某キャンパスの駐車場で三匹の子ネコ達が日向ぼっこをしている。そこを通りかかる人々は皆、足を止め、彼等の愛らしい姿に魅入られる。彼等は晴れた日であれば一日中そこにいる。
捨てられたネコがキャンパス内に住みかをつくったのは数年前。それからネコの一家は三代に渡り、ここで暮らしてきた。彼等は現在、キャンパスの一角につくられた立派な家に住んでいて、親ネコと今年の夏に生まれたまだ小さい三匹を含め、八人一家である。
住みかの近くで働く職員に訊いたところ、彼等に餌をあげている人は大学関係者、外部の人を含め、数名いるとのことである。
ネコに餌付けをしている女性から話をきくことができた。彼女は小学生ぐらいの男の子と一緒にネコをあやしている最中だった。
「春に生まれた子猫が今はこんなに大きくなったのよ。この子は他の三匹と比べて発育が遅くて、臆病なの。どこからどう入ったかはわからないけど、車のエンジンの中にいるのを見つけこともあるのよ。」
彼女がそう話すと、夏に生まれた子供たちが何かにつられたかのように家から外に出てきた。掌の上に乗せられるのではと思う程の小さなネコで、家の外に出てくるのは今日が初めてらしい。普段は親ネコが子供たちをどこかに隠してしまうようだ。
「世の中にはネコ好きの人ばかりじゃなくて、彼等をいじめる人もいるからね。ネコ達はいじめられた日は怯えきってしまって私達が来ても物置の下とかに隠れてしまうのよ」そう、彼女は語ってくれた。
実際、周囲の職員から話を聞くと、ネコに対して否定的な意見が多く聞かれた。ある職員は「餌をあげるのはかえってネコにとってよくはないのでは」と語った。ネコ達は他に行き場所が無く、ここで生活しているが、それが周囲の人々に迷惑をかけてしまっているのである。
しかし、最も悪いのは無責任にキャンパス内にネコを捨てた無責任な飼い主である。以前には他の場所にいたネコが保健所に引き取られたこともあったらしい。
確かに子ネコはかわいい。しかし、それだけではいけない。ネコの幸せと人の幸せは必ずしも一致しない。そんなことを考えさせられた。