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杜の都 仙台けやき哀歌
過酷な環境にけなげに耐える

317号3面・大学

仙台は「杜の都」と呼ばれている。青葉通、定禅寺通のけやき並木は、そのシンボルとして文字通り仙台の街に根ざしている。

しかし、青葉通、定禅寺通はけやきが生育できる環境とは言いがたい。これらの通りは排気ガスが充満し、また地面はコンクリートで固められ、水分が土壌に浸透しない。さらに、並木道の近くで行われる工事は、時にけやきの根を傷つける。このような状況で、けやきが枯れることはないのだろうか。

青葉通、定禅寺通のけやきは、戦災復興事業の一環として、それぞれ一九五〇年代に植えられた。一九七〇年代には「市の木」に指定され、また、市の条例で保存樹林となった。

春は若葉が芽吹き、秋には葉が色づく姿に、人々は季節の移ろいを感じる。けやきをイルミネーションで飾る「SENDAI光のページェント」は、仙台の冬を彩る一大イベントになり、重要な観光資源となった。

けやきが「杜の都」の象徴として価値を高めると、その保全に注意が払われるようになった。現在では、仙台市は年間二三〇〇万円を投じ、けやきが枯れないよう様々な対策を講じている。

例えば、けやきが保存樹林になった頃から、仙台市と宮城緑化研究会の共同で、けやき並木の総合調査が行われている。排気ガスがけやきに与える影響、土壌の水分変化など、様々なデータを集めるこの調査は、今でも必要に応じて随時行われている。

並木道の周辺がコンクリートで舗装され、土壌にほとんど水分が浸透しない問題については、青葉通り、定禅寺通りに潅水溝(※)を設けることで改善された。他にも、けやきが弱っていれば活性剤を投入するなど、仙台市はけやきが枯れないよう、力を入れている。

だが、やはり街中という環境から、けやきが枯れてしまうのは避けられない。要因はけやきの置かれている状況によって異なるが、その中でも、並木道のそばで行われる工事は、けやきに大きな影響を与える。

五年前、青葉通りの一部地域で、突然けやきが枯れる事態が発生した。地下に共同溝を作った時、地下水の状態が変化したことが原因と考えられ、現在でもこの時枯れたけやきは回復しきっていない。

また、四年前には強風でけやきが倒れ、車を壊す事件が起きた。この時倒れたけやきは、外見上は何も問題を抱えているように見えなかったが、幹の中が空洞で、根は腐っていた。これはガス管などを取りつける工事によって、根が切断されたことが原因とされている。

仙台市青葉区建設部建設課公園係の角石正志さんは「人と樹木が共存するのは、なかなか難しい」と語る。本気で木を守ろうとすれば、より水分が浸透するよう、車道を制限して土の面積を広げる、交通規制を行うなど、現実では実行できないことをしなければならないからだ。

青葉通り、定禅寺通りにけやきが植えられてから、約五十年。その中には樹齢百年を超えるものもある。けやきは傷つき、弱りながらも、人の手を借りながら「杜の都」の象徴として、今日も仙台の街を見守っている。

(※)潅水溝 降雨の少ない時期に、人工的に水を投入できる装置。青葉通には二十年以上前、定禅寺通には三年ほど前に設置された。  


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