「東北大生は、意外とかっこいい」
以前、当学友会新聞部が行なった、「東北大生に対するイメージ」と題する街頭アンケートの回答の一部である。一見するとこれはプラス評価である様に思われるが、マイナス評価なのである。「意外と」の言葉の裏には、東北大生は服装がダサく、髪がボサボサで、リュックが異様にでかい、という概念が見え隠れしているためだ。我々は、東北大生が本当にイケてるのかどうか事の真相を確かめるべく、部員の体をもってナンパを行うこととした。
場所は仙台駅周辺。せわしなく行き来する麗しき乙女に声を掛け、お茶に誘えたら成功という昭和時代の企画を、IT時代の今実行するのだ。
レッド(R)。小柄ながらも美しい腹筋を持つ、この企画の最有力候補。
シルバー(S)。メンバー内で一番若く、一番渋い。Rと共に多くの乙女を虜にするのでは、と期待される。
ブラック(B)。黒い帽子をかぶることにより大いなる自信を沸きあがらせることが出来る。
イエロー(Y)。体内にアルコールを注入したとたん変貌を遂げ、夜の国分町でおたけびをあげた実績を持つ。
以上四人でナンパを開始することとなった。まず、SBペアがロッテリア前に出陣したが、全く声を掛けられずに、ただただ辺りを徘徊する怪しい二人組となってしまっている。
一方、RYペア。Yが完全に日和り、このままでは企画の存続が危ぶまれる、というところに、Rが部室から持ち出したアサヒの発泡酒をYに注入。Yはアルコールの力でパワーアップし、全くの戦力外となってしまった。いや、戦力外どころかダイエーの前で叫びながら愚痴をこぼしている。大声で叫ぶくらいなら女性に声をかけろ。
このままでは本当にまずい。一旦合流・組み替えし、RS最強ペアと、YB日和ペアを作り、仙台駅前へ向かう。早速RSペアが女子高生に声を掛ける。
「ねえねえお嬢さん、一緒にお話ししなあい?」
だがこんなベタベタな台詞では振り向かれるはずも無く失敗。めげずに再度女子高生にアタック。彼女達は買い物に行くところらしく同行を試みるが、足早に去られる。それでもめげず、三度目の挑戦。ハピナ名掛丁で女子大生風の二人組を食事に誘ってみる。
「もう食べましたから」
ならば少し早いが、酒に誘う。
「いや、いいです」
空振りに終わったRSペアは精根尽き果てへなへなと座り込む。ここで日和ペアYBにバトンを渡したいところだが、さすが日和組。やる気が無い。
失意に沈んでいるうちに日も暮れ、午後六時を回る。そろそろ引き上げムードが漂う中、救世主が登場する。ロリコンのMである。バイトの都合で途中参加となった、「耳をすませば」をこよなく愛する彼は赤いランドセル追いかけ東奔西走するが、こんな時間に駅前を歩く小学生はいない。時間に見放されたMは、夕焼けの中へと消えていった。
もはや企画の意図さえ忘れかけてきた彼らは、やけくそになり思うがままに声を掛けまくる。
「今からカラオケに行きましょう」
カラオケならば付いて来てくれるのではないか、と淡い期待を抱く。
「は?」
「すみません」
「行くわけないし」
声を掛ける度に落胆と苛立ちが交錯する。もう、こんな企画は嫌だ。肉体的にも精神的にももはや限界である。やはり、東北大生は所詮東北大生なのだ、と身をもって知らされた。深い闇に閉ざされた彼らの心をつゆ知らず、仙台市街のネオンはいつもと変わらず輝き続けるのであった。