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ナタリーの野望とステラツィオ

909 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 05:35

瓦礫のトレノ。
ステラティオを見て微笑むエーコにある姉弟が近付く。
エーコ「何だ。おまえは?」
???「お初にお目にかかります。私、ナタリーと申すこの街の住人です。
    この街を我が物顔でで歩いていた、先祖の功績によってのみ生きる、
    愚かな貴族どもを焼き払ってくださて真にありがとうございます」
貴族に憧れていたナタリーは、その憧れていた連中を呆気なく殺したリンドブルムに仕えて出世しようと目論み、エーコに近付いたのだ。
エーコ「後ろの少年は?」
エーコが後ろで怯えている少年を指差す。
ナタリー「ハッ、これは私の弟のマリオです。マリオ、大公様に無礼ですよ、挨拶なさい!」
マリオ「…あ…あの…大公様にお目にかかれて光栄です」
エーコ「で…何用だ? 私は主らに用はないが」
ナタリー「大公様のお傍にお仕えしたいと思って、馳せ参じた次第でございます」
エーコ「ふむ…。だがな、お主らは何が出来るのだ? 私が必要とするの人間は有能な軍人だけだ」
ナタリー「いえっ、私はこう見えましても兵法を勉強してまして…」
マリオ「お姉ちゃん、やっぱり止めようよ」
ナタリーがエーコに自分の才能をアピールするのを、マリオがさえぎる。
ナタリー「何なのマリオ! 私の邪魔をしないで頂戴!」
マリオ「だって、この人たち怖いよ…」
ナタリー「大公様になんて無礼を! 謝りなさい!」
エーコは、姉弟の口喧嘩から目を離してステラツィオに目をやると、
星球カプリコーンがナタリーと共鳴して輝いているのに気付いた。
エーコ「ステラツィオ…。この娘を選ぶと言うのか?」
そう言って、ナタリーのほうをエーコが見るとナタリーはポケットからダガーを取り出していた。
ナタリー「マリオ! 大体貴方は私の足を引っ張ってばかりじゃないの! あたしの出世を邪魔する悪魔なのよ貴方は!
     もうお別れよ、ここで死になさい」
ナタリーはダガーを振りかざすと、躊躇せずにマリオの腹を真一文字に切り裂く。
マリオ「ギャーッ、痛いーっ、痛いよ!」
ナタリー「さようなら、マリオ」
悶え苦しむマリオの頭にナタリーはダガーを付き立てる。
すると、さっきまで叫んでいたのが嘘のように静かになり、
ただぴくぴくと蠢くだけになった。
その光景にエーコは少し興奮し、笑みを漏らしてこう言った。
エーコ「ナタリーよ、汝の仕官を見とめよう、
    私にこれから力を貸してくれ」
それを聞いた瞬間ナタリーは、弟の死体に目もくれずに喜んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12の瞳とトット先生

912 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 05:49

>>783の続き

トット   「ん…うん…うん?」
微かに開いたトットの目に飛び込んできたものは、黄色く光る十二の瞳だった。
ビビjr1号「おっ、目が覚めたかい、じいちゃん」
ビビjr2号「良かった。このまま目覚めなかったらどうしようかと思ってました」
ビビjr3号「うん。安心したよ」
ビビjr4号「俺は心配してなかったけどな」
ビビjr5号「またそんなこと言って」
ビビjr6号「いってー」
ベッドを取り囲むようにしてトットを覗き込んでいるビビの息子たちが、口々に
話し出す。
トット   「おぬしたちがおると言うことは…ここはクロマ族の村なのか?」
上半身を起こし、尋ねる。
ビビjr1号「ああ、だけどじいちゃんは誰なんだ。ボコはベアトリクスの
       お姉ちゃんに貸したはずなのに、どうしてじいちゃんが?」
トット「私は…ベアトリクスの師匠、まぁ先生みたいなものじゃ」
ビビjr6号「ものじゃー」
ビビjr5号「いい子だから静かにしてようね」
トット   「うむ…私とベアトリクスはトレノでアレクサンドリアとリンドブルムの
       戦闘に巻き込まれた。その時ベアトリクスはリンドブルムの手の者に
       よってさらわれてしまった」
うつむき、苦々しく吐き出す。
ビビjr1号「そっか…それでどうしてじいちゃんはこの村に?」
トット   「私は何としてもベアトリクスを救い出さねばならん。じゃがこの老いた
       体では無理な話。テラには魂の器を作り出す技術があると聞いている。
       ミコトに会わせては貰えんじゃろうか」
が、トットの嘆願にビビの息子たちは互いに顔を見合わせ、沈んだ表情を見せるだけだった。
ビビjr2号「ミコト姉さんは誰にも会いません」
ビビjr3号「うん。ジタンに付きっきりなんだ」
ビビjr4号「そうそう。ジタンなんて何言っても『ガキは黙ってろ!』しか言わないし、
       ほんと、どうしちまったんだろ。ジタンもミコト姉ちゃんも」
ビビの息子たちの言によれば、どうやらミコトとは会えないらしい。
だがあきらめる訳には行かなかった。何としてでも体を手に入れなくては。
時間は待ってはくれない。と…その時だった。
ビビjr2号「体ならアレが使えるんじゃないですか?」
その言葉にうつむいていたビビの息子たちの顔が跳ね上がる。
ビビjr1号「アレか…試してみる価値はあるかもな」
ビビjr3号「でもいいのかな。あれはミコトお姉ちゃんの…」
ビビjr4号「いいんだよ、非常事態なんだから…じいさん!」
トット   「なんじゃね」
ビビjr4号「じいさんは…戦争を終わらせてくれるんだよな」
黄色い瞳がトットの顔を真っ直ぐに見詰めてくる。
しばしの間を置き、トットは静かに口を開いた。
トット   「私が剣を振ることで世界に平和がもたらされるかどうかは分からん。
       じゃが…戦の原因の一つであるアレクサンドリアくらいは何とか
       してみせようぞ」
ビビjr4号「なーんかはっきりしない答えだな。でも信じる事にするよ」
ビビjr2号「では夜になるまで休んでいて下さい。昼間は人目に付きますので」
最後にビビの息子たちは顔を見合わせると一つうなずいて部屋を出て行った。
胸に一抹の不安を覚えながらも、今はあの子達を信じるしかなかった…。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

飼育小屋の下には…

914 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 05:51

やがて夜が更け、トットは六人の子供たちと共に村を忍び歩いていた。
ビビjr1号「ここだ」
ビビの息子が指し示す先にあったのはボコの飼育小屋だった。
トット   「まさか私にチョコボになれと…」
ビビjr4号「なーに言ってんだよ、じいさん。まっ、黙ってついて来な」
中に入ったビビの息子たちは手分けして積んである干草を掻き分け始めた。
ボコ    「ク、クエ…」
ビビjr6号「しーっ」
一人がボコのクチバシを押さえ、口の前で人さし指を立てる。
ビビjr2号「ありました」
近寄ってみれば、干草の山の下から出てきたのは一枚の扉だった。木製の扉を
跳ね上げるとその内には地下へと続く梯子が見える。
ビビjr1号「みんなはここで外を見張っててくれ。さあ行こう、じいちゃん」
そう言うと彼は梯子を降りていった。トットもその後に続く。
梯子を降りきった先にあったのは異様な機械の数々だった。特に目に付いたのは
人が一人入れそうなほどの円筒形のガラス。いや、人が一人入れそうでは
語弊がある。
なぜなら…実際に何者か入っているのだから。
トット   「これは…」
満たされた緑蛍光色の液体の中で、瞬き一つせず虚空を見つめる男の姿に、ただ
トットは絶句することしかできなかった。
エメラルドグリーンの瞳に焦点はなく、長く伸びた絹のような銀髪がガラス管の中で
揺れている。
ガラス管の下部へと目をやれば、そこから部屋の至る所へ色とりどりの管が伸びていた。
と、やはりガラス管の下部に一枚のプレートが貼られているのを見つける。
テラの文字だろうか。少しばかりかじった程度の知識では完全に読めそうもない。
トット   「…フィ…ス…コ……ピー…?」
????  「セフィロス・コピー…戦闘用のジェノムです」
突然の声に驚いて振り向けばそこに立っていたのはあのミコトだった。


 

 

 

 

 

 

 

「ジャンク」−クリスタルに埋もれし記憶−

915 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 05:52

ビビjr1号「まったく。役に立たない見張りだなぁ」
ビビjr2号「すみません、兄さん」
地上から帰ってくるすまなさそうな声。
ミコト   「まったく。いけない子達ね」
ビビjr1号「ごめん。ミコトお姉ちゃん」
しょげた様子で謝るビビの息子に向かって微笑を浮かべると、ミコトはトットに
視線を移した。
ミコト   「お久しぶりです。トットさん」
トット   「うむ。ところでミコト、これは一体…」
トットが問うと、ミコトはガラス管に歩みより、いとおしげに手で触れた。
ミコト   「ジタンがクリスタルから呼び出す多くの記憶。その中には『ジャンク』と
       呼ばれる役に立たない記憶があります。そんなジャンクの中から作り出した
       戦闘用のジェノム…それがこのセフィロス・コピーです。まぁ、本来この子
       が存在した世界ではジェノムではなくジェノバと呼ばれていたらしいのですが」
トット   「ジタンはこの事を?」
ミコト   「知りません」
トット   「ではなぜ?」
ミコト   「私だって科学者の端くれ。知識があればそこから何かを生み出そうと考えるのは
       当然のことです」
トット   「そうか…では単刀直入に言う。このセフィロス・コピーとやら、私の魂の器として
       貸してはもらえぬか」
トットにとってはこれが最後の賭けだった。
ミコト   「構いませんよ。ではそこの椅子に腰掛けてください」
が…最後の賭けに似つかわしくないほど、ミコトはあっさりこちらの申し出を受け入れてくれた。
トット   「やけにあっさり答えを出したな」
ミコト   「ええ、利害が一致しましたから。私もそろそろこの子に魂を吹き込んでみたいと
       思っていたので」
椅子に座ったトットの頭に奇妙なベルトを巻きながらミコトが答える。
ミコト   「では気を落ち着かせてください」
トット   「分かった」
ミコト   「いきます」
ミコトの言葉が聞こえた瞬間、トットの視界は白一色に塗りつぶされた。自分が自分で
なくなる。生まれて初めて味わう奇妙な感覚だった。
そして次の瞬間、トットの目の前には緑蛍光色の液体が広がっていた…。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

科学者としての欲望

916 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 05:53

ガラス管が開き、トットは液体と共に外に吐き出された。飲み込んでしまった液体
が喉を焼き、むせ返る。やがて呼吸の落ち着いてきたトットはゆっくりと立ち上がった。
視点がいつもより高い。太くたくましい腕、厚い胸板。
若かりし頃の自分に負けず劣らず、すばらしい魂の器だった。
ミコト「とりあえず服を着てください」
トット「すまん。気が付かなかった」
ミコトが指さす方向に積まれた服を手に取り、手早く身につける。上下ともに黒一色。
ミコト「どうです? 何か体に異常は?」
トット「いや、最高の状態じゃよ」
腕を回しながらトットは答える。
ミコト「そう…ではこの薬を渡しておきます」
そういってミコトは大き目の薬瓶と一枚のメモをトットに手渡した。
ミコト「その体の構成にはジェノバ細胞という特殊な細胞が使われています。
    故に常人には考えられない治癒力と筋力を発揮するのですが…」
トット「が?」
ミコト「時としてその力ゆえにジェノバ細胞は暴走します。その時は、その薬を
    飲んでください。暴走を押さえられるはずです。薬の原料と調合方は
    そのメモに書いておきました。なくなる前に作っておいた方がいいでしょう」
トット「分かった。肝に銘じておこう」
瓶とメモをポケットに収め、トットは深く頷いた。
ミコト「ではもう何も言うことはありません。ジタンに気付かれる前にこの村を出た
    方がいいでしょう。私もジタンの所へ帰らなければ」
そう言ってミコトは梯子を上っていこうとした。
トット「ちょっと待ってくれ」
ミコト「何か?」
トット「いや、やけに淡々としておるものじゃから逆に気になっての」
ミコト「先程も言ったように利害が一致しただけです。自分が生み出したものが
    何なのか、それを確かめたいと思った…科学者としての欲望です」
やはり淡々として言い、ミコトは地上へと姿を消した。

地上に出たトットはビビの子供たちによって取り囲まれた。
ビビjr1号「すごいや。本当に入れたんだ」
ビビjr6号「どんなかんじ? どんなかんじ?」
ビビjr4号「あんた本当にあのじいさんか?」
トット「そんなに一度に聞かれても答えられんよ」
ビビの息子たちに苦笑を浮かべて謝りながら、トットは自分の荷物の置いてある宿屋に
入っていった。
ベッドの下からボコに苦労して運んできてもらった、三つの木箱を取り出す。
トット「再びこれを手にすることができようとは」
呟き、トットは鎖の封印を解き放った。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歴史に刻まれし剣と埋もれし剣

917 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 05:54

まず長細い二つの箱。そこから出てきたのは、何の飾り気もない長剣が一振りずつ。
ビビjr4号「何だそれ。汚い剣だな」
ビビの息子の言うことにトットは笑うしかなかった。確かにその通り。名剣と呼ばれる
剣には見ただけで人の心を緊張させる何かがあるものだが、このニ振りの剣にはそれが
全くといっていいほどなかった。
すこし腕のある剣士ならば「なまくら」と言って見向きもしないだろう。
だが…
トット「ラグナロク、アルテマウェポン、エクスカリバー、エクスカリバー2、マサムネ
    ライトブリンガー、斬鉄剣…歴史に名を刻む数々の名剣、名刀。
    じゃが…その特異性ゆえに歴史に名を刻むことがなかった名剣を、おぬしは
    知っておるかな?」
ビビjr4号「いいや」
その答えにトットは自分の持つ剣のいわれについて語りだした。
トット「その昔、生きながらにして伝説となった一人の鍛冶屋がおった。その鍛冶屋が
    死の間際、ニ振りの剣を残した。だが彼の弟子たちは困惑した。なにせ、その
    剣はとんでもない「なまくら」でな。
    なんと…たまねぎを切るのにも使えん代物じゃった」
ビビjr4号「たまねぎ?」
トット「そう、あのたまねぎじゃ。故にこのニ振りの剣は長いこと「たまねぎの剣」と
    いわれ、伝説の鍛冶屋の最後にして最大の失敗作といわれておった。じゃが…
    そんな事は未熟な剣士どもの戯言に過ぎん。どれ、表に出ようか」
剣を持ち、表に出たトットは村の入り口に置いてある岩の前で構えをとった。
夜風がトットの頬を撫でる。体に感じる心地よい緊張感。何十年ぶりだろうか。
そして…トットの手が陽炎のように揺らめいた次の瞬間!
岩は跡形もなく消え去り、辺りに小石の雨が降り注ぐ!
ビビjr4号「すげぇ…」
トット「十八連斬…まだ少し体がなじんでおらんようじゃな」
剣を両の腰に下げた鞘へと収め、呟く。
ビビjr4号「…何なんだよ! その剣」
怖かったのか、少し声を震わせながら問う彼に、トットは笑みを浮かべて答えた。
「たまねぎの剣。またの名をオニオンソード。ラグナロクさえ凌ぐ最強にして
 最速の剣じゃよ」
と…。 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界一小さな騎士団

927 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 09:56

>>917

トット「さて…」
再び宿屋へ戻ったトットは最後に一つ残った箱の封を解いた。
中に入っていたのはオニオンアーマー、オニオレット、そして
あらゆる災厄から身を守ると言われるリボンだった。
オニオレットを腕にはめアーマーを身に着ける。たまねぎが
ぶつかればヘコむといわれた鎧も、ある道を極めた者が着ければ
最軽にして最硬の鎧と化す。
長く伸びた髪をリボンで一つにまとめ、トットは表に出た。
ビビjr6号「いっちゃうの?」
トット「ああ。非常に名残惜しいが弟子を助けに行かねばならん
    のでな」
膝を折り、顔を見つめながら彼の肩に手を置く。
ビビjr2号「また…会えますよね」
トット「ああ。全てが終わればこの体、ミコトに返しに来る」
ビビjr4号「俺は全く心配しないから」
ビビjr5号「また心にもないこと言うんだから」
トット「はは。おぬしに心配されるほどヤワではないわい」
言って笑みをこぼす。
ビビjr3号「今度は…お父さんの所にも寄っていってよ」
トット「そうじゃな。たまには顔を見せておかなければ
    忘れられてしまうからな」
最後に一人ずつと握手をする。
「では色々と世話になったな」
手を振り、トットはビビの子供たちに背を向けた。彼らの声が
聞こえなくなるまで何度も振り返り、手を振った。
やがて皆の声も聞こえなくなり、ただ静かな森の空気が
辺りを包み込む。
最後に握手を交わした五人の子供たちの顔を反芻し、トットは
頬を緩めた。そう、五人の子供たち…
トット「五人じゃと?」
頭に浮かんだ疑問符と嫌な予感にトットは振り返った。と、そこには
ビビjr1号「じいちゃん、ベアトリクスお姉ちゃんを助けに行くん
       だろ? 俺も行くよ」
大量のアイテムをくくりつけたボコの背に乗ったビビの長男の姿があった。
トットは小さくため息をつき、ビビの長男に向かって言う。
トット「遊びに行くのとは訳が違うんじゃ。村へ帰りなさい」
ビビjr1号「イヤだ! よく考えたらお姉ちゃんは男の俺に恥を
       かかせたんだ。一言言わないと気がすまない!」
トット「恥じゃと?」
己の弟子が何をしたのかと思い話を聞いていみると…
トット「ハハハハッ、なるほどそういう事じゃったのか」
ビビjr1号「何で笑うんだよ。戦いに行こうとした男を眠らせて
       引き止めたんだぞ。これが恥じゃなくて何なんだよ!」
トット「いいじゃろ、気に入った。おぬし、私と騎士団を結成せぬか?」
ビビjr1号「じゃあ付いて行ってもいいの?」
トット「ああ。私が団長でおぬしが副団長じゃ」
ビビjr1号「ボコは?」
トット「ふむ…補給隊隊長でどうじゃ」
ボコ「クエ!」
トット「それで、団の名称じゃが…」
その時、朝日が昇り薄暗かった森を金色に照らし出した。
日の光に目を細め、トットは呟くように漏らす。
トット「暁の騎士団…どうかな?」
ビビjr1号「うん。いいと思うよ」
トット「そうか。ではここに暁の騎士団の結成を宣言する。さっそくだが
    副団長、おぬしに階級章を与える…と言いたいところじゃが、
    残念ながらそんなものは持っておらん。
    じゃが心配するな。おぬしにはこれを与える。
    ちなみに私とおそろいじゃ」
そう言ってトットはポケットからリボンを取り出し、ビビの息子…小さな
副団長の帽子に結びつけた。
トット「これはあらゆる災厄から身を守ってくれる不思議なリボンじゃ。
    階級章何ぞよりよっぽど役に立つ」
ビビjr1号「はっ、ありがたき幸せであります!」
トット「うむ。なかなかサマになっておるぞ」
一人前に敬礼などするビビの息子に向かって笑い掛け、トットは歩き出した。
と、背中から声が掛かる。
ビビjr1号「団長!」
トット「何かね副団長」
振り向くと少しの間を置いて、ビビの息子がこう言った。
ビビjr1号「やっぱり…その見た目にその喋り方は似合わないと思うよ」
顎に手をやってトットはしばし考えた。確かにそうかもしれない。
トット「そうじゃな…いや、そうか、気をつけよう」
ビビjr1号「そうそう、その調子、その調子」

日の出と共に生まれた世界一小さな騎士団「暁の騎士団」
だが世界一小さな騎士団の前に待ち受けるは最大にして
最悪の災いだった。
召喚帝エーコと魔王ガーネットが覇権を争うこの世界で

彼らが進むべき道とは果たして…

トット編 DISC1 END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生ける屍ラニ

935 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 12:48

>>847
・・・・・・あれから何時間経ったのだろう・・・・・・
ガーネットに無理矢理、半アンデッドとして蘇生させられ、
その上サラマンダーとともに振り落とされたラニ。
別の飛空艇上に落下したために奇跡的に助かり、
今は瓦礫と化したトレノの街にいるものの、体を襲う痛みは確実に強くなっている。
完全なアンデッドなら、もはや痛みを感じることもないのだが、
ガーネットの耽美的な気まぐれは、ラニを完全な人形にすることは好まなかったのだ。
大部分の記憶と積極的な感情は失われていたが、憎悪や恐怖、悲哀、絶望などは増幅されている。
進行する体の腐敗、痛みにラニは大きくうめいた。
自分の体が映るであろうガラスの破片、水たまり、それらを避け、
ラニは体を引きずってトレノの街を徘徊し続けた。
地面に転がるゴミ箱を見つけては、その中をまさぐるラニ。
食べ物だろうがゴミだろうがネズミの死骸だろうが口に放り込み、またはポケットにしまいこむ。
その姿は廃墟の街に残されたトレノの人々にすらおぞましく、不吉に見えた・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フライヤ復活

940 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 15:17

・・うっすらと・・眼が開く・・  ・・う・・・・・・う・・ん・・・(まぶしいな・・)
・・・・(ゆっくりと身体を起こす)・・・・・未だぼんやり頭の中・・状況をよく把握する事が出来ない。
(・・ここはどこなんだろう・・私はどうしたのだろう・・・でも・・でもなんだか・・とっても・・なつかしい・・におい・・)
自分の手のひらをじっと見つめてしまう。軽い頭痛がする頭からなんとか以前の記憶を呼び覚まそうとする。
・・・・・そうだ・・・・私は・・・アレクサンドリアで・・・・殺された・・はずでは・・なかったか?
・・何故ここにいる?・・なぜここで寝ている?・・・  ・・・いや・・たしか・・そうだ・・・
冷たい・・・暗い・・感覚の中で・・・・確かに・・あの方の・・・声を聞いた・・あの方の・・名を・・呼んだ・・
・・・・・・・・・・フラットレイ様!!!!!・・・・・・・・・・・・
ガチャッ!!突如ドアが開き弾かれた様にそちらを振り返る。
「!!!!!!!!!!・・・・・(ちがう・・・この人は・・・・たしか)」
現れた男・・その姿に一瞬「奴?」と見間違い身構えたが別人とわかり今度は困惑の眼差しで男を見る。
クエール「・・・・・・・気が付いたか・・・・フライヤよ。」
フライヤ「・・・・・あなたは・・・クエール・・殿・・・?」何故ここに?ますますわからなくなって来る。
クエール「・・・歩けるか?・・なら・・・ワタシについてくるアル。」静かに言い放ち部屋を出て行くクエール。
まだ少し身体がだるいが起きあがれない事はない。よろよろとベッドを降りクエールの後に続く。
コッコッコッコッ・・静かな廊下に2人の足音が響き渡る。2人とも互いに言葉を発しようとはせず終始無言だ。
つきあたりの扉、キィィ・・クエールが扉を開き中へはいる。フライヤもそれに続く。
その部屋の先はもう一つ扉があった。向こう側の部屋と繋がっている部屋の様だ。
そしてこの部屋に置かれているベンチに見覚えのある人物が腰掛けている。・・あの方は・・!
フライヤ「・・・殿下?・・・・・パック殿下!?」突如会う主君との再会。驚きの表情を隠せないフライヤ。
パック王子「・・・・ああ・・フライヤ。・・久しいな・・。よかったよ・・気が付いたのだな・・。」
久々に見る主君の笑顔。だがどうもおかしい。眼は真っ赤に充血し落ち窪んでいる。まるで・・まるで大量の涙を流した後の様な
フライヤ「・・・・殿・・・・下・・?」いぶかしみ、疑問の声を発するフライヤ。
パック王子「・・・・・・・・・・」それから俯いたまま無言のパック王子。クエールが背後よりフライヤに声をかける。
クエール「・・あの扉の向こう・・そこで全て話すアル。・・いわばそこで・・お前のこれからの運命決まるかもしれないアル。」
クエールがすたすたと奥の部屋へと進む。パック王子も立ちあがり後へ続く。
フライヤ1人が固まったまま部屋に残った状態。何か・・何かの予感を感じフライヤは2人の後に続くのに一瞬遅れる。
(なんだろう・・?何か辛い・・何か悲しいものが・・あの奥の部屋に待っている感じがする。)
暫時、躊躇したのちフライヤもようやく2人の後へと続く。



 

 

 

 

 

 

 

 


過ぎし日を思いて

941 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 15:53

アレクサンドリア城下・・・
この戦乱の発端となった「謎の疫病」はむしろ沈静の方向に向かっていた。
カバオ「もう、戦う必要なんて無いのに・・」
唯一安心できる隠れ家であるアレクサンドリアの時計台にのぼり城下をながていた。
獣人のカバオもまた、異民族排除の煽りを受けて、白人たちの
差別にあっていた。・・カバオの母はその心労からか病のとこに伏せっていた。
かといって、アレクサンドリアを逃れても、
どこにも行き先はない。どの国も戦乱の火にのまれようとしているのだ。

プルメシアの民が病の元凶だというなら、
フレイヤのお姉さんと行動を共にしたガーネット女王が無事でいるはずがない。
そのことにガーネット本人が気付かないわけがない。
今、病などよりも、戦争のために毎月徴収される重税が国民を苦しめていた。
「女王は何をかんがえて・・・?」
ただの一国民の少年であるカバオにそれ以上ガーネットの考えを推察することは
できなかった。
「・・・もう、あんな日はこないんだろうな。」
ジタンやガーネットたちとカードをした日の事を思い出した。
カバオはいつか勝負で手に入れたヒルデ・ガルダ号のカードを握り締めていた・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガーネットのたくらみ

942 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 16:02

「ふふふ・・ラニの体を用いた実験はうまくいったようだな。」

ガーネットはグラスの血の様に赤いワインを飲み干した。
・・・しかしコレほどの手間をかけてようやく一体のアンデット兵士を
作るのみだ。近いうちにアレクサンドリアの兵士を用いて
不死の軍隊を量産する予定なのだが・・・
「もう少し・・・手駒がほしい。」
人間の心を捨てたガーネットの脳にもう一つの案が形をなそうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かなしい現実

943 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 16:36

「・・・・・・・・・・・・」声が・・出せなかった。思いっきり・・・・思いきり泣き叫びたいのに・・
どうして・・・?どうして声が出せないんだろう。すでに頭の中は真っ白だ。眼は「それ」をみつめるその眼は
まばたきすら忘れカッと見開いたままだ。気が付けばガックリと両膝が折れ、両の腕は弛緩しだらりと下がったまま・・
・・ほんの前までは威厳のある明るい声も聞けた、そばにいるだけで暖かい気持ちになった、とんがっている自分の心が
その人の前にいれば丸くなった、優しい眼差し、ぬくもりのあった肌、心の音、・・何もかも・・何よりも好きだったその全て
・・今は何も感じない・・何も聞こえない!・・静かに横たわり・・骸となった・・・ ・・フラットレイ!!!
心の中ではわかってる・・これは骸だ・・もう動く事はない・・心の片隅でわかってる自分がいる・・だけど!
いやだ・・認めたくない・・認めたくない認めたくない!あんまりだ!!こんなの!あんまりすぎる!!
心の中、自らの感情が渦巻き・・弾け・・ようやくカラカラに乾いたフライヤの両眼からゆっくりと一筋の涙が頬を伝う。
クエール「・・・・パック王子とフラットレイは先日、アレクサンドリアから氷の呪いが解けたお前をここへ運んできたね。
当然お前身体ボロボロ。でもなんとか運よく傷は急所を外れていてくれたよ。氷漬けにされてた・・結果的にお前の命
救ったね。パック王子、フラットレイの素早い運搬もよかった。治療する面、特に問題無いはずだったアル・・・しかし」
フライヤは放心状態の顔のまま遠い耳でその言葉を聞いている。
クエール「・・しかしお前の身体大量の血が流れ出ていて殆ど体内に血液全然残って無かったよ。輸血を早急に行う必要があった。
血が足りなきゃ治療できんアル。そこで輸血を行う際また問題だったね。お前の治療に必要な輸血量は最低3人分の
血液が必要だったアル。でもここでまた問題、お前の血液型DOH系Oに該当する者、この里に殆どいなかった。
手術は一刻を争う事態だった、他の町へ行き探してる時間など到底無かったね。ようやくこの里の中に1人だけ該当者見つけたよ。
フライヤ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
クエール「・・その男自分で3人分の血液を用立ててくれと言ったね。無論、1人で3人分なんて
そんな事すれば生きるための血液皆抜き取ってしまう事になり、当然確実に死んでしまうアル。
・・・でも男はそれでいい、いやそうさせてくれと必死に頼んだね。あげくのはてに・・許可してくれない主君を
・・殴り倒してまで採血を希望したアルよ。・・しかもその男アレクサンドリアで深い手傷を負い、彼の体内にも
輸血が必要なほど、血液が残っていなかったアル・・・にもかかわらず。」
フライヤはブルブルと激しく身体を震わせている。
クエール「・・彼は採血に耐え抜いたね。自ら死ぬ事がわかっていよう尚、ワタシに採血を催促してたよ。
その姿にさすがにワタシ1度は迷って治療中断した事あったよ。でもその時彼、笑ってこう言ったね。
「一番大切なものの中で共に生き続けるだけ、私は死ぬわけじゃあない」と。・・そういって彼、
なんと自分で自分の胸に刃を突き通したね。こうなっては最早その男助からないアル。彼は自らの命を絶つ事で
私の迷いを取り払わせ・・そして・・・お前の命・・救ったよ。」
脇で聞いているパック王子の眼にはすでに大粒の涙が浮かんでいる。
クエール「・・もうわかるあるな。その男の名、そこに眠っているフラットレイ。
彼は自らの命を賭けお前の命を救い、そしてお前の身体の中で共に生きる・・望んで死んでいったアル・・」
フライヤ「ああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!」
部屋中にフライヤの絶叫の声が悲しくこだまする。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

謁見、魔王ガーネット

946 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 17:12

(裏に載せた六郎編を焼き直しました)
ビビJr五号「ほんとに・・行くの?」
ビビJr六号「うん・・約束だよ、他の皆には言わないで。」
ガーネットとエーコがともに兵力を削り、
現在、黒魔道士の兵をもつジタン側が勝利するだろうことはわかっていた。
それでも、たくさんの仲間や相手が死んでしまう・・・
ビビの子・六号は世界大戦突入を見過ごすことはできなかった。
話せばきっとわかる、
そう信じ、単身アレクサンドリアのガーネットを訪ねたのだ。

ガーネットは気まぐれからか、強者としての油断からか
謁見の間に、ビビの末子を通した。
ビビの末子は父親によく似ていた。
六号「お姉さん、もう戦争はやめよう、この国は・・」
言葉をさえぎるようにガーネットが言った。
ガーネット「ここへきて、退けと?もう世界は後戻りのできないところへきているのだ、
   おまえのような小僧には世界情勢などわからないだろうがな。」
六号「こんなことは言いたくない、お姉さんよく聞いて。
   霧の大陸だけじゃ戦争がおさまらない。、
   ジタンとミコトが作り上げた黒魔道士たちは、この国が昔もっていた
   低技術の量産タイプじゃないんだ。戦ったら、世界がめちゃくちゃになっちゃうよ。」
ガーネット「・・・・私を脅しにきたつもりか?。」
六号「今なら、まだ、間に合うよ、アレクサンドリアとリンドブルムの仲介に
   入ってくれるようジタンに頼むよ!」
ガーネット「ふん、どうだかな、ジタンも何を考えてるかわかったものじゃない。
   あいつこそが世界支配をたくらんでいるかもしれない。あのクジャと同じやもしれぬ。
   そして、こんなことも言ったな「俺もクジャの立場だったらどうしていたかわからない」とな。」
六号「・・・そんな、ジタンやミコトはそんなことのために軍をつくってるんじゃない!」
ガーネット「やつらも人ではない、・・・ガイアの民に害をおりなすかもしれぬ害獣だ。」
六号「仲間だったじゃないか・・」
ガーネット「同胞以外は信用できぬ、人間とはそういう生き物なのだ。それはジタンたちにも
   いえることだ。」
六号「お姉さんは変わったんだね、父さんの話にでてきた
   優しいガーネット姫とは別人だよ!」
ガーネット「・・・その小僧をだまらせろ。」
女王がそう言うとき、切り捨てろという意味を持つのだが、
さすがに兵士も子供の体躯をした六号に剣を用いるのには抵抗があった。
兵士はそのコブシでミゾオチを一撃した。
しかし嫌な手ごたえだった、人間のそれよりはるかにもろく、貫通したかと思うほどの
へこみができた。六号はその場にうずくまった。
六号「・・・・・・・・。」
兵士1「何をつぶやいて・・・?」
ガーネットは聞き覚えのあるその呪文に耳をたてた
これはビビの得意としたフレアの詠唱・・・!
ガーネット「そいつを早く切り捨てっ・・・」
言い終わらぬ間に爆音が場内に響き渡る。
閃光につつまれガーネットのドレスなど瞬く間に灰になった。

ガーネット「ふん・・・この程度で」
ドレスの下には最強の防具ローブオブロードと同じ布地の服をまとっていた。
ケアルガ、を唱えると皮膚の表面のヤケドも
わずかに焦げた髪も瞬く間に再生し艶やかな黒髪になった。
六号「そんな・・・」
ガーネットは杖を六号の頭部に振りおろした。
その一撃で六号は気を失った。
ガーネット「ちょうどいい、悪魔の落とし子の頭部を城下にさらしておけ、切り捨てよ!」
兵士2「はっ、・・・・かしこまりました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガーネットの計画

947 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 17:13

六号「・・・おと・・う・・さん・・」
薄れゆく意識の中で、六号はビビのことをつぶやいた・・・。

ガーネット「敵はリンドブルクとプルメシアだけでは終らないようだな。」
ガーネットは六号の体を一蹴した。衣服の隙間から黒い霧が拡散した。

ガーネット「いや、待て!」
・・・手を口元にやり、しばし考えた。ガーネットは目前のパズルを組み合わせた。
ある考えが、ついにつながった。
ガーネット「ダリの技術者を呼べ!!」
その声は何かの確信にみちていた、
六号もまさか、命をかけた行動がこんな皮肉な結果を及ぼすとは思いもよらなかった。
ガーネット「その小僧は生かしておけ!ダリの技術者に小僧の体を調べさせ、
   魔力を圧縮さえる技術を手にするのだ。
   ・・・気を失っていても小僧の魔法を封じておく事を忘れるな!」
ダリの工場のことは頭にあったが、
ブラネの忠実な兵士だったはずの
黒魔道士の反乱を目の当たりにしていたガーネットはダリ兵士工場の再生産に二の足を踏んでいた。
しかし、この小僧が最高のヒントをくれたではないか。
黒魔道士たちは思考を奪ったから逆に自我がめざめ軍を離れていたのだ。
それならば・・・逆に自我を植えつけてやればいい。

1ヶ月後・・・
ガーネット「良い出来だ。」
その顔を眺めてガーネットが言った。
ガーネットの少女時代を思い起こさせる美しい顔立ちだった。
白く輝くローブをまとった少女が身を起こした。
シロマ「お母様・・・」
少女はそう言った。
ガーネットはアクセサリをはずしシロマの手に握らせた。
「ガーネット」の宝石は少女の魔力に答えるかのように光を放った。
ガーネット「残りの霧を精製して何体の白魔道士を生み出すことができる?」
ダリの技術者「はっ、30体ほど・・・!」
ガーネット「そうか・・・それで十分だ。」
エーコ・ジタン・・・首を洗って待っているがいい!
ダリの地下工場にはガーネットの高笑いがひびいていた・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パック独白

950 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 17:43

フライヤ「ああああああああああああああああああッッ!!」半狂乱の如く泣き叫び始めるフライヤ。
そのフライヤの下へパック王子が駆け寄りなんとフライヤの頬に一撃張り手を食らわせる!バシィ!!
パック王子「・・バカヤロウ!!フライヤしっかりしろ貴様!!お前の身体何が隠されてんのか自分が一番
わかってんだろうが!!お前のその力・・そのGトランスの力が世界を・・世界を・・救ってくれる・・
そう言って・・そう信じて!!あいつはお前に命をくれてやったんだ!!アレクサンドリアで・・ガーネットに・・
ガーネットにズタズタにされて!城兵に囲まれてた状態で尚!フラットレイは・・お前の身体を必死に
かばい!脱出してきたんだ!!ここに来る時・・言ってたよあいつは俺に。俺があいつにさ、フライヤにGトランス能力が
あって何とか命を助けないと、と言ったらさ、あいつは「まだ彼女に・・これほどの眼にあった彼女に
まだ戦わせるつもりなのか」って!「替われるものなら、これほど彼女と替わってやりたいと思った事は無い。
自分の力の無さがこれほど口惜しいと思った事は無い」ってな!あいつも・・あいつもボロボロだったのに・・。
そん時初めて俺は気が付かされたよ。俺は偉そうな事をいって、世界を守る為だなんて事を言ってながらさ!
結局血を流すのはお前達だけ!俺は只安全な場所にいるだけでしかないってことをさ!俺は迷ったよ、あいつがお前に
命を賭けて血をくれてやると言った時!本当にこれでいいんだろうかってさ。
あいつは自分の・・あいつは自分の大切な人を守ってやろうって生き方を・・
この俺をぶん殴ってまで自分の生き方を断腸の思いで断ち、お前に・・お前に賭けたんだ!
最後までお前をかばっていこうとしたあいつが・・お前を・・お前を戦いの中へ送り出そうとしたんだよ!
自分ではどうする事も出来ないならせめて!お前の・・お前の身体の中で!共に戦ってやろうと決意して
あいつは死んでいったんだ!フライヤ!!俺を・・俺を殴れ!!・・いや・・
殺してくれ!!俺は主君失格だ!!俺はお前をいつのまにか道具として見てしまってた!
しかも1度は決断さえも出来ずお前を死なせてしまうのを承知でフラットレイの
嘆願を突っぱねてしまった!そして・・結局お前の大切なものを奪ってしまったのは・・
この俺だ!この大バカヤローだ!!この口だけヤロウだ!!フライヤ!!さあ!!
俺を!!俺を殺してくれぇっ!!」 言い終わるや否やフライヤはパック王子を胸に抱いていた。
フライヤ「・・・!!!・・・・!!・・・!!!」言葉にならない声でパック王子を抱きながら感泣するフライヤ。
パック王子「・・・!バ・・バカヤロウ・・誰が・・誰が・・抱いて泣けと言った・・
・・・この・・・・・・大バカヤロウが・・・・・・・・・・・・」
フラットレイの亡骸の前で抱き合い、そして感泣にむせぶ2人の主従。
その光景を見ていたクエールもついに天を仰ぎ・・その眼より流れ出づるものを止める事は出来なかった。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジタン演説

951 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 18:07

「あのクジャとの戦いからx年…世界は惰眠をむさぼり、
やっとの思いで手に入れた平和を無自覚に浪費してきた。
その代償としてガイアは麻のように乱れ、幾千幾万もの
命が意味もなく踏みにじられて行く。民人の怨嗟の炎が
天を焦がす今、命の略奪者どもから平和を取り戻す。
それが我ら力を持った者の使命なのだ! そうだ、
今こそ我らが立つ秋(とき)! 邪欲の権化たる
二匹の凶畜…魔王ガーネット、召喚帝エーコ、
やつらを排除する事なしにガイアに平和は戻らない!
この世に正義がないならば、我らが正義として降臨するのだ!
そうだ、我らこそがガイアに平和を取り戻す為に
大いなる意思によって選ばれた戦士なのだ!」
「ジタン! ジタン!」
「ジタン! ジタン!」
「いよいよ裁きの鉄槌が降る日が来た。我らに与えられし
神の艦パラメキアが遂に天空を我が物とする日が訪れたのだ!
そして呪われしアレクサンドリアと戦い、我が軍を指揮する
神の騎士を紹介しよう…魔導王エヌオーだ!」
ジタンの隣に、青いローブに包まれた人影が音もなく滑り出した。
フードに覆われたその顔は、瞳の輝きを持つ黒魔術士とも異なり、
まったくの影に埋め尽くされていた。
(…エヌオーですって? 私はあんなヤツを知らない…
一体誰なの?! ジタンはあいつに何をさせようと言うの…)
予想外の展開に愕然とするミコト。しかしそんな彼女の様子は
一切気にとめずに、エヌオーと呼ばれた影はくぐもった声で告げた。
「…ブルメシアに巣食うアレクサンドリアの寄生虫どもを浄化せよ…
そしてかの地を開放せよ…それがジタンの意思である…」
「ジタン! ジタン!」
「ジタン! ジタン!」
周囲を埋め尽くす歓声の中、
ミコトは急にひとりぼっちになったような気がした。
(どうして…どうしてなのジタン…)

ジタン編DISC1終了


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

953 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 18:47

「神竜騎大将軍フラットレイ侯」と贈名された墓標。フラットレイの葬儀はこの竜谷の里にて
パック王子の名の下、厳かに執り行われた。国の英雄、ブルメシア最強の勇者であった彼の事を知らぬものは
おらず、その彼の死に感涙を抑えられし者はいなかった。ーーーーーーーーそれから数日・・
フライヤは、ブルメシアの大地を一望できる竜谷の里の高台に立っていた。彼女の両手には槍が握られている。
左手には自らの愛槍ホーリーランス。そして右手にはフラットレイ生前に愛用していたランスオブカインが。
フラットレイの墓標はフライヤ、そしてパック王子の要望によりこの高台へと建てられた。
眼下に広がるブルメシアの大地、そして常に大地に吹き続ける竜の恵みといわれしブルメシアの風。
墓標の下に座りその光景を見ながら風に煽られた髪を掻きあげフライヤは1人呟く。
フライヤ「・・・覚えてらっしゃいますか?レイ様。ここは初めてレイ様が私を誘ってくれた
場所でもありましたね。・・あの時・・まだ2人とも・・強情で・・確かレイ様も・・
そして私も・・なんだか恥ずかしくって・・お互い意地になって言葉の無いまま・・
この・・・ブルメシアの大地を眺めてましたよね・・。そして・・何も言わぬまま・・
レイ様は・・私の手の上にご自分の手をお重ねになられ・・・・  ・・・・・今・・
私の身体の中にいる・・・レイ様と・・こうして・・・・再びこの光景をみようとは・・」
遠い眼1人微笑むフライヤ。
フライヤ「・・私は・・実は1人でいるのは昔から苦手でした・・いつもさびしくて・・怖くって・・
それを隠すかのように私は常に心を閉ざす様努め・・鍛錬の道を歩んで・・今思えば
自分ながら、なんと哀れな童子であったことか・・そんな私が・・いつも・・あなたのその眼差しをみればなぜか・・
この私のとがって冷え切った心を溶かし・・暖かくしてくれたのです・・でも・・・私は・・
・・また・・一人になってしまいました・・。けれど私の中には今・・貴方の血が流れています・・
あなたの鼓動・・あなたのぬくもり・・しっかり・・・しっかり感じます。こんな形で一つになるのは
さびしい事ではありますが・・・私は・・貴方と共に・・これから参ります・・。
世界を・・この混乱の世界を・・私の力で変えられるなら!・・私の中で・・永遠に見守り下さい・・
そして私に・・力を貸してください・・フラット・・・レイ。」
おもむろに立ち上がりフライヤはその足元に1本の槍を叩き突けた。
それはフライヤが今まで使っていたホーリーランス。その突き立てた槍に別れを惜しむかのように一瞥する。
・・・・・私の思いは今日よりこのランスオブカインと共に!・・・・・
ゆっくりとその場を離れるフライヤ。一陣の風が吹く。もう一度軽く墓標の高台を振り返り
そして再び彼女は歩き去ってゆく。
・・さようなら・・私の・・・そして・・あなたとの・・・・・・・・・・・・
女竜騎士の身体にいつまでもブルメシアの風が吹きぬけていた


 


 

 

 

 

 

 

 

世界の行方

955 名前:講談師毛富蚊投稿日:2000/08/13(日) 19:10

さて神竜フラットレイはかくて帰らぬ人となり、
一人残されたフライヤはランスオブカインとともにいかに思いを馳せるのか、
暴君ガーネットの暴虐極まれりといへども未だ明らかにならざる謎多く、
凶公エーコの幼きあどけなさはその面影を失いて陰謀の糸を張り巡らせ、
独裁者となりしジタンの行動はもはや「妹」ミコトの考えの及ばぬ所になりて、
暗黒の嘗て暗黒街で名を馳せたサラマンダーとラニは未だ暗黒の闇に彷徨い、
愛嬌のカケラも失いしクイナ魔性となりてしばしその身を潜め、
戦神トットの残された救いとはいかなるものか?
はたまたベアトリクスに隠された謎とはいかなるものでありましょうか?
そもそもGトランスの正体とはどのようなものでありましょうや?
世界大戦にて崩壊寸前の世界やいかに!?
それはこれからの物語で明らかになっていくものと思われます
さてさて息も尽かせぬかくも壮大で悲しく美しい「アレクサンドリア許さない」の物語は、
これよりさらに佳境に入っていくのであります!
皆様ご愛用のハンカチを多数ご用意の上、ご存分にお楽しみいただきたく候!

                     何となく区切りがいいので・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意外な雇い主

964 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 19:54

「サラマンダー、おまえの力が必要なんだ。手を貸してくれ」
「・・・!?オマエは・・!!」
静寂を破ったその人物を見て、サラマンダーは思わず声をあげた。
金色の髪、腰の辺りをふらふらと動いている尻尾・・・・見間違うはずはなかった。
「・・・ジタン・・」
「久しぶりだな、サラマンダー。何年ぶりかなぁ?」
「なんでお前がここにいる?」「おいおい、ゴアイサツだな。俺は雇い主なんだぜ?」
ギルガメッシュが口を開く。「そうだ。俺の依頼主ってのはこのジタンさ。どうだい、
びっくりしただろう」
サラマンダーは何も答えず、じっとジタンの顔を凝視している。
「・・・どうした?俺の顔に何か付いてるのか?」
「ジタン・・・・お前・・・変わったな」ジタンの眼がきらりと光った。
「ヒトは変わるものさ。そう、ダガーもエーコも変わった。俺だけ変わらない筈もない」
ジタンの顔に自嘲めいた翳りが浮かんだが、それも一瞬のそのまた半瞬ほどだった。
「ドコが変わったっていうんだ?」
サラマンダーは続けた。「以前のお前は盗賊とか言いながら結局の所いい子ちゃんだった。
なんだかんだいって終いには世界を救っちまったしな」
「・・・・・・」
「俺はどこまでいっても所詮闇の世界の住人。成り行きでお前の仲間になったものの、
お前の考えていることはまるで理解出来なかった・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雇用成立

965 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 19:55

喋りながらも、サラマンダーは考えていた。こいつはどうしたことだ?
あの鼻持ちならない、気取り屋で、お調子者で、そのくせ妙に正義感の強いあの
ジタンはドコへいっちまったんだ?ヒトは変わる・・・?しかしこの変わり様は・・・?
これじゃあまるで・・・

「・・・・サラマンダー、俺が変わったのが気に入らないのか?」
ジタンは少し苛立ったように口を挟んだ。
サラマンダーは「フッ」と低く息を吐くと、不適な笑みを浮かべる。
「・・・いや、むしろその逆だな。以前のお前とは違うが・・・だが・・・そう、
・・・今のお前はもう『こっち側』の人間だ。俺にはお前の考えが手に取るように解るぜ」
「・・・・・・」
「だが、そんなことは俺にはどうでもいいことだ。俺はガーネットをこの手で
仕留められればそれでいい。世界をお前がどうしようと知ったこっちゃねえ」
「じゃあ協力してくれるんだな?」
「いいだろう。ギブアンドテイクだ。俺はお前を利用させてもらう。お前は俺を存分に
利用するがいいさ」
「よし。じゃあギルガメッシュと一緒にまずはモグネット本部へ向かうんだ」
意外な名前に、サラマンダーは少し驚いた。「モグネットだと?」
「いまやモグネットは俺が牛耳ってる世界最大の諜報機関なのさ。現在エクスカリバー2の
情報を全力を挙げて収集させている。その情報を元に探索を開始してくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意外な言葉

966 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 19:55

「最後に俺からのプレゼントだ」ジタンはサラマンダーに告げた。
「?」
「ラニは生きている」
「!?何を言って・・・」サラマンダーは思わず傍らに横たわる遺体に振り向いた。
「そいつは偽物さ。本物のラニは生きている。・・・・・いや、生きながら死んでいる、と言うべきか・・」「何だと・・・どういうことだ!?」
「サラマンダー、ラニの件は俺に任せろ。お前は一刻も早くエクスカリバー2を見つけだすんだ」
「ラニが生きてるんだろ!?俺はラニを助けに行く!」
「無駄だな。トレノは現在リンドブルム軍の監視下にある。それにお前がいかに武勇を誇ろうと、
いや、その強大な能力だからこそエーコの魔力探知に引っかかり、総攻撃を受けるに決まっている。お前は今や世界の十指に入る戦闘能力を持つ危険人物なんだぞ?無駄死にしたいのか?」「・・・・・・」
「俺にまかせておけよ。「俺を信じろ」なんて陳腐な台詞は使わないぜ。俺にはお前が必要だ。
だからお前が必要なものは俺が守ってやる。いいか、これはビジネスだ」
「・・・・いいだろう・・お前に任せる・・・よろしく頼む」
ジタンは満足そうに頷いた。「よし。じゃあギルガメッシュ、頼んだぜ」
「オーケイ、じゃさっそく行くか!街の外にスティルツキンが待っているぜ!」

・・・・まっていてくれラニ・・・すぐ迎えにいってやるぜ・・!!!
いまやすべての迷いを断ち切った復讐鬼サラマンダー!その先に待つものは・・・・?

DISC1 END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闇夜の少女

975 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 20:58

深夜・・・ユーノラス大平原の真っ只中・・・・・このような冒険者くらいでしか
通り過ぎようもない場所に、その場所には不似合いな1人の若い女性がたたずんでいる。
ふいに、その少女は信じられないような抜群の聴覚で何かを感じ取り遠目に
夜空の闇の中を凝視した。彼女が耳に感じたもの・・それは確かにエアーシップの蒸気の奏でるエンジン音。
「・・・・・・来たか。」
凍りつくほど美しいその美貌・・口元が自らの期待に喜び妖しい微笑を作る。
一陣の風が彼女の漆黒の髪を煽り上げる。
しかし彼女はそれに気も止める事無く、先程より感じる・・こちらに向かってくる
「確かな気配」の方角を嬉々として、闇の中妖しく緑に輝くその両眼をむけ微笑んでいる。
・・・・・来た・・見えた・・遠目に闇の夜空の中こちらに向かってくる
一隻のエアーシップの存在を視界に捕らえる事が出来た。「待ち人」は彼女の思惑通り現れたのだ。
更に口元は喜びに歪み、らんらんと妖しく光るその瞳はより一層輝きを増す。
風に煽られたままの黒髪は逆立つが如く、そしてその一見華奢な身体が青白きオーラに覆われる。
佇みしその少女の容貌は即座として魔王の風貌に覆われる。
自分に今まさに近づいてこんとする迎えるその魔王に変貌を遂げし、少女の名・・
彼女こそアレクサンドリア国王、ガーネット王女であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガーネットの思惑

979 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 21:48

ーーー時は遡るーーートレノでのリンドブルム軍との戦いに、ついにアレクサンドリア軍は撤退を余儀なくされた。
軍事力の差では決して劣ってはいないはずであったのだが、ブルメシア侵攻の際に割った兵力の差、
そしてリンドブルム軍の指揮を務めていたエーコ・キャルオルによる召還獣の一斉攻撃が勝敗の完全な決め手となった。
アレクサンドリア軍一旦クワン洞方面にまで兵を退かざるを得ない状況となり
結果的にトレノでの戦いはリンドブルム軍の圧勝に終わったのである。自身出陣予定であったガーネットであったが、
前夜、思わぬ邪魔者(フラットレイ)との戦いに興じてしまった際の自らの身体の不調により
大幅に出陣が遅れてしまったというアクシデントも重なっていた。トレノでの敗戦報告を受けたガーネットは
烈火の如く怒ったが、すぐさま次の策を考え始めた。せっかく奪ったブルメシアから
兵を退かす訳にはいかない、かといってこのままトレノにリンドブルム軍を
置いているのは刃を喉下に突きつけられているに等しい。しかも敵軍は勝ち戦に大きく士気が上がっている
であろう。このまま強引に第2Rを始めるわけにもいかない・・・・・・・ふと、ガーネットに1つの案が浮かぶ。
・・案というより賭けに近い・・のかもしれないがうまく行く自信は・・・ある!
成功すればまさに一発逆転の状況となろうそのガーネットの頭に浮かんだ1案とは・・
「大将同士の一騎打ちに持ちこむ」  これであった。本来ならば馬鹿げてる作戦である、大将が負ける、それはその部隊の
全滅を意味する。自分もやられる可能性もある、何より相手がこのようなことを受けて立つ事自体無茶な話である。
しかしガーネットには自信があった。いくらエーコの力が未知数であるとはいえ、自分は既にGトランス能力を極めている。
いまだ覚醒途上のエーコにGトランス完全覚醒者の己が負ける要素は万に一つも考えられない。しかも自分には未だエーコの
知らない「隠し玉」をもっている。100%負けは無いと確信する。
後はエーコがこの申し出を受けてくれるかだが、そちらのほうもガーネットには自信があった。彼女の事をよく知る自分だ
彼女の性格も十分熟知している。しかも未だ彼女は幼い。あの向こう気が強く、幼いエーコは必ず自分の挑発に乗ってくるだろう。
ガーネットはそう確信していたのである。・・・そしてガーネットは思念テレパシーでリンドブルムにいるエーコに挑戦状を叩きつけた。

ガーネットの思惑通り彼女は挑発に食らいついてきた。ガーネットの相手の若さを利用した計略は見事功を奏した。
おびきだせば・・後はこちらのものである。エーコを倒せばリンドブルムの併合も容易い。
霧の大陸3国も統一である。ガーネットは自らの口元に自然と浮かぶ邪悪な微笑を止めうることは難かった。



 

 

 

 

エーコ到着

989 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 22:43

ババババババ・・・・エンジンとプロペラの音が鳴り響くエアーシップ内。
その操縦席にいたエーコはガーネットの指定したユーノラス大平原に彼女の姿を捉えた。
エーコ「フフフフ・・・この私を呼び出すとはね・・。」腕を組みじっと窓の外を見やるエーコの口元に
極めて邪悪な笑みが浮かぶ。エアーシップはライトの光を落とし着陸体勢に入る。
エーコ「・・言ってくれるじゃないガーネット。この私とまさかタイマンとはね・・。飛んで火に入る夏の虫だわ!!」
脇に控えるエリンが心配そうな表情を浮かべエーコの進言する。
エリン「・・エーコ様、この様な申し出をこう簡単にお受けになり・・本当に大丈夫なのでありますか?」
エーコ「・・何よエリン。この私が負けるとでも思っているの?」ギロリと睨まれるエリン。それに怯えるかの様に
エリン「・・いえ、めっそうもございませんただ・・この様な事は何分前代未聞の事でありまして、何か罠が・・」
エーコ「・・まぁわかりやすい決着のつけ方がいいってぇーのはあの年増も私も共通した考えだと思うわね。
勝った方が国を奪る。こんなわかりやすくて合理的なことはほかにないわっ!!」
高らかに嬉しそうな声を上げるエーコ。その眼はすでに狂気を宿してるに近い尋常でない眼だ。
最近は特にそうだ・・。戦うのが楽しくてたまらない。圧倒的な強さの暴力に酔いしれるその快感。
あの味を忘れる事が出来ない。もう一度あの快感を味わうと後は止まらない。渇いて渇いて渇いて
自らの暴力による血の渇きでどうしようもなくなる。その一見愛くるしい美少女はすでに
血に渇き暴力に酔う殺戮天使に変貌を遂げていた。
エーコ「・・・ああああ楽しみ♪あの最高の♪血と暴力と悲鳴♪あああヌれてくるわぁ♪ねぇ?エリン。」
エリン「・・は・い・」既に半狂乱に近い少女の心の底から楽しそうな笑みを受け、背筋に冷たいものが走る。
ゴオオォォォォ・・・ゆっくりとエアーシップが下降して行く。着陸の合図だ。
エリン「・・万一に備えそこかしこに伏兵を忍ばさせて頂きました。」そのエリンの言葉に不機嫌そうにエーコは答える。
エーコ「そんなモンいらないわ。それよりここら一帯吹き飛ぶかもしれないから死にたくなけりゃ
さっさとすっこんでなさいといいなさい。」エーコの物騒な発言にエリンのみならず近くにいる兵士全員が固まる。
その彼等をよそに鼻歌交じりでまるでこれから遊びにでも行くような嬉々とした感じで降船ドアーへと向かう。
(・・・そう、私は勝つ。今の私にかなうものなど世界に存在しない・・この私が負ける事など断じてない!
  ハハッハハハハハハハハッ・・ウフフフフッフフフーッ・・キャハッハハハハハ!!)
これから始まる凄惨な血で血を洗う死のショーを、まるで待ちきれんばかりに
エーコはエアーシップの降下階段を駆け下りてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビビJrの不安

1003 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/13(日) 23:27

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アレクサンドリアにとらえられた
ビビJr6号は地下牢の魔方陣の中で静かに目を開けた。
何度目の朝を迎えただろう、いっそ・・・そのまま眠っていたかった。
とにかく体がだるく皮膚がちりちりと痛んだ、ビビJrにとって
魔力を封じるとは生命力そのもを封じられるようなものだ。

上のお兄さんたちは元気かな…そう思ったりもしたが、
少なくともあの村にいる限り無事だろう。
さすがに女王の前では口に出すのを控えたが
ジタンが近づくなといった建物であるものを見てしまったんだ。
巨大な飛空挺の数々を…。ビビの話にでてきたインビンシバルに似た
禍禍しいまでの船・・いや巨大な建物というにふさわしいものがあった。
そして・・
嫌がおうでもガーネット女王の言葉を思い出してしまうのだった。
(ガーネット「ジタンも何を考えてるかわかったものじゃない。
あいつこそが世界支配をたくらんでいるかもしれない」)
ジタンは何をする気なんだろう。
あれがもしインビンシブルと同様のものだというなら
マダイン・サリを滅ぼしたという力を持つ飛行建造物を用いて
何をする気・・・?防戦のためにあんなものが必要なの・・?
ぶんぶんと首をふって、自分の考えたことを否定した、そうだ、
そんなはずがない。そんなこと考えたくもなかった。
…だから、ジタンに聞き確かめる事もできずに一人で村を飛び出したのだ。

ミコトが…
いつかのセフィロスコピーのとき言ったことを思い出す・・
(ミコト「私だって科学者の端くれ。知識があればそこから何かを生み出そうと考えるのは
当然のことです」)
だから、きっと、
ジタンの船も科学者のジタンの興味によってつくられただけなんだ・・
6号はそうおのれに言い聞かせたが
拭い切れない不安はとめようのない黒いもやのように胸の中に広がっていった・・。

 

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