二000年4月、名古屋市で殺人事件が発生しました。スナックのホステスをしていた
女性(四三歳)が二またをかけていたために発生した事件です。どっちの男性をとるのか
で揉めた揚げ句、捨てられた方の男性(五八歳)が、恋敵を包丁で刺し殺したのです。
ここまではそれほど珍しい話ではありません。どのにでもある三角関係のもつれです。
でも、この殺人事件こそ、思い残しをはらす過程でおこったひとつの象徴的なお話なのです。
この二人はパチンコ店で出会いました。声をかけたのは殺人犯の男性
(当時五0歳)です。女性(当時三五歳で、ホステス。夫がいました)は、
乳児(娘)をひざに抱いてパチンコをしていたのです。彼は、
赤ちゃんをひざに抱いているこの女性を見て「お母さん」を強く感じました。
そして心の中の何かが刺激され、思わず話しかけてしまったのです。その時は、単なる世間話でした。
その後、どちらもパチンコ好きだったので、ちょくちょくパチンコ店で見かけるようになりました。
そんなある日、男性は「あんた、母乳出る?もし出るんなら吸わせてくれないか?」と
その女性に言ったのです。はじめ女性は、「なに、この人?悪い冗談を言っているの?」と
思ったのですが、男性の目を見ると、なんとそれは本気な目でした。
「いやー、実はオレ、幼い頃養子に出されて母乳を飲んだことがないんだ。
もし、まだ母乳が出るんなら一度オレに飲ませてくれないかな・・・」男性は、
恥ずかしそうにそう付け加えたのです。不真面目な気持ちで言っているのではないことは
女性にもわかりました。
お金を借りている弱さもあり、女性は男性の家に行きました。半信半疑です。
女性は騙されているのではないかと不安でしたが、実際にやってみると、
男性は約束通り、女性のおっぱいに赤ちゃんのようにかじりつき、
おいしそうに母乳をごくごく飲んだのです。「いや−満足、満足!
もうオレ、死んでもいい!」とまで言いました。本当に感激したのです。
そして、お礼にと、数万円を女性に渡しました。
その後も、何度か男性はこの女性から母乳を飲ませてもらいました。
驚いたことに、そのつど、男性は「おかあさん」「おかあちゃん」と言って
女性に甘えたのです。また女性の方も男性を「○○ちゃん」と言って甘えさせたました。
こんな関係が数カ月も続きました。
あまりに見事に男性が赤ちゃんになってしまったので、女性は、この人は
男性としての機能がまったくダメなのではないかと、疑っていたほどです。
いくら母乳が出るといっても、三五歳の女性の乳房にしゃぶりついて母乳だけを飲み、
いたく満足して帰るのですから、当然ですね。
いくら「お母さん」と言って甘えてくるといっても、まったくその気がないのですから、
インポテンツと解釈しても無理はないことです。
もちろん、この男性はインポテンツではありません。ちゃんと妻も子どももいます。
実際、このような赤ちゃんごっこをしてから数ヶ月後、二人ははじめて肉体関係をもちました。
ところが、関係を持った頃は、男性は早漏だったのですが、
この女性と関係を続けていくうちに男性としての自信がつき始め、
長持ちするようになったのです。そのことで男性は更に自分に自信がつき、
肉体的にもこの女性と離れられなくなりました。
しかし、あまりに頻繁に逢い引きを重ね過ぎたため、二人とも自分の配偶者に
不倫がバレてしまったのです。不思議なことに、それぞれの家庭でもめることもなく、
あっさりと離婚してしまいます。こうしてはれて、二人の同棲生活が始まりました。
ところが、その後、女性がお金持ちの男性と浮気したために二人の関係がこじれ、
殺人事件にまで発展してしまったのです。
|