「世界選手権騒動記録6」 |
記録
6(3月29日(水)) 女子予選 ホテルで朝ごはんを食べながら新聞をながめると、やはり一面トップに左腕に大きなテープ(?)を貼っているベルナディスさんの写真が載っている。スポーツ面以外のページにも大きく写真付きで取り上げられているが、いかんせんフランス語ができない私達。同じ宿泊客の人に説明してくれるように頼むと「フロントに読んでもらえ」、フロントはフロントで一面トップのさわりしか読んでくれない。さすが「英語で言われると「フン!」という顔をして返事をする」フランス人、地元で大イベント開催中にそれがらみの事件が起こったというのに関心がないらしい。あっそう!粘って質問する気にもなれない。 全ての用意が整った時には女子予選開始の15分前。歩いていくと間に合わず、タクシーを呼んでもらおうにもチェックアウトの時間でフロントはそれどころではない。仕方がないので歩いて行くが、途中で「私達っていつも遅れるわねー。」とシェリルの一言。 んじゃその化粧なんとかしろ!と言いたいところだがお局の嫌味になるのでやめておく(後日私の方が年下であることが判明)。予選だからこそ誰一人して見逃したくないのに。すっかりやさぐれ状態の私。もちろん開始時間には間に合わず、会場に入った時には3人目のシルヴィア・フォンタナ(イタリア)のちょうど演技が始まった所だった。 しかしオープニングの楽しそうな彼女の表情に「フォンタナちゃんかんわいい!」とあっさり心が癒される。スケートを見るとたいていの嫌なことが吹っ飛ぶのがスケートファンのお得な所かも(笑)。 さて、女子シングルである。 女子シングルなのである。 は〜〜〜〜〜〜〜気が重い。 ミシェルは綺麗になって気合入れて逆襲体勢整えているしスルちゃん(スルツカヤ)はすごくやせて演技のイメージもまた変わって独走になりかねないしマーシャさん(ブティルスカヤ)は相変わらず美しいし、リアシェンコは地力つけてきたしマリニナは体に合う服着せてもらったしボルチコワは来そうだしジェニファーはいいプログラム作ってもらったし。 男子シングルはエルビスがいるから何も考えなくてすむけど女子シングル、これだけメンバーがそろっていたら誰を基準にして見たらいいのよ! もう知らない。誰にも肩入れしない。中立、いや白紙状態で見るからね。 Young-Eun Choi(韓国) フォンタナの次の滑走だったので下手すると2年連続韓国の女子を見逃す所だった。危ない危ない。 入りのポーズに入る時にリンクの上から何かを拾い上げて、「どうしよう」という感じでコーチの方を見る。コーチがジャッジの方を指差すのを見てそっちへ滑っていった。そうそう、リンクの上で何かあったらすぐジャッジに言うんだよ。 四大陸ではキュヒュン君以外の韓国男子の二人がキャメルスピンをはじめジャンプ以外のエレメンツをものすごくだらっとした姿勢でしていた。つい腹が立ち、「韓国の選手、ちゃんと教えてもらってへんのちゃう?(彼らより点数が低いメキシコの選手の姿勢はきれいだったのだからレベルの問題ではないだろう)」とぶつくさ言っていたのだが彼女のキャメルスピンは普通! キャメルスピン以外でも彼女は指の先まで気が行き届いたきれいな姿勢。そういえば朝から夕方まで見た四大陸の公開練習初日で見た韓国女子三人には男子二人に持った違和感はなかったっけ。 ただその時より動きが小さかった。硬くなっていた? 四大陸のビデオを見ていなかったので、恩田美栄ちゃんの演技はこの時初めて見たと言っていい。 ウォームアップで山田コーチの指示を聞いている時の表情はやはり緊張している様子。大丈夫かな…と思っていたら案の定始めのコンビネーションを転倒してしまう。 しかしそこから崩れるどころかかえって目が覚めたよう。ジャンプはきまるわ動きが大きくなるわ、観客が初めて盛り上がったと感じるのは身びいきだけではないだろう。 つい「度胸ある子やなー」とつぶやいていた。 Siyin Sun(中国) 四大陸の初日の公開練習に出ていなかった選手。リンクに出てきた瞬間、まず小ささが目をひいた。ぱっと見た感じでは12、3才。中国も四大陸の成績がよかったジュニアを大抜擢? 演技もジュニアという感じでリンクの上をひらひら動いてはくるくるジャンプをきめていく。少し硬い所はあるが、楽しそう。 中盤のサルコー−トゥのコンビネーションでセカンドジャンプがオーバーターンになってしまったが、ここで彼女の顔に笑みがもれた。化粧がちゃんと顔になじんでいて可愛い。その時から気が楽になったのか、笑顔を保ったまま最後まで滑り切った。 ひらひら、ひらひら。妖精みたいに可愛らしい演技だった。 Anna Wenzel(オーストリア) 今や女子シングルの衣装はシンプルな物が全盛な中、彼女のこの衣装はウォームアップの時から目立っていた。あまりにも衣装が目立つので、演技そのものの印象がほとんどない(ごめんね^^;) これだけ衣装が凝っているんだから絶対何か狙っているに違いない。しかしそれが何なのかわからない。終盤でなじみのあるクラシックのオンパレードになってやっとわかった。その髪型、大きなリボン。音楽家だ!。 しかしそれならピアノを弾くとか指揮をするとか、そうとわかる振付を入れてほしかった…まあ女子シングルでそれをするとプレゼンで減点を食らうかもしれないか(^^;) 大会三日目ともなると観客を観察する余裕も出てくる。地元の観客がほとんどかと思いきや、リピーターも結構多い。各大会で発売されるジャンパーやトレーナーを着ていたりバッグを持っていたりするのですぐわかる。前回のヘルシンキはもちろん、98年ミネアポリスや97年ローザンヌ大会のグッズを身に着けている人もいる。 私はあまりこういうグッズに手を出さないが、メディアインフォメーションだけは欲しい。しかしこれが売っていないのだ。とはいってもないわけではないらしく、私の右斜め前方向に座っているご婦人は律義にメディアインフォメーションで一人一人調べながら演技を見ている。どこで手に入れたんだろう。 製氷時間に彼女の所へ訊きに行くと、知り合いからもらったとの事。関係者か。道理でいかにも上品な物腰。ここで彼女が着けているピンバッジが目についた。長野オリンピックの物だが、扇に五輪マークとシックな取り合わせ。スノーレッツがいないとは珍しい。 私「長野オリンピック見に行ったんですか?珍しいピンバッジですね、こんなタイプ初めて見ました。」 彼女「大会側からもらったの。息子が出ていたから。オリンピックの間ずっと軽井沢にいたのよ。」(今回紫は進呈します) 「何に出てたんですか?」 「He competed for figure skating. I am a mother of Steven Cousins.」 えええええ!? 「オリンピックでスティーブンよかったの覚えてます―――!!」俄然テンションが上がる私。だってあなた、スティーブン・カズンズといえば長野オリンピックでエルビス、エルドリッジ、キャンデローロ、クーリック、ヤグディンと最終グループで滑って6位に入った選手であり、またダグ・リーコーチに指導してもらっているというエルビスのかつての練習仲間なのだ。その人のお母さん!ああなんて私お母さん運がいいのかしらっ☆ ハイテンションの私の声を聞きつけたのか偶然席が近くだったシェリルがやってくる(席は毎回別)。お母さんに「私達カナダ選手のファンなんです」と自己紹介すると「そう。スティーブンはカナダで時々トレーニングしているし、Shae-Lynn Bourneと付き合っているのよ。」お母さんえらくあっさりと。倦怠期だったらどうするんですか(^^;) 今回はマーカス・レミネン(フィンランド)とコンスタンチン・コスティン(ラトビア)のサポートでいらしたそう。スティーブン・カズンズが今どうしているのか訊くと、Stars On Iceツアーに参加していること、今でも時々カナダでトレーニングしていること、アマチュアの資格を維持してはいるが去年出た試合はカナディアンオープンだけで競技生活に戻るつもりはないということをすらすら教えてくださった。 「He told me he was tired of rat race.」 まだ疲れ切っていない人がいる。 製氷後の第3グループは大物がそろっている。ニコディノフ、ギスメロリ、ミシェルにスルツカヤ!どうなってるんだこの抽選は。男子予選の時にいたお子様軍団が今回もいる。気にならないのは慣れてしまったということとこっちの気の持ちようか(^^;) しかしループとサルコウをミスしたギスメロリに「シス!シス!(six=6)」はないと思うぞ。好意かもしれないが選手にとってはどうだか。苦笑いのギスメロリ。 ミシェルは中盤のジャンプを一つダブルにしたものの、GPシリーズ、ファイナルよりは勢いがあった。調子を上げてきた模様でとりあえずほっとする。 フリーのカルメンは妖艶さも漂うスルツカヤだが、こういう衣装を着るとやはり2、3年前と同じ人というのがよくわかる。こっちのカルメンもいいなあ。3+3はなかったものの、勢いはダントツに彼女の方が上だった。 Tasmin Sear(イギリス) オープニングのジャンプで転倒、完全に横倒しになって立ち上がるのに少し時間がかかった。途中でひじに赤い点があるのに気がつく。心なしかだんだん大きくなっているような…スケートで擦り傷を作ることがあるとは思わなかった。 氷はざらざらしている物だということと、選手はこうやって転んで擦り傷や切り傷を作りながらプログラムを造っているのだという事を再認識。ごめんね変な取り上げ方で。 Sabina Wojtala(ポーランド) 名前のコールと同時に派手な声援。声の方向を見るとドロタさんとマリウス君がいる。今回選手による選手の応援を見たのはこの時ぐらいだった。ポーランド選手、結束が固い。 彼女はジャンプは豪快、滑りにも粗さはないので力はありそうなのだが気分に思いきり波がありそう。ダブルジャンプが続いていって、スローパートのシングルジャンプで「あー、もうっ!」という表情とだらっとした姿勢になり、完全に神経が切れた様子。ここでまたあの声援が響く。 そこからコンビネーションを含めて持ち直し、結局B組9位でなんとか第3グループに引っかかった。 選手に観客の応援が聞こえるということもあるらしい。 予選B組が終わる。恩田美栄ちゃんこのメンバーで7位になるとはすごい。中国の子が予選通った!日本人以外のアジア女子は一度きりと思っていたので、これはうれしい。出来よかったもんね。 通路から少し広くなった所に出ると人だかりがあり、その真ん中に明らかにオーラの漂う女性がいる。よく見るとクリロワさん。関係者らしき人と話をしている。 この時初めて席への通路の後ろにもう一つ通路があるのに気がついた。関係者用の通路なんだろうか。そこかしこにボーッと立っている人がいる。中には大きなアルバムを抱えている人もいる。ひょっとして、ここは選手が通るから出待ちしているわけ?気づくのが遅いって?いや入り口が同じということは知っていたのだが。売店の側にある小さなテーブルみたいな台でごはんを食べていると、どんどん選手が通り過ぎていく。 多分ごはんを食べた後だと思うのだが、会場内のブースを見物しに行く途中に白地に黄色と赤のジャージが視界の隅に入る。立ち止まって振り返ると中国の子がコーチに連れられてカートを転がして帰っていくところだった。リンク上でも小柄なのは充分わかるが、近くで見ると本当に小さい。 よかったね、予選通ったね。演技よかったよ、世界デビュー戦(おそらく)で確実に一人には存在を印象づけたよ…との思いで軽く彼女に手を振ったら、にこぉ!!という満面の笑顔で手を振り返してくれた。 かっ…かわいい…… めっちゃかわいいこの子――――!!! 頭の中で大絶叫(笑)、めちゃめちゃかわいい!スティーブン・カズンズのお母さんの事といい、今日はついてる! 予選を通ったということは、ショートでもう一回彼女の演技が見られるということなのだ。当たり前のことなのだがそれがものすごく嬉しくなってきた。Siyinと書いて発音はシウィン?ショートで確認しよう。おねーさん気合入れて応援するわ! 予選A組で2番という早い滑走のブティルスカヤもGPシリーズから仕上げてきたが、最後の方で一つダブルにしてしまう。終わった後おどけるような仕種で頭を軽く一回たたくが、表情は思いきりひきつっている。今は大きなミスじゃないよ?大丈夫かな。 ダイアナ・ポス(ハンガリー)……いや、音楽が今年のオリジナルダンスみたいなラテン系だから曲には合っているのだが、その衣装……。本人の趣味なのか?無性に気になる。 出来がものすごく悪く、キス&クライでは膝の上に突っ伏してしまって点数も見ないほど。去年の世界選手権11位の彼女、4点台前半から中盤というのは確かに頭を抱える結果だろう。 マリニナは四大陸からそれほど調子が上がっていないよう。絶対転びそうのない印象のあったオープニングのルッツがきまらない。組が違っていれば10位以内に入れたかどうか…(A組5位) レフニオのフリーは出だしにシャープなスパニッシュギター。それよそれよ、あなたにはそういう方が似合う!と喜んだのもつかの間、肝心の彼女自身の調子が悪い。とにかく迫力もスピードもないのだ。ケガから復帰して間がないのだろうか。 長丁場の女子予選(いや男子もだけど)、Siyinちゃんの件でテンションが上がりすぎたツケがこのあたりで回ってきた。疲れが出てきて注意力が落ちる。こういう時に点数の低い選手の演技を見るのは正直言って苦しい。またA組の後ろの方は点数の低い選手が固まっていたので、ある意味では今大会一番の正念場だった。 Diane Chen(台湾) 日本人以外はほとんど国際大会で名前を見ないアジアの女子シングル選手、世界選手権は彼女達のスケートが見られる貴重な機会と言っていい。(四大陸とアジア大会に手を出せば見られるが、まだそのパワーはない^^;)しかも毎年出てくる選手が違う。まさにその選手とは一期一会、「自称アジアン応援人」としては女子予選は絶対はずせない…つもりだったのだが…。 実は彼女の演技の印象が全くないのだ……せめてスケートや動作が思いきり粗ければそういう印象が残ったものの……ごめん。写真だけは載せるから勘弁してね^^; NHK杯ではほとんどトリプルがきまらず最下位だったボロビエワ。ひょっとしてこれ、世界選手権で予選落ちするんじゃないか…と思っていたら、A組16位で本当に予選落ちしてしまった。NHK杯よりさらに調子が落ちていて、あのスピンでさえ今まで見ていた彼女の物とは違うのだ。ケガが治りきっていないのだろうか。26才の彼女、力が落ちたとは思いたくない。 Rocio Salas Visuet(メキシコ)は演技が終わった後、リカルド先生と二人でキス&クライにいた。先生はメガネをかけていてリンクの上とは印象が違う。年相応(29才)に見えるし結構かっこいいぞ! おっと。彼女も音を聴きながら動いているのが伝わる演技だった。男女共にメキシカンはいい(^^) 毎回席が違う今回の世界選手権、ペアフリーで初めてジャッジ側に座れる。女子予選が終わり、席をたつ前にペアフリーの席をチェックしてみると、今の席のちょうど向かい、おとついRinaさんが本田君の応援横断幕を貼っていた場所の真上あたりになる。 そういえば女子予選の間、その付近のかなり上の方に、にぎやか…を通り越したガラの悪いフランス人の一団がいた。 あいつらか、Rinaさんの旗殺ったの? ペアフリーまで間がある。その間男子の公開練習を見る前に、ペアのスターティングオーダーをもらいにオフィシャルホテルへ行く。男子フリーの滑走順が出ていたのでチェックしてみると。 エルビス本当に第一滑走引いてやんの――――――!! なんで悪い予感に限って当たるねん、当たってもうれしくないわい!しかも成江君がその次!ああっ、最悪の事態。そして第3グループではアンソニー・リウと郭君が第一、第二滑走と続き!ラッキーデーが足元から崩れていくような感じで疲労感が倍になる。 本田君が第2グループで最終滑走だったのが救い。 しかしここでへたってはいけない。男子の公開練習、第3グループだけは見ようと思って練習用リンクへ行ったのはいいが、ギャラリーが多くてさらに気持ち悪くなってくる。これは公開練習をパスして少し寝ないとペアフリーでもたない。リンクでもカフェで寝ても寒くて風邪をひきそうなので、結局オフィシャルホテルのロビーへ戻り、椅子に座って膝を抱えて1時間ほど寝た。 こういう形でオフィシャルホテルを利用するあたり、私も図太くなったもんだ(笑)。 追記:一度泊まった宿って半分自分の家のような感覚になりませんか?あとこっちのホテルは星が三つでそんなに豪華ではなかったことと、カナダ勢がいないから余計にくつろげたわけです(笑) |