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書評
PLATONIC SEX
飯島 愛・著

311号5面・大学

 一時期、援助交際という言葉が流行した。女子高生が遊ぶお金目当てに、中年のオジサン相手に自分の体を売っているとして、社会問題にまでなった。しかし彼女らが求めたのはお金だけなのだろうか、それとも・・・。

 この作品は、AV女優からマルチタレントになった著者が、自身の半生を綴ったものである。九月末にドラマ化され、十月には劇場版も公開される。

 厳格な両親に嫌気がさした中学生時代の著者は、たびたび家出を繰り返し、夜の歌舞伎町を遊び歩くようになる。やがて一人暮らしを始めた著者は、本格的に水商売の世界に入る。派手な服やブランド品を身に纏い、夜のネオン街を闊歩する日々を送る。十八歳になる頃、ニューヨーク留学を強く願い、まとまった金を得るためにアダルトビデオの世界に飛び込む。

 「今が楽しければそれでいい」という考えが、当時の著者やその仲間にはあった。彼女らが夜の繁華街に求めたもの、それは快適な居場所であった。彼らには、親から十分な愛情を受けていないという共通点がある。愛されたいと願うが故に似たもの同士が集まって愛情や友情を与えあう。人は親から愛されることで、人の愛し方を覚えるものだ。しかし彼らは、親から離れる年齢があまりにも早すぎた。そのため偏った愛し方しか出来ずに、堕落しきった同棲生活をし、本能のままに体を求めるのである。

 女としての「ステイタス」を追求するために、高価な服やアクセサリーを買い漁り、ハンサムで金持ちな男を「捕獲」しようとする著者。その欲望は雪だるま式に大きくなり、その欲望を満たすために体を売って金を手に入れる。一見すると華やかなネオンに囲まれて、この世の春を謳歌していた著者は、その裏で独りになることを拒絶する、声にならない叫びを上げ続けていた。自分の純粋な愛を伝えたいと、そしてそれを相手に受け入れて欲しいと強く願っていた。しかしその願いは幾度となく打ち砕かれた。芸能界入り後、著者はたびたび実家に帰るようになる。皮肉にも、子供の頃は不仲だった両親との団らんを通じて、本当に愛されているという実感を初めて知る。人間は決して独りでは生きていけない、他人と愛を与え合うことを強く望む動物であることを痛感させてくれた。

 著者はAV女優を経験しているせいか、その描写には随所に直接的、官能的な表現がなされている。また男性の視点から見れば、繁華街を闊歩する著者が、近寄る男連中をうまくあしらったり、何人もの男を飼いならしたりするあたりに、女のしたたかさも感じ取れる。しかし、やはり本書は、著者自身の華やかさの影に隠れた、内面の不安定極まりない心情を赤裸々に描いた、衝撃的な作品であったといえる。


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