」
座長「それでだな・・・この娘には今度の『白魔道士の脱出』の主役をやってもらうつもりなんだ」
ルヴィ「はあっ?」
ローザ「入ったばかりでまだいたらないところもあるかと思いますが、よろしくお願いします」
ルヴィ「ちょ、ちょっと待ちいな。主役はウチのはずやろ?だから何週間も練習して・・・」
座長「・・・ま、そういうわけだから、よろしく頼むわ」
呆気にとられるルヴィを残して立ち去ろうとする座長。
ルヴィは座長の襟をつかむと物凄い剣幕でまくしたてた。
ルヴィ「何考えてんねんな、座長!何で看板女優のウチが外されて新人が抜擢されるねんな!
    何か理由があんのかいな、言えるんやったら、言ってみい!」
襟を絞められて呼吸困難に陥っている座長は何とか声を絞り出した。
座長「いや・・支配人がこの娘をえらく気にいっているんだ・・・。
   それにお前はもういい年だから脇にまわってもらった方がいいって・・・」
ルヴィ「アホか!ウチはまだハタチと36ヶ月やで!女優としたらまだまだ若いやろ!?」
プライドをずたずたにされ、涙まじりにそう訴えるルヴィ。
周りの団員達は固唾をのんでそれを見ている。
その時、新人ローザがルヴィに向かって言った。
【続く】























途切れ途切れの言葉

316名前:名無しさん@お腹いっぱい。Mail: 投稿日:2000/08/16(水) 21:07
フライヤは懐より1つの小さな香炉、そして数種の薬草を取り出した。
それらを手馴れた手際で調合し、香炉に入れ火を起こし煙を炊き出す。その香炉より
出でる香煙を気絶しているクイナの顔先へと近づける。きょとんとそれを見ているベアトリクス。
フライヤ「・・・これは古くより我がブルメシアに伝えられし竜騎士の秘術・・。」
香煙がクイナの顔をすっぽりと覆う。静かな声でフライヤは気絶しているクイナに語りかける。
フライヤ「・・夢の中・・そなたの脳裏に在りし記憶を・・我が前に・・言葉よって紡ぎ出せ・・・・」
竜騎士秘伝の香の香りが立ち込める中・・静かに・・ゆっくりと・・クイナは口を開き始める―――――

クイナ「・・我が・・身体・・未だ・・・・・ならず・・よって・・にて・・そなたに語る・・
・・・求めしは・・我等が民の・・・その力・・・すでに・・・・より・・・ ・・・とされる・・残された・・
しかし・・・未だその時・・・・来らざるにおいて・・・我は・・・・・そなたらの・・・をもって・・
・・早急な・・を行う必要がある・・・さすれば・・・に隠されし・・・反応・・・  この・・は・・
・・・我・・・となろう・・・・・」
ベアトリクス「・・・何か話しが途切れ途切れで・・よくわからないわね・・。」
フライヤ「・・・うむ。まるで・・これは意図的に言葉を紡がせる事を何かに邪魔されているような・・・」

クイナ「いずれ・・は・・・・・をもって・・・・・なろう・・よって・・  ・・には・・
・・「Gトランス」・・・・・・とする・・・・により大いなる・・・・・を起こし・・・
・・・・の・・・・を・・・に示せ・・・」――――――――――――――――――――その時!!!
ビクビクビクビクッビクッ!!クイナの身体がふいに激しく痙攣し、輝き出す!!!―――――そして!!
ベアトリクス&フライヤ「!!!!!!!!!!!!!!」
シュパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ・・・・・・・・・
―――クイナの身体はなんと霧状と化し・・・空に霧散し消え去った。・・・これが魔人クイナの最期であった。
       (・・・我等が・・民の・・力??・・そして・・「Gトランス」??
         ・・一体・・あの言葉は?・・そして・・「我等が民の力」・・私に・・私に関係はあるのか??)
―――――――――
フライヤ「・・・・次に・・向かう場所はもう一つしかあるまいな・・。」
ベアトリクス「・・・・・ええ。もう・・全ての始まりの・・あの場所しか・・・。」
―――――――――――――――――・・アレクサンドリアへ!!!!!
Gトランスを克服したフライヤ、そして未だ知らぬ己の身体の謎・・・ベアトリクス。
全ての謎を求め今、2人は、ガーネットの待つアレクサンドリアへ歩き出す―――――
           
























掃除人達の末路

321名前:名無しさん@お腹いっぱい。Mail: 投稿日:2000/08/16(水) 21:18
・・・・・闇の掃除人達は、完全に実力を見誤っていた。とっくに死んだと思っていた
大公夫妻が生きていたのは驚きだったが、老いさらばえた「元」大公など、枯れ木を打ち倒す
ごとく簡単に始末できると思ったのだ。だが、彼らの攻撃はことごとくかわされていた。
アサシンクローの一撃を軽くかわすと、シドは魔力を集中させる。
「クッ・・・!魔法だと!?」掃除人達は一瞬怯む。
だが、先刻のリーダーらしい男がすかさず檄を飛ばす。「臆するな!ここは地下水道!
攻撃魔法は撃てん!奴等自身も生き埋めになるからなァ!スロウやプロテスなどと
補助魔法を掛けようと、我らの方が物量に勝る!数で押せ!」
「殺ァッッッ!!」一斉にシドに襲いかかる。だが、シドは怯まなかった。
必殺のクロスボウから放たれた毒矢を軽く首を傾けただけでかわし、痛烈な斬撃は
完璧な見切りに空を切る。その間に驚くべき速さで詠唱は完成した。

「死の天使ザルエラよ、闇に蠢く不逞の者共に相応しき姿を与えよ!
 か〜〜え〜〜る〜〜の〜〜〜〜 だい がっ しょ〜! トードジャ!」

シドの右手が閃めいたかと思うと、辺りは猛烈な魔法力の爆発に包まれる。
「・・・・・・・・・!!!」ラニは思わず眼を伏せた。

魔力の旋風が収まり、辺りは再び地下水の流れる音が支配する。いや、もう一つ音が増えていた。
ラニはゆっくりと目を開けた。
「これは・・・・!!」
辺りには無数の蛙が飛び跳ねていた。水の音に重なりしきりに鳴いている。
「ふん、おまえらにはその姿がお似合いじゃ」
「お見事ですわ、あなた」

これがリンドブルム大公シド・・・!いや、冒険王シドの末裔・・!!これほどどは・・・
ラニはすっかり舌を巻いていた。シド大公といえば、やはり技術の人、次々と新しい技術を
発明し、リンドブルムを繁栄させてきた知力の人。カードゲームの名手でもあり、温厚で
鷹揚な人物というイメージがあったが・・・やはりシドの血は冒険者の血であったらしい。
「まいったね、こりゃ。あたしの復活戦はまた今度になっちまったね」
「おお、こりゃすまんなあ。ついつい出しゃばってしまったのう」
「大公サマ、少しはあたしに残しといてくんなきゃ」
そういうラニの顔は笑っていた。笑う?そう、ラニは自分が久しく忘れていた感情が
戻ってきたのを感じていた。「あははっ、あはははは・・・!!」
「あなた、良かったですわね」ヒルダがにっこりと微笑んだ。
「ああ、そうじゃな」水浸しになるのもかまわず、無邪気に笑いながら
水辺を跳ね回るラニを見、シドは満足そうに頷いた。
「今のでエーコに気付かれたかもしれんな・・・いまだ時は満ちぬが・・・まあよいか。
ふっふっふ・・・さあ、本番はこれからじゃ!!」





















ルビィ激怒

323名前:名無しさん@お腹いっぱい。Mail: 投稿日:2000/08/16(水) 21:36
>>313のつづき・・・
ローザ「ルビィさん、私何度かルビィさんのお芝居見たことあるんですけど・・・」
物凄い形相でローザをにらみつけるルビィ。
ルビィ「なんや、いいたいことがあるんやったらはっきりいわんかいな」
ローザ「ルビィさんって演技しているときも『なまり』がひどいですよね?
    年齢よりもそっちの方が問題あるような・・・」
その時、ルビィの頭で一本の線が音を立てて切れた。
彼女は完全に我を忘れ、怒り狂ってローザにつかみかかった。
ルビィ「なんやねん、オノレはっ!!
    いきなり出てきてなにぬかしよんねん、ガキッッ!!
    何でウチがお前みたいなションベン臭いジャリに
    偉そうにいわれなあかんねんなっ!!」   
そう言いながらローザのクビを締め付けるルビィ。
ローザ「・・・かっ・・く・・くるちぃ・・・・」
死にそうになりながら必死に周りに助けを求めるローザ。
遠巻きに見ていた団員達もあわててルビィを引き離しにかかった。
団員「やべえ!ルビィが切れやがった!!殺してしまう前に引き離せ!!」
団員「やめろ、ルビィさん!本当に殺してしまうぞ!」
団員「今度殺したらクビになっちゃいますよ!!」
みんなに引き留められ、引き離されたルビィはなおもつかみかかろうとしている。
彼女は悔しさと怒り、そして情けなさからか目に大粒の涙を浮かべ、
控え室に連れられる間もずっと叫び続けていた・・・・























スティルツキンの疑問

327名前:名無しさん@お腹いっぱい。Mail: 投稿日:2000/08/16(水) 21:53
ザッザッザッザッ
3人を乗せたチョコボは飛び立つ為に手近な森を目指し疾走っていた。
「なぁギルガメッシュよ」
「あぁ〜?なんだスティルツキン?」
「ひとつ聞かせて欲しい事がある、大した事じゃあ無いんだがな」
いぶかしげな顔をするギルガメッシュ。
「なんだよ改まって?言ってみな」
「短い間だがお前と旅を続ける内にひとつ疑問が産まれた、答えてくれるか?ギルガメッシュ」
いつもとは雰囲気の違うスティルツキンの問いに調子の狂うギルガメッシュ。
「答えられる事ならな」
「…お前は何故この依頼を受けた?」
更に顔をしかめるギルガメッシュ。
「どう言う意味だ?」
「確かにジタンはこの依頼に法外な報酬金を約束してくれた、前金も頂いている」
「が、しかし命を失うかもしれん危険な仕事だ…」
スティルツキンの予想外の返答にギルガメッシュは少しバカにした口調で言った。
「なんだぁ?お前ここまで来て怖じ気付いちまったのか?もう後戻りなんざ出来ねぇぞ?」
「俺の事じゃ無い!お前の事だ!」
バカにされた事と要領を得ない会話に少し腹を立てたスティルツキンの言葉はギルガメッシュの耳には少々きつめに聞こえた。
「…ずいぶんとつまらねぇ事聞くんだな、俺達トレジャーハンターが金だけで動くかよ?」
「まだ見ぬお宝!まだ見ぬ世界!その為なら多少の危険がなんだってんだ?」
「新しい何かを発見した時の感動は何事にも変え難い、お前だってそうだろう?」
「それはまぁ、その通りだな」
思ったよりまともな答えに言葉を失うスティルツキン。
「だろう?命が惜しけりゃチョコボの飼育でもやってるさ」
「さぁ森が見えて来たぜ?飛び立ちさえすれば目的地はすぐそこだ」
3匹のチョコボは森に到着する。
チョコボ達は一声鳴いた後羽根を羽ばたかせ青空へと飛び立った。
「…お前の言っている事は確かにトレジャーハンターとしての正論だ」
「…だがしかしな、俺の見立てでは…お前は決して危ない橋は渡らないタイプの人間だ」
スティルツキンは誰の耳にも届かない様な声でつぶやいた。





















老人の話

333名前:名無しさん@お腹いっぱい。Mail: 投稿日:2000/08/16(水) 22:28
―――――――アレクサンドリア・メリダ平原北ゲート―――――

老人の会話
  「ああ?何?アレクサンドリア城?こっから真っ直ぐ
   東に進めばグニ―タス盆地。そっから一山越えて
   ようやくアレクサンドリア高原だよ。
  
   え?何?おっ!見た見た。つい先日お前さんと同じ事を
   聞いて東へ向かったよ。
  
   片目の姉ちゃんと、ネズミの姉ちゃんだろ。

   オイなんだ。もう行くのか?せっかちだな。
   え?急いでる?ふ〜ん。
  
   しかしあんたの持ってるその剣・・・・・
   あんたにはちょっと似合わないな・・。

   ところでさ・・こんな噂知ってるか?
   リンドブルム大公の娘・・名前は忘れちまったけど
   ・・・そうそうエーコエーコ。
   ん?知り合いだって?へぇ〜〜
   そうか・・ちょっと気の毒な噂なんだがな・・
   トレノに行ったっきり、行方知れずなんだとさ・・・。       
























苦しみのガーネット

336名前:名無しさん@お腹いっぱい。Mail: 投稿日:2000/08/16(水) 23:12
―――――――アレクサンドリア城玉座の間―――――――

ガーネット「・・・ッ!!ウッウゲえええええええええっ!!」
ドボドボッ!!床に吐寫物を撒き散らす。
ガーネット「ハァハァハァハァ・・・・・・」荒い息を吐く。顔色は青く、脂汗もひどい。
(・・・最近は・・とくに・・ひどい。・まだ・・自分には・・「時間」があるはず・・なのに?)
ガーネット「・・・・まさか・・いや・・そんなはずはない。まだ・・知らない・・はずだ」
苦しそうな声で1人呟くガーネット。その表情に焦り・・そして怯えの表情がはっきりと伺える。
今・・この大広間には兵の姿は無い。いつもの魔王の如きガーネットのこの様な姿を知るものはいない。
ガーネット「・・早すぎる・・しかし・・まさか!!企みが・・もれたのか・・?「奴」に・・・・
しかし・・奴はこの世界のものには・・・未だ・・手を・出せぬはず・・なぜだ・・?」
再びガーネットの身体と頭に激しい痛みを伴った衰弱感が襲ってきた!!
ガーネット「グアアアアアアッ!!!・・・まだっ!まだだ!クソ・・・ま・・だ・・
ここまで・・来て・・死んで・・・・・・・・たまるかッッ!!!!!!」
ガーネットの身体が一瞬白く光る!!Gトランスの発動!!・・・それに伴いゆっくりと
彼女の身体から苦痛が消えて行く―――――――――――
ガーネット「・・・!!ハァハァおのれぇ・・・・ハァハァ・・」
そこへアレクサンドリア兵が火急の注進を伝えに来た。
ガーネット「!!!!!!」ブルメシアのアレクサンドリア軍全滅。再び奪還されしとの報告。
ガーネット「(・・・・・・クイナのやつめ・・・!)」
ブルメシア指揮官クイナの消息の情報は入ってはいなかった・・が、最後の報告を耳にし思わずガーネットが立ちあがる!
ブルメシアの駐屯兵の生き残りの話・・・確かにベアトリクスを見たとの報告!!
急にガーネットは嬉々とした表情となり、兵達に退出を命ずる。
この報告で、烈火の如く怒り狂うかと思っていた兵達はあまりの予想に反し、少々訝しみながらも
大広間を後にする。一人残されたガーネット。ゆっくりと玉座に座りなおす。
ガーネット「・・・必ず・・ここへ来るはず。これで・・これで「奴」よりも早くッ!!
・・「奴」を・・出し抜き・・あの力を・・私の掌中に!!!ハハッ!ハハハハッ!!ハハハハハ!!!」



▼次のページへ