「世界選手権騒動記録 4」 |
記録4
(3月27日(月))
男子予選A組、ペアショート B組に引き続きまたもやお子様軍団が入ってくる。やっぱりいらいらしてしまう。 何も子供はスケートを見るなというのではない。むしろスケートを知ってもらういい機会、どうせ席がすいているのだから地元の人には無料開放でもしてどんどん入ってもらえばいい。スケーターがリンクに出てきて始まりのポーズをとり、曲が始まるのを待っている間は静かにするべきだというのをあらかじめ教えておいてほしかったが、やんちゃ盛りの子供にそれを実行するのは無理なことだというのはわかっている。ここでマイナスの感情を持つのはいつの間にか排他的になってしまっているのだろう。 そんな自分が嫌になるが、それでも譲れない事が一つある。 スケーターがキス&クライで点数が出るのを待っている間、スケーターがカメラに向かってウケ狙いをしているのでも点数が出たわけでもないのに歓声があがっていた。歓声の主はもちろんお子様軍団。クレーンカメラの場所移動に合わせて歓声をあげながらウェーブみたいに立ったり座っている。カメラが近くで動いているのだ、映してもらおうと盛り上がるのは当然の事。 しかしこの時の子供達の姿は会場のモニターに映っていない。演技が終わって得点が出るのを待っている間なのだから、映るのは当然キス&クライにいるスケーター。つまり使っていないカメラを動かして子供の群集心理を利用して、不自然なタイミングで歓声をあげさせているのか? ふざけるな、そんなチャチな手口で会場を盛り上げてるつもりかフランス連盟! ……地元のテレビ放送では映像が流れていたのかもしれない。 予選A組、第1グループのウォームアップで出てきた成江君を見てブチ切れたのも、このいらいらをひきずっていたのだろう。衣装を見て、近くに日本人がいたにもかかわらず「ちょっと、やめてよ―!」と思いきり叫んでしまった。 世界ジュニアに出たことはあるものの、全世界クラスの試合へは実質的なデビュー戦。大事に行きたいのはわかる。しかし2年連続四大陸選手権2位に入る実力を持っているからこそ、去年のリバーダンスで無難にまとめるのではなくステップを格上げして静かな曲で勝負に出た今年のプログラムで勝負してほしかったのに! まあ事情があるのだろうからこれ以上はやめておこう。1シーズンに2つのフリーを生で見ることができて儲け物というもの。 それに結果的にリバーダンスでよかったのかもしれない。クワド−2トゥもルッツもしっかりきめたいい演技で今年のプログラムにはない安定感が感じられた。元々楽しいプログラム、客もノッてくれたし本人も満足そう。よかった。 ……これ、展開次第ではアプトとのアイリッシュダンス対決が実現するわけ? ヤグディンの新しいフリーは「やられた!」という気分。音楽がわかりやすい分こっちの方が好き。すっかり忘れていたが、彼は2年前はクラシックを使っていたはず。その時と着こなしは違っているけどやっぱり似合っている。 Stefan Lindemann(ドイツ) 「他の選手だったら転倒してますね」という五十嵐さんの声が聞こえてきそうなジャンプをする選手。 とにかく転ばない。跳んだ瞬間体が斜めになろうが、回転がぎりぎりになろうが本当に転ばない。のびやかな演技でA組4位。クワドもきめたのでは? ドイツ国内チャンピオンで3月初めに世界ジュニアのタイトルを獲っているが、世界選手権の出場は去年に続き2度目。1年ぶりに見ると少し大人になっている。 演技のスタイルはそうでもないが、ぴったり氷に張りつくようなスケーティングがエルビスに似ている。来シーズンGPシリーズで放映されたらエルヴィストの皆さんチェック! (1年でスケーティング変わっていたりして) いつだったか忘れたが、「次のグループって誰がいたっけ…」とスターティングオーダーを見ていたら、「それどこで手に入れたの?」とカナダの小旗を振ってくれた一列前のお姉さんに訊かれた。彼女の話だと会場でスターティングオーダーをもらうことができず、張り出されてもいなかったらしい。 私はホテルのデスクにあったのをもらってきたのだが…。いくら公式ホームページで公開されているとはいえ、オフィシャルホテルでスターティングオーダーをもらうことができることを知っている人はそんなにいないのでは。 観戦する身にとっては不便すぎる話である。信じられない。 本田君、大きなミスはクワドをすっぽ抜けたぐらいだったと思うのだが、見るからに調子が悪そう。跳んだ瞬間「あ、転ぶ!」とヒヤっとしてしまう体が斜めになるジャンプの繰り返し。何より表情が暗くてノリきれていないような…。しかし大崩れはせずにA組5位。よかった。 対照的によかったのが次の滑走者のワイス。目の前でクワドのソロジャンプをきめ、さらに目の前でコンビネーションをきめた時には私から五列ぐらい前のおじさんが足をガンッ!と踏み鳴らして本場の「Yes!」。その踏み鳴らした音が一人でやったはずなのにものすごい迫力だった。その時持っている小旗の先についている金色の部品が私の膝まで飛んでくるほど。おっちゃん、熱い。私も熱くなるタチだが、あれには勝てない。 ラリックトロフィーの結果を見て「ちょっと〜。世界選手権の最終グループ、下手したら北米勢はエルビスだけになるんじゃ!?」と心配したが、こうなると心配して損をした気分(笑)。 男子予選が終わってからホテルを移動し、チェックインだけしてタクシーで会場へ戻る。この時運転手が言った値段「seventeen」を「seventy」と聞き違えて余分に払ってしまい、降りた直後にシェリルに爆笑された。ペアショートをひかえて神経が過敏になっていたこともあって怒りが爆発。わかってたのならその場で教えろ! 会場の玄関の前でどなりつけてもへらへら笑っていて、私が傷ついたということを理解していないらしい。何がおかしいねん、英語が充分に使えないからって馬鹿にしてんのかいこの女! (正しいイントネーションで読みたい方は「極道の妻たち」を参考に) 夕方から始まるペアフリーにお子様軍団はいなかった。よかった……過敏になっていてどうかしているのはわかっているが、全種目であの調子だったら神経がもたない。 そして第1グループにはフランスの二番手、Catherine Huc and Vivien Rolland組がいるので何もしなくても予選の時より会場がウォームアップから盛り上がっている。 ふふふ、これよこれよ〜♪あんなやらせと紙一重の不自然な歓声じゃなくて、会場の盛り上がりはこうでないと。これでこそ長野オリンピックやヘルシンキにいた少数精鋭のスケートファンが住む国で開催される試合というもの。 2番滑走を引いてしまったザゴルスカ組だがノーミスのいい演技で本人達も嬉しそう。キス&クライではドロタさんがマリウス君の膝の上に座って点数が出るのを待っている。おいおい君ら(笑)。 キス&クライ全体を見てみると、ザゴルスカ組+関係者二人に対していすが三つしかない。関係者の二人は両端にどっかり座っている。席譲ってあげたらいいのに…しかし婚約している二人にそれはかえって野暮というものか(笑)。 第2グループのウォームアップ中、中国の二番手Qing Pang & Jian Tong組は女性が横倒しになるツイストリフトで会場を沸かせている。しかしパンちゃんがソロジャンプで転倒して不安そうな顔。「大丈夫」というようにトン君がリードしている。 このペアのショートはピアソラのタンゴを使っていて、ステップの部分では本当にアイスダンスをしているようだった(写真はその一部)。ペアは放り投げたり跳んだりするイメージが強かったので新鮮に映る。 しかし案の定本番でもパンちゃんがソロジャンプでミスをし、ソロスピンで少し乱れた。中国勢はスピンが苦手な人が多いのか…。 さて第3グループ、おおっ、アビトボル組、シュワルツ組、サージェント組と見所が続く!と思っていた私はあの会場ではきっと能天気のうちに入るのかも。 今さらながら、アビトボル組は地元フランスのカップル。 それもメダルを狙う実力の。 とにかく観客の盛り上がりがただ事ではない。圧倒的に地元の観客が多いこの会場、旗を振るわ会場で売っている「France」のロゴ入りタオルを振るわホーンを鳴らすわ、何より足をガタガタ踏み鳴らすのだ。 これが常設リンクの座席なら何も問題はないのだが、このリンクは博覧会などをする会場に作った仮設リンク。席も当然パイプを組み合わせて作った仮設スタンドなので足を踏み鳴らすとガタガタという音もそれだけ大きい。 「会場が割れんばかりの音」とはまさにこの事。月曜日のペアショートでこの盛り上がりだったら、金曜日のアイスダンスフリーはどうなるんだろう!? NHK杯で見た時ほどのインパクトはなかったが、アビトボル組はノーミスの演技。 シュワルツ組がNHK杯とは別人のようだった。オリンピックシーズンに「スローで見ても回転がそろっている」と解説されたソロスピンが生で見られてよかった。ペアはさらに混戦になりそう。 サージェント組はジャンプでミス。途中まで四大陸の時より順調にこなしていたのに… 雪(しゅぇ)ちゃん達のいる第4グループのウォームアップが始まる。 はっきり言ってエルビスの時より緊張している。公開練習を見ていないから調子を把握していないし、「雪ちゃんまずいっ、まずいよ〜〜ドイツの大会も3位だし、これから相当がんばらないと世界選手権で最終グループ残れないよ〜〜〜〜!」とショートが終わった後に真っ青になったNHK杯の記憶が残っているのだ。 雪ちゃんのソロジャンプを見て少し安心。ランディングに安定感があるあたりがやっぱりたくましい。 とはいってもやっぱり二人の演技がどうというよりとにかく緊張して…あ、でも雪ちゃん本当にいい表情するようになったなあ…と感じてからは少し余裕ができたか。 宏博(ほんぼー)兄さんのリフトの降ろし方は独特で、雪ちゃんの足が氷につく直前で速度が落ちる。音楽と少しずれてしまうことが多くて、今回もそうだった。スピードがないわけではないがNHK杯より慎重に滑っている印象。ソロスピンも乱れてはいない、そしてラストのペアスピン。ここなのよここ!お願い崩れないで〜〜〜!! ……………ノーミス。疲れた…………。 ぬいぐるみを集めるのが趣味と雑誌に載っていた雪ちゃん、それなら花でなくぬいぐるみ、日本の流行りもの…と思ってたれぱんだのぬいぐるみ(自分が好きなだけだったりする(笑))に写真をつけてリンクに投げたのはいいが、あとで気がついた。 中国人にパンダのぬいぐるみ贈ってどないすんねんっ! 中国人に「中国→パンダ」という図式がないことを祈るばかり。 雪ちゃん達が終わって気力が尽きていたので第5グループの演技は記憶にない……。 その気力を補給してくれたのがイナ組の演技。2年目になって「こんなペア」という色が見えてきたいい演技。今シーズン早目にGPシリーズの試合を終えてしまったので完全にノーマークだった。どこまで乱戦になるんだろう、今回のペア? ペトロワ組もミスをしそうにない演技。白い衣装が綺麗。 上位勢の中で勢いが一番あったのはサーレ組かもしれない。バイオリンとピアノが耳に残る重厚な印象のタンゴをパン組とは違い、ダンスとしての「タンゴ」を意識していない素直な振付で楽しそうに滑っていく。今日の1位はここだな。 が。 中盤のソロスピンの入りでサーレがバランスを崩し、タイミングがずれる。完璧に180°ずれていてそれはそれできれいなのだが、ソロスピンはそろっているのが望ましい以上ミスになってしまう。修正できないまま次の技へ行き、そこからは無難に終わったのだが。 どの辺にするかジャッジも悩むだろうなあ…と思っていたら、3位。勢いの差? それにしてもおもしろいペアショートだった。もともと混線が予想されている上にほとんどがノーミスのハイレベル。そんな中で。 雪ちゃん達1位獲っちゃったよ…しかもtechnial meritが他のペアより大体0.1高い……。これはこれで真っ青になる私。 実はNHK杯の演技を見て以来私としては今年の彼女達のプログラムに対する評価が低く、正直世界選手権でのメダルはきついと思っていたのだ。ファンである以上順位が上になることを望んではいるが、それとこれとは別。そういう面で正直でいることもファンの誠意のつもり。しかし。 悪い事したなあ……。 単に私に見る目がなかったというだけで、すまなく思わなくてもいい事なのだが。
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