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岩月謙司氏の日本石油化学株式会社在籍時の業績検証

  • 岩月謙司氏が香川大学赴任前に在籍していた日本石油科学株式会社における業績が 著作「女は男のとこを見ているか」に記されているので、その真偽を検証した。 虚偽の記載部分が2個所あり、岩月謙司氏は有りもしない業績を誇示していると思われる。 真実の記載部分も、主語を記載しない事により、 「日本石油化学株式会社の業績」を「岩月謙司氏の業績」と誤読させようと誘っている節が見られる。

    岩月謙司著 「女は男のどこをみているか」 178頁より

    女は男のどこを見ているか (日本石油化学株式会社に在社していた頃) 研究所ができてからは、新入社員教育を筑波研究所で開催したり、 農水省の食品総合研究所(当時)や北大や山口大などの協力を得てパテントを取得したりしました。 私自身も基礎研究を続け、筑波研究所時代の四年間に、7本の論文が国際科学誌(査読制度のある国際誌)に掲載されました。 もちろん応用研究もやりました。抗菌剤や抗生物質の研究をしてパテントも申請しました。

  • 「農水省の食品総合研究所(当時)や…の協力を得て(日本石油化学株式会社が)パテントを取得したりしました。」

    1,結論
    検証の結果、真実であると判断する。
    但し、この文章は主語が省略されており、後段の文章の解釈により、やっと主語が日本石油化学株式会社であると推定できる。 「農水省の食品総合研究所の協力により(岩月謙司氏が発明した)パテントを取得した」と誤読した読者も多いであろう。

    2、検証方法
    日本石油化学株式会社と農林水産省の共同出願に係わる特許の存在が証明できれば良いと考え、以下を検索した。

    (検索集合A) 出願人が「日本石油化学株式会社」を検索し、2000件程度ヒットした。
    (検索集合B) 全文検索で、「農林水産省」を検索した。
    (検索集合C) 出願日が 1985/1/1 〜 1992/12/31 (岩月謙司氏が日本石油化学株式会社に在籍していた時期)を検索した
    検索集合A×B×Cの論理積をとると、3件の特許が検索できた。公開番号を以下に列挙する。
    特開平3-130086 セロビオースの製造方法
    特開平4-66092 ラミナリオリゴ糖の製造方法
    特開平4-370099 ラミナリビオースの製造方法
    いずれも出願審査請求され、かつ権利化されている。
    発明者は谷口肇,佐々木堯,北岡本光 の3名で、全て住所は茨城県つくば市である。
    出願人は日本石油化学株式会社と農林水産省食品総合研究所長(共同出願)である。
    よって、岩月氏は真実を記載している。 しかし、文章の主語が記載されていないため、パテント取得が岩月氏の業績のように読めてしまう問題点がある。

  • 「北大や山口大などの協力を得て(日本石油化学株式会社が)パテントを取得したりしました。」

    1、結論
    検証の結果、虚偽であると判断する。
    この文章も主語が省略されており、後段の文章の解釈により、やっと主語が日本石油化学株式会社であると推定できる。 「北大や山口大の協力により(岩月謙司氏が発明した)パテントを取得した」と誤読した読者も多いであろう。

    2、検証方法
    (1)北海道大学と日本石油化学株式会社の共同出願に係わる特許を調査した。
    (検索集合A) 出願人が「日本石油化学株式会社」し、2000件程度ヒットした。
    (検索集合B) 全文(OCR含む)検索で、「北海道大学」を検索した。
    検索集合A×Bの論理積をとり、結果は0件であった。
    (検索集合C) 全文(OCR含む)検索で、「北海道」を検索した。
    検索集合A×Cの論理積をとり、結果は6件であった。
    うち、発明者が北海道在住のものは2件である。
    特開平4-142248 折り畳み式コンテナ
    特開平4-140597 多目的パネル
    両出願とも出願人は日本石油化学(株)で、発明者の一人は 中村達也氏(北海道在住)だが、
    中村達也氏が北海道大学関係者かは不明である。
    ただし、この特許は出願審査請求されないまま取下擬制されており、特許権は成立していない。
    よって、日本石油化学(株)が北海道大学と共同で取得した特許は存在しない。

    (2)山口大学と日本石油化学株式会社の共同出願に係わる特許を調査した。
    (検索集合D)全文(OCR含む)検索で、「山口県」を検索した。
    検索集合A×Dの論理積をとり、結果は5件であった。
    うち、発明者は現在の山口大学教授 藤島政博氏の特許が1件だけ出願されていた。
    特開昭63-276485 ホロスボラ属を原生動物から単離する方法
    ただし、この特許は出願審査請求されないまま取下擬制されており、特許権は成立していない。
    よって、日本石油化学(株)が山口大学と共同で取得した特許は存在しない。

  • 「私自身も基礎研究を進め、筑波研究所時代の四年間に、7本の論文が国際科学誌に掲載されました。」

    1、結論
    岩月謙司氏の発表論文を検索してみたところ、以下11本が検索可能で、うち5本の論文が筑波研究所時代に掲載されたものであった。
    よって、この部分は正しいと判断する。

    2、備考
    1990年に発表した論文の共著者 "Fujishima, M" さんは、特開昭63-276485 ホロスボラ属を原生動物から単離する方法
    を特許出願した山口大学の藤島政博教授と思われる。

    岩月氏の発表論文
    年度 著者 題名 掲載誌
    1981 IWATSUKI, K., IKEDA, K., CHIBA, S. Arch Int Pharmacodyn Ther 251:166-176.JENSEN
    1981 Iwatsuki, K. and Naitoh, Y. The role of symbiotic Chlorella in photoresponses of Paramecium bursaria.
    (参考訳:バーサリア種ゾウリムシの光応答に関するクロレラ共生の役割)
    Proc,Japan Acad. 57B, 318-323.
    1982 Iwatsuki, K. and Naitoh, Y. Photorespponses in colorless Paramecium.
    (参考訳:無色のゾウリムシの光応答)
    Experientia, 38, 1453-1454.
    1983 Iwatsuki, K. and Naitoh, Y. Behavioral responses in Paramecium multimicronucleatum to visible light.
    (参考訳:マルチマイクロヌクレアタム種ゾウリムシの可視光に対する振舞い)
    Photochem.Photobiol. 37, 415-419.
    1983 Iwatsuki, K. and Naitoh, Y. Photobehavior in a colorless Paramecium.
    (参考訳:無色のゾウリムシの光に対する振舞い)
    Bio Science, 33, 714-715.
    1985 KENJI IWATSUKI AND PILL-SOON SONG DEUTERIUM OXIDE (D20) ENHANCES THE PHOTOSENSITIVITY OF STENTOR COERULEUS BIOPHYSICAL JOURNAL VOLUME 48 1985 1045-1048
    1988 Iwatsuki, K. and Naitoh, Y. Behavioural responses to light in Paramecium bursaria in relation to its symbiotic green alga Chlorella.
    (参考訳:ブルサリア種ゾウリムシの、共生した緑algaクロレラとの関係における光に対する振舞い)
    J. exp. Biol. 134, 43-60.
    1989 K. Iwatsuki, P.S. Song, The ratio of extracellular Ca++ to K+ ions affect the photoresponses in Stentor coeruleus,
    (参考訳:細胞外のカルシウムイオンとカリウムイオン比率が Stentor coeruleus に与える影響)
    Comp. Biochem. Physiol., 92 (1989) 101-106.
    1990 Fujishima, M., H. Sawabe, and K. Iwatsuki Scanning electron microscopic observation of differentiation from the reproductive short form to the infectious long form of Holospora obtusa
    (参考訳:Holospora obtusaの生殖の短縮形から感染の延長形までの分化に関する電子顕微鏡下の観測)
    J. Protozool., vol. 37, pp. 123?128
    1991 K. Iwatsuki, Y. Kobayashi The latency of the photophobic response in Stentor coeruleus depends upon the ratio of extracellular Ca++ to K+ ions
    (参考訳:細胞外のカルシウムイオンとカリウムイオン比率への依存性に措ける Stentor Coeruleusの光応答の潜在)
    Comp. Biochem. Physiol., 100 (1991), 711-714.
    1992 NAKAOKA, Y. AND IWATSUKI, K. Hyperpolarization-activated inward current associated with the frequency increase in ciliary beating of Paramecium.
    (参考訳:ゾウリムシの鞭毛の動き頻度増加に関連しているHyperpolarization活性の内向流)
    J. comp. Physiol. A 170, 723・27
    1998 Iwatsuki, K., M. Nishidoi and K. Suehiro Symbiotic Chlorella enhances the thermal tolerance in Paramecium bursaria.
    (参考訳:ブルサリア種ゾウリムシの熱耐性向上に関与するクロレラ共生)
    Comp Biochem Physiol [a] 121, 405-409.

    著者名 Iwatsuki, K. and Song, P.S.
    題名 The ratio of extracellular Ca2+ to K+ ions affects the photoresponses in Stentor coeruleus.
    (参考訳:細胞外のカルシウムイオンとカリウムイオン比率が Stentor coeruleus に与える影響)
    掲載誌 Comp.Biochem.Physiol.A. 92:101-106, 1989.
    Notes 1. Stentor coeruleus exhibits negative phototaxis (due to phototactic orientation response) and step-up photophobic response (avoiding reaction) to visible light.
    2. The effect of Ja-value ([K+]/[Ca2+]1/2) and calcium ion concentration of the surrounding medium on the photoresponses in Stentor were studied.
    3. The both types of photoresponses in Stentor are greatly affected by the Ja-value. A higher Ja-value medium suppressed the step-up photophobic response of Stentor, whereas the organism showed a higher degree of phototactic orientation response in higher Ja-value solutions.
    4. The effect of the Ja-value on the step-up photophobic response was opposite to that on the phototactic orientation response.
    5. With increasing calcium concentration but at a constant Ja-value, the number of Stentor showing the step-up photophobic response increased, whereas the phototactic orientation response of Stentor was suppressed at higher Ca2+ concentrations.
    6. The effect of the calcium concentration on the photophobic response was also opposite to that on the phototactic orientation response, as in the case of Ja-value effect.

  • 「もちろん応用研究もやりました。抗菌剤や抗生物質の研究もしてパテントも申請しました。

    1、結論
    この記載は虚偽であると判断する。

    2、検証方法
    著名な特許データベースであるPATOLIS及び NRI CYBER PATENT上で発明者「岩月謙司」で検索した。
    その結果、岩月謙司氏が発明者に名を連ねているのは国内特許、 特開平02- 93320 動的物体の追跡法 しかなく、米国特許や欧州特許は何ら出願していないことが判明した。
    この特許は顕微鏡撮影下に措ける原生動物の追跡法に関する発明であり、抗菌剤または抗生物質の発明ではない。
    よって、岩月氏が抗菌剤や抗生物質のパテントを申請したという主張は虚偽であると判断する。
    なお、特開平02- 93320 動的物体の追跡法は 出願審査請求されないまま取下擬制されており、特許権は成立していない。

    仮に出願審査請求されたと仮定しても、 当該発明は学術的・実験的にのみ利用される発明に過ぎず、よって 特許法29条1項柱書の産業上利用可能性を満たさず、よって拒絶査定されると解する。
    (特許庁 改訂審査基準「産業上利用することができる発明」2,1(2)参照)

    (発明者 岩月謙司の検索結果(使用DB:PATOLIS IV))
    **検索回答[S1 ]** ファイル(P ) 様式(P004) 2005.02.09 1/ 1
    *** 特許出願 昭63-244442[S63. 9.30] 早期審査( ) 出願種別(通常) ***
    特開平02- 93320[H 2. 4. 4] 特公 [ ] 登録 [ ]
    審査請求日[ ] 公報発行日 [ ]
    名称 動的物体の追跡法
    抄録 【目的】隣接する3点以上の座標点における輝度変化に基づいて移動物体の位置
    をとらえることにより,ノイズを動的物体を誤認することなく動的物体の判定を確実
    に実施する。【構成】動的物体の追跡装置は,動的物体2の動きをとらえるビデオカ
    メラ3および演算処理を実行するプログラムを実施するパ−ソナルコンピユ−タを備
    えている。そしてi番目とi−1番目の画像の比較においてウインドウ内の各座標点
    における輝度差を計算する。そしてある座標点の輝度差がスレシヨルドレベルを超え
    ている点が縦横隣接して3個以上存在する場合にのみ検出すべき動的物体とみなす。
    そのため,ノイズに由来する大きな値と動的物体に由来する大きな値とを正確に区別
    できる。
    出願人 13-日本石油化学 (株)
    発明者 田中館 明博,長谷川 健治,岩月 謙司
    IPC G01C 21/00 G01N 33/48
    FI G01C 21/00 Z G01N 33/48 N


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