AX
back home next

「私もうれしい、あなたもうれしい」の語義の検証

 岩月氏は、「私もうれしい、あなたもうれしい」という フレーズを繰り返し使っている。よほど気に入ったのだろうか?

初出は、「他人(ひと)にいい顔をして何になる」である。

岩月謙司著 「他人(ひと)にいい顔をして何になる」 113頁 1999年6月発行

他人(ひと)にいい顔をして何になる

なぜなら、自分の快をとことん追求すると、「私もうれしい、あなたもうれしい」という 関係になれるからです。 人にウケのいい事をするのではなく、自分にウケのいいことをするのです。 それをとことん追求していくと最後には、「私もうれしい、あなたもうれしい」という関係が 自然に生まれます。


自分の快をとことん追求することが、なぜ「あなたもうれしい」に繋がるのかがは、 この文章だけでは明白ではない。 このあとの段落で、岩月氏はピアニストに例えてこの説明をおこなっている。

岩月謙司著 「他人(ひと)にいい顔をして何になる」 114頁 1999年6月発行

他人(ひと)にいい顔をして何になる

ピアニストはピアノを弾くことそれ自体が楽しいし、自己完結しています。 それに加えて、聴衆もいい演奏で嬉しくなります。聴衆が悦べば、演奏している ピアニストも嬉しくなり、また励みにもなります。ますます楽しんでピアノが 弾けるようになり、感動的な演奏をすることができるようになるのです。 ポジティブフィードバックです。

 内容的には極めて当り障りの無い表現である。

 岩月氏にとって「自分の快を追求すること」乃至「自分にウケのいい生き方」とは何なのだろうか?
岩月氏の35冊の著書のどこにも楽器演奏が趣味だとは書いていない。 よって、岩月氏自身の「自分にウケのいい生き方」はピアノを弾くことではなく、 他の「何か」である。 ピアニストは単なる例示に過ぎない。

 岩月氏の本業の生物学の研究をおこない、ゾウリムシの 学術論文を英語で国際ジャーナルに発表する事なのだろうか。 それとも、多くのライト心理学の著作を発表して印税を得ることなのだろうか。

 岩月氏は 1998年度のComp Biochem Physiolの論文 "Symbiotic Chlorella enhances the thermal tolerance in Paramecium bursaria." 以降、何ら論文を発表していないので、少なくとも本業の生物学ではない。

 「自分にウケのいい生き方」に関しては、2頁後に追加説明がある。

岩月謙司著 「他人(ひと)にいい顔をして何になる」 116頁 1999年6月発行

他人(ひと)にいい顔をして何になる

 「自分にウケのいい生き方をしたら、わがままにならないか」と質問 する人がいるかもしれません。わがままに生きることと、おのれの心に忠実に生きることを どう線引きしたらいいのでしょうか?基準はあるのでしょうか?

 そんな基準は存在しません。その線引きができるのはあ、この世であなたしかいないのです。 あなたが線引きをやればそれでいいのです。

 上記の文章により、岩月氏の「自分にウケのいい生き方」とは、 批難の対象となりかねない危険をはらんでいることが判る。

 そして、1年後に発行された「母親よりも恵まれた結婚ができない理由(わけ)」を 読んでいただきたい。

岩月謙司著 「母親よりも恵まれた結婚ができない理由(わけ)」 244頁 2000年6月発行

母親よりも恵まれた結婚ができない理由(わけ)―女性の「オトコ運」を母の嫉妬がくるわせる

Q:愛とはなんでしょうか、どういう気持ちでセックスすると 心が満たされるのでしょうか?

A:それは、自分がしたいことをするセックスではなく、何を したら相手(夫や妻や恋人)が喜ぶかを考えて、一緒に楽しもうという気遣いです。 つまり、「私もうれしい、あなたもうれしい」という状態をめざす意欲が愛なのです。

 岩月氏は、「私もうれしい、あなたもうれしい」という状態をめざす事で セックスで心が満たされると主張している。

 つまり、「私もうれしい、あなたもうれしい」は、セックスそのものであると解され、 岩月氏にとっての「自分の快を追求すること」乃至「自分にウケのいい生き方」とは、 セックスによって女性の心を満たすことと解される。

 相手となる女性は誰なのだろうか? その女性とセックスすることが批難の対象となりかねない事から、岩月氏の配偶者以外であることが判る。

 そして、岩月氏の初公判における検察側の冒頭陳述をご確認いただきたい。

  • 準強制わいせつ:香川大教授、初公判で無罪主張/毎日新聞 2005/03/11

    神経症的症状の相談に訪れた女性にわいせつ行為をしたとして、準強制わいせつの 罪に問われた香川大教育学部教授、岩月謙司被告(50)=高松市昭和町1=の 初公判が11日、高松地裁(増田耕児裁判長)であった。岩月被告は捜査段階で ほぼ容疑を認めていたが、「準強制わいせつとされる行為はしたことはない」と 無罪を主張した。

    起訴状によると、岩月被告は02年4月26日午後1時20分ごろ、20歳代の 女性に自宅に来るよう電子メールを送信。治療上必要な行為と装い、 同27日夜〜28日午後、自宅浴槽などで女性の胸などを触った。

     検察側は冒頭陳述で、「(岩月被告は)心の傷を癒やすためと思わせれば わいせつ行為を出来ると経験的に知った」と述べ、少なくとも相談を寄せた 女性20人と性行為に及んだことなどを指摘した。【高橋恵子】

 よって、 岩月氏にとっての「自分の快を追求すること」乃至「自分にウケのいい生き方」とは、 相談を寄せた女性(=クライアント)とセックスすることであると結論づけられ、 「私もうれしい、あなたもうれしい」とは、岩月氏がクライアントとのセックスを 正当化するための理屈であると解される。


back home next