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ルビィ動揺

284 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/26(土) 17:56

渾身の必殺技がバクーに傷一つ付けられなかったことに動揺するルビィ。
一方バクーの方は一歩も動かずに堂々としており、相変わらずの高笑いである。
バクーの態度に頭に血がのぼりはじめていたルビィは気を取り直すと
さらに強力な斬鉄剣の連撃を放ち始めた。
兜割り、胴薙ぎ、脚払い、袈裟懸け、逆袈裟・・・。
荒削りではあるが、どの攻撃もバクーの急所を狙っており、
傍目であるなら彼女が優勢に見えてもおかしくはなかった。
しかしその実、攻撃はすべてバクーに軽くかわされ、
あるいはアイアンソードに弾き返され、空を切った。
苦し紛れに左手でバクーの頸動脈に手刀を繰り出すルビィ。
しかしそれすらも簡単に受け止められ、
逆に彼女は腹部にバクーの強烈な一撃を食らって吹っ飛ばされてしまった。
壁に激突し、信じられないという顔色で見つめるルビィに向かって、
バクー「ちっ・・・・。生まれてこの方、女をぶっ飛ばしたのは初めてだぜ。
    恨むぜ、エーコ。
    ルビィ、観念しな。お前は弱ぇ。恐らくゾディアックブレイブ最弱、
    いやお前ならそこらへんにうろついている一般兵にもかなわねぇぜ。
    てめえに倒せるのは、お前を気にかけ、抵抗する気もなかったブランクぐらいよ」
現在の状況はルビィにとって到底受け入れられるものではなかった。
闇の力を手に入れ、何の苦痛もない強大な存在になったはずなのに、
「ただの人間」のバクーにすら歯が立たないのだ。
ルビィ「なぜなぜなぜぇ???どうして、なんで闇の力が通じない???
    分からない分からない分からない分からない!
    私は失敗作なんか??エーコに騙された??
    特別な力が与えられて強くなったてのは幻想やったんかぁ?
    じゃあウチは一体なんのために・・・・。ウチの救いって・・・」

 

 

 

 

 

「存在」

288 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/26(土) 21:50

――――――お前は何者だ・・?お前の存在とは・・如何様なるものか・・?――――――

闇の中・・全てのものが、漆黒の色に覆い隠され・・・
感じ得るは・・己が体温・・己が鼓動・・己が痛み・・・・・只1つ・・己という「存在」。
・・・・・・・・・・・存在???
・・・けれど・・その「存在」を、己とするは・・あまりにも・・・不明瞭・・
・・・・・・そうだ・・私は・・・・「私」じゃあない・・・
・・・・・「己」はあれど・・・それは真実の「己」にあらず・・・・

――――――お前は何者だ・・?お前の存在とは・・如何様なるものか・・?――――――

愚かなる自問・・返り得る答えは・・只一つ・・・
私は・・只作られただけの存在、与えられるが為だけの存在
私が・・何者?・・私の・・存在?・・・そんなものなど・・・無きに等しい・・
・・・・・が・・何故だ・・?
無から生み出されしはずの・・私の中・私の自我の中・・とおい・・遠い・・
微かに・・そう、微かに感じる・・・・・これは・・・・・記憶???
・・・・記憶・・それは・・そう呼ぶには・・あまりにも・・朧げな・・・
そうだ・・まるで・・今のような・・暗い・・暗い・・何も見えず・・何も聞こえず・・

そう・・お前は絶望の闇より生まれし者・・・
その存在を否定されたもの・・・
その存在を許されなかったもの・・・
抗う事なく、只、消されてゆく・・運命・・そして・・自分・・
そこには、一片の感情すら存在しない・・在るのは只、・・
ただ・・只・・在るのは・・冷たい・・冷たい機械的な作業・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠い記憶

289 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/26(土) 21:53

その朧げな・・朧げな・・唯一私の中の在りし・・・遠い感覚・・遠い・・記憶・・
そして・・それが私を駆り立てる!・・それが私を狂わせる!!
・・そして・・それが・・唯一私は・・今「存在」しているという事を感じさせてくれる・・


――――――・・・私は・・・「私」に・・・なりたい・・・――――――


・・また・・お前か・・また・・その「顔」か・・・
私が・・私に問い答えるが度・・お前は・・私を・・その様な「顔」で見やる・・
止めろ・・・やめろ・・・やめろ!!みるな・・見るな・・そんな「顔」で私を見るな・・

・・・・・・・見るな!!・・・消えろ!!・・・・・・消えろぉ!!!!・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
             ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダガーッ・・!!


私は歩く・・果ての無い・・闇の中を・・遠い遠い・・記憶の声に・・誘われるがまま・・
・・望まれぬというのなら・・認められぬといぬのなら・・許されぬというのなら・・


――――――――――――・・・奪い・・・取ってでも・・・・・!!!―――――


それが・・・私の・・・・―――――――――私の出口は・・・未だ・・見えない・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『夢、儚く・・・。』

294 名前:FF9外伝『夢、儚く・・・。』 投稿日:2000/08/26(土) 23:03

 嵐が近づきつつあった。大陸から離れた小さな孤島・・・。その孤島に粗末な一軒家。人里離れた寂しげな場所に親子は住んでいた。

 少年「ママ、大丈夫?顔色悪いよ。」
 母「大丈夫よ、心配しないで頂戴。・・・でも、長くないかもしれないわね。こんなことになったのも全て【あいつ】のせい・・・。」

 母親はのみでも湧いていそうな粗末な藁葺き(わらぶき)の寝床にガリガリに痩せた体を横たえていた・・・。そして、少年に何度も聞かせていた恨みの言葉をまた、今日も繰り返してた。

 母「良くお聞き、私たちがこうなったのも全ては【あいつ】のせいだ。【あいつ】に一泡吹かせてやりたいねえ。私が、元気であれば・・・ねえ。」
 少年「ママ、もうしゃべらないで。僕が【あいつ】を殺すよ。ママの代わりに【あいつ】をとっちめてやる。」
 母「・・・。ママはもう立ち上がることも出来ないけど、お前ならできるかもしれないねえ。耳をお貸し。」

 その三日後。嵐がようやく離れ小島から去ると母は安心したかのように息を引きとった。

 海の見える丘に母の亡きがらを埋め、墓をつくると、少年は泣きはらした目を向けながら誓うのだった。

 少年「ママ、わかったよ。必ず、【あいつ】を倒すよ。天国で見守っててよ、ママ・・・。」

 少年の名をクジャという・・・。この後、7年後、世界でクジャの名前を知らないものはいない。この年端もいかない子どもが世界を恐怖に突き落とすことになるとは誰が・・・、想像できようか?
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白の世界

300 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/27(日) 00:46

・・・白い・・・・眼に映るのは・・只、・・白い・・色の無い・・世界・・
・・見てる・・私を見てる・・みんな・・・・みんな・・・私を・・見てる・・
・・・・・・・・何十個もの瞳が・・・・私を・・私を見てる・・・・・・・
・・・・不安の眼・・悔恨の眼・・悲哀の眼・・・そして・・・・恐怖の眼・・
・・どうして?・・どうして?・・どうしてそんな眼で・・私を見るの??・・

眩しい・・・眩しい・・それなのに・・それなのに眼を閉じる事が・・出来ない・・

・・いくつもの・・いくつもの光・・そう・・それは・・魂の・・輝き・・
いくつもの・・小さな光が・・生まれては・・消え・・・生まれては・・消え・・何だろう?・・これ

・・!・・ああ・・違う・・これは・・消えて行くんじゃあない・・・・消されて・・行くんだ・・

ああ・・!消えてく・・あんなにも・・あんなにもたくさんあった・・小さな光が・・みんな・・消えてく・・
・・・小さな・・・魂の・・・光が・・・・消されて行く・・・・
5つが・・4つに・・4つが・・3つに・・3つが・・2つに・・・・・そして・・2つが・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

い・・た・・い・・痛い・・痛い・・痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い・・い・・たい・・
・・・・身体の・・身体の奥が・・・・たまらなく・・痛い・・いたい・・ああ・・ぁぁ・・

・・感じる・・はっきりと・・痛いのは・・・私・・?・・私じゃあ・・私じゃあない・・痛いのは・・


・・眼を・・閉じてる・・表情は・・・ない・・眠ってるの・・?・・でも違う・・泣いてる・・
・・・泣いている・・・痛みを・・・・痛みをとっても・・痛みをとっても感じてる・・
・・・・・・・私には・・・・それが・・・見える・・・・・・・・・わかる・・・・

                 何故????

・・・・・何故・・って・・?・・・・それは・・それは・・・・それは私の―――

――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

焦土

304 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/27(日) 02:39

数十万度の高熱を伴う死の閃光が駆け巡る。その猛威は大地は融かし、大気をも焼き尽くした。
1万ものアレクサンドリア兵が一片の骨も残さず蒸発し、飛空艇編隊はことごとく空に散華した。
インビンシブルのブリッジからその様を見ていたミコトの顔色は、死人以上に蒼白だった。
ジタンと共にバブイルの巨人の建造に携わっていたミコトは、その破壊力について理解していた。
しかし頭で理解するのと実際に目撃するのとでは受ける衝撃がまったく別物であると、ミコトは
身をもって知った。アレクサンドリア帝国は、放置すればいずれ黒魔道士の村をも蹂躙するであろう
危険な存在であり、それを未然に防ぐ為にはやむを得ない措置だったのだと己に言い聞かせるが、
それでも体の震えと自己嫌悪を完全に封じ込める事はできなかった。
「ノールッチ高原に展開中のアレクサンドリア軍は壊滅しました。生命反応はありません」
ジェノムたちは、ジタンや黒魔道士との接触を通して次第に感情というものを理解しつつあったが、
それにも個人差があり、状況を報告した士官はこれだけの惨状を前にしても冷静そのものだった。
ミコトはそんな士官を心底羨ましいと思った。
「…了解したわ。作戦の次の段階に移ります。バブイルの巨人を南ゲートに侵攻させて下さい」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屍の村

305 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/27(日) 02:41

夜明けが近かった。昇る太陽に意思と言うものがあったならば、目撃する光景のあまりの異様さに、
己の目を疑うに違いない。美しかった高原は、ことごとく地衣を焼き尽くされ、薄汚く濁った
琥珀色のガラスと化し、村からは生あるものの気配が絶え果て、村人の、兵の、そして黒魔道士の
累々たる死屍が大地を埋めていた。
「終わったわね…」
何を考えていたのか、死に果てた村の広場で、ひとり辺りを眺めていたジタンにミコトが声をかけた。
「…ああ」
そう答えただけで、しばらく黙り込んでいたジタンだったが、
「だが、戦いはまだ始まったばかりさ。すべてはこれからだ…」
そうつぶやき、踵を返した。が、その途中でふと足を止め、
「おまえは…どうするつもりだ?」
ジタンが声をかけたのはスライだった。ジタンのそばにへたり込み、茫然自失の状態にあった彼女は、
絶対の防御壁とも言えるジタンのそばにいた事で、偶然にも死を免れたのであった。
「…私?」
「そうだ。村を、いやお前の『日常』を奪った俺への復讐を望むか? それともこの村の事は忘れて
新しい人生を生きるか? 勧めはしないが、村人の後を追いたいなら送ってやってもいい」
「……」
「それとも放っておいて欲しいなら、俺は今すぐこの場から消えるが?」
「…私には友達も恋人もいなかった。大切な人はお父さんだけだった。けど、お父さんももういない」
スライは身振りでジタンが去るのを制止して、ぽつりぽつりと語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スライの独白

307 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/27(日) 02:44

>>305
「いつからだったか、村のみんなは変わってしまった…。目先の利益だけに目を光らせ、口をついて出るのは
心にもないお追従の言葉と陰口ばかり。卑屈でいて、しかも傲慢な人間ばかりだったわ…。黒魔道士の生産を
生業にしたとき…お金に目が眩んで、まっとうに生きる道を捨てる事を選んだその時から、既にこの村は
死んでいたのよ。貴方に滅ぼされるまでもなく…」
東の空がゆっくりと白み始めていた。消え行く夜空を眺めながらスライは続けた。
「それでも私たちは、生きているふりをしながら、今日まで日々を積み重ねてきてしまった。
いい事なんてひとつもない腐り切った日常だったけど、それでもここは私の故郷だったのよ…。
村のみんなの仇討ちをするつもりはないわ。私はみんなが大嫌いだったから。でも、私の日常を…
故郷を奪った事は許せない。だから私は貴方を憎む」
「では復讐が望みか? 黙って討たれてやる訳にはいかないが、1度だけは機会を与えよう。それで俺を
殺れなかったら、逆に返り討たれる事になるがな。今のお前では到底俺を殺す事はできまいが、腕を磨くなり、
策を巡らすなり、あるいは他人に依頼するなりすれば、いつか俺を殺せる時が来るかも知れん」
ジタンの提案にスライは頭を振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

選んだ道は

308 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/27(日) 02:45

>>307
「貴方が憎い。それは間違いない事だけど、私が失ったものには、人生を浪費してまで復讐する程の
価値がない事も分かってる。私はこれからも生きていかなくちゃならないわ。だから、貴方を憎むのを
止めるつもりはないけど、つまらない事に時間を費やす事もしない」
「そうか。新しい人生、それを選んだんだな…。世界には未だ戦乱の影のささない場所もある。ダゲレオでも
エスト・ガザでも望みのところまで飛空艇で送らせよう。償いだなどと言う気はない。この村の事も含めて、
俺は俺の罪を認めて背負っていくつもりだ。だが、せめてそれくらいはさせてくれ…」
「…ええ、よろしくお願いします」
ジタンとスライの視線が絡み合った。これから先も決して相容れず、許しあう事もないだろうが、
それでいてそこには、奇妙な理解と微かな憐憫があった。
閃光が走ったのはその時だった。
「…キ…ル」
つい先程まで他の屍の中に埋もれていた黒魔道士が、腕だけを起していた。
スライはゆっくりとくずおれた。ジタンが駆け寄った時にはスライは既に死んでいた。
黒魔道士の放ったサンダラ──単なる村娘のスライがそれに絶えられる筈はなかったのだ。
「ど…どうして…」
ミコトも眼前で起きた事態に愕然としていた。
「…ジ…ジたん…じタン…バんザイ…」
呆然とするジタンにそれだけ言い残し、黒魔道士もそれっきり動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

捨てきれぬ感傷

309 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/27(日) 02:46

>>308
「…ク…」
「ジタン?」
「クククククッ、アハハハハハッ!」
ジタンは狂ったように笑っていた。涙を流しながら笑っていた。
「…ジ…ジタン…あなた…」
焼け残った家が2人のそばにあったが、ジタンは笑いながらその壁に己の頭を打ち続けた。
「ハハハハ、これが…これがお前を裏切り、破壊の尖兵として黒魔道士を作った事の報いなのか、ビビ!
いったん動き始めた戦争の歯車は、たとえそれを回した人間であっても完全に制御するなどできはしない。
だが、力を…数年前までには夢にも思わなかった途方もない力を身につけ思い上がった愚かなチンピラは、
いつの間にかそれができるような気になっていたらしいぞ、傑作な事にな! アハハハハッ! 分かって
いたはずだ、こんな事が起こるかも知れないというのは! だからこそ俺は感傷を捨て、目的のために
邁進すると決めていた! その覚悟をした気になっていた! だが実際はどうだ! あらゆる状況を
意のままに操る自分自身に酔い痴れて、いつの間にか覚悟を形骸化させていたんだ! だから!
自分の作った原因で、予期せぬ人間がひとり死んだというだけでこの有様だ! 俺は増長しただけの
とんだ甘ちゃんだった! ハハハハッ! アハハハハハハッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「涙」

310 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/27(日) 02:47

>>309
裂けた額から溢れ出た血が、ジタンが頭を打ちつけるたびに周囲に飛び散る。
「やめて! やめてよジタン!」
ミコトは必死にジタンを制止しようとした。
「うるさい! 離せ!」
「あうっ」
ジタンに力任せに振りほどかれ、尻餅をつくミコト。
『俺は…俺は何をしている?』
ミコトを振り払った瞬間、ジタンは突然自分が何をしているのかに気がついた。
激情は去り、変わって海よりも深い罪悪感が心を満たした。慌てて倒れたミコトの方を振り返る。
ミコトは座り込んだまま泣いていた。
出会ってから数年…それはジタンが初めて見た、いや、ミコトが生まれて初めて流す涙だった。
物理的に押し潰されるかとすら思える、重い後悔の念が湧き上がってくる。
ジタンはミコトを抱き起こすと、そのまま強く抱きしめた。
「…うぅ…ジタン…」
「すまない…すまないミコト…」
自分自身も悔恨の涙を流しつつ、ジタンはミコトの柔らかい髪を撫で続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心の拠り所

311 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/27(日) 02:48

>>310
目的の為には一切の感傷は捨てる。ジタンは今回の戦いを始める前にそう決意していた。
利用できるものは全て利用し、排除すべきものは情け容赦なく切り捨てる。そう覚悟していた。
それはこれまでのジタンの生き方とは正反対に位置するものであり、それが故に、ジタンは
己の心が荒んでいくのを感じていた。そんな中、いつかジタンはミコトと過ごす時間に安らぎを
見出すようになっていた。目的の為、かつての仲間たちと袂を分かち、「帰るべき場所」であり
「家族」であったタンタラスとすら決別したジタンにとって、「妹」であるミコトは、残された
唯一の拠り所であったのだ。情を捨て、すべてを手駒として利用しなくてはならない。その覚悟は
ミコトに対しても例外ではなかったのだが、いつか手駒として割り切る事が必要な時が来るまでは
今のままでいいと己自身に言い訳をしながら、ずるずると今の関係を引きずっていたのだ。
それだけに、激情に駆られていたとは言え、自分がミコトに暴力を振るったという事実は
ジタンにとって大きな衝撃であった。罪悪感もさることながら、自分の精神状態がそこまで
剣呑なものになっていたという事実が特にこたえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミコトの願い

313 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/27(日) 02:48

>>311
「…もう…もうやめようよ…ジタン」
涙声でミコトが訴えた。
「…やめる? 何故だ?」
「私は…私はジタンがさっきみたいに苦しむのは嫌…そんな苦しい思いはして欲しくないの…」
「…ミコト…」
「きっとアレクサンドリアとリンドブルムはお互いに食い合って潰れていく…。
彼らから私たちの村に攻めて来ても、今の私たちには村を守りきれるだけの力があるわ。
万が一守りきる事ができなくても、別の次元に逃げる事だってできるはずよ…」
「……」
「ぐすっ…帰ろうジタン? 黒魔道士の村に帰って…静かに暮らそうよ…」
そう言ってミコトは自分の方からもジタンを抱きしめた。
黒魔道士の村で、ミコトやビビの子供たち、ジェノムの仲間や黒魔道士たちと、チョコボでも飼育しながら
のんびりと暮らす。以前なら退屈この上ないと思ったに違いないそんな暮らしが、今のジタンにとっては
この上なく甘美な誘惑となった。何も難しい事はない。今、己の腕の中にいるミコトの願いに応じるだけで、
それらの生活全てが現実に己のものとなるのだ。
「…帰る…帰るべきなのか…帰りたいのか…俺は?」
その時、ジタンの脳裏にひとつの記憶が甦った。
砕ける大空…割れる大地…裂ける海原…世界の終末…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かなわぬ願い

314 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/27(日) 02:49

>>313
「駄目だ!」
ジタンは叫んでミコトへの抱擁をといた。
「ジ…ジタン?」
「駄目だ! 駄目なんだ! ここで…ここでやめる事はできない!」
「ど、どうしたの、ジタン?」
前触れもなく豹変したジタンの態度に混乱するミコト。
「バブイルの巨人はそのままトレノに向けて侵攻させろ。どうせ不完全な複製品だ、長くは持たない。
使えるうちに有効利用しなくてはな。それと本国からカイナッツォとエンキドゥを呼び寄せ、ダリの
拠点化と残された魔道士製造プラントの解析と復旧を急がせるんだ。そして俺たちはブルメシアに向かい、
エヌオーたちと合流する。戦いはまだこれからだぞ、ミコト」
一気に捲し立て、足早に立ち去るジタンをミコトは呆然と見送ったが、やがて少し寂しげな微笑を浮かべた。
『とにかくジタンが元に戻ってくれてよかった…村に戻ってくれなかったのは悲しい事だけど…』

かくして、後に「ダリの悪夢」と呼ばれた夜が明けた。ダリの村民及びダリ駐留のアレクサンドリア軍は
全滅し、南ゲートに駐留中のアレクサンドリア軍の9割が命を落とした。だがこの凄惨な戦いも、
後々から考えてみればほんの前奏曲に過ぎなかったのである。

『…そうだ…俺はやめる事はできない…ガイアそのものの危機…根源破滅の危機を回避する為に…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリンの憂鬱

320 名前:クロマ書き@DQしないで夜更かし中(笑) 投稿日:2000/08/27(日) 03:04

<ACTIVE TIME EVENT 「エリンの憂鬱」>
「駄目ェッ! まだ逝かないで、お願い!」
「ファファファ、コンボだ。これでパーフェクトだな」
パラメキアの上級仕官用レクリエーションルームでは、エリンとエヌオーがクアッドミストに興じていた。
「うう、総司令強すぎですよぉ〜」
ぼやきながら杯を空にするエリン。酒の力と生まれ持った優れた環境適応能力のおかげで、エヌオーへの
嫌悪はあらかた消えていた。
「はあ…何が悲しくて最高司令官と最新鋭艦の艦長が、連日カードばかりしてなくちゃ
ならないんでしょうね」
ブルメシア解放作戦という壮大な計画の為、割れんばかりの歓呼の中、黒魔道士の村を出発したエリンたち
だったが、いざブルメシアに接近したところ、パック王子率いる旧ブルメシア残党軍が動き出し、本国の
ジタンはエリンらに待機を命じたのであった。実地試験の無期限延期を知った魔導アーマー専属の技師たちは
エリンに愚痴と嫌味を囁き続け、戦えない事を知った最新式強化黒魔道士・黒のポルカ1号と2号は暴走し、
それを取り押さえる為にブルメシアではなく艦内に戦場が出現する始末。そうこうしている内に、パック王子は
ブルメシア奪還に成功し、本国のほうではジタン率いる別働隊がダリ制圧に向けて侵攻を開始したとの情報が入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総司令も憂鬱

321 名前:クロマ書き@DQしないで夜更かし中(笑) 投稿日:2000/08/27(日) 03:05

>>320
「これじゃあ、体のいい左遷じゃないですかあ。リンドブルムを抜ける時、私はトレノのカードの殿堂で、
ジタンさんに直接スカウトされたんですよね。黒魔道士の村に行ったら、私の為に艦長の椅子が用意されてたし、
厚遇されてると思ってたのに…。ひどいよ、ジタンさん…ううぅ」
「なんだ、貴様は泣き上戸か…だがこの儂とて似たようなものよ…最高司令官に任じるなどと言われて
前線に赴いてみればジタンの指令を待つだけの退屈な毎日…おまけに本国では最近四天王とかいう連中が
幅を利かせていると聞く…このパラメキアはもしや不要人員隔離用の艦ではないのか?」
エヌオーもまた、早いペースで杯を干していた。
「うう…きっとそうなんだ…私は騙されてるんだ…ジタンさんって女の子を騙すのが得意そうだし…」
「まったく耐えがたいわ…エリン、今夜も朝までつき合ってもらうぞ…」
「はい、総司令…」
ジタンがダリで激戦を繰り広げている頃、エリンとエヌオーは酒とカードに溺れる自堕落な生活を
送っていたのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

召喚帝エーコ動く

339 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2000/08/27(日) 04:27

エーコが既存の飛空挺段を廃し、再編成して作り上げた最強の飛空挺団、赤い翼はアレクサンドリアへと向かっていた。
中央にある母艦ゲルニカの船室には、エーコとその脇を固めるアサシン、そしてゾディアックブレイブのナタリー、シナ、マリンがいる。
エーコ「できれば、アレクサンドリアは少ない損傷で手に入れたい。
    アレクサンダーを私の召還獣のコレクションに加えたいんでな。
    よって、敵の飛空挺団を蹴散らした後は、アレクサンドリアの外れに着陸し、
    そこから兵士を市街に雪崩れ込ませる。何か質問はあるか?」
そのエーコの声に、マリンが遠慮がちに挙手して発言する。
マリン「エーコ様、現在トレノに向っている巨人は如何致しましょう?」
エーコ「あれか…。あれは放っておけ、ジタンがあの木偶の棒を必要としていないように、
    私ももうトレノの街を必要としていないのだ。
    既にトレノを守る兵士は本国へと帰還させているから、被害は微々たる物だろう」
エーコがそう冷ややかな声で言うと、船室に兵士が現れた。
エーコ「何事だ?」
兵士「はっ、アレクサンドリアの飛空挺団が姿を現しました」
エーコが船室の窓から外を見やると、そこには旧式の飛空挺のみで編成された飛空挺団が姿を現した。
装備も貧弱であり、リンドブルムの飛空挺団と比べると明らかに見劣りする。
エーコ「フン…。アレクサンドリアが飛空挺に力を入れていないのは知っていたが、まさかここまでとはな。
    まあ、主力の飛空挺をブルメシアで失ったことも関係しているのだろうが…」
空中戦の勝敗は、実際に行うまでもなく明らかであった。

手抜きでご免なさい。

 

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