アレクサンドリア許さない×2<DISC3>
7 名前:ななしさん@おなかいっぱい投稿日:2000/08/21(月) 20:37
再び歩き出すスタイナーの目に、ふと明るい光が差した。
見上げると、小さな穴があいていた。自分がかろうじて通ることができそうな穴だった。
依然とおったときには、何もなかったはずである。
そろそろトレノに近いはずだが…
スタイナーはその穴から身を乗り出してみる。
薄暗い中、はるかかなたのそらが、赤く燃え上がっていた。
スタイナーの体を、悲劇の予感が駆け巡る。
「こうしてはいられないのである。」
再び洞窟の中に戻ろうとしたスタイナーは、一瞬足を止めた。何か、懐かしい気配がしたような気がする。
不思議に思い、辺りを見渡すと、洞穴が目に付いた。
…?
何かこのままここを離れることに抵抗をかんじ、スタイナーは急いで地上に立ち、その洞穴に向かって駆け出した。
そこは、家になっていた。
埃が積もってはいたが、確かに誰かが暮らしていた形跡が残っている。
古ぼけた、小さな家。
ふと、壁に目をやると懐かしい名前が目に入った。
「ビビ…背…心配」
とある。かろうじてそれだけが読めた。
「ビビ殿?」
そういえば、かつてジタンに聞いたことがあった。ビビの家はトレノの近くにあると。ク族の者が流れ着いたビビを育てた家があると。
スタイナーの脳裏に懐かしいシマシマのズボン、紺のローブ、そして、くたびれたとんがり帽子が浮かぶ。
そうだ、ここはビビ殿の育った家なのだ。この懐かしいにおいは、ビビ殿のものだったのだ。
あの小さな少年は、自分の出生から逃げることなく、真実に目を向けて戦った。そのひたむきな姿に、そして小さな体に似合わない大きな勇気を、自分は信頼し、共に戦ったのだ。
「信じているぞ、ビビ」
あの言葉は、心のそこからの言葉だった。
あの少年が、今のこの世界を、姫さまを見たらどう思うだろう。
一刻も早く、決着をつけなくてはならない。
今度は、ビビ殿に、自分を信じてもらう番なのだ。
「信じてくれ、ビビ」
スタイナーはそうつぶやき、気持ちを新たにトレノへ向かう決意をした。
22 名前:おや、新スレ?投稿日:2000/08/21(月) 21:54
前スレ825〜――――アレクサンドリア大広間――――
ベアトリクス・・そしてようやくダメージより立ち直ったフライヤが、ガーネットに2つの刃を構える。
ガーネット「・・・この・・この私に・・刃を向けるのか?ベアトリクス・・。」
かつて限りなき忠誠を旨としていた聖剣士に対し、己に刃を向けたことを、まるで咎めんばかりの口調で、
厳かに語りかける。・・・・が、今のベアトリクスには微塵の動揺も感じうる事は無い。
凄まじいほどのガーネットの眼光に対しても、片時たりとも、己が瞳を決して逸らす事は無い。
ベアトリクス「・・・全てが元に戻るというなら・・世界の全てが以前の様に・・元に・・
元に戻ると言うのならば!・・こんな私の命なんて・・安いもの。喜んで・・差し上げましょう・・けど!
・・血と・・暴力と・・死・・それが・・それが為の「力」であるというならば・・・・・
いわんや、それが・・この・・「私」そのものであるのならば・・最早・・最早己がすべき事は只一つ!!
――――――・・命にかえても・・私は「私」を守り通して見せる!――――――
・・たとえ・・それが私の生き方を自ら否定する事になろうとも・・・
・・・そして・・ガーネット様。たとえあなたに刃を向ける事になろうとも!!!」
ベアトリクスの、その悲痛にして、大いなる覚悟を感じたガーネットは、微かに口元を
歪ませ・・・そして静かに言葉を返す。
ガーネット「・・・よかろう・・最早、是非もあるまい。なれば私も・・私の命を賭けてもッ!
・・・そなたよりッ・・・・その「力」!!!!奪い取ってくれようぞッッ!!!」
ズバアアァァァッ!!ガーネットの纏っていた純白の王宮用ドレスが千千に弾け飛散する!!!
そしてその下から漆黒のタイツスーツ、戦闘用衣装に様変わりしたガーネットが現れる!!
全身は、眩いばかりに青白く光り輝き、その身体より、凄まじい気勢を発するオーラが、
まるで抑え切れぬばかりに渦を巻き、広間全体を覆い尽くしてゆく・・・!
ビリビリと麻痺しそうな程に伝わってくる凍りつくが如きその妖気!!
そして、らんらんと、より一層邪悪な緑光を発し続けるその両眼!!
地の底から滲み出るが如き咆哮!!・・・まさに今まで以上「完全魔性」のガーネット!!!
・・しかしその彼女の様相に対し、必死の表情になりながらも、決して眼を逸らす事無く、
微塵も怯む事無く刃を構えたままの、ベアトリクス・・そしてフライヤ。
そんな2人に対し、再び邪悪な微笑を浮かべ・・・そしてゆっくりガーネットも、
戦闘の構えをとる!!・・その両手にはより一層の、青白き魔力の光が煌々と宿る!!
ガーネット「・・我が真の力・・そなたらの身をもって・・存分に知れ!!!!!
はっはっはあああぁぁぁぁぁ―――――――――――――ッッ!!!!!」
23 名前:おや、新スレ?前スレ830投稿日:2000/08/21(月) 21:57
フライヤ「・・・2人同時にかかるぞベアトリクス・・私は上から・・そしてお主は・・」
ベアトリクス「・・ええ。・・・私は下から!」
完全魔性と化したガーネットの発する凍りつくようなそのオーラ!・・しかし覚悟を決めた
2人からは最早、怯む様相は微塵も無い!――――――――――「作戦」は・・決まった!
フライヤ「・・!たああああ―――――ッッ!!」最初に仕掛けたのはフライヤであった。
一瞬の内にガーネットの頭上へ高々と飛翔する!!・・そして!!標的をロックオン!!
落雷の如き勢いそのままに、ガーネットめがけて急降下!!!
フライヤ「桜華狂咲!!!でやあぁぁぁぁ――――――――――ッッ!!!」
ちらと、ガーネットは上空より舞い降りてくるフライヤに眼をむけた・・・・・瞬間!!
ベアトリクス「クラァ――イムゥゥ――ハザァァ―――ドォォッッ!!!!!」
今度は一足飛びに滑空して、ベアトリクスが聖剣振りかざし飛びかかってくる!!
上下からのW攻撃!!・・しかも双方共、最大級の威力を誇る大技だ!!・・・交差!!
2人の最大奥義同時攻撃が、見事ガーネットの身体を捕らえたかの様に見えた・・一瞬である。
聖剣技クライムハザードの黄金の波動は、ガーネットの魔力宿りし左手にかき消される(0.01秒)
驚愕の表情を浮かべるベアトリクス。振りかざした剣の刃が見事かわされ空を切る(0.06秒)
隙の出来たベアトリクスの脇腹に、ガーネット渾身の左ボディブローがめり込む(0.08秒)
更にガーネットは舞い降りてくるフライヤに対し、自らも彼女に向かって飛び上がる(0.089秒)
槍の切っ先を楽にかわし、その槍の柄を、何と軽々と掴み取る!驚愕のフライヤ(0.091秒)
降下して来たフライヤの勢いそのまま利用し、カウンターでフライヤの鳩尾に
アッパーブローを思いきり叩きこむ(0.096秒)
そして・・・・着地 この間ジャスト0.1秒。
ベアトリクス「ぐはああぁぁぁぁぁッッ!!」ズダダダァ――ンッ!!ゴロッ!ゴロッ!!
フライヤ「がはぁぁぁぁぁぁッッ!!ぐううッ!!」ヒュウゥゥ・・ドゴォォッ!!!
ヒュウゥゥ・・ドサァッッ!!!
ベアトリクスは前のめりに回転しながら、床面に思いっきり叩きつけられる!!!
フライヤは、吹っ飛んで広間の天井に叩きつけられ、再び床へと落下!!!
2人とも一瞬にして何が起こったのかすらわからぬ内に、地に這いつくばらされている!
激痛に悶絶する彼女等をよそに・・まるで何事も無かったかの様に、
ガーネットは優雅な仕草で、己が黒髪を掻き上げる・・・。
25 名前:ニュース速報投稿日:2000/08/21(月) 22:39
フォッシン・ルーにてガルガントジャック事件が発生
多数のトレジャーハンターが人質となっている模様
26 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/21(月) 22:56
タイダリアサン※の眼がゆっくりと真紅から白へと変わる…。
「これまでか…」
半ば諦めかけたその時!
キュィィィィィン…ゴガガァァーーーン!
タイダリアサンの胴体部分が歪んで見えたかと思うとその歪みは一瞬収束し大音響と共に大爆発を起こした。
「これは…フレアか?」
「ふぅ〜、間に合ったか」
九死に一生を得たサラマンダーは声の聞こえて来た方向に振り向いた。
「お前は!?…スティルツキン!」
そこにはエクスカリバー2を持って先に逃げた筈のスティルツキンの姿があった。
「チッ、これだけは使いたく無かった…レアなんだぜ?フレアストーン※ってのは…」
「そぉーらもう一発喰らえ!ホーリーストーン※!」
聖なる光がタイダリアサンを包み込みそして拡散する。
「畜生もうやけだ、持ってけドロボー!」
ボムの右腕※、星の砂※、スーパーボール※、モルボルの触手※、ありとあらゆる攻撃アイテムを投げ付けるスティルツキン。
「グギュゥゥ…」
やがてタイダリアサンはその動きを止めた。
「なんでお前が…剣はどうした!?」
「心配するな剣ならチョコボに預けて来た、さぁこれを飲め一個しか無いんだ大事に飲めよ」
スティルツキンはそう言うとサラマンダーにエリクサーを手渡した。
「すまん」
エリクサーを一気に飲み干すサラマンダー、傷付いた体が癒されていく。
「礼はいいそれよりも早く逃げるぞ!奴があれでくたばったとは思えん!」
スティルツキンの言葉通りすでにタイダリアサンは鎌首をもたげていた。
タイダリアサンを引き離すべく走り出す2人、スティルツキンふと立ち止まる。
「ん?追い掛けて来ないな、諦めたか?」
確かにタイダリアサンは追い掛けて来なかった…しかし諦めた訳でも無かった…
タイダリアサンは天を仰いでいる様に見えた…
…邪悪なる気の力が増大していく、大気はわななき、大地は震える、鳥は空へ、獣は巣に…
「…来る!」
サラマンダーはスティルツキンを抱えると一際太い蔦を選んで掛け登る!
「おい、サラマンダー!なんだあの気は!何が来る!?」
スティルツキンはサラマンダーに問い掛けるが返事は帰って来なかった。
「キシャアアアァァァーーーーン!!」
タイダリアサンは吠えた。
ズズズズズズ……………
「な、なんだ?地震か?」
あわてるスティルツキンを尻目に昇り続けるサラマンダー。
「う、嘘だろ?なんだありゃ?」
タイダリアサンの背後には巨大な水の壁が出現していた…タイダルウェイブ!!
ズガガガガァーーン!!ザシャァァァァァ!
逃げ遅れた生き物全てを飲み込み、木々をへし折る、
全てを押し流してしまうかと思う程の大量の水がイーファの樹の内部を侵食していった。
荒れ狂う水流がすべて収まったその後あっけに取られていたスティルツキンがようやく口を開いた。
「…収まったか、無茶しやがるぜあの蛇」
スティルツキンに続きサラマンダーも口を開く。
「奴も使えたかあの技を…しかしこの場所で使ったのが運の尽きだったな」
見るとタイダリアサンは自分が引き起こした津波に倒された巨大な蔓や蔦に埋もれていた。
「頭の中身は下等生物並か…さあ今の内にここから出るぞ」
無事二人はイーファの樹を脱出した。
「グルルルル‥」
しかし真紅の眼はいまだ消えぬままであった。
55 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/22(火) 23:58
ビビ :ねぇエーコ、何処まで行くの?そっちはトレノの出口だよ
エーコ:あんな人の沢山いる所じゃ出来ないでしょ?
ビビ :?????
エーコ:・・・・よし!ここなら大丈夫ね
ビビ :ねぇ、一体何をするの?
エーコ:ビビ、貴方キスした事ある?
ビビ :そ、そんな事したことないよ〜
エーコ:やっぱりね。だからエーコが今から教えてあげる
ビビ :べ、べつにい〜よ〜
エーコ:あら〜。エーコが可愛いすぎて照れてしまっているのだわ
ビビ :ち、ちっちがうよ〜!別に照れてる訳じゃないよ〜
エーコ:いいから!目をつぶって!
ビビ :・・・・・・・。
エーコ:・・・・・・・。
ビビ :・・・・・はぁ、はぁ。
エーコ:どう?これがキスよ
ビビ :・・・・モヤモヤするね・・キスって。
エーコ:これで貴方も少しは大人になったわね。
ビビ :・・・・・・。
エーコ:・・・・どうしたの?
ビビ :・・・・エーコ。
エーコ:なぁに?
ビビ :エ〜〜〜コ〜〜〜〜!!
エーコ:ちょっ!!何するの!!
ビビ :僕にも解らないけど、体が勝手に動くんだよ〜!
エーコ:いやっ!!これ以上はジタンしかダメェ!
ビビ :はぁ、はぁ・・・エーコ。
エーコ:あっ・・イヤッ・・。・・・んくっ・・。
ビビ :エーコのココ綺麗だよ。
エーコ:あん!だめ〜〜、そんな所なめたら汚いよぅ
ビビ :そんなことないよ。とっても綺麗だよ
エーコ:あっ・・んっ・・もうだめ。
ビビ :エーコ見て。僕のこんなになってる。
エーコ:・・・いいよ・・ビビ。・・いれて。
ビビ :エ〜〜〜コ〜〜〜〜!!
エーコ:あっダメェ〜!そこは、ちがうぅ〜〜!
ビビ :はぁはぁ。きもちいよ〜〜エーコ〜〜。
エーコ:あん。エーコも・・・いいよぉ〜〜。
ビビ :はぁはぁ・・・。
エーコ:はぁはぁ。んっ!!すごいよぅ〜〜〜!
ビビ :・・・僕・・・もう・・・・うっ!!
エーコ:あう〜〜〜ん!!
ビビ :はぁはぁ・・・・・エーコ・・・ごめん。
エーコ:ううん。いいの。・・・それより、こっちにも入れて。
ビビ :エーコ・・・。
エーコ:あん。すご〜い!ビビのが入ってくるぅ〜!
ビビ :エーコのココ、あったかくてきもちい
エーコ:もっとぉ!エーコをモグみたいにイジメてぇ〜〜!
ビビ :・・・モグにもこんな事を・・。
エーコ:・・・あっ・・すごい・・・深いぃ〜〜
ビビ :エーコエーコエーコエーコォォォ!!
エーコ:ダメッ・・・エーコ・・おかしくなっちゃう〜
ビビ :エーコ・・僕・・いくよ・・。
エーコ:ビビの熱いのをエーコにちょうだい
ビビ :・・・うっ!
エーコ:あっ・・・エーコもいっちゃうぅ〜〜!!
60 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/23(水) 00:46
―――――アレクサンドリア城大広間―――――
フライヤ「・・あ・・は・・ぐぅっ・・・!」
焼けつくような激痛の中、一瞬「飛んだ」フライヤの意識が戻る・・完璧な攻撃・・のはずだった。
・・・しかし!楽々とあのバケモノ女は、それを上回る力を見せた。
フライヤ「(・・なんて・・奴・・)うぅッ!」打突された胸腹部を抑え、再びうずくまるフライヤ。
(・・息が・・苦しい。・・頭が、ガンガンする。・・骨の・・2、3本はやられてるな・・)
自ら身体に受けたダメージを冷静に分析していたが・・重大な事に気付いたかの様に急に眼を見開く!
フライヤ「(自分は・・Gトランスの・・影響でなんとか・・立ちあがれそうだが・・
・・自分はともかく・・ベアトリクスはッ!!?)」すぐさまベアトリクスが倒れている方を振り返る!
見れば彼女は脇腹を抑えたまま、白目を剥いて痙攣している!!Gトランス能力を持たないベアトリクスは
フライヤの様に肉体が強化されていない。その為受けるダメージの度合いも、格段と違う!
フライヤ「(・・!内臓でもやられているかもしれない!・・まずいッ早く回復させなければ・・)」
エクスポーションを懐より取り出し即座にベアトリクスの方に駆け寄ろうとする・・が!
・・「敵」の存在を思いだし、寸時停止し、ゆっくりと・・そう、ガーネットの方を振り向いた・・
すると!・・なんと彼女は余裕の笑みを浮かべつつ、・・じっとこちらをみたまま突っ立っている。
全く動く気配は無い。・・それどころか、倒れているベアトリクスを指差し、
とっとと起き上がらせろ とジェスチャーの様な素振りさえしている。
フライヤ「・・・クッ!」敵にからかわれんばかりの余裕を見せ付けられ、一瞬唇を噛んだ
フライヤであったが・・すぐさま倒れこんでいるベアトリクスの方へと飛んで行き、
エクスポーションを与える。何時襲って来るかわからないので、フライヤの視線は常に
ガーネットに向けられたままだ。
ベアトリクス「・・ゴホッ!あぐッ!!ゴホッ!・・!?」エクスポーションにより
意識が回復したベアトリクス。・・・しかし、記憶が一時飛んでいる様で、今何が起こって
いるのかすら、よくまだ把握しきれていない様だ。
フライヤ「・・暫く休んでおれ・・。」そう言い残し、フライヤは再びガーネットに
ランスオブカインを構える。・・・対峙するフライヤとガーネット。
フライヤ「・・随分と余裕ではないか。」ガーネットのその表情に、己が本心をぶつけるフライヤ。
ガーネット「・・私が本気を出せばお前達なぞ、とうに消し飛んでおろう。それ程までに、
お前達と私とでは、力の差が違いすぎる・・。・・無論、Gトランスを克服した貴様であれ・・な。」
フライヤ「・・・!!」フライヤは瞬時戦慄した。(・・確かに・・彼女の力は圧倒的だ。
・・私の・・私のこの力を持ってしても・・彼女の足元に遠く・・遠く及ばないというのか・・!?)
ガーネット「・・ベアトリクスを殺すわけにもゆかぬ・・。が・・私は楽しみたいのだよ・・。
もっと・・もっと!・・フライヤ・・お前は・・お前はこの私を満足させるに足りるか・・?」
―――――――――――――血と暴力の・・快感!!―――――――――――――
先程の、悪鬼の如き邪悪な笑みに染まるガーネット!!凍りつきそうな緊迫感が再び広間全体を覆う!
フライヤ「・・・・・・!」 ふいに、ガーネットはフライヤの持つその「槍」に気付く。
ガーネット「・・その槍・・フラットレイのものか・・フッ・・フライヤ。お前はあ奴の様に、
あっけなくこの私に失望の念を抱かせるでないぞ・・竜騎士とやらも所詮はネズミに過ぎん様だがな・・。」
フライヤ「!!!!・・そうだ・・お前は・・フラットレイ様をッ!!」
ガーネットの嘲りにも近い言葉を耳にすると同時に、フラットレイが打ち倒された相手が
彼女であった事を思い出す。
竜騎士・・そして己の最も「大切な人」フラットレイを侮られた・・その怒りは
フライヤの闘志となって、彼女の身体を支配していた先程の戦慄を、完全に払拭させた!
迷い、恐れが完全に消え去った彼女のその瞳は、ガーネットのその邪悪な眼光を
しっかととらえて離さない。
フライヤ「・・存分に見せてやろうぞッ!私と・・そしてフラットレイ様のッ!
ブルメシア竜騎士の真の力!!ガーネットッ!!お前の方こそ、その身をもって
知るがいいッッ!!!!!!!!!!」
63 名前:んじゃお言葉に甘えて。。。投稿日:2000/08/23(水) 00:56
ルビィの心の間隙につけ込み、魔界へと誘惑していたのはアリエスのマリンであった。
マリン(エーコ様がこの者に眼をつけられたのは、追いつめられた時に発揮する爆発的な能力。
それが先ほどの凄まじい力を持つ異次元の住人を召還する能力の発現につながったのか。
これはひょっとすると予想以上の成果になるかもしれないね・・・)
一方ルビィは極限にまで侵された精神と肉体によってまともな思考はできず、
そして愛しい夫を自らの手で殺めてしまったという絶望から逃れるためには
いかなる結果も厭わないとついに考えてしまった。
彼女の魂が闇の世界に屈服した瞬間、マリンの持つ星宮リーブラはルビィの頭上に輝き、
そしてその光はルビィに取り込まれた。
未知なるものに対する畏れからからか、恐怖におののくルビィ。
だが・・・その表情はやがて、何の迷いもない冷静なものへと変化していった。
やつれきった肉体には生気がみなぎり、以前の数倍も美しく輝いている。
鈍い光を放つその瞳を除いては・・・。
ルビィ「なんて素晴らしい力なの?これがゾディアックブレイブの力?」
マリン「その通りよ。あなたはこれでもう何にも迷わされることなく、
エーコ様のために働けるの。
あ・・向こうからあなたの初仕事がやってきたわよ。
まずあいつを殺しなさい」
マリンの指さす方向には、重傷の身で遠くリンドブルムからやってきたブランクの姿があった。
115 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/23(水) 04:03
ガーネットは訝しみ始めていた・・・(何だ・・?こいつ・・)
ドカッ!!バキィッ!!随所で飛びかかってくるフライヤの攻撃を軽々かわしながら、
拳撃を2、3発叩きこむ!吹っ飛ばされるフライヤ。・・しかしすぐさま立ちあがり、「また」
ガーネットの周囲をぐる・・ぐると旋回移動する。
ガーネット「(・・?私の目を撹乱させるつもりなのか・・?それにしては・・・・!!ッ)」
思う間に、再び背後よりフライヤが襲いかかってくる。
ガーネット「!!ぬううッッ!!」ズバァァッ!!今度は己が魔力にて生み出した
真空の刃を浴びせかけてやる。・・見事切り裂かれ、身体から血の霧を発しながら
また吹っ飛ばされるフライヤ。・・・・が。
ガーネット「・・!!こいつッ!!」 再び立ちあがってきたフライヤの身体は、
既に、ガーネットの拳撃と魔法によってズタズタにされ、朱に染まっている。
しかし、フライヤのその瞳の輝きは微塵も翳うる事無く、全く怯む様相はない。
(・・殆どこちらが一方的といって良い程、攻撃を加えているのに・・
・・・・いや、むしろこちらが何かに追い詰められてる様な気さえする・・)
倒しても・・倒しても起きあがり、・・そしてまたガーネットの周囲を旋回し、
当たるはずのない攻撃を仕掛け・・そしてガーネットの反撃を食らう・・その繰り返し
(・・・何を・・何を考えている・・・こいつ!!)
―――――・・フライヤ・・右だ・・わかるな・・――――――
―――――・・・はい・・わかります・・・・――――― ドカッ!!バキッ!!
―――・・次は左に廻れ・・そう・・次は後ろに・・・――――――
――――・・・はい・・・はいッ!――――――― ズバアァァァッ!!
―――・・そうだ・・フライヤ・・その・・・その動きだ・・――――
ドカッ!!バキィッ!!ズバッ!!ズバアァァッ!!!
―――――・・ええ・・わかります・・・・・フラットレイ様!!・・―――――
バキィィッ!! 自身何度目かも忘れてしまう程に打ち込んだ、フライヤへの一撃!
・・変わらず・・血まみれのフライヤは起きあがっては来たが・・
・・・・ついに、その動きを止めた・・・・・・・・。
ガーネット「??・・フンッ!ネズミめが・・チョロチョロとしおって!!・・が、
どうやらようやく諦めたみたいだな!!」
見れば、フライヤのみならず、ガーネットの足元全体がフライヤの血で真っ赤に染まっている!
116 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/23(水) 04:04
城の見張り台で風を浴びているエーコ。
後ろには、ナタリーが侍っていた。
エーコは左手で髪を掻き揚げると、ナタリーの方を振り向かずにこう言った。
エーコ「ナタリーよ。落ち延びた前大公夫妻は今トレノにいるそうだ。
空には太陽が二つあってはならない。リンドブルムの指導者は一人でよいのだ。分かるな?」
ナタリー「ハッ、畏まりました」
エーコの言葉の言外の意を汲み取ったナタリーは、トレノへとワープした。
シドを始末する為に。
戦争とリノアの手によって廃墟と化したトレノの街を、シド夫妻とラニが警戒しながら歩いていた。
その前に、音もなくナタリーが姿を現す。
ラニ「なっ! 何なのあんたは!」
ナタリーはラニの声を無視して、シドの方を向く。
ナタリー「お初にお目にかかります。私エーコ大公に仕えるナタリーというものです。
シド7世元大公殿下。エーコ様の命令のよって死んでいただきます」
そう言って、ナタリーはディフェンダーを構える。
シド「エーコの放った刺客か。だが、わしは負けるわけにはいかん」
シドは懐から素早くアウトサイダーを抜くと、ナタリーの心臓目掛けて引き金を絞った。
脳でなく心臓を狙ったのは、ナタリーが頭をガードする構えを取っていたからである。
アウトサイダーから吐き出された弾丸は、ナタリーの胸を打ちぬく。
が、ナタリーの鎧に弾かれて弾丸は地面を転がった。
ナタリー「そんな弾丸でアダマンアーマーを貫けるとでも思いましたか? フフフ…アハハハ!」
ナタリーはシドに向って余裕の笑みを漏らす。
だが、それにシドが臆する事はなかった。
シド「アダマンアーマーか、ならこれならどうかな?」
シドは素早く弾丸を詰め替えると、もう一度ナタリーに向って弾丸を放った。
アダマンアーマーの性能に酔いしれるナタリーは、弾丸を叩き落す事も出来たが、敢えて胸に受ける事にした。
弾丸はナタリーの予想に反して、ナタリーの胸に突き刺さり、貫通した。
貫かれた穴からは血が零れ落ちる。
ナタリー「ガハッ…。バカな…」
口の端から紅い筋を流しながら、ナタリーはシドを睨みつける。
シド「徹甲弾だ。いくらおぬしの自慢のアダマンアーマーもこれの前では、無力じゃよ」
ナタリー「どうやら…私は貴方を見くびっていたみたいですね。
何事も慎重にやらなければならないという事を改めて認識させれたわ」
そう言うなりナタリーは回復せずに一気に間合いを詰めて、剣を振るった。
ナタリー「地獄の鬼の首折る刃の空に舞う 無限地獄の百万由旬…
冥界恐叫打!」
シド「ぐあッ!」
シドの手に握られていたアウトサイダーが一瞬で砕け散り、シド自身も大ダメージを受けた。
シドは一旦身を引き、間合いを取る。
シド「おのれ…。ファイガ!」
シドは素早く詠唱すると、巨大な火球をナタリーに放つ。
ナタリーはディフェンダーの一閃でそれを吹き飛ばした。
シド「くっ…。これも効かぬか」
シドが無力感に苛まれていると、ナタリーは含み笑いを漏らした。
シド「何がおかしいのじゃ」
ナタリー「いえ…貴方の火炎を吹き飛ばしたその余波で、
はやくも一人始末できたので…」
そう言うナタリーの視線の先には、ケシ墨になっていたヒルダがいた。
シド「ヒ…ヒルダーッ!」
シドは炭化した死体を見て思わず叫び声を漏らした、その隙にナタリーは再び間合いを詰め、剣を振るう。
そのとき、ナタリーの後ろから巨大な斧が振り下ろされた。
ナタリーはとっさに振りかえり剣の向きを変えて、その斧をディフェンダーで弾く。
ラニ「さっきから、この私を無視するなんて良い度胸じゃない?
私の力思い知らせてあげるわ」
119 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/23(水) 04:31
満身創痍の様相となれども、フライヤの顔は全く死んではいない。
眼光鋭く、ガーネットをしっかと見据えたままだ。
ガーネット「・・・貴様、何を企んでおる・・!?」
先程より訝しんでいた、己が心中をフライヤに問う。
フライヤ「・・・・・・・・・・・・・・・血。」
ガーネット「何ぃっ!!?」
フライヤ「・・私と・・そしてフラットレイ様の竜騎士の・・血。
それにより刻まれし結界。・・・そして、それは我が究極の奥義・・!」
ガーネット「・・・・けっ・・かい・・だと!?」
フライヤ「・・お前はもう・・・私の術中にある!!」
ゆっくりと己を見るフライヤの視線の先を追うガーネット。・・それは・・
(自らの・・・足元・・?・・・・・ッッ!!むうッ!!?)
ガーネットはようやく気付いた。・・血を・・フライヤが自身より流れ出る血によって、
ガーネットの周囲に何かの陣を刻んでいる事に!!
ガーネット「・・・こ・・これは・・!!?」
フライヤ「・・・ブルメシアに伝わりし・・・・・・・・竜の紋章ッッ!!」
フライヤの声と共に、ランスオブカインが閃く!!―――刹那!!
フライヤの血によって刻まれた陣が眩く輝き出し!ガーネットの足元を明に照らし出す!!
ガーネット「!!!!なっ!何ィッ!!こっこれはッ!!?」
突如己が足元に、竜の顔を成す紋様が浮かび上がり・・・・そして!!
その紋様に刻まれていた竜が、突如その顎を開き!ガーネットに襲いかかる!!
ガーネット「!!!うわあああああああああああああぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
光り輝く結界より出でし竜に、ガーネットの身体が呑み込まれて行く!!!
シュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・
123 名前:あつうてねられん・・投稿日:2000/08/23(水) 04:51
ブランクが街道にたたずむルビィを見つけたとき、辺りはもう薄暗くなっていた。
その中でルビィは異様なほどの輝きを見せ、妖しげな光彩を放っている。
ブランク「ル、ルビィ・・・。無事だったのか?」
不吉な予感に駆られながらも声をかけるブランク。
ブランク「実は言いたいことがあって・・・ローザとのことはなんでもなかったんだ。
あれはエーコの任務でやっただけだ。俺が本当に愛しているのは・・・・」
ルビィは生きているブランクを見ても事実を聞かされても動揺する様子もない。
彼女はなまめかしく体をくねらせながらゆっくりとブランクに近づいてきた。
ルビィ「そんなことはもうどうでもいいの。
ブランク・・・会いたかったわ。私だってずっとあなたを愛しているのよ」
そう言ってブランクの肩に手をかけるルビィ。
そしてキスをしようと顔を近づけてきた時、ブランクはその瞳に異様なものを感じて突き飛ばした。
ルビィ「・・・なにするの、私のブランク。最愛の妻にその仕打ちは酷いんじゃない?」
ブランク「ルビィ!なんだ、その言葉遣いは!?その忌まわしい物腰は!?
お、お前はまさかもう・・・・・!」
ルビィ「気づいたのね。
ふふ・・・そうよ、ブランク。私はもう昔の私ではないの。
忌まわしいのは私の過去よ。トラビア弁もその中の一つ。
そしてブランク。あなたも消え去るべき私の過去なのよ」
そう言いながら彼女は邪悪に微笑み、地面に突き刺さっている斬鉄剣を引き抜いた。
ルビィ「素晴らしいでしょう?これから私は新しいルビィとして生きことができるのよ。
この剣で、バグーやジタン達を切り刻むのが楽しみだわ。
まずは手始めにあなたに相手をしていただこうかしら・・・」
129 名前:タイトルメーカー投稿日:2000/08/23(水) 07:50
(前スレからのコピペ)
トレノに向かう長いトンネルの中で、スタイナーは邪気をかんじていた。
…何かがくる。
目の前に現れたのは、見覚えのあるモンスターだった。
「…まだいたのであるか」
一人ごちながら、スタイナーは剣を抜いた。
今度こそ本当に、その命頂戴しよう。先を急がなければならない。
先の冒険のとき、ジタンや他の仲間と力を合わせて倒したモンスターを相手に、
スタイナーは剣を構える。
もう、戻ることのできない幸せな美しい過去への思いを断ち切るように、
スタイナーはそのモンスターに向かっていった。
「今は、自分の信じる道を行くしかないのである」
剣は宙を舞い、モンスターの脳天に突き刺さる。
グエ・・エ・・エ
断末魔の叫びをあげ、倒れるモンスター。
その返り血を浴びながら、かつて仲間と力をあせなければ勝ち目のなかった敵を
一人で葬ったその事実をかみ締めるスタイナーだった。
(>>7へ続く)
132 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2000/08/23(水) 14:31
体に重傷を負い、動くこともままならないブランクと
人外の力を手に入れ、軽々と巨大な斬鉄剣を振り回して見せるルビィ。
マリン(勝敗は明らかね)
彼女は冷笑した。
最後の力を振り絞り、ルビィの魂に届けといわんばかりに叫ぶブランク。
ブランク「ルビィ!!まだ遅くない!!俺は生きている!まだお前を愛している!
お前が魔界へ墜ちる必要はまったくないんだ!今なら契約を断ち切れる!
だが、俺を殺してしまったら・・・・!!」
その時ブランクのそばで何かが宙に舞い、やがて地面に落下した。
それは一瞬のうちに斬鉄剣に切り落とされたブランクの左腕だった。
ブランク「うあああぁぁぁぁぁ・・・・・・・・!!」
絶叫するブランク。
ルビィ「今の私の踏み込み、見えなかったでしょう?
こういうこともできるのよ?」
そしてルビィは凄まじい速さで幾百もの突きを繰り出し始める。
斬鉄剣に徐々に身を削られ、いたぶられて血に染まってゆくブランク。
だが彼は苦痛に耐え、もはや一言のうめき声も発さない。
ただ、哀しい眼でルビィを案じるように見つめ続けていた。
ルビィはその眼がうっとうしく感じられたのかやがて攻撃を止め、
とどめをさすための必殺技の構えをとった。
ルビィ「これで終わりよ。最後は真っ二つにして殺してあげるわ」
ルビィはブランクに向かって駆け出し、二人はすれ違った。
『 斬 ・ 鉄 ・ 剣 ! ! ! 』
沈みゆく夕日を背にブランクの上半身は高々と舞い上がる。
絶命しゆく今際の中で彼は最後までルビィの行方を案じていた。
自らが斬られる瞬間に彼女に捧げた「さよなら」の言葉は
ルビィを最後に傷つけて・・・そして以後彼女が心に傷を負うことはなかった。
【ルビィの憂鬱】終了
135 名前:ななしさん@おなかいっぱい投稿日:2000/08/23(水) 15:08
「ブラネさまの頃はよかったねえ。」
おばあちゃんはいつもそう言いながら、私の服を作ってくれる。
その「ただ淡々と服を作る」という行為が私にとって苦痛になってきてから、
いったいどのくらいたっただろう。
おばあちゃんは、現実から逃げている。そのいいわけのために
「孫の服を、孫のために作る」という行為を繰り返しているのだ。
どんなときもそうだった。アレクサンドリアが幻獣に襲われ、
誰もが不安にさいなまれながら復興に乗り出したあの日も、そうだった。
「おばあちゃん、服はいいから、まず生きるために食べ物を手に入れなきゃ。」
そういった私の言葉を無視して、おばあちゃんは私の服を作りつづけた。
私は、私とおばあちゃんが生きるために何でもやった。
盗みだって、人を欺くことだって。
けれど、おばあちゃんは、そういう汚いところは見ないようにしていた。
けっして、生きようとする私の努力を認めてくれることもなく、
ひたすら服を作った。
近所のおばさんは、おばあちゃんを見て
「あんたは幸せ者だよ、こんなに愛されてるのだから」
といった。私はにっこり微笑んで、私もおばあちゃんが好きといった。
その頃には食べ物を確保するためには人に好かれること必要で、
人に好かれるためには自分の気持ちは奥にしまって、
ひたすら笑顔でいることが大切だということを知っていた。
私は気持ちを隠すことができたし、近所の人たちは、
まさか私が盗みを働いているなんてことを、知る由もなかった。
136 名前:ななしさん@おなかいっぱい投稿日:2000/08/23(水) 15:16
私はいつのまにか、おばあちゃんと呼ぶことがつらくなっていた。
私のことを守ろうともしないこの老婆。
私のことをいつまでもかわいい孫にしておきたいこの老婆。
私が盗みを働いているなんてこと、知ろうともしない…
いえ、もしかしたら知っているのかもしれないけれど、
見てみぬふりをする老婆。
誰のせいでこんな目にあっていると思っているのか。
この老婆を養っていく義務が、この私にあるのだろうか。
平和な頃はよかった。老婆が私の服を何日もかけて作り上げていくのを見るのは
楽しかった。
私たちはその頃、苦労なんかせずに豊富な食べ物を手に入れることができた。
けれど、今は違う。自分一人が生きていくのにも精一杯なこの世の中で
自分と共に、なにもしない役立たずな老婆を養うことなど不可能だ。
今日も、老婆は一人打ちの入り口に背を向け、服を作っていた。
私が少し離れた家の倉庫から、盗んできた食べ物を喜びもせず。
141 名前:ななしさん@おなかいっぱい投稿日:2000/08/23(水) 17:21
その日は、いつもよりも多くのギザールの野菜が手に入った。
それに、倉庫の前のとおりをギザールの野菜を持って走り去るとき、
となりのおばさんに見つかってしまったが、
「いつも頑張ってえらいわね。おばあちゃんの力になってあげなさいね」
と頭をなでられた。ただのお使いだと思ったのだ。
私は久しぶりに機嫌がよかった。
このところ、あの人とはあまり口をきいていなかったけれど、
今日は声をかけてみようと思った。
今年で80歳になるはず。年老いてからの環境の変化はやはりこたえるのだろう。
今まで私は少し意地悪すぎたかもしれない。
「おばあちゃん」って久々に呼んだら、喜ぶだろうか。
私はギザールの野菜を両手いっぱいに抱えながら、
「ただいま…」
と戸を開けた。
「…おかえり。」
その声はくぐもり、私の耳にかろうじて届くくらいの大きさでしかなかった。
苦労して食べ物を見つけてきた孫に対して、背を向けたまま蚊の鳴くような声。
なぜそんな迎えしかできないのだろう。
私の中にあった、暖かいなにかが、パチンと消えてしまった。
そんな暖かいなにかがあった分だけ、いつもより多く冷たいものが、
私の中に渦巻いた。
自分の分のギザールの野菜を持って、部屋に入る。
いえなかった「おばあちゃん」という言葉は、
私の心中に濁った澱のようにたまっていった。
144 名前:ななしさん@おなかいっぱい投稿日:2000/08/23(水) 18:18
「ブラネさまの頃はよかったねえ。」
老婆の乾いたその言葉は、私を余計にイライラさせる。
もうブラネさまはなくなったのだ。
あの幸せな時代は、戻ってこないのだ。
黙ってひざを抱えていれば、
誰かが世の中を変えてくれるとでも思っているのだろうか。
嘆いていてもどうにもならない、
そんなことはわかりきっているはずなのに、
老婆は静かに、私の服を作っていた。
明日、食べ物がなくなって死ぬかもしれないのに。
寝る前に、父と母に祈りをささげる。
「朝になっても目がさめませんように」
自殺する勇気はないけれど、かといってこれ以上
盗んだり欺いたりばかりの生活を続けたくはない。
それは、私の本当の気持ちだった。
私が唯一心が休まるのは眠るとき。
その眠りが、永遠に続くことを願う。
不思議と昔を懐かしむことはない。
もしあの頃に戻れたとしても、
老婆との関係はあの頃のとおりにはならないだろう。
それは痛いほどわかっているから。
ガシャン!
祈りの途中で、階下から激しい物音がした。
145 名前:ななしさん@おなかいっぱい投稿日:2000/08/23(水) 18:33
驚いた私は、ボロボロの下着の上からこれもまたボロボロのストールを
羽織って、急いで下に下りていった。
「……!」
そこには、右腕を切断され、そして不自然な角度で首の折れ曲がった
老婆の汚い死体が転がっていた。
それは見るからに哀れな姿だった。
そばに、3人の兵士が立っていた。
昔よく、老婆にかわいがられていた兵士も一人混じっていた。
「…どうし、て?」
私は乾いたのどにはりついた声を、必死に出そうとした。
しかし、それは声にならなかった。
兵士の一人が、私を見て笑った。
まるで、街頭の大道芸を見ているかのように、楽しげに笑った。
「何だ、かわいい娘がいるじゃないか。かわいそうに」
兵士は、私のほうに一歩近づいた。
老婆がかわいがっていた兵士が少し顔をしかめて、
そして私から視線をはずした。
何が起ころうとしているのか、すぐにわかった。
「この老婆は、不敬罪で殺されたんだよ。
家族も抵抗したら殺していいとのことだ。
しかしなあ、殺すにはもったいないほどかわいい娘さんだよ、あんたは。」
「…」
私は、一歩一歩後ろに下がりながら、棚の上にナイフがあることを思い出した。
けれど、相手は3人。
無駄に抵抗すれば、必ず殺される。
考えようとすればするほど、握った手のひらにじっとりと汗が浮かぶ。
…どうすればいいのか。
恐ろしいほどの生への執着が私の中に渦巻いていた。