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抵抗

149 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/23(水) 22:15

バキィッ!!ガッ!! ヒュウゥゥ・・ドガッ!!バタンッ!!!
フライヤ「・・う・・うぅッ・・」ガーネット渾身のコンビネーションを、続けざまに食らい
吹っ飛ばされるフライヤ。
ガーネット「・・おのれ・・ネズミめが・・やってくれたではないか、ククク・・」
怒り、そして笑いが入り混じったような表情を浮かべながら近づいて来るガーネット。
見ればその姿は、戦闘衣装はズタズタに破れ、自慢の黒髪の末端は焼け焦げてしまっている。
頭からも身体からも、赤い鮮血がポタッポタッと滴り落ちている。

フライヤが放った最大の一撃、「竜の紋章」。・・しかし、ガーネットに絶大なダメージを
与えながらも、倒すまでに至る事は出来なかったのである。
そして・・その「代償」は、高くつく事となってしまった・・。
ボカッ!!バキィッ!!ドゴォッ!!ズバッ!!バシイィィッ!!!
相手の・・そして、自らの血の匂いに完全に狂い、酔ったガーネット。
常軌を逸した形相で、撲殺せんとばかりに拳撃の雨あられを浴びせ続ける。
しかし・・骨が砕かれんばかりのガーネットの一撃一撃を食らいながらも
フライヤは決して倒れる事無く、気丈にもガーネットを睨み返し続ける。
・・自らの最大奥義も通用しなかった今、もうフライヤに反撃する力は残ってはいなかった。
彼女に残された唯一出来る事といえば、最早「最後の意地」として、決して倒れる事無く
ガーネットの攻撃に耐え続ける事・・それだけであった。
ふいに、眼に入りかけた滴る血を拭うガーネット。それを見て、嘲るように微笑みながら
フライヤは言い放った。
フライヤ「・・・フラットレイ様が・・そして我がブルメシアの民が受けし
・・痛みと・・無念。・・・・・・それはその一端であったと心得よ・・・・・」
バキィィッ!!その言葉に呼応するかの如く、再び顔面に一撃!!!!
ついに、ガクとフライヤは膝から崩れ落ちる。・・・・ふと見上げれば、
フライヤの赤く染まった視界に返り血と、己の血の衣装を全身に纏った美女が、
嬉々とした表情で、拳を振り上げる姿が見える・・。
・・あまりにも「美貌」が故に、それはより一層恐ろしく映った・・・。
     (・・・・血に・・狂ってる・・完全に・・・)

ガーネット「はっはあぁぁぁぁ―――――――――――――ッッッ!!!」
咆哮と共に、真紅に濡れる己が拳をフライヤにむけて振り下ろす!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不死身

151 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/23(水) 22:49

ガーネット「!!!う・・ぉぉ!!?」ヴォォォォォンッッ!!!
突如起こった轟音と共に、拳を振り下ろしかけたガーネットの四肢が瞬時硬直する!!
ビクッビクッビクウゥゥッ!!!4、5度激しい痙攣を起こした後、
凄まじい衝撃波に身体が吹っ飛ばされる!!!
ガーネット「ぐわああぁぁッッ!!?」バゴオォォッッ!!
頭から広間の支柱に突っ込むガーネット。砕け散った石片が弾け飛ぶ!!

       聖剣技・・・・・・ショック・・!

驚くフライヤの視線の先には!エクスカリバーを振りかざして立つベアトリクスの姿!
すぐさまベアトリクスはフライヤに駆け寄りエクスポーションを手渡す。
ベアトリクス「・・ひどい傷・・こんなになるまで・・・・・すまない・・。」
フライヤ「・・ふっ、案ずるでない。・・以前より・・身体だけは、憎らしい程に
丈夫になったよ・・。なかなか楽に眠らせてはくれぬ・・・。」
エクスポーションを飲み干しながら、己を気遣うベアトリクスを安心させる様に
フライヤは軽く微笑んだ。
フライヤ「・・・・それよりも・・奴は・・?」
ベアトリクス「・・!!!!!!!」
・・・カラ・・・カラ・・・カラ・・・  砕けた石片をパラパラと散らせながら
すぅぅくっと、再びガーネットは起き上がって来た!
・・驚愕!!・・自らが誇る最大級の技をそれぞれまともに食らいながら、
尚も!平然様と立ち上がってくるガーネットに戦慄の色を隠せない2人!!
ベアトリクス「・・何故・・どうして立ちあがってこれるの・・・?」
フライヤ「・・・・・・・不死身なのか奴は・・・・」
     ポタッ・・・・ポタッ・・・
そんな2人をよそに、己が鮮血を床に滴り落としつつ、ゆっくりと歩み寄ってくる
ガーネット。・・その表情は既に・・魔王・・でも、魔性・・でもなかった。
うつろな眼・・己が血に真紅に染まった顔・・そして不気味な笑みを宿すその口元・・

     最早それは・・完全な「狂人」のそれであった・・
その雰囲気に完全に「呑まれ」、2人は目の前のガーネットの姿から
視線をそむける事も出来ず・・只、只、固まってしまう・・・。


 

 

 

 

 

 

 

 

廃墟の戦い

166 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/24(木) 00:32

ラニは斧を振り上げると、懇親の力を込めてナタリーの脳天目掛け振り下ろした。
ナタリーは、それを軽くディフェンダーで受け止める。
ナタリー「偉そうに言うからどれほどのものかと思えば、その程度か…。
     だが、完全に引き出せば少しは使い物になるかな」
ナタリーとラニの視線が交錯すると、ナタリーの目が妖しく輝き始めた。
すると、ラニの頭の中が白く曇り始める。
ラニ「なっ…。なに? この感触…」
その科白を最後にラニの意識は白く塗り潰され、ラニの眼からは光が失われた。
ナタリー「ラニよ。シドを殺すのだ」
ナタリーがそう呟くと、ラニは斧をもってシドの方へと歩き始める。
シドは相変わらずヒルダの死を哀しんでか、微動だにしない。
シドの後ろを取ったラニは、機械的な動作で斧を振り上げた。
ナタリー「さあ、その斧を振り下ろしてシドの頭を破壊せよ」
その言葉にしたがってラニが斧を振り下ろした瞬間、シドは素早く動きラニの攻撃をかわす。
目標にかわされ地面を打ったラニの一撃は、石畳に巨大な亀裂を生じさせる。
一方のシドは、全身から目が眩むような光を発していた。
ナタリー「…トランスか。妻を殺されて力が引き出されたか?」
ナタリーはラニに攻撃の指示を出しながら、自身もシドに近付く。
シドは再び攻撃をかわすと、ラニの後ろに回った。
シド「ラニ。済まんな」
そう言ってシドは、ラニにスリプルをかけた。
ラニはシドの魔法によって眠りに落ちる。
その隙を付いて剛剣をしかけようとしたナタリーに、今度はフレアを放つ。
ナタリーは剣技を中止して、フレアをガードした。
ナタリー「…連続魔。まさか、こんな事まで出来るとは。
     恐れ入りましたよ。ですが…」
ナタリーは剛剣とはまた違った構えをとった。
暗黒剣の構えだ。
ナタリー「食らえ。暗の剣!」
ナタリーがそう叫んだかと思うと、シドの足下から暗い刃が現れて貫き、シドのMPを根こそぎ吸い取る。
ナタリー「連続魔が使えてもMPがなければどうしようもありませんね。
     フフフ…」
勝利を確信したナタリーが笑みを浮かべると、シドは再びフレアを放った。
ナタリー「バカな!」
不意を突かれたナタリーの眼前で、巨大な爆発が起こった。
ナタリーは、ガードしきれずにダメージを負う。
そして続けざまにもう一度爆発。
ナタリー「…何故、魔法が使えるのだ…?
     エーコ様のように無尽蔵の魔力を持っているわけでもあるまいし…」
ナタリーは頭から流れ落ちる血を片手で拭うと、シドの方をを見やった。
ナタリー「…そうか、命を燃やして放ったのか。
     だが、そんな事をすればどうなるかわかってるだろう?」
命を用いて魔力を放つ。
行きつく先は死である。
シド「例えわしの命に代えても…。お主だけは生かしておけん!」
シドは鋭い眼光をナタリーに向って放ち、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

究極魔法

176 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/24(木) 02:07

フライヤ&ベアトリクス「・・・・・・・・・・・!!!!!」
ポタッ・・パキッ・・ポタッ・・パキリ・・滴り落ちる鮮血、踏みしめた際砕け散る石片
・・そして、不気味な薄笑いを浮かべ・・こちらへ向かって来るガーネット!
完全に武器を構えるのも忘れ、棒立ち状態のフライヤ、ベアトリクス。・・・その時!
ふいにガーネットが己が胸元を抑え、うずくまった!
フライヤ&ベアトリクス「!!!」  (・・効いていたのか!?・・・いや・・違う・・)
ガーネット「!!・・・・ぁぁ・・・ぁぁぁぁぁぁ!!」
一瞬にして苦悶の表情となり、顔からは血の気が一気に引いて行き、みるみる内に真っ青となる!
(・・これは・・これは・・あの・・・  ・・・「Gトランスの副作用」・・!)
フライヤ&ベアトリクス「・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
ガーネット「・・ぉぉぁぁぁ・・・ぁぁ・・・は・・・ぁぁ!!!」
苦悶の中に微笑が混ざる表情!顔色は完全に消え去り、流れ出づる鮮血が、
より一層鮮明に映える!!    そして、ゆっくりと起きあがり、
再びこちらへと、・・よろ・・よろと、向かってくる。その瞳に宿る眼光は、
らんらんと輝きを増し、その視線は今!ベアトリクス・・彼女一人に向けられた!!
(なんという・・なんという・・力に・・力に対する・・狂わんばかりの・・その執念!!)
ガーネット「ハァ―――・・ッハァ――・・フゥ――ッ・・フゥ・・・・」
フライヤ&ベアトリクス「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
最早、それをみる2人は言葉なく、・・その幽鬼と化せし美貌の暴君・・彼女に
射竦められ、畏れの感情が支配し、その場より微動たりともする事はかなわない。

ガーネット「・・いま・・今少しの時・・愉しまんとすれど・・最早・・これまでの様だ・・。」
ふいに、その場に立ち止まり・・硬直状態にある2人を静かな・・遠い眼で見やる。
ガーネット「故に・・・この一撃をもって!・・そなたらには動かざるる身体となってもらうぞ!!」
ガーネットが叫ぶと同時に!!
凄まじい気勢のオーラが突如とばかり発生し、ガーネットの身体をみるみる覆ってゆく!!
・・内・・身体の内よりガーネットはその魔力を溜め・・放出せんとする!!
ガーネットの胸元に妖しい青き輝きが、眩く灯る!!
シュウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥァァァァァァァァァァァーーーーーーーー
ガーネット「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ・・!」

この雰囲気・・ふいにフライヤの脳裏にある記憶の断片が蘇る・・!
フライヤ「(・・・!!これは・・・まさか・・・まさかッ!!!・・・・・
                クジャ!!               )
無意識にフライヤは、横で固まってガーネットを見やるベアトリクスに飛びかかっていた!
ベアトリクス「!!!!!???????????ッ!!?」
フライヤ「・・!!いかんッ!!・・これは・・この魔法はッ・・・・・!!!!」
何事かわからぬベアトリクス!されるがままフライヤに覆い被される!!!
一瞬広間全体が、光につつまれ白い世界と化す!!
――――――――ア・・ル・・テ・・マ・・!!!!!!―――――――――
    



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬殺

179 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/24(木) 02:41

ワイマール「はああああああッッッ!!!」
気迫と共に一閃されたフレイムタンを紙一重で避け、トットはすぐさま左上段を打ち込む。切り取られた前髪が空中で炎に包まれた。
それを横目で捕えながら右を横薙ぎに一閃する。
ワイマール「クッ!」
アイスブランドとオニオンソードがすさまじい音を上げ激突する。
骨の髄まで凍らせそうな冷気が剣を通してトットの腕に伝わった。
トット「はあッ!」
アイスブランドを払い上げ、踏み込みと共に衝きを繰り出す。
ワイマール「甘いっ!」
衝きは首を傾けたワイマールの頬に傷を残し、突き抜ける。
ワイマール「もらったぁッ!」
ワイマールは勝利を確信し、フレイムタンを振り下ろした。
このタイミングならば絶対に避けられない!
が、焔の刃は空気を切り裂くのみ。
ワイマール「なっ!?」
驚愕に目を見開くワイマールから三メートルほど離れたところで、
トットは長く、静かに息を吐き出した。
ワイマール「流石にやりますね。だが…それでなければ意味がない」
構えを取り、口元を緩めるワイマール。
トット「貴様も…いい腕をしている。斬るのが惜しいくらいだ」
言って再びトットも構えを取る。
斬るのが惜しい。それはトットの偽らざる感情だった。
このままワイマールが修練に励み、経験を積んでいけば素晴らしい
剣士になったことだろう。
だが、お互いに真剣を抜いた以上情けはかけられない。
それが剣士の掟。
ワイマール「いきます!」
応えてトットは腰を落す。
そして…二人の足が同時に床を蹴った。
バシュッ!!
破裂するような音がして血煙が天井にまで吹き上がる。
そして何か…複数のものが床に落ちた。
首、両手足、胴体、その数六つ。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死の恐怖を知れ

180 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/24(木) 02:43

無言で剣についた血を振り落とし、鞘へと収める。
頬についた傷に触れ、トットは大きく息を吐き出した。
視線を落せば先程までワイマールだった物が六つのパーツになって
転がっている。
床を己の血で赤く染め、そのなかで漂っているかのように、ただ
そこにあった。
トット「私は祈りなど捧げん」
呟き、ワイマールの遺体に背を向ける。
剣を向けられれば、ただ剣によって応えるのみ。
それが自分のやり方だ。
トット「さぁ、こんな所からは早く脱出したほうがいい」
緊張に張っていた表情を緩め、トットは子供たちに向かって呼びかけた。
だが、誰一人として立ち上がるものはいない。
皆硬い表情でこちらを見上げるばかりだ。
ビビjr1号「団長、顔拭きなよ。みんな怖がってる」
そう言って布を差し出すビビの息子に、トットは自分の姿を改めて見直す。
全身黒一色の服に大量の返り血。前髪も血で額に張り付いている。
トット「すまない。気付かなかった」
うつむき、小声で言ったトットはビビの息子から布を受け取り、顔についた
血を拭き取った。
それでもなお子供たちはトットの方を見ようとしない。
トット「私が怖いか?」
誰にともなく問う。答えは返ってはこなかった。だが子供たちの怯えきった
瞳を見れば答えなど一目瞭然である。
トット「ならば…その恐怖を心に刻みつけておくといい。それが死に対する
    恐怖だ」
そこで言葉を切り、一度うつむいてから顔を上げる。
トット「死に対する恐怖を知る者は、簡単に自分の命を投げたりはしない」
ワイマール「なるほど。これが死に対する恐怖ですか。確かに凄まじい」
突然の声にトットは慌てて振り向く。瞳に映るもの…それは宙に浮いた
ワイマールの首だった。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人外の戦士

182 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/24(木) 02:44

ワイマール「私もこの恐怖、心に刻みつけておきましょう」
口の端から血を引き、うっすらと笑みを浮かべるワイマールの首に、
トットは眉間に皺を寄せ、目を細めた。
トット「貴様、人ではないな」
ワイマール「ええ、お察しの通り私は人間ではありません。元人間とでも
      言いましょうか」
トット「何だと…」
剣の柄に手をかけ、いつでも動けるように腰を落す。
ワイマール「残念ですが流石にこの状態では剣を交える事はできませんので、
      今日のところは失礼します」
トットの構えを見て取り、ワイマールの首が苦笑を浮かべた。
と同時に床に転がっていたアイスブランドとフレイムタン、そして
四肢と胴体が浮き上がり、主の首を守るかのように空中で静止する。
ワイマール「では…ダテレポ!」
トット「待てッ!」
剣を引き抜く。だがそれよりも一瞬早くワイマールと二振りの剣は光の
球となって何処かへと消え去った。
ワイマール「エーコ様に仕えし忠実なる僕(しもべ)ゾディアックブレイブ。
      星宮ジェミニを預かりしこのワイマール、必ずやあなたの首、
      頂きます」
虚空に響くワイマールの声に、トットは小さく息を吐き剣を収めた。どうやら
完全に逃げられたらしい。
トット「ゾディアックブレイブ…」
ため息混じりに吐き出す。どうやらこれでまた一つ厄介事が増えたようだ。
トット「日ごろの行いが相当悪いらしいな」
言って苦笑する。と、その時だった。
こちらに向かって来る数多くの足音と怒声が耳に飛び込んでくる。
警備に当たっている兵士達だろう。
トット「息をつく間も与えては貰えないか」
ビビjr1号「団長、悪霊でも憑いてるんじゃないの」
トット「かもな…」
副団長の皮肉に口元を緩め、トットは再び剣を抜き去った。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

187 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/24(木) 03:39

私の中の誰かが、ふと」上を見上げたらしい。
だから、私の意識もまた、自然とそちらへ向けられる。
実際の所、上も下も無い漆黒この空間において、それを「上」と認識するのは・・・
単に、生物が生きる世界、いわゆる「ガイア」が有る故だ。
そのガイアが存在するはずの「上」から、またもや多大な量の光の砂がこぼれ落ちて来た。

私が「霧」と呼ばれていた時代の末期、ガイアは未曾有の危機に陥っていた。
遥かな太古より、ガイアを我が物にせんと目論んでいたテラという名の星が、
遂に本格的なガイア侵攻に着手した為だ。
彼等の先遣はガイアの主用な国々にて暗躍、そして戦乱を引き起こし、私自身もまた、
望まざる役割を課せられた。私の流れを歪ませ、その結果生まれた幾多の脅威がガイアの
生命を屠り、更にそうして流れ込む無数の死・・・魂が、光の砂と化して私に溶け込む。
私の身体は絶えず押し寄せる尋常ならざる魂の波で氾濫し、歪みは一層、肥大して行く。

だが、テラの目論みは打ち破られた。
数奇な運命を経て現れた八人の戦士によって。

私は彼等の全てを把握していた訳ではない。彼等の中心たる者が、テラの先遣の一人であった
と言うことさえ、後に流れ込んで来た魂の記憶によって知った。
私には、ガイアに直接干渉する手段が無い。
正直、こうも早くテラの侵攻が食い止められるとは思ってもみなかったし、また、
八人もの戦士が集結するとも思っていなかった。
私が知り得たのは、その内でたったの一人。
情けない事に、私自身が送り込んだ者だった。

霧・・・即ちライフストリーム・・・幾多の魂の集合体。
ガイアの行く末を案じる彼等、つまり私の抱いた最後の希望は・・・

黒魔道士として、現世に顕在化した。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光の恐怖の中で

191 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/24(木) 03:50

凄まじいばかりの光と爆風・・そして大轟音が消え去り・・もうもうと辺りに立ちこめる
埃と煙の中・・2人は折り重なる様にして倒れていた。
ベアトリクス「・・あ・・ぁぁ・・」かつてない威力の衝撃。・・しかし、今だ自分には意識があった。
あの瞬間、フライヤはガーネットの放った究極魔法アルテマを、いち早く察知し、ベアトリクスに
覆い被さり、その魔法の威力から半減させてくれた。・・故に自分は意識が保てているが、まともに
食らったフライヤは・・?
ベアトリクス「・・あぁぁ・・ッ・・フライヤぁ・・」その身を呈して自分をかばってくれたフライヤ。
眼を閉じたままピクリとも動く気配はない。・・気絶しているだけなのか・・・・それとも!?

ゴウッ!!!!振り向くとガーネットがベアトリクスの存在を捕らえ、再び先程の魔法を放たんとしている!
ベアトリクス「・・う・・うぅッ・・!」・・しかし!身体は全く動かない!
それほどまでに先程の魔法の威力は絶大であったのだ!
シュウウウウウウウゥゥゥ・・・・・  ガーネットの身体にオーラが宿ってゆく・・!!
・・・・・・・ああ・・ガーネットの・・胸がまた・・青く光って・・・そして・・

・・・・だめだ・・もう・・今度アレを食らったら・・立ちあがる事は・・出来ない・・

・・・・・私は・・無力だ・・ここまで・・ここまできて・・なんにも出来ないまま・・

・・・・・・・・何も・・何も知る事もなく・・終わってしまうのか・・・・・・・

・・・でも・・力が・・あまりにも・・違いすぎて・・私には・・歯が・・たたない・・

・・・・・・・・・どうすることも・・・・できない・・・・・・・・・・・・・

・・・・た・・・す・・け・・て・・・・・・・・・・・・助けて・・・・・・・
――――――――            ――――――――
――――――――――――――――――・・・・・

―――――――――――――――――――――――――――――・・・・・

――――――――――――――――――――――――――――――――――――・・

・・・・・・・・・・助けて・・スタイナー・・・アデル・・バード・・・・・・・

シュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ―――――――――・・

    ・・・!・・・・・!・・・のである!!・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・   ・・・・え???・・・
・・・・・・――――――・・そんな・・・・・・・・ ・・ウソ・・・・

何かに・・何かに抱き抱えられてるみたいな・・感じ・・あぁぁ・・これは・・夢?
・・・・・・・あぁぁぁぁ・・意識が・・意識が飛んで行く・・・ぁぁ・・ぁぁ

アルテマの放つ衝撃、爆風、轟音・・・全てが己の身体から遠く遠く感じ・・・・・・
――――――――・・・・そして白い光の中へと消えてゆく・・―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手遅れ

194 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/24(木) 04:27

私の希望は、そのまま、戦士達の希望となって行った。
小さな、ごく小さな希望。だが、とてつもない未来を内包する希望。
彼は戦士達に大きな希望を与え、そして自身もまた、彼等より同等のものを与えられた。
それは単なる力を超えた、信頼という名の力だった。
・・・事実、ガイアはこの力によって救われたと言っても良い。
ガイアに平穏がもたらされ、私は永きに渡る時を経て、再び元の流れを取り戻した。
私の小さな希望は自らの役割を終えると、残された魔力によって幾つかの種を蒔き、
そして静かに、静かに私の下へと還って来たのだが・・・

ガイアは、そして戦士達は、見事に私の希望を、彼等の同胞達の希望を、反故にしてしまった!
あの小さな黒魔道士と共に築いた、何よりも尊い信頼の環を破壊し!!
そして今再び、私の流れを乱している!!

私が救いたいと願ったガイアの民は、最早その魂を完全に歪ませてしまった。
あらゆる悪徳を体制や時代といった建前の下で許容し、そこに順応することで自らの生を満たしている。
僅かに残った清き者達に、世界を導く力は?あの八人の内、未だ暗黒へと落ちていない者は?
だが、それさえ焼け石への水でしかない。暗黒へと落ちた戦士達が創り出した歪みは、最早戻らない。
病は、内に達した時点で命を脅かす。テラという外傷は、その時は治癒されたかに見えたが、
今こうして内から食い破る格好で、再びガイアを蝕み始めた。

もう、

手遅れだ。

私の内にあった希望は、最早反転し、その意味を全く逆のベクトルに向けている。
私を構成する幾多の魂が「浄化」の唱を紡いだ時、反転した希望・・・絶望は、
再びガイアに顕在化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虚空より現われし者

195 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/24(木) 04:36

・・・・・・・・・ない!!!・・
バカな・・・バカな!!バカなバカなバカな・・何故・・何故おらぬぅぅ――ッ!?
どうしようもない怒りと焦りがガーネットを襲う!!ガーネットの目の前には・・何もなかった・・
いや・・先程までには確かにあったのだ!・・そう・・フライヤ・・そして・・
・・・・・・・そしてベアトリクスが!!!!!!!・・・・・・・
消えている・・アルテマの白き光と共に・・まさに煙の如く消え去ってしまっていた!!
ガーネット「!!・・・ッ!」急いでバルコニーの下を覗いても!!
砕け散った石片の山を蹴っ散らかしてみても!!!・・・いない・・いない・・
出て・・来ない・・・出て来ない・・出て来ない出て来ない出て来ない・・・!!

      「・・・・・逃げられたのだよ・・・。」

ガーネット「!!!!!」突然背後より聞こえしその声に、即座に反応し振り向くガーネット。
・・しかし・・だれもいない・・。・・そして・・再び
???「ククク・・だが・・私にとっては・・むしろ好都合な事だ・・貴様が余計な真似をする
前に・・・フフフ・・ここに間に合ったのだから。」
―――今、ガーネットしかいないはずのこの広間に、何者かの声が響き渡る・・
ガーネットはその声の正体に気付いたのか・・ふいに誰もいないこの空間にむかって話しかける!
ガーネット「・・・・貴様か・・貴様・・なのか・・!?」
???「クックックッ・・私のかわいいかわいい「器」がお前なぞ「人形」の手に入ると
でも思っていたのか・・?クックックッ・・・」
ガーネット「・・・私に・・今、この私に手を出せる・・という事は・・ついに
この世界で動く手段を得たと・・いう事か・・。・・・・・・・出て来いッ!!」
???「ククク・・まぁそういきり立つな・・。今・・我が姿を披露してやるよ・・・」
ガーネット「!!!!!!!!」    シュウウウゥゥゥゥゥ・・・・・・
突如!!空間に不条理な現象が起こった!!・・・・それは・・「穴」。
何もない空間に、まるで穴が穿たれた様な・・不自然な空間が現れた!!
シュウウウウゥゥゥ・・その「穴」は・・空間を切り裂き・・みるみる大きくなり・・
・・・そして・・その「穴」の中・・暗黒の空間より・・出て来たもの!それは!!

ガーネット「!!!!!!!!!!!!!」

???「クックック・・・この「器」にとっては、お前に出会ったのはつい最近の事であるな。
・・・が、「私」とは・・初めて出会う事となるか・・・ガーネット・・。」

その「穴」より現われし者・・・それは・・・・・・・


トレノ、ユーノラス大平原において・・行方知れずとなっていたはずの

・・・・・・・・エーコ・キャルオルであった・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バクーの決断

203 名前:ルビィの躁鬱投稿日:2000/08/24(木) 16:39

リンドブルムのタンタラスアジトにはかつて満ちあふれていた活気はもうない。
十数年前には、ここでバクーとジタンが相変わらずのくだらない言い争いをし、
止めようとするマーカス、ベネロ、ゼネロ、呆れ顔のシナ、苦笑するブランク、
そしてその隣で肩をすくめながら見守っているルビィの姿が、確かにあったのだ・・・!
だが現在。
満月の夜。
殺風景なアジトにはブランクの書き置きを何度も読み返しているバクーが一人。
そしてその横には不安げな表情で見つめるマーカス。
マーカス「やっぱり・・・ブランクの兄貴は死んでしまったッスか?」
その問いには答えずバクーは静かに言った。
バクー「マーカス。お前はジタンの元へいけ。ここはもう危ねぇ」
マーカス「??? どうしてッスか?タンタラスがエーコにはにらまれるようなことは・・・」
バクー「ルビィをエーコから引き離そうとした時点でタンタラスはもうエーコの敵だ。
    あいつはそんなに甘くねぇ」
バクーの言葉が終わると同時に建物が大きく揺れる。
内装が剥がれ、天井からは埃が舞い落ちる。
バクー「・・・さすがに早い。無駄がねぇな」
頑丈に鍵のかかった扉がそれごと吹っ飛んだ。
暗闇から姿を現したのはかつてここでともに笑い、泣いた仲間。
バクー「気分はどうだ??外道に墜ちた気分ってのはよ?」
バクーは大声でそう言い放つ。訪問者は口元に笑みをたたえてそれに答えた。
ルビィ「最高ね。今まで味わったことのない爽快な気分よ」
バクーは、恐ろしさですでに震えが止まらないマーカスにそっと耳打ちする。
バクー(早く行け・・・俺もあとから行く。なぁに心配するな、俺にぬかりはねぇ)
慌てて裏口に向かって駆け出したマーカスにルビィが斬鉄剣を手に迫り来る!
・・・と、突如彼女の眼前に錆びたアイアンソードが突き刺さり、行く手を阻んだ。
バクー「焦るんじゃねぇ。お前の相手は俺だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダリの悪夢

206 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/24(木) 18:10

雲ひとつない夜空で玲瓏と輝く満月。
しかし、天を焦がす炎と空を覆う煙に包まれたダリの村には月の光もとどかない。
月は、その村で繰り広げられる凄惨な殺戮劇を厭うたのかも知れなかった。
あるいは魂すら燃え尽きる灼熱の地獄に、あるいは心の底まで凍りつく悪夢のような極寒に、
そしてあるいは血肉も弾け飛ぶ天の怒りの激雷に、幾百幾千の命が蝋燭の炎でも吹き消すかのように、
瞬く間に消されていく。黒魔道士たちは過剰とも言えるその殺傷能力を開放し、すべての命を奪わんと、
ダリの村を阿鼻叫喚の巷に変えた。逃げ惑う無力な村人は勿論、寄せ集めのアレクサンドリア兵にも
黒魔道士たちに抗う術はなく、短いが、当人には永遠とも思える地獄の激痛の中に散っていった。
だが、すべての兵が一方的な虐殺の餌食となった訳ではなかった。ブラネ統治下の相次ぐ戦乱を
生き延びた、実戦経験豊富な古参兵で成る精強な部隊も又、ダリには駐留していたのである。
休戦を呼びかけるビビJr6号の直訴は本人の意思とは裏腹に、ガーネットに黒魔道士軍団への
警戒を促がすだけの結果となっていた。その結果、一部の精兵に対黒魔道士用の特殊訓練が
実施されていたのである。
戦略規模の戦闘に投入する場合、同士討ちを避ける為、黒魔道士には大規模広範囲破壊魔法の使用を
制限するような命令が組み込まれる。それを利用し、複数人による連携で一気に間合いを詰めれば、
一般人並の直接戦闘能力と体力しか持たない黒魔道士を倒すのは容易なのだ。その辺りのノウハウは、
ブラネ統治時代のアレクサンドリア式黒魔道士のデータから得たものだったが、最新の黒魔道士も
魔法攻撃力の向上はあるものの、基本的にはアレクサンドリア式の延長線上に存在するものなので、
この戦法は十分有効であった。とは言え、訓練を受けた精兵の数が決して多くはない上に、
有効な反撃手段が多対一でしか使えないとあっては、アレクサンドリア軍が次第に劣勢に
なっていくのは避けられない事態であった。
最早趨勢が定まりつつある戦場を、一片の油断も無い厳しい眼差しで睥睨するジタンの精神に、
直接連絡が入った。今は亡きクジャ、そしてガーランド、ジタン、ミコトの4人だけに付与され、
その4人の間でしか働かない精神感応能力である。
『…ジタン』
『ミコトか。どうした?』
『南ゲートに動きがあるわ。どうやらダリの状況を捕捉したようね』
『ほう、予想より早いな。屑ばかりと思っていたが、アレクサンドリアにも少しは人物がいたか』
『モグネットの報告に基づく推定で、南ゲートですぐに動かせる戦力は歩兵約1万、戦闘用飛空艇
4隻といったところね。ダリに展開中のこちらの戦力では防ぎきれないわ』
『やはりあれを使うしかないか…ミコト、ただちに次の作戦に移行してくれ』
『…わかったわ』

「ダリ急襲さる」との報を受け、南ゲートに駐留していたアレクサンドリア軍の半数がダリに
向けて行軍を開始した。それに呼応するかのように、ダリ上空で待機していたミコトの飛空艇部隊も
ノールッチ高原に移動したのだが、その編隊の中にに奇妙なものが存在した。4隻の大型飛空艇の
ワイヤーで運搬される巨大な四角柱である。用途のまったく不明なそれに不気味なものを感じたのか、
両軍の前線が接触するや、アレクサンドリア軍の火線が四角柱に集中した。爆発光で真紅に染まる四角柱。
いや、それはコンテナだった。何の前触れも無く四角柱の底部が開き、巨大な影が大地に降り立った。
その巨影をなんと形容するか。とてつもなく巨大な全身鎧とでも呼ぶべきか、ガイアの文明とはまったく
異質な進化を遂げた技術の結晶がそこにあった。
「ジタンが『記憶』から得た知識を元に建造した、遥かなる時代の兵器…。私たちが勝つためには、
こうした力も使っていかなければならない…」
悪意ある神の冗談としか思えぬ巨影の異容に一瞬怯んだアレクサンドリア軍だったが、すぐに気を
取り直し、巨影に更なる攻撃が集中する。
「でも…そこまでして勝たなければいけないの…ジタン?」
ぽつりと呟くミコト。しかしすぐに頭を振って、ブリッジのジェノム士官に命令を下した。
「バブイルの巨人を起動させて」
アレクサンドリア軍の猛攻にも傷ひとつ受けていない巨影ゆっくりと立ち上がり、その瞳が赤光を放った。
次の瞬間、世界が光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シド絶命

208 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/24(木) 23:11

ナタリーに向ってまたシドはフレアを放った。
ナタリー「またフレアか…。
     そう言うのをバカの一つ覚えと言うのだ」
ナタリーはディフェンダーを天に掲げた。
すると、核熱球がナタリーの剣に吸いこまれていく。
ナタリー「先ほどは不覚を取ったが、この程度の魔法なら魔封剣を使えば吸い取る事が出来るのだよ。
     死ね!」
ナタリーは両手で剣を持って深く踏み込むと、地面を蹴って跳躍した。
シド「…これに賭けるしかないか。…メテオ!」
頭上から間もなく自分を一刀両断するであろうナタリーを見上げながらシドは、
全生命力を振り絞って、メテオを使った。
それに気付いたナタリーはハッとなるが、最早体勢を整える事すらままならない。
無数の隕石が天から落ちてきてナタリーを打ちぬく。
ナタリー「ぐあーッ」
隕石に打たれたナタリーが地面に叩きつけられ、
その上からさらに幾数もの隕石が轟音を立てて落ちてくる。
シド「やったか…」
そう呟いたシドの目に写ったのは、
全身傷だらけになりながらも、よろめきながら立ちあがるナタリーの姿であった。
それを見たシドは、絶望したような表情でその場に崩れ落ちた。
ナタリーは、全身から血を滴らせながら、どこか心許ない足取りでシドに近付く。
ナタリー「…まさか。ただの人間に…ここまで追い詰められようとは」
剣技の射程範囲内に入ると、ナタリーは剛剣の構えを取る。
ラニ「待ちなさい!」
シドに止めを刺そうとしたナタリーの後ろからラニの声が聞こえた。
そしてナタリーが振り向いた瞬間、ラニは斧を振り下ろす。
ナタリーはそれをかわすと、ラニにサンダガを撃つ。
ラニ「きゃあ!」
ラニは電撃をまともに受けて吹っ飛ばされ、
吹っ飛ばされたラニの身体がレンガの壁を打ち砕く。
ナタリー「…図に乗るな。虫けらが」
吹っ飛んでいったラニに目もくれずにそう呟くと、再び剛剣の構えを取る。
ナタリー「…強甲破点突き」
ナタリーは力のない声でそう言って、瀕死のシド目掛けて剣を振るう。
するとシドが身に纏っていた黒のローブが砕け散り、シドの眼の光が落ちた。
ナタリーは生死を確認する為、シドに近付く。
ナタリー「…これにて、任務完了」
ナタリーはシドの死を確認すると姿を消し、ナタリーの立っていた場所には赤黒い血痕だけが残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シドの思い

210 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/24(木) 23:17

―回想シーン―
会議室から戻ってきたシドに、ヒルダが話しかけてきた。
ヒルダ「あなた…。会議室でオルベルタとエリンに何を話していたのですか?」
シド「ああ…。あの子にわしをお父さんと呼ばせるにはどうしたらよいかと思ってな。
   それの相談じゃよ」
ヒルダ「でも、それはあの子の気持ちの問題もあるから…。
    無理矢理呼ばせるのは、よくないと思うわ」
シドはヒルダの反論に眼をそむけるとこえ言った。
シド「わしは若い頃から子供が欲しかったのに、この歳まで子供を持つことが出来なかった。
   だが、今ようやく、念願の子供を持つことが出来た。
   例え無理矢理だったとしても、その子供にお父さんと呼んでほしいと思うのは当然じゃよ」
ヒルダ「……」
シドの子を産むことの出来なかったヒルダは、これ以上何も言うことが出来なかった。

それからまもなくして、エーコはシドをお父さんと呼ぶようになり、ヒルダをお母さんと呼ぶようになった。
二人はエーコが自分たちを親と認めてくれたからだと思ったが、
実はエーコが二人の意を汲んでお父さんやお母さんと呼んでいたに過ぎなかった。
それが、悲劇の始まり。
そして、狂気の始まり。

二人がエーコの異常に気付いた時は最早手遅れだった。
エーコはもうひとつの人格に完全に取って代わられていたのだ。
闇の想念に囚われたエーコは、対外政策に消極的なシドに不満を持つ貴族たちと結託してシド暗殺計画を企てた。
シドは影武者の犠牲もあって上手く逃げる事が出来たものの、
逃げる途中に見た見たエーコの目は冥くて冷たく、そしてどこか寂しげであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遺志を継ぐもの

211 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/24(木) 23:20

ラニ「シドさん! シドさん!」
ラニはシドであった肉塊の口にエクスポーションを注ぎ込みながら、シドの名を呼ぶ。
だが、既に事切れていたシドの口から返事が返ってくる事はなかった。
ラニ「そんな…。シドさん死んじゃったの…?」
今まで多くの人を殺めてきたラニにしては珍しく、人の死に涙を流した。
その雫が落ちて屍の頬を濡らしたとき、ラニの頭にシドの声が聞こえた。
シド「ラニよ…。頼みがある」
ラニ「シドさん…? 生きてるの…?」
ラニがシドの顔を見ると、目は閉ざされたままであった。
シド「…残念だが、わしはもう旅立たなければならない。
   だが、ごく僅かに残った力でお前に語りかけているのだよ。
   ラニよ、あの子を、エーコを救ってやってはくれないか?
   あの子がこのような非道を働くようになったのも、あの子の寂しさ…辛さ…。
   そう言ったものに、わしらが気付いてやってやれなかったからなのだ。
   頼む…。エーコを孤独から救ってやってくれ…」
ラニに頼むシドの声は、娘を愛する一人の父親そのものであった。
ラニ「分かったわ…。わたしにどれだけ出来るか分からないけどやってみる…」
今まで気ままに生きていたラニが、人の頼みを無償で聞くなんて珍しい事であった。
あまりの珍しさに、その言葉を口にしたラニ自身すら驚いていた。
シド「…では、わしの意志をお前に託そう。頼んだぞ…」
その声がラニの頭に聞こえたかと思うと、ラニの身体を光が包み込む。
そして、ラニは自分の体に新たな力が入ってきた事を感じた。
シドが自身のアビリティと意志を、ラニに継承させたのである。

 

 

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